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スージー鈴木先生の名著『1984年の歌謡曲』の一覧

スージー鈴木先生の『1984年の歌謡曲』の曲。これも名著。

1984年の歌謡曲 (イースト新書)
スージー鈴木
イースト・プレス (2017-02-10)
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スージー鈴木先生の名著『1979年の歌謡曲』で論じられている音源の一部

スージー鈴木先生の名著『1979の歌謡曲』で論じられている1979年歌謡曲音源の一部。作成途中。先生の趣味と自分の趣味がかけ離れているのに驚いたり。

 

1979年の歌謡曲 (フィギュール彩)
スージー鈴木
彩流社
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  1.  布施明 「君は薔薇より美しい」。オリジナル音源のバックがいい、特にベースがと思ったら、これゴダイゴなのか。スティーブ先生。鈴木先生はゴダイゴの評価がすごく高くて、ちょっとわからんと思ってたけどこの曲まで実はゴダイゴとなるとなるほど。
  2.  桑江知子 「私のハートはストップモーション」。この曲もベースがよい。もっとバック大きめにしてもいいのにね。サビ意外のところは印象に残らないね。このひとおもしろいな。 http://orikarapoponta.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23
  3.  沢田研二 「カサブランカ・ダンディー」。
  4.  八神純子 「思い出のスクリーン」。みずいろの雨は好きで、最初期に買ったLPの1枚。でも中2のころには誰かに渡してしまったな。
  5.  西城秀樹 「Young Man」。流行りましたよ。っていうかまあビレッジピープルの方で。
  6.  ジュディ・オング 「エーゲ海のテーマ 魅せられて」。このストリングスとかのアレンジの感じがザ・筒美京平先生よね。
  7. 桜田淳子 「サンタモニカの風」。
  8. 山口百恵 「美・サイレント」。歌謡曲のこういうギミックっていうか仕掛けっていうか、そういうのが嫌いだったんよね。スパニッシュ風のギターかっこいいな。
  9. ピンク・レディー 「ジパング
  10. 岸田智史 「きみの朝」。
  11. 松山千春 「窓」
  12.  サザンオールスターズ 「いとしのエリー」。サザンは音源がネットにまったく存在しない。ここまでしなくてもいいんじゃないかと思うんだどなあ。
  13.  ゴダイゴ 「ビューティフル・ネーム」。あんまり。
  14.  ツイスト 「燃えろいい女」。イントロカッコ悪い。世良先生の声は好きだったな。この当時のAMラジオにかじりついてたの思い出す。オールナイトニッポンとかねえ。
  15.  アリス 「夢去りし街角」。アリスは私の中学1年生ごろのポップ音楽への目覚めにかかわっている。今聞くとちょっとベタにクサイ感じだけど、谷村先生ってそういう人よね。ボーカル二人の声質が似ていてハーモニーがすごく効果的。
  16. 水谷豊「カリフォルニア・コネクション」。知らなかった、というかたしかに聞いたことあるけど意識したことがなかった。よく聞くとバックの音ものすごくいいな。とプロイデューサーが鈴木茂先生。
  17. ピンク・レディー「ピンク・タイフーン」。まあこの時期のピンクレディーはなにもない。
  18. 甲斐バンド「感触(タッチ)」。あれ、HEROじゃないのか。
  19. サーカス「アメリカン・フィーリング」。あんまり。ミスタサマタイム〜は好き。
  20. 八代亜紀「舟歌」。これは猛烈な名曲ね。
  21. 沢田研二 「Oh!ギャル」。これ有名な曲なのか。ぜんぜん意識してなかったような。
  22. ゴダイゴ 「銀河鉄道999」。この曲はあんまり好きじゃなかった。英語うますぎたっていうか。
  23. 松坂慶子「愛の水中花」 https://www.youtube.com/watch?v=CaS5V6VVPLE
  24. ピンク・レディー「波乗りパイレーツ」
  25. チューリップ「虹とスニーカーの頃」。名曲。
  26. さだまさし「関白宣言」。これは芸。私はさだ先生はほとんど関係なかった。
  27. 桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」。松本先生がこのタイトル歌わせるのいやだったとかって話だけど、かっこいいではないか。
  28. 八神純子「ポーラー・スター」
  29. サザンオールスターズ「思い過ごしも恋のうち」。
  30. 柳ジョージ&レイニーウッド「微笑みの法則」
  31. 山口百恵「しなやかに歌って」。これはよい。ドラムはポンタ先生かなあ。ベース大きめだけど、ちょっと重い気がする。オリジナル音源はなんか尺が長く感じる。テンポが遅い?
  32. 岩崎宏美「万華鏡」。あんまり印象に残らない曲よね。ベースがこの時代のコンテンポラリーな感じだけど、もうひとひねりできると思う。
  33. ばんばひろふみ「Sachiko」。べたすぎると思う。
  34. 郷ひろみ「マイレディー」。これも知らなかった。
  35. 久保田早紀「異邦人」。これは文句なしの名曲。
  36. ゴダイゴ「ホリー&ブライト」。あんまりわからん。この年、「ガンダーラ」もヒットしたと思うんだけど、この曲はものすごくよいと思う。あ、1年前の1978年か。
  37. 甲斐バンド「安奈」。この曲はあんまり時代感がない。
  38. さだまさし「親父の一番長い日」。関係ない。
  39. パル「夜明けのマイウェイ」
  40. サザンオールスターズ「C調言葉にご用心」
  41. 海援隊「贈る言葉」。当時からあんまり。
  42. クリスタルキング「大都会」。ツェッペリン。
  43. オフコース「さよなら」。文句なしの名曲。
  44. シーナ&ザ・ロケット「ユー・メイ・ドリーム」
  45. アリス「秋止符」。歌詞が新しい世界に入ってるよね。  http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=36509
  46. 財津和夫「WakeUp」。オフコースがいなければねえ。

