月別アーカイブ: 2018年10月

離すと動作するカード読みとり機

図書館の入口にこういう改札があるのですが、これ、張り紙とかしてかっこ悪いっていうのもあれなんだけど、それ以外にもものすごく使いにくいんですわ。右の矢印のところに電子カードの学生証や職員証をタッチして入るんだけど、これの反応がものすごく悪くてみんなとまどってる。私とか1年たってもへんないやな感じで、図書館行くと不愉快になる理由のひとつだったんのです。 続きを読む

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EUの女性に対する暴力の調査はすすんでるなー

EUの女性に対する暴力の調査を日本でもやった先生たちの調査結果報告について[1]これ、龍大のページではWORDのままで開けない人がいるかもしれないので、PDFにしておきますね、フェミニストの小松原織香先生が加えたコメントに、正体不明自称プログラマのuncorrelatted先生がコメントをつけて、ちょっと話題になってました。 続きを読む

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1これ、龍大のページではWORDのままで開けない人がいるかもしれないので、PDFにしておきますね

「メディアは現実を構成する」について調べてみた

どうでもいいつまらない話なんですが、時間とお金をつかったので記録だけしておきます。

(マス)メディアとジェンダーというテーマは、ジェンダー論やらフェミニズムやらの中心的なテーマの一つなわけですが、「実証的な調査はどういうものがあるのか」ってんで、私自身「そういや標準的にはどういうふうに信じられたり教えられたりしてるんだろうな」みたいな疑問をもってしまいました。

まあふつうはメディアに出てくる女性像やら男性像やらが、現実の女性やら男性やらの服装やらふるまいやらに影響を与えているので、メディアは注意深く見ないとなりません、みたいになっていて、実際私も今年度の前期のゼミでメディアリテラシーのまねごとしながら考えてたんですわ。ところが、標準的なジェンダー論とかのテキストなんかだと、その問題は指摘されてるけど、さほど実証的な裏付けには言及されないんですよね。

いろいろ見たんだけど、いちばんはっきりわかりやすかったのは、加藤秀一先生たちの『図解雑学ジェンダー』。これは優秀入門書、というか入門の入門。まあ「図解」を1ページまるごと引用させてもらえば、こんな感じ。まあ典型的な「ジェンダー論」って感じですよね。

ここの左のページには加藤先生自身が簡単な文章を書いているんですが、参照文献が諸橋泰樹先生の『ジェンダーの語られ方、メディアのつくられ方』だったのです。
実は10年ぐらい前にこの先生の本を読んでちょっといやなのを発見したりしているので、図書館で調べてみました。(昔私がリクエストして入れてもらった本だと思う。)

と、この『語られ方』の本は2002年出版ということもあって、相当古い情報にもとづいたものでした。

「能力、性別、らしさ、様ざまな特性はは生まれもったものではない、社会的・文化的に構築される」p.19

「男は人の話を聞かなくてよい」p.19

「女性/男性」という性別二分法自体が、もう人間の観念的な枠組み」p.20

「オオカミに育てられた子どもはずっとオオカミのまま……第二次性徴をはじめとするセクシュアリティも開花しない」「ことばがないとセクシュアリティが顕現せず」p.20

「虹の色はリベリアのバサ語では二色」、「ニューギニア高地人のチャンブリ族という部族」では「男性の性格は嫉妬深く、猜疑心が強く、噂話が大好きでショッピングが大好き、……お祭が大好きで、そのときはオスコンテストをする」p.23

生物学的な性別といわゆる性別役割分業の間に、直接の関係はありませんp.24

とか、まあここでは議論できませんが、古すぎますね。肝心のメディアが我々のジェンダーにどういう影響を与えるか、という実証的な議論は特に見つかりませんでした(どっかにあるかもしれないけど)。

