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けやき坂46の「誰よりも高く跳べ!」は放送禁止にしてはどうか

欅坂の「誰よりも高く跳べ!」はまさに大名曲なのですが、それゆえにまったく恐ろしい曲です。

前に書いた聴取ポイントリストとともに聞きましょう。私、30回ぐらい聞きましたが恐ろしい名曲ですね。

 

アーティスト名、曲名、ジャンルはいいですね。ジャンルはJ-Pop、アイドル音楽。でもこの分類でいいのかどうか。
リズムパターンは基本は4つ打ちダンス。
楽器編成は非常に分厚くて豪華です。打ち込みドラム、シンセベース、左右2本(ガットとエレキ)、キーボード、ホーンセクション系、ストリングセクション系、それから最初からぴょーんってやってるシンセと、うしろの方で出てくるもっとエッジの効いたエレピ、コーラス(欅坂と男声と女声)
テンポは130BPMぐらい、ダンスとしてはちょっと速い、いかにも高揚している感じ、踊ってると頬が紅潮しますね。

アーティスト情報は自明だから今回はいいでしょう。

歌詞まず基本だけおさえます。語り手の性別は不明だけど基本は少年、中学2年生〜高校2年ぐらい。主人公は語り手本人、語りかけられているのはよくわからないけどおそらく同世代の他人、あるいは自分自身。

これだけおさえて歌詞と音楽いっしょに行きましょう。

イントロ。ガガって感じでガットギターからはじまってるのかっこいいですね。先走ってかきむしってます。すぐにシンセがぴょーってやってすぐにうようよ、さらにドラムとホーンが入る。ベースも下の方でうようよ。この高揚感はただごとではない。

コード進行は | C | B7 | Em | G |で、キーは基本的にはEmというマイナーキー。これはB7が一応軽く決定しています。でもGってメジャーだって聞く方法もある。まあEmなのかGなのか、ていう曖昧さがある。しかしものすごい肯定的な感じですね。

| C | B7 | 誰よりも高く跳べ!
| Em | G | 助走をつけて大地を蹴れ!
| C | B7 | Em | G | すべてを 断ち切り あの柵を越えろ!
| C | B7 | Em | A | 自由の翼を すぐに手に入れるんだ
|C | 気持ちからTake off
| Am | One Two ThreeでTake off
| Em |ここじゃない ここじゃない
| Em | G | Em | ここじゃない どこかへ…

いきなりサビ。このサビすばらしい。「すべ」「てを」「たち」「きり」って感じが、はあはあ息が切れてる感じ。あの柵をなんとしてもこえるのだ。でも柵ってなんだろう。

「自由の翼をすぐに手に入れるんだ」の最後のところのAのコードがものすごく強くて利いていて、何回きいてもぐっときます。ここじゃないからテイクオフするんです。最後はGかEmかと争って、結局Emでおわって、音楽的に全体がEmであることが確定する。でもあんな派手なのにこのサビの終わりへんだよね。誰だって違和感があるはず。落ち着きが悪い。

Em | Am | B7 | Em / C B7 | 自分で勝手に 限界を決めていたよ
Em | Am | B7 | Em / C B7 | 世界とは 常識の内側にあるって…
Em | Am | B7 | Em / C B7 | 無理してみても 何もいいことない
Em | Am | B7 | Em / C B7 | 大人たちに 教えられてきたのは妥協さ

メロディーラインは普通、歌詞内容もふつうの欅系。1小節に1コード、4小節目だけC / B7 が入って強く推進する。なにもいいことがないようです。

Am / D | Bm / Em | Am / D | Bm / Em | 空の涯に向かい 風は吹き続ける
Am / D | Bm / Em / C#dim | Am B7 |見上げてるだけでいいのかい?もったいない

ここいいですよね。1小節に2コードはいって忙しい。高揚が激しい。歌詞として注目するべきは、風が空に向かって吹いていることです。

クエスチョン:あなたは風が空に向かって吹いていると感じたことがありますか?それはどこですか?