 

なかなか難しい。オリジナル音源ほしいなあ。Apple MusicやSpotifyの方がいいか。

 

 


品川哲彦『倫理学の話』書評

(『週刊読書人』第3124号 2016年1月22日掲載の草稿)

倫理学の話

倫理学の話

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品川 哲彦
ナカニシヤ出版
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本書は、読みやすい倫理学概論および学説史である。叙述は歴史的順序には従わず、著者独自の観点からの配列となっているが、しっかりした索引、注および相互参照が付記されているため、事典的に読むことも可能である。

全体の四分の三は、近年の英語圏の標準的なテキストで頻繁に扱われている諸倫理学説の紹介と検討である。第一部でまず、倫理学は、他人を教導しようとする「倫理」ではなく、むしろ自分自身の倫理観を反省する哲学であるとする筆者の立場が明確にされる。第二部では倫理の基礎づけとして、倫理を自己利益にもとづいて説明しようとするプラトンとホッブズ、人々との共感を重視するヒューム、理性にもとづいた義務と尊厳を説くカント、社会全体の幸福の促進を目指す功利主義者たちの理論が説明される。第三部は、特に「正義」をめぐって、ロックの社会契約説、ロールズのリベラリズム、ノージックのリバタリアニズム、サンデルらの共同体主義およびその源流としてのアリストテレスとヘーゲルがとりあげられる。

紹介と解説は総じて平明であり、どの章でも初学者が疑問を感じやすい箇所、誤解しやすい箇所に対して相当の配慮がなされていることは特筆に値する。たとえば、功利主義の考え方を論じる上で、「功利主義は多数の人々の幸福のためならば、少数の罪のない人を殺すことを認めてしまう」といった安直な批判に対しては、ヘアの「道徳的思考のレベル」の区別を紹介し、そうした批判は安直な思考実験と道徳的な直観にもとづいたものであって、現代のエレガントな形の功利主義に対しては十分な批判にはならないという考え方を紹介している。こうした細心な叙述は随所に見られ、基本的学説の正確な理解を必要としている読者に有用なはずである。

「正義」に関する議論の後半部分では、ケアの倫理、ヨナスの責任論、レオポルドの土地倫理、レヴィナスの他者論やデリダの正義の脱構築といった、伝統的な正義論の枠組み自体を疑い問いなおそうとする思想の概略とその魅力が紹介されており、これが本書の特徴的な部分となっている。もちろん、こうした思想群にはわかりにくい部分がある。たとえば、ギリガンらによる「ケアの倫理」は、男女の心理学的な発達に関する事実的主張にすぎないのか、あるいはそれを越えて規範的主張としての説得力を持つのか、ヨナスらが主張する「将来世代に対する責任」の根拠は何か、レヴィナスの言う「他者の無条件な歓待」はどのような内容をもつのか、デリダによって脱構築された「正義」観念は我々の道徳的生活にどのような関係をもつのか等々、読者は多くの疑問を抱くことになるだろう。