もう1冊、『メディアリテラシーとジェンダー』という本もあったのでそっちも見たのですよ。こっちも実証的な議論は特になかったのですが、次のような記述はありました。

次の概念が、メディアリテラシーの内容を説明します。すなわち、(1)メディアは全て構成されたものである、(2) メディアは「現実」を構成する、(3)オーディエンスがメディアを解釈し、意味をつくり出す、(4) メディアは商売と密接な関係にある、(5)メディアはイデオロギーや価値観を伝えている、(6) メディアは社会的・政治的な意味をもつ、(7)メディアは独自の様式、芸術性、約束ごとをもつ、(8)クリティカルにメディアを読むことは、創造性を高め、多様な形態でコミュニケーションを作り出すことにつながる。(pp. 21-22)

「メディアは「現実」を構成する」とか、いかにも社会構成主義とかそういう難しい立場のけっこう極端な立場のような気がするので、なにかしっかりした根拠があるのかと思ったのです。んで、参考文献としてあげられているカダナ・オンタリオ州教育省編『メディア・リテラシー』っていう本を入手してみたのです。

この本はメディアリテラシーの教育実践の本としては非常に優れてるのですが、上のような主張はリテラシー教育の上での作業上の仮説のようなもので、それの正当化とかなにもしてませんわ。まあ予想はしてたんですが。

まあこんなもん。まあこれくらいの意味なら「メディアは現実を構成する」って言われてもまあそうですね、ぐらいですね。こういうの参考文献にあげられても困ってしまう。まあ剽窃ではない、ということなんだろうと思うけど、この本入手できない人がみたら、「メディアは社会を構成する」ということになんか難しい根拠づけかなんかがされていると思いこむかもしれませんね。それに諸橋先生はなんで「「現実」」ってわざわざカッコに入れたんですかね。まあどうでもいいです。

他にも諸橋先生の本は「女性週刊誌は女性を思考停止させる」(大意)みたいな書き方で、なんか女性をバカにしている感じがして印象が悪かったです。

まあこういうのはどうでもいいんですが、入門レベルとはいえ、これくらいのちゃんの根拠づけとかできないままにメディアとジェンダーの関係とかそんな簡単には議論できないなあ、みたいな印象はもちました。もちろんメディアが我々の生活に大きな影響を与えているのはそうだと思うので、実際にどのように影響を与えているのか知りたいですね。そしてそういう研究はちゃんとあると思う。

↑にいちゃもんつけたけど、基本的に良書なので買ってあげてください。

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サロメさんを鑑賞して教養をつけよう

職場では「教養科目」とかそういうのを担当させられていて、まあ私そういうのしかできないのでわりと楽しくやっているわけです。教養ある学生様を育てるのが目的だと思うので(想像)、音楽とかも教養だから聞いてもらったりしています。まあ大人数講義で1時間半しゃべりっぱなしっていうのも無理なので、途中で5〜10分ぐらい講義内容と関係のある音楽とか聞いてもらったりする方がいろいろ考えたりするきっかけにもなるかもしれんし。

ポップ音楽聞いてもらう方が好きなのですが、最初の方は旧来の教養らしくオペラ見聞きする方が多いっすね。

これまではフィガロの結婚のケルビーノのアリアとか(「自分がわからない」と「恋とはいったいなんでしょう」)『ドンジョヴァンニ』から「カタログの歌」「シャンパンの歌」「お手をどうぞ」みたいな感じ。ここらへんは前にも書きました。

この授業では最初に恋愛類型についての「色彩理論」みたいなの紹介して、エロスはプラトン、ストルゲとプラグマはアリストテレス、ルダスはオウィディウス、とかそういう感じで対応させていて、マニアの例がほしい。プラトンでの恋愛もマニアっぽいところがあるけど、もっと激しいヤンデレがほしいですよね。ちょうど旧約聖書あたりを解説する回だったので、やはり『サロメ』さんですね。(『サムソンとデリラ』とかもありかもしれんけど)

見てもらうのは、例年20:00〜ぐらいからのサロメさんがヨカナーンさんに興味をもち、口説きまくるとこですね。あんまり時間とりたくないけど、この回だけは20分近く見てもらうことになる。やはりオペラは字幕ないとだめで、オペラ対訳プロジェクト先生という方がすばらしい字幕(オンリー)動画をつくってらっしゃいます。ぜひ見てほしい。これは演奏がビルギットニルソン先生/ショルティ先生だし完璧。森鴎外先生の翻訳を使ってるところも憎い、憎いよ、プロジェクト先生