丘の上とかビルの上とかですか。そういう高い場所はたしかに風が上に向かって吹いている感じがする。そういうところで空に飛べる風が吹いているのを見送るのはもったない。

さあ前に遠く跳べ!
力の限り脚を上げろ!
追いつけないくらい 大きなジャンプで!
希望の翼は 太陽が照らしてる
信じろよYou can do!
行けるはずYou can do!
もう少し…

サビすばらしい。丘の上か、ビルの上で、自分に「さあ前に遠く跳べ!」って歌ってます。見る前に跳べ!ジャーンプ。ジャイアントステップ!誰かが追っかけてくるかもしれないけど、大きく跳べ!

君の/僕の 翼を太陽が照らすだろうってのはいいですね。あれ、でもそうすると、なんか翼をつけてる蝋が溶けちゃうかも、って話を聞いたことないですか?私の記憶だとずいぶんむかしにそうやって空を飛んだひとがいてイカロスとかそういう名前だったか……できる、行ける、もう少しいけばいける……

短い間奏がはいって、ドラムがドタドタやってなんかリプレイな感じ。失敗してやりなおしてる感じ。もう一度だ。

立ちはだかる 困難や障害は
これからもきっと 避けることは出来ない
背を向けるより 正面突破しよう!
どんな夢も予想つかない
明日にあるんだ

なにやったって辛いことは避けられません。正面突破だ。でもどっちに?あ、目の前の金網を飛び越えることで正面突破するんすね。

錆びたルールなんか 重い鎖だろう
飼い慣らされてて いいのかい? 頷くな!

ここのところの息の切れてるもいい。錆びたルールってなんだろう?絶対破ってはいけないルールよね。

さあ前に遠く跳べ!
力の限り脚を上げろ!
追いつけないくらい 大きなジャンプで!
希望の翼は 太陽が照らしてる
信じろよYou can do!
行けるはずYou can do!
もう少し…

このコーラス、うっすら男声も入ってて分厚くていいんですよね。それにシンセとかびょろびょろいっててすごい。「僕/君はできる、できるはずだ」しかしもう1回リプレイ。もう少しなのだ。

| Am | D | G | G |金網の外 眺めてるだけじゃ
| C#dim | C | 何にも変わらない
| Am / Bm | Eb / B7 |どこ向いても立ち入り禁止だらけさ

ここいったん落ち着いてる。よく考えるのだ。コード進行はおもしろくて、調性がわかならくなる。ぐだぐだ考えてる感じね。特にC#dimとか。Ebで混乱は最高だけど、最後はB7(ドミナント)でやっぱりEmへ向かうことに決めた。B7はEmへ解決/5度落ちる強い力をもっているのです。調性というのは重力である。コードも分厚くて魅惑的。

そこには金網がある。丘の牧場だろうか?丘の上の牧場の牛が自由をもとめて金網を飛び越えるのだろうか?ちがう。ではもう一つの候補ですね。どっちみち世界は金網があるんだから、どの金網を越えても同じさ、ってことか。でも「その」金網を飛んで跳んで大丈夫ですか。

そしてついに、

レジスターンス!

わあ。やめろー。

守られた未来なんて 生きられない

レジスタンス=生きられない。生きなれないのがレジスタンスなの?そして効果音入って飛んでる!なんに対するレジスタンスなの?親?学校?世界全部?それってレジスタンスなの?

この「れじすたーんす!」のあとのエレピがすばらしい。天国的。ヒイズミマサユ機先生とかも弾きそうなフレーズですが、私が知る限りはウェザーリポートのジョー・ザヴィヌル先生が開発したタイプのフレーズですね。天国へ飛んでる感じがする。

そのあとのコーラスは、もう自分なのか天使たちなのかわからんです。天使っぽい。

誰よりも高く跳べ!
助走をつけて大地を蹴れ!
すべてを断ち切り あの柵を超えろ!
自由の翼をすぐに手に入れるんだ
気持ちからTake off!
One Two ThreeでTake off!
ここじゃない ここじゃない
ここじゃない どこかへ…