しかし、こうした思想を紹介することで「正義」を問いなおそうとする著者の試みは理解できないものではない。我々は往々にして、自分のふるまいや考え方は正しく、自分たちは正義にかなっていると思いこみがちである。歴史的に見てこうした思いこみは、「我々」と見なされる人々以外の存在者に対する政治的抑圧や暴力につなってしまう。アカデミックな倫理学研究でさえ、独善的な取組みをすればそうした側面をもちえる。筆者が「正義」についての標準的とされる倫理学説の検討にとどまらず、上述のような思想家たちの紹介によって「正義とは異なる基礎」や「正義概念の脱構築」の可能性を探るのは、そうした政治的意識の反映でもある。

「あと書き」では、ユダヤ人芸術家メナシェ・カディシュマンのインスタレーションが発する「ノイズ」を聞き「自分は苦しんでいる人々の呼び声もあたかもたんなるノイズのように聞き流してしまっているのではないか?」と自問する筆者の姿が描かれる。多彩な倫理学的な立場それぞれの見解に耳を傾けつつ「じっくり考えなくてはならない問題」について誠実に「ゆっくり話す」という手法は、倫理学という営みへ誘いとして適切な方法であることはまちがいがない。


ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
ジョナサン・ハイト
紀伊國屋書店
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ツイッタで訳者の先生が「売れない売れない」と嘆いておられるのでamazonに紹介文書いてみた。春先には、「よい本を紹介するレビューをamazonとブログにどんどん書こう」とか妄想してたのに時間がとれない。「書評」だと思うとどうしてもかまえちゃうからねえ。shorebird先生のとか理想的だけど、ああいうのは学識に裏打ちされてできるもなのだし、かなり時間と労力もかかっている。そういうわけで今回は本を見ないで記憶だけで書いた。30分ちょっと。ははは。でもそのあといじっちゃったりしてやっぱり1時間ちょっとは使ってしまう。人生は短い。

amazonにレビュー書いてもアフィリエイト収入入らないし。あれなんとかしてほしいですよね。

大学教員にとって書評というのはけっこうむずかしくて、書いてもたいして評価されないのに読みまちがえてたり誤解してたりするとプゲラってやられちゃうし。否定的な評価すると憎まれちゃう可能性もある。翻訳もそうですね。あれは理解力が試されてる感じですごく恐い。そういうんで、amazonレビュー程度でも本の内容に触れたものは書きにくいです。

私にできるのは、せいぜいツイッタで1行コメントつけて紹介する程度。

でも書評はすごく大事なのに国内では軽視されているところがあると思うので、将来的にはいろいろやりたい。

まあしかし翻訳書というのは非常に重要なものなので、積極的に買って翻訳文化を支えたいですね。高橋洋先生は他にも重要なのを訳していて注目しています。

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ジョナサン・ハイト先生はいま世界で一番注目されている社会心理学者・道徳心理学者の一人で、国内では『しあわせ仮説』に続く書籍ということになります。

この先生が有名になったのは”The Emotional Dog and its Rational Tail” 「感情的な犬とその合理的な尻尾」 (2000年)っていう論文で、これは人間ってのは道徳判断をするときに、いろんなことをよく考えて答を出すというよりは、まずぱっと感情的に判断して、それにいろんな理由をあとづけでくっつけるようだ、って話でした。この論文のあとに道徳心理学が爆発的に流行することになります。例の「トロッコが暴走して、スイッチを押せば5人助かるけど〜」みたいな話も、とりあえず直感や感情で判断してそのあとで理屈をいろいろひねったりしているようだ、とかそういう研究とかが盛んになったり。

前著の『しあわせ仮説』では、人間てのは象さん(感情)とその乗り手(理性)の組みたいなもんで、乗り手の方は象のパワーをよく知ってうまくコントロールしないとしあわせになるのは難しい、もっとよく自分たちの心理を研究しよう、みたいな話だったわけですが、この『左と右』では政治的な運動をする上でも人間の心理をよく知っておくことは大事だ、みたいな話になります。