でもただ見てもらうだけでは手抜きっぽいので、一応解説もしないとならんわけです。私が指摘しているポイントをいくつか。

律法との関係

ここで口説かれているヨカナーンさんは、のちにキリストと呼ばれるイエスさんに洗礼をほどこしたと言われている人で、まあ実はイエスのお師匠さんですよね。この先生はサロメさんのママのヘロデヤさんと、その夫ヘロデ王さんを非常に強く非難しているわけですが、この事情も理解する必要がある。

ここの話はいりくんでいてよくわからんのですが、ヘロデヤさんは最初に結婚していた兄ヘロデさんと離婚して、弟ヘロデさんと再婚するわけです。兄ヘロデがどうなったのかはわからない、っていうか暗殺されたりしてるんちゃうか。まあ離婚するまえに弟ヘロデとエッチなことしてるでしょうね。

んで、これはユダヤの律法ではやばいわけです。よく知らんけど、レビ記の18章っていうのはいろんなセックスの決まりが書いてあるんですが、「あなたがたは、だれも、その肉親の者に近づいて、これを犯してはならない。わたしは主である。」と近親相姦を禁止して、「あなたの兄弟の妻を犯してはならない。それはあなたの兄弟をはずかしめることだからである」とかいってるわけです。ヘロデアさんは兄の嫁なので、もしヘロデアさんがセックスしていい、むしろぜひやりたいっていっても、弟ヘロデさんがそれとセックスしていいのかどうか。なんか微妙だったかもしれない。っていうかかなりやばい。弟ヘロデもやばいし、ヘロデアさんもそれに同意していたらどうなの、って感じですね。

ちなみに、「あなたは女とその娘とを一緒に犯してはならない」っていってるので、ヘロデアさんとその連れ子のサロメさん(血縁的にも姪)の親子丼も禁止です。ヘロデ王の行動はユダヤ教の律法に反している可能性がある。

そういわけで、ヨカナーン先生はヘロデ王・ヘロデア妃たちを非難しているわけです。それで牢屋入れられちゃってる。でもヘロデ王はチキンだから殺せない、という話。でもチキンだったらサロメさんにも手を出そうとしなきゃいいのにね。

「雅歌」との関係

まず、このサロメさんが気がアレしたようにアレしている歌詞の内容がぜんぶ「〜のようだ」のかたちになってるのがいいですね。私はこれは旧約聖書の「雅歌」と関係あるんだと思う。まえに、架神恭介先生の『バカダークファンタジーとしての聖書入門』を紹介したんですが、あれの世界。

わたしはお前の体に惚れた。ヨカナーンや。
お前の体は、鎌の障った事のない、
野の百合のように白い。
ユダヤの山の上に降って、渓間に落ちて来る雪のように白い。
アラビアの妃の庭に咲く薔薇もお前の体ほど白くはあるまい。
アラビアの妃の庭、妃の香料を作る庭の薔薇でも、
草葉の上に降りて来る黄昏の素足でも、
海の上の月の乳房でも、
世の中にありとあらゆるものにお前の体ほど白いものはあるまい。
どうぞ、その其方の体に障らせておくれ。

「雅歌」もこういう感じで、比喩で相手を褒めるんですよね。次のは若者(男性)から女性に対するものだけど、

4:1 ああ、わが愛する者。あなたはなんと美しいことよ。なんと美しいことよ。あなたの目は、顔おおいのうしろで鳩のようだ。あなたの髪は、ギルアデの山から降りて来るやぎの群れのよう、4:2 あなたの歯は、洗い場から上って来て毛を刈られる雌羊の群れのようだ。それはみな、ふたごを産み、ふたごを産まないものは一頭もいない。4:3 あなたのくちびるは紅の糸。あなたの口は愛らしい。あなたの頬は、顔おおいのうしろにあって、ざくろの片割れのようだ。4:4 あなたの首は、兵器庫のために建てられたダビデのやぐらのようだ。その上には千の盾が掛けられていて、みな勇士の丸い小盾だ。