「誰よりも高く跳べ!」これはすばらしい。そう、我々は高く跳びたい。そのためには「助走をつけて大地を蹴れ!」そうだ。「すべてを断ち切り あの柵を超えろ」でもこれはやばい。いろんなしがらみたいへんだけど、なにも断ち切る必要ないじゃん。「自由の翼をすぐに手に入れるんだ」この「すぐに」がキモだ。自由とかそんな大事なものが、そんなすぐに手に入れられるはずがないではないか。なに言ってるんだお前は。

「気持ちからTake off!」これは解釈難しいけど、「つらい気持ちから」なのか、もっとひどい「こわい気持ちからテイクオフ」か。「One Two ThreeでTake off!」「1,2,3で跳ぶ?」やめろ。「ここじゃない ここじゃない ここじゃない どこかへ…」そう、ここじゃないところへ行くってのはロックの基本だけど、そういう形で金網を超えるのはいかんよ。

ラストまで聞いてください。ここまで読めば、最後がフェードアウトしないで、タリララタリララというストリングスと下降形で最後ドシンと終わってる理由も明白だろうと思う。邪悪。

これは天使たちじゃなくて、悪鬼とその手下の美しく邪悪なセイレーンたちの歌です。芸術的には最高だけど、道徳的には非常によくない。

私も最初はこの曲、「そうだよな、おれたち足を高くあげて、歩幅を大きく取って生きてかなきゃならない、そう生きるのだ」って聞いたんですよ。最初っから最後まで感動させられる。特にサビの「*き*ぼうの翼」のあたりの感じってもう最高じゃないですか。でも全体はそういう歌詞じゃないんすわ。もちろん、もっと穏健に解釈することもできるけど、実はそうじゃない読みを可能にした作りになっている。

穏健な読みをすれば、そう、我々は時々ジャンプすればいいのです。ちょっと意識して歩幅を大きくして歩いてみたり(我々のジャイアントステップだ!)恥ずかしいから誰も見てないことを確認してから、公園とかで「ジャーンプ!」ってやってみればいい。そういうちょっとした活動から、人生は耐えられるものになたり、あるいはすごく豊かなものになる。部屋でジャンプもしましょう。ちょっと跳んで見るだけで全然ちがう。朝に1回思いっきりジャンプしてみれば、その日1日けっこう機嫌よく暮らせるかもしれない。

だからそう読んでそういう曲だと楽しみましょう。ファンはみんなおそらくそう聞いてると思う。

でも全体はそうではない。そして作詞作曲編曲の先生たちは、そういうしかけを十分意図してこういう名曲名トラックを作っている。私は許せないですね。

ニコ生にライブ映像があるんですが、これとかもうほんとにギリシア神話のサイレーン、美貌と歌で男性を呼びよせて食い殺す妖怪を連想しますね。君ら、やめろ、ころされるぞ!

http://www.nicovideo.jp/watch/sm30990533

 

最後の個人ダンスもすばらしい。美人ぞろいだけどいつもは腕をだらんと下げてダウンな演出を強制されている欅女子が、笑顔で実は身体能力がものすごく高いことをみせつけながら、「その金網を跳べ、123で跳べ」って呼びかけてる。おそろしくてしょうがないです。ていうか、ライブでサイリウム振ってるファンの皆様は殺されそうなのがわかってるんでしょうか。わかってるんでしょうね。でもサイレンの歌と同じように、もう抵抗できない。放送禁止にしたらどうだろうか。そう、ゲージュツってのはこういうものなのです。19世紀的な「理念と形式の一致」という理想。あらゆる意味ですばらしい。すばらしすぎます。だからこそいろいろ考えるところがありますね。

ウォーターハスウスの有名作「オデュッセウスとセイレーンたち」。セイレーンは半分魚のやつと半分鳥のやつの2種類想像されてるんですが、今回は鳥のやつのほうが適切ですね。


ミスチルのYouthful Daysについて考えてください

一つ前のエントリで書いたミスチルのYouthful Daysの件、私聞いたことは歌詞意識したことがなかったんですが、なんかすごい違和感あったんです。

にわか雨が通り過ぎてった午後に
水溜まりは空を映し出している
二つの車輪で 僕らそれに飛び込んだ
羽のように広がって 