ここ数年ネトウヨとか保守派とか国粋主義者のような人びとが力をつけて、ネットインテリの人たちは困っているようですが、それはアメリカとかも同じようなもので、いまはオバマの民主党政権だけど保守派の共和党も強い。米国民主党に代表される政治的な立場は、貧乏人とか弱い者にもっとやさしくしよう、もっと人びとのそれぞれの価値観を尊重しましょう、みたいな立場なわけで、インテリの多くはそっちを選ぶ。まあふつう文句ないですよね。でも実際に選挙したりすると保守派が勝ってしまったりする。なぜなの? ネットインテリの人とか見てると、保守的な立場の人は馬鹿だからそうなっているのだ、みたいなことをほのめかす人もいますが、馬鹿がそんな多いというわけでもないですよね。保守派は保守派の魅力があるから多数派なわけで。保守的な人もリベラルな人も、自分は正義だと思ってる。この「自分は正義だ」っていう「正義心」がテーマです。

ハイト先生がいろいろ心理学的調査をして考えた結論は、そういうリベラル派は人の苦しみとかそれに対する「ケア」や援助、防衛とか、「自由 liberty」だとか、あとはせいぜい「公正さ fairness」ぐらいが道徳のすべてだって思いこむ傾向があるけど、実は人間が気にしている軸はもっとある。

まず「忠誠心 loyalty」。これは仲間意識とかそういうやつですね。家族は大事だ、俺たちは仲間だ、他人を助ける前にまず仲間を助けよう、裏切り者には罰を与えろ、なんで自分たちの仲間をくそみそにけなすんだ、みたいな感情です。それに「権威 authority」。ちゃんと権威にはしたがうべきで、権威を認めないとか軽視するとか、権威をおとしめるようなことを言ったりやったりする奴は許せない、みたいな感情。そして、「神聖さ sanctity」。汚れたものには触りたくない、清浄でなければならない場所や時間や行為がある、など。こういうのが神聖さとか信心深さとか、共同体を大事にするとか、社会秩序や階層をしっかりするとか、伝統を重視するとか、ご先祖様や戦没者をちゃんとうやまうとか、あるいは(宗教的な)罪にあたることをしないようにっていう意識につながってるというわけです。

保守派はリベラルが重視しない忠誠心や権威の尊重や神聖さっていう価値にうまく訴えていて、それがなかなか米国社会でリベラルな価値観が普及しない理由だ、とかって話になるわけです。リベラルな人は、保守派が馬鹿だから保守なのだとか考えるんじゃなく、ちゃんとその理由みたいなものを考えて、そのうえで政治運動しないといつまでも勝てませんよ、ということだそうです。

ハイト先生ははっきり述べてないですが、政治だけじゃなくて、たとえば生命倫理(脳死や尊厳死や中絶など)にもおそらく関係があると思います。(ただし生命倫理などに関する議論では、日本の右/左と米国のリベラル/保守がうまく対応してません。)

いろいろな実証的な調査や哲学的な考察が入っていておもしろいです。ただグループ進化の部分は生物学の専門家から非常に評判が悪いのでそのまんま信じるのはやめた方がよさそうです。

翻訳はきれいで読みやすいです。

どういう人物か見たい人は、このプレゼンテーションとかもどうぞ。
http://digitalcast.jp/v/12397/

しあわせ仮説
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ジョナサン・ハイト
新曜社
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魚は痛みを感じるか?
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ヴィクトリア・ブレイスウェイト
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〈選択〉の神話――自由の国アメリカの不自由
ケント・グリーンフィールド
紀伊國屋書店
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赤川学先生の『子どもが減って何が悪いか!』

ゼミとかではいろんな本のおもしろいところを紹介してもらったりするのですが、最近赤川学先生の『子どもが減って何が悪いか!』(ちくま新書、2005)ってのを紹介してもらいました。10年近く前でかなり古い感じですが、「データをちゃんと見よう、自分で分析してみよう」みたいな感じでよい本だと思ってました。

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)
赤川 学
筑摩書房
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でもその発表ではなんかへんなところがあって、気になるのでメモ。

p.81から赤川先生は「産みたくても産めない仮説」に疑問を呈しているのですがここの議論どうなんですかね。女は産みたくても経済的理由や仕事と子育ての両立の困難さから産めないのだ、という議論というか仮説というか通念があるけれども、この本の執筆時の2004年ごろにはそれを直接検証するデータはない、と(p.82)。そこでまあ岡山市の調査を使ってみていている。何年の調査かわからないんだけど、 これかなあ。 http://www.city.okayama.jp/contents/000053197.pdf ……あ、注を見ると2000年の調査ってことです。(岡山市はその後も調査継続してみるみたいですね http://www.city.okayama.jp/shimin/danjo/danjo_s00092.html