あなたは/お前は〜のようだ、〜のようだ、〜のようだ。美しい、すきすきすきー!ってのがもうなんというかエロで頭ぽーっとなってる若人って感じですばらしい。

ちなみにサロメさんが「体にさわらせておくれ」ってセックスの同意を求めているのはとてもいいですね。王女なんだし勝手に触ってもよさそうなものですが、やはりセックスにおいては同意がたいへん重要なわけです。正しい正しい。

サロメさんの易変性

このシーンがおもしろいのは、サロメ先生の感情がころころ変わるところですよね。

世の中にありとあらゆるものにお前の体ほど白いものはあるまい。どうぞ、その其方の体に障らせておくれ。

これに対して正義の人ヨカナーン。

下がれ。バビロンの娘。 この世界へ罪悪の来たのは、女子の為業だ。 俺に物を言ってくれるな。 お前の声は聞きたくない。 俺の聞く声は主の声、神の声ばかりだ。

んでサロメさん、いきなり態度が変わります

お前の体は気味が悪い。 らい病やみの体のような。 蛇の這う塗壁のような。 蠍の巣を食う塗壁のような。あらゆる穢い物を埋めた墓の上を塗潰した土のような。気味が悪い。お前の体は気味が悪い。

ディスられたからさっき素敵だった体がこう見えてしまうわです。さいこう。

ところが、ヨカナーンの髪を見るとまた態度が変わる。

わたしはお前の髪に惚れた。ヨカナーンや。 お前の髪は葡萄のような。 エドムの国の葡萄棚に下がっている黒い葡萄のような。

またひとしきりやるわけです。すばらしい。この感情や気分がジェットコースターのように上ったり下ったりするのは、境界性人格障害、いわゆるボダの徴!まさにこれこそメンヘラ魔性の女! ここは学生様の一部にも笑ってもらえますね。同じのを2回くりかえすのもいい。

それに、ヨカナーンがなんかいろいろ正しそうなことを言ってるのに、サロメさんの方は体だの髪だの唇だの、そういう肉体のことした歌わないっていうのものすごくいいですね。君は俺の体だけが目的なのだな! おれの人格や仕事ぶりは認める気がないのかっ![1]だいたい、おめー俺のことがどんだけわかってんだよ。俺はえれーんだぜ? … Continue reading

ヨカナーンさんをどう演出するか

ここのところのヨナカーンさんをどう演出するか、っていうのは演出家・監督の腕の見せ所ですよね。ヨカナーンさんは正義なので、サロメさんのような淫婦ワナビーみたいなのには目もくれない、っていう形にするのが正しいかもしれないけど、それじゃおもしろくない。それじゃドラマではない。人でありながら神でもあるイエスさんは最初っから最後まで正義でもいいですが、ヨカナーンさんはただの預言者(かもしれない人間)なので、もっと人間くさいほうがいい。

私の好きなドホナーニ先生指揮のコヴェントガーデンのやつでは、ヨカナーンさんは超能力もってるわけじゃないだろうけど神々しい威圧力があって、淫婦サロメさんは簡単には近づけない。かあら「さわらせて!」っておねがいしてるんですね。でもこのヨカナーンさんは、乙女サロメさんが脱ぎ捨てた服をクンカクンカしたりしてます! 31:00のあたりです。おまわりさん、この人です!

心が動いてる動いてる! 他の場面でも、迷いに迷って「神さま、この女から私を守ってください、誘惑に負けないようにしてください、エッチなことをしたいなんて思わないようにしてください、でも今すぐにではなく!」みたいなそういう悩みかたしていて、すばらしいっす。そら歌のうまい肉感的メンヘラ美少女に迫られたらねえ。この講演の演出は最高。

あわれなナラポート

32:00ぐらいから、サロメさんが最後のくどきに入るんですが、苦しみながら誘惑に打ち勝とうとするヨカナーンさんは「にーまるす!」(絶対だめです!)と強く断わるんですが、それでも迫ろうとするサロメさんを親衛隊長のナラポートさんが止めに入ります。この人最初っからサロメさんにほれてる設定で、でも身分の差があるからあこがれているだけ。こんなの見てらんない、姫、やめてください!見てられません! 私の命をかけてもこんなやつとはおつきあいさせることはできません! 私が死んでお止めします!