この調査の質問のなかに、「最近、女性が一生の間に産む子どもの数が少なくなっていると言われていますが、あなたはその原因をなんだと思いますか」っていうのが含まれてるのね。学生様はこれを紹介してくれた。

私それ聞いて、これってひどい調査だなと思いましたね。「その原因をなんだと思いますか」って聞いていったい何がわかるんだろう?少子化の原因がわかるんではなく、一般の人が少子化の原因について「どう思いこんでいるか」ってのがわかるだけですよね。そんな調査してどうすんだ、と思いました。もしそういう調査をしたいのであれば、希望する子どもの数を聞いて、実際の子どもの数を答えてもらって、もし少なかったら「なんでもっと産まないんですか?」って聞けばいい。これならちゃんとした答が得られそう。んで学生様にはそこらへんどう考えてるのかつっこんでしまったんですが。

赤川先生の本を読んでみると「これらの質問は、回答者に「少子化の原因を何と考えるか」をたずねたにすぎず、「少子化の原因」を直接検証するものではない」(p.82)ってちゃんと書いてる。偉い。まあ社会学者だったらもちろんこう書きますわよね。安心しました。「このような調査結果をもとに、「少子化の原因はかくかくで、だから、しかじかの対策が必要だ」と主張することは、大衆迎合的なポピュリズムではあるかもしれないが、社会政策設計としては邪道である」とおっしゃっておられます。正しい。

しかしこっから先がわたしわからんのよね。回答では「経済的負担がでかいから」みたいなタイプのがかなりの数を集めてるんだけど、赤川先生によれば、こう答えた人がどういう人かをちゃんと分析しみると、既婚者や子どもが多い人の方が、未婚者や子どもがいない・少ない人よりも統計的に有意に多い、ってことになる。こっから赤川先生は次のように推論するわけです。

仮に「産みたくても産めない」仮説が正しいとするならば、子育ての経済的負担や、仕事と子育て両立難を感じる女性は、既婚者よりも未婚者に、子どもが多い人よりも少ない(ないしいない)人に多いはずである。なぜならそれが、結婚や出産をためらわせる理由だからである。しかし事態は、まったく逆である。未婚者よりも既婚者が、子どもがいない人よりいる人が、子育ての経済的困難をより感じている。育児ネットワークの多い有配偶女性のほうが、両立難を感じている。」(pp. 85-86)

あれ、なんかおかしいですよ。質問は「(一般の)少子化の原因は何だと思いますか」ってな感じなんだから、自分が経済的負担や両立難を感じているかどうかではなく、一般の人はどう感じていると思ってるかを答えているはずなので、こういうことは言えないんじゃないかな。

赤川先生はここからさらに、子育て支援したり両立支援しても、「子どもがいない人が出産を選択するっていう効果をもつとは言い難い」(p.86)、みたいな結論にもってっちゃってる。なんだかなあ。

これを言うためには、たとえば「もし経済負担が問題なのであれば、子なしの人の方が子ありの人よりも「社会全体の少子化の原因を経済的負担と答える傾向が高いはずだ」ってことが言えなきゃならんけど、これはどっから出てくるんだろう?

既婚者子ありの方が経済的負担や両立難を感じているからといって、未婚者や子なしの人々が未婚や子なしでいる理由の大きなものの一つに経済的負担や両立難が入ってないともいえない。まあだめな調査からはなんもわからん、としか言いようがないんではないか。

私これわからんですよ。おかしな調査をもとに勝手な推論をしてしまってるんじゃないんかな。まあ細かいところだけど、慎重なよい本だと思ってたのに残念です。余計なこと書かないで、「こういう調査じゃまともなことわからんよ」ぐらいにしておいてほしかったです。赤川先生ぐらい大物になると、学生様が読んでいろいろ信用しちゃうので困ります。(っていうか私が「赤川先生だったら安心だよ」みたいなん言ってしまったのがいかんかったです。)

まあ私こういう社会調査やデータ扱うのはぜんぜん勉強したことないのでおかしいこと考えちゃってるのかもしれないので、まちがってたら教えてください。


2012年のおすすめ本

叶恭子の知のジュエリー12ヵ月 (よりみちパン!セ)
叶 恭子
理論社
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この本が一番衝撃的だったかなあ。「わたくしは自分の価値観で生きています。いろいろなことを言われているのは知っていますけれども、それによってわたくしの価値観や生き方を変えるつもりはありません。たとえ、そのことによって誰からも好かれないとしても、かまわないのです。」という最初の文章にぶっとばされて鼻血出そうでした。わたくしは、とにかく、自己肯定がなによりたいせつなのだということを、まなんだのです。

風雲児たち (20) (SPコミックス)
みなもと 太郎
リイド社

非常に勉強になりました。世のため人のために生きることは大事。1冊読むのがとんでもなく時間がかかります。日本史で習ったことが「こういうことなのか」と理解できるようになるので、高校生は受験のためにも大志を抱くためにもぜひ読みましょう。そして学問は大事。

遺伝子の不都合な真実: すべての能力は遺伝である (ちくま新書)
安藤 寿康
筑摩書房
売り上げランキング: 5,941

タイトルは刺激的だけど、現在までの人間の形質や行動についての遺伝学研究を慎重にコンパクトにまとめた良書。この先生のは他のも「そうなのか」って感じでおもしろい。『心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観』』 はもう古いんですが、遺伝とかについてひっかかっていた疑問に答えてもらって有用でした。『遺伝マインド –遺伝子が織り成す行動と文化』 も。

ワインバーグの文章読本
Gerald M. Weinberg ジェラルド・M・ワインバーグ G.M.ワインバーグ
翔泳社
売り上げランキング: 229,315

なにか書いたりするためには石を拾って歩いてつみあげて壁を作るのだそうだ。私はまだできないけど勉強にはなった。大学院生は必読だと思う。あと『英文翻訳術』も勉強になりました。

よいこの君主論 (ちくま文庫)
架神 恭介 辰巳 一世
筑摩書房
売り上げランキング: 7,972

マキアベッリ先生の『君主論』を小学生にも読めるようにしたもの。生徒様はこれで勉強してクラスを制圧し愚民をおさえこみ、いじめのない善政をしきましょう。教授会でも使えないだろうか。

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか
ピアーズ・スティール
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 21,522

先延ばしは私の宿病。同じようなものを数冊読んだけど、これはおもしろかった。克服できないまでも症状を軽くするためになんとかがんばります。 『自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学』も堅くてすごい本でした。

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える
アビジット・V・バナジー エスター・デュフロ
みすず書房
売り上げランキング: 1,992

これもきっちり経済学の立場から貧困を真面目に考えている。倫理学とかよりこういうのの方が重要なんではないか、みたいな。『幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)』もとてもよかった。あと『この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講』『この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講』の2冊はとてもわかりやすい。

人間仮免中
人間仮免中

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卯月 妙子
イースト・プレス

統合失調症の闘病記なわけだけど、読むドラッグとしか言いようがない。そして人間ってのは豊かなものだな、みたいな。でもこういうのに弱い人は多いだろう。うなされます。

隠れた脳
隠れた脳

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シャンカール・ヴェダンタム
インターシフト
売り上げランキング: 130,826

これは恐い本。適応的無意識とか認知バイアスとか。各種の偏見、集団的無行動、カルトとかがどうやって発生するのか。とにかく「自分を知る」ことは難しい。同種の本もけっこう読みました。

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学
ジョー・ナヴァロ トニ・シアラ・ポインター
河出書房新社
売り上げランキング: 350,412

第一印象とかしぐさとか。細かいことがいろいろ勉強になる。 『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』もよい。学生様に一部読ませたらたちふるまいが美しくなりました。学生様は『論理的に話す技術 相手にわかりやすく説明するための極意 (サイエンス・アイ新書)』ぐらい読んどくといいと思う。話し方だけでなく、聞き方や態度についても触れている。


セックス哲学アンソロジー The Philosophy of Sexの第6版が出たよ

Alan Sobleが編集していたアンソロジー The Philosophy of Sexの第6版が出てました。

中身がずいぶん変わって、1.(セックス概念の)分析と倒錯、2.クィア問題、3.(性的)モノ化と同意の理論的問題、4.モノ化と同意の具体的問題、という構成になってます。ずいぶん大きな変更です。