このあとのサロメさんのふるまいが最高。おまえなんかはなんでもないのだ! ていうかジャマだし、そもそもあんた誰だっけ? とかにさえならない。もうこれ以上の演出見たことないっすね。

とかで最高っすね。そのあと、ヨカナーンもナラポートになにも関心ないのもあわれ。このナラポートのまったく無駄な自己犠牲が「アガペー」なのかどうか……

ちなみにこの演出ではヨカナーンはサロメにあれしていて、サロメさんは今のままではだめだけど偉い人(イエス)さんとかのお説教聞いて正しい人になれば、無事結婚したりもできるかもしれないぐらいの希望は残ってるわです。

恋とは苦いものだと聞いたから

首ちょんぱしたあとの首にチューするのいいですね。それの最後、

ああ。ヨカナーンや。わたしはお前の口に接吻しましたよ。 お前の口に接吻しましたよ。
お前の唇は苦い味がするのね。 あれは血の味なの。 いや。ことによったら恋の味かも知れぬ。 恋は苦いものというから。
そんな事はどうでも好い。 ヨカナーンや。わたしはお前の口に接吻しましたよ。 お前の口に接吻しましたよ。

ここ最高ですね。この恋の味は苦い、っていうのは、古代ギリシアのサッポー先生からの伝統ですわ。サッポー先生、

手足の力をも抜きさるエロースが、またしてもこの身をゆさぶって、せめたてる、甘やかにしてまた苦い、あの御しがたい、地を這う獣めが

とかって歌を残してるんでよね。すばらしい。

サロメさんのダンスのところは有名だけど、私はそんな評価しない。でも昔書きました

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1だいたい、おめー俺のことがどんだけわかってんだよ。俺はえれーんだぜ? それなのにあのイエスとかいうガキが勝手に俺の教えパクって自分でグループ立ちあげてるし、ヤキ入れなきゃならんねーのに牢屋いれられちゃうし、どうしたらいいんだよってばよ。俺いますげーやばいの! ここでお前が体じゃなくて教えに感服したいしました、父母は誤っております、われわれは律法に即した形で結婚などしとうございます、ついでは時代の王としてお迎えしたくございますので父母と相談の上そのようにとりはらかいますって言ってくれりゃー考えようもあるだろうけど、それ俺からは言えねーじゃん? だいたいそこまでいかなくなって、こっそり牢屋に来てくれりゃいいのに衆人環視でどうすりゃいいっていうのよ。男には体裁だけじゃなくて見栄ってのもあんだよ! 夜牢屋に一人で来いや! ママだってそうしてたんだよ!

妊娠中絶は「10代女子の問題」ではありません

「10代女子が1日40人中絶する現実にも、アフターピルが広まらない理由」っていう記事がちょっと話題になってたんですが、この手の話が「十代女子の問題」であるとか、それが「男性優位社会」の問題だってっていうように誤解されちゃうかもしれないのでちょっとだけコメントしておきたいと思います。

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ジュディス・バトラー様と竹村和子先生のインクレディブルなダジャレと翻訳

数日まえに載せたヌスバウム先生のバトラー様批判(あれは私の翻訳ではないです、柳下先生)にはけっこう反応があったみたいなんですが、ブログとか書いてくれてる人もいたんですね。 https://kumabushi.com/?p=11750

書きたいのはこの方のブログの内容ではなく、そこで引用されているバトラー様の文章についてなんです。 続きを読む

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大学でフェミニズムを勉強したい人は

フェミニズムやらジェンダー論やら勉強したいひとのためのリストみたいなのがない、みたいな。いやそういうのはたくさんあると思うから私が書く必要はないと思うんだけど、ちょっと一般的な話にからめて紹介したいと思います。

そもそも関心がフェミニズムの特定の論者の特定の論点、たとえばキャサリン・マッキノンのポルノについてのどういう議論をしているか知りたい、ってな感じであれば、そういうのはすぐ出てくる。 続きを読む

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ジャズ入門(34): フリージャズはデタラメではない

過去の記事を見直していて、オーネットコールマン先生の話デイブブルーベック先生の話とか読み直し、別件で山下洋輔先生のこととか考えてたら、セシルテイラー先生の名盤を聞きたくなりました。

これほんとに名盤なんよね。CDで入手するのずいぶん苦労したんですが、いまじゃSpotifyで一発だもんねえ。

日本に来たときに日本のレコード会社が録音したものなので入手しにくかった。まあこういうの聞くのはヨーロッパか日本人。

セシルテイラー先生とブルーベック先生の話っていうのは、テイラー先生は白人ミュージシャンを嫌ってたみたいなんですわ。あいつらは俺ら黒人の音楽を奪ってる、みたいな。文化的盗用ってやつですね。お金はいってこないし。

しかしブルーベック先生に対してはなんか特別のなにかがあるらしく、コンサートのあとでブルーベックがやって来て、君の演奏はとてもよかった、君のコンセプトは〜〜だろう、みたいな話をして、白人にもわかったやつがいると思った、みたいなインタビューを読んだことがあるんですわ。まあブルーベック先生は現代音楽にも詳しいインテリだし、テイラー先生もそういうの勉強してたわけよね。

この演奏も「フリージャズ」って言われるけどものすごく構築的で、でたらめとかとはほど遠い構造を感じますよね。1曲目のテーマらしき部分からそういうの感じるっしょ。クラシック白人作曲家が12音だのセリーだのブーレーズだのシュトックハウゼンだのやってるのと同じことを、我々はそれ以上に美しく、かつ即興でできるのである、というそういうあれだと思う。すばらしく美しい。

このアルバムにはさらに別の思い出もあって、ジャズ喫茶でバイトしてたときによくかけてたんですが、ときどきふらっと来るインテリ風のおねえさん女性客がいて(おそらく近所の病院の看護婦さんとかそういう感じ)、その人がどういうわけかリクエストしたことがあったんじゃないかな。その3〜4年後ぐらいにふらっときたときがあって、そのときにかけたら「あら、なつかしいわ」みたいな反応があったりして。まあどうでもいい話。名盤だから聞いてください。

もう1枚、山下洋輔先生とパーカッションの富樫雅彦先生がやった『兆ライブ』っていうアルバムが好きで、これも苦労して入手したのに紛失してしまってるんですわ。いまamazonで4800円でさすがに買えない。Spotifyなんとかしてください。てか日本のレコード会社はやく対応しましょうよ。

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ジャズ入門(33): インタープレイって何やってんの?(2)

ソリストとバックの間でなにをやってるのか、っていうのはおもしろくて私も勉強したいのですが、ソリストどうしでもいろいろやってるわけです。一番有名なのはこれですね。開始時間指定してますが、最初から聞いてください。 続きを読む

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ジャズ入門(32) 1975年ごろジャズはなにをしていたか

70年代のジャズってなんか低調というか、フュージョンが出てくるまでペンペン草1本生えなかった印象がありますが、その直前にはどうなってたでしょうか。まあヨーロッパとかでは喜んで聞かれてたんですよね。私の75〜6年の印象はこんな感じ。 続きを読む

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ジャズ入門(31): インタープレイって何やってんの?(1)

この「ジャズ入門」シリーズ読みなおしてみて、けっこうおもしろいので継続してみたい。あれ以上はネタ本がないと書けないわけですが、ポール・ベルリナー先生のThinking in Jazz: The Infinite Art of Improvisationっていう本がものすごくすばらしいので、それを紹介していけばいいのかな、みたいなことを考えています。これはすごい。英語読めるひとはそっち読みなさい。 続きを読む