The Philosophy of Sex: Comtemporary Readings
Rowman & Littlefield Pub Inc
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ソーブル先生はあんまりLGBTとか詳しくなくて第5版までの扱いは小さかったのですが、今度のは大々的。Raja Halwani先生がトップ編集者になってます。「今回は、比較的安全なセックスそのものの領域を離れて、ジェンダーの問題につっこんでみた。実は5年前(第5版で)はそうする気にはなれなかったのだが、それは編者のニコラス・パワーとアラン・ソーブルがあんまりクィアの問題扱う気になれなかったからだ。というのも、あんまりアカデミック哲学的にたいしたことないように思えたからだ。でもそれから学界も発展してより論文も出たから、今回はハルワニも加えて充実したよ」みたいなことを序文に書いてます。みんな買って読みましょう。

実はアンソロジーにどういう論文が収録されているかリスト作ろうとしたんだけど挫折。もうばらばらで「これは絶対」みたいなのはまだ存在してない感じ。

https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Al25GTQ1cYTtdFlHNWRtTklaaDFYX3lINmJadm5BYWc

こうして見ると論文の栄枯盛衰みたいなんも感じる。ネーゲル先生強い。

生命倫理のアンソロジーなんかだともっとはっきり「これが大事」みたいなんが決まってる気がするけど、セックス哲学ではそういうのはまだまだ。それに生命倫理なんかだとハンドブックみたいな形でとりあえず定説と基本的批判みたいなんを提示することができるけど、セックス哲学はそういうのもあんまりない。どういう問題を中心的だとみなすか、どう編集するかってのも試行錯誤中。まだ未開拓の領域ですわね。


ミル自伝

ミル自伝 (大人の本棚)

ミル自伝 (大人の本棚)

みすず書房から出た村井章子訳の『ミル自伝』(「大人の本棚」とかってシリーズ)。解説のたぐいがまったくない。訳注もないみたい。人名ぐらい注つけてもいいのに。 『自伝』原稿出版の経緯*1や実際に訳出した版や原題*2すらもわからんのだが、みすず大丈夫か?光文社の例のシリーズの対抗なんだろうけど、ミルが誰かもわからず、人名も誰が誰やらわからんという状態でだいじょうぶなんだろうか。学生に勧めたいような勧めたくないような。微妙。

訳文は読みやすくていいんだけど、ちょっと文学臭が薄くなってしまっているような気がする。まあしょうがないかな。

たとえば

At first I hoped that the cloud would pass away of itself; but it did not. A night’s sleep, the sovereign remedy for the smaller vexations of life, had no effect on it. I awoke to a renewed consciousness of the woful fact. I carried it with me into all companies, into all occupations. Hardly anything had power to cause me even a few minutes oblivion of it. For some months the cloud seemed to grow thicker and thicker.

有名なこの「危機」*3の箇所は次のようになってる。

はじめのうち私は、すぐに抜け出せると思っていた。だがそうはならなかった。日々の小さな悩みを忘れさせてくれる一夜の眠りも、このときばかりは効き目がなく、朝になればたちどころに自分の惨めな状態を思い出す。友といるときも、仕事をしているときも、逃れられない。ほんの数分でいいから忘れさせてくれるものがあればよいのに、それもなかった。数か月の間、私はますます深みにはまるように感じられた。

岩波文庫の西本正美先生の訳だとこんな感じ。(戦後の版のやつが見つからないので戦前のやつの表記を変更して引用。みつかったら入れかえる)

最初私は、こうした心の雲はひとりでに消えるだろうとたかをくくっていた。ところが中々そうはいかなかった。人生の些細な煩悶を医するにはこの上もない薬である一夜の安眠も、私の悩みには何の効き目もなかったのである。私は目を覚ますと、新たにこの痛ましい現実に対する意識が更生するのを覚えた。いかなる友と交わるにも、如何なる仕事をするにも、この意識は私に常につきまとっていた。せめて数分間でもそれを私に忘れさすだけの力をもったものはまずなかったのである。数カ月間は、この雲はますます濃くなって行くのみであるように思われた。

この暗い雲*4 っていうイメージは(陳腐だけど*5)大事だと思うんだけどね。文学作品だとやっぱり残さないわけにはいかないだろう。でも村井先生の訳し方もありだな。装丁とか悪くない。このシリーズはけっこう楽しみだ。けど、2000円以内に収めたかった。無理か。

*1:生前は出版されなかったし、養女のヘレン・テイラーがいろいろ手を加えた部分がある。ミルが自分の性生活について書いてるのが残っていればおもしろかったのにね。ハリエットテイラーとはずっとプラトニックでした、とか。