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ヌスバウム先生のバトラー先生批判、全訳

柳下先生から昔彼がやっていたヌスバウムの「パロディの教授」の訳をもらったので、ここにあげておきます。著作権関係はクリアしていません。これをここにあげた点の責任は江口にあります。昔私もちょっとだけやったのですが、ちゃんとやってもらってよかった。作業の関係で強調とか落ちてるかもしれないので、あとで直します。 続きを読む

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iPhoneに入れてるラテン曲&ブラジル曲

iPhoneにはいってるラテンの曲のプレイリストも作ってみますた。もうすこし増えるけど、Spotifyにない曲も多くて作りにくい。

ラテンポップといえばサルサかレゲトンですが、聞いてほしいのは、メレンゲバンドのLa Makinaですね。ベースがエレキの5弦ベースでズッズッズッズッズッギョーズッズッってやるのもがものすごしびれる。これは、低音がちゃんとでるよい再生装置かヘッドホンで聞いてほしい。

ついでにブラジルものも。

これはSeu Jorge先生のJaponesa聞いてほしいですね。ヤキソバ! テカマキ!

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フィガロの結婚からケルビーノのアリア二つ

大人数の教養科目みたいなので1時間半の授業は長いので、途中で5分ぐらい休憩して音楽とか流すことがあるのですが、今日はフィガロの結婚のケルビーノ君で。この人は思春期にはいったところの美少年お小姓って設定ですね。年齢は知らないけど14才ぐらい?15才?まあイケメンだからなにしても許されるわけです。
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「恋するフォーチュンクッキー」は本物のマスターピース

SNSでAIアイドルみたいなのにフェミニストの人が文句をつけたのが問題になってるようですが、なんかあれですよね。我々はおそらく生物として生き延びるために我々はどうしてもネガティブなものに目が行きやすいんだけど(そうじゃないと危険な目にあって死んでる)、我々のような豊かな時代に生きてる人間は、もっとポジティブに豊かに生きられるはずだという感じがします。 続きを読む

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ハイト先生による強みの伸ばし方リスト

Jonathan Haidt (2002) “It’s more fun to work on strengths than weaknesses (but it may not be better for you)” (リンクはこれだけどWORDのファイルなので注意)という未刊行論文(研究発表?)の付録として掲載されている「強み」のエクササイズ(修練)のリスト。ピーターソン先生とかが参考にしたやつ。「弱み」の克服にもよいらしい。こういうのは、こうしなければならないってんではなく、自分で考えるのが楽しい。そっからはじめるための単なるトリガー。でもリスト眺めてみるとおもしろそうなのもあるわね。 続きを読む

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セックス哲学史読書案内:プラトン先生のエロス

プラトン先生の『饗宴』は絶対に一回は読まないとならない。いろんな訳があるので、まあ好きなので読めばいいと思う。文庫本でいいでしょ。光文社の中澤先生のは注とかも豊富だし、いまのファーストチョイスだと思う。京大出版会の朴先生のも注釈が便利。一般に翻訳は最初は新しいのを手に入れておけばよい。国内では「なんでもとにかく岩波文庫」って雰囲気があるけど、古いのも多いしねえ。





偉い先生は多いけど、現在のプラトンの権威は納富先生なんだと思う。これは手に入りにくいけど、Kindleあるんだったかな。

でも、専門の先生たちの解説では、なんかプラトン先生の下品なところ、エッチなところ、ごくごく身体的なところ、実感に即して身も蓋もないところが削られちゃって、すごく理想的な感じになってて私あんまり納得してないんすわ。専門の先生ももっと下品なことを書いてほしい。でもギリシア語も読めない人間があれしてもしょうがないので権威にしたがってください。

納富先生のも、美知太郎先生のも、なんか私が読んでるプラトン先生の生々しい感じとはずいぶん距離がある。私が下品なだけか。

パイドロスも文庫でいいと思う。こっちは『饗宴』よりさらに読みにくいねえ。

あ、以前の読書案内では紹介したんだけど、セックス哲学史を勉強するときは全体としてブラックバーン先生のを読んでおくべきだとおもう。

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セックス哲学史読書案内:古代ギリシアの奥深い純情

女子大の講義でセックス哲学史みたいなのやってるんですが、回ごとの学生様向け読書案内をなるべく掲載してみたい。実は前にも書いてるんだけど、時代別に分けてみましょう。