*2:そりゃAutobiographyに決まってるけど。

*3:どうでもいいけど、ミルの「危機」の時代にインターネットがあったらどうだったろうとか考えちゃう。やっぱり2ちゃんねるメンヘル板や半角板に出入りしたかな。

*4:リストに”Nuages gris”っていう曲があるね。あら、International Music Score Library Projectって閉鎖したのか。

*5:陳腐さはミルの魅力の一部。


読書『女が男を厳しく選ぶ理由』

だいたい同じような話だろうと思っていると、ちょっとづつ進んでるのね。この手の学問やってる人はたいへんだろうけどやりがいもあるだろうなあ。ただ、たしかにこの本はかなり誤解されやすような気がする。
的確な書評は http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20080116#1200490717 。もう私は shorebird さんが紹介してくれたものを順に読んで生きていくわけだ。

個人的におもしろかったのは、この人たちが金髪碧眼嗜好をわりと普遍的なものと考えている様子なところ。私自身の内観ではそういう嗜好をさっぱり見つけられないのでなんか愉快。さすがにバイキングたちの息子は違う。風に飛ばされてきた髪の毛一本から、「金髪のメリザンドよ」とやっちゃうに違いない。きっとわたしのご先祖にはそういう淘汰がかからなかったのだろう。南方系? カナザワ先生もブロンド好きなのかなあ。あ、ブロンドの女は馬鹿偏見の説明 1)それは若いから。 もよかった。 でもニキビ面馬鹿 2)若いから 仮説とか背の低いのは馬鹿 3)若いから 仮説が成立しなかったのはなぜか?他のところも、この人々独自の説明はなんかちょっと甘いんだよな。


References   [ + ]

1. それは若いから。
2, 3. 若いから

角田由紀子先生の強姦事件判決批判

性差別と暴力―続・性の法律学 (有斐閣選書)

性差別と暴力―続・性の法律学 (有斐閣選書)

これはよい本だなあ、と思っていたのだが。

次に詳しく紹介する1994年の東京地方裁判所の判決は、強姦罪の被害者になりうるには、貞操観念が強固であることを求めているといってよい。「被害者資格」と呼んでもよい。(p.189)

判決は無罪の理由の一つに被害者の証言が信用できないことをあげている。信用できない理由の一つとして、この女性に大きな落ち度があったこと、「貞操観念」に乏しいことを指摘した。(p.190)

A子のように、「淑女ぶって」いながら、実は性的に奔放で慎しやかでないと烙印を押された女性の被害はなかなか信用されないことを、この判決は示している。(p.193)

こういうのを読んで、先週まで私は「90年代になっても法曹関係者はだめな人ばっかりなのだなあ」と思っていた。のだが。

でも判例時報 1562号「強姦致傷事件、東京地裁平5(合わ)167号、平成6・12・16刑八部判決、無罪(確定)」ってやつ読むとずいぶん印象違うよ。困ってしまう。これで有罪にするのは無理だろう。

うーん、比べて読んでほしいのだが、裁判所の判例データベースhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id=first&hanreiSrchKbn=01
は使えん。だめか。

とりあえず角田先生が引用している判決の一部再掲。

(A子は)「甲野[ディスコ]で声を掛けられた初対面の被告らと「乙山[スナック]」で夜中の3時過ぎまで飲み、その際には
ゲーム[エロ系王様ゲーム]をしてセックスの話をしたり、
A子自身は野球拳で負けてパンストまで脱ぎ、同店を出るときには一緒にいたD子、E子と別れて被告人の車に一人で乗ったというのであるから、その後被告人から強姦されたことが真実であったとしても、A子に大きな落ち度があったことは明らかである。(角田p.190。[]内はkalliklesの補。)

A子については、慎重で貞操観念があるという人物像は似つかわしくないし、その証言には虚偽・誇張が含まれていると疑うべき兆候がある。(角田p.193)

たしかにここだけ読めば「これはひどい」だよなあ。この本読んでから5年近くずっとそう思ってた。なぜ被害者の「落ち度」や「貞操観念」や(面倒だから引用しないけど)過去の職業歴が強姦致傷の裁判で問題にされる必要があるのだ!男権主義的司法制度粉砕!ってのが正しい態度だろう。

しかし(面倒なので今日はやめ。続く。)