古代ギリシアの生活など

古い文物は文字だけではイメージがつかめないので、ぜひヴィジュアル本を読みたい。人の名前おぼえるにはとにかく顔を見るのがよい。とにかく歴史については、ヴィジュアルから攻める。もちろん映画とか見るのもよい。

他にも「ふくろうの本」「とんぼの本」シリーズなどのヴィジュアル本は見てておもしろいので、ヒマがあれば図書館でめくってみてもらいたいものです。文字だけの本とはぜんぜんおもしろさが違う。

ギリシア神話

いろんな本で紹介されている。「本当の」「正しい」ギリシア神話、というものがあるわけではなく、後代の人々が勝手にいろんな話を付け加えている形で広まっているので、適当に読めばよい。たとえばこういうのでいいだろう。

あらかた知ってる人は、シシン先生の本を読むと「そうなのかー」ってのがあるはず。

まあこういうの眺めるのがいいんすよ。神話勉強しつつ美術も勉強し、さらにエッチな好奇心もそこそこ満足させられる。

ホメロス作品

岩波文庫ので読めばいいと思うけど、若干読みにくいし長い。

むしろこういう少年少女向けに翻案されたもので楽しみながら概略を知ればよいと思う。

サッポー

サッフォーの恋愛詩は岩波文庫の呉茂一訳『ギリシア・ローマ抒情詩選』にはいってます。

沓掛良彦先生の解説がすばらしい。この先生はほんとうにすばらしい学者なので、文学に興味のある人は片っ端から読みたい。

サッポー先生の女子コーラス学校(宝塚みたいなものか)を舞台にしたマンガおもしろい。

パイデラスティア(古代ギリシアの少年愛)

この本が定番。

上の『エーリンナ』でもちょっとだけ描かれてる。

難しい話をする人たちの間では、ハルプリンの『同性愛の百年間』というのがよくひきあいに出されるけど、江口はおすすめしない。それよりまず↓みたいなの読むべきだと思う。フラスリエール先生のは1960、レスキ先生のは1976で古いんだけど、それでも読むべき。

これは名著だった。ギリシア神話から叙事詩、抒情詩、悲劇・喜劇といろいろな形式でのエロスや「アプロディテの営み」を考察してくれる。

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わたせせいぞう先生の人間球体論

プラトン先生の『饗宴』でのアリストパネス先生の酒席の馬鹿話は、マンガ家のわたせせいぞう先生によってロマンチックなお話に書き換えられているのは記憶していたのですが、『ハートカクテル』や『菜』といった名作のどこにあるのかわからず2〜3週間ネットで情報を探していました。そしてついに今日それを発見してKindleでそれが掲載されているやつを買うことができたのです!さすがに古本で1冊ずつ集めるのも手間だし、まとまってると高いし、Kindleで順番に読んでくってのもお金がかかっちゃう。そんなお金はありません。「半球体のセーター」という話があるということを http://www003.upp.so-net.ne.jp/ki-ki/watase/index.htm このページの方に教えてもらい、その話自体は見つからなかったのですが『ハートカクテルSweet』に「うねりを待つ半球体」載ってるはずだということを確認し、ゲット。いやー、たいへんでした。
わたせせいぞう『ハートカクテルSweet』より
いやー、バブルな感じがかっこいいですね。先生はこの話がお気にいりで、何回も使ってるはず。もちろん「プラトン先生の原典に即してない」とか文句つける気はないです。

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私的SNSリテラシー(ver. 0.1)

Dropbox Paperでだらだら書いてたものだけど、おわらないからもうこっちに載せちゃう。最近山口真一先生の『炎上とクチコミの経済学』っていうグッドな本を読んで、また別に書きたいこともでてくるかもしれないし。とりあえずこんな駄文読んでるより山口先生読みましょう。 続きを読む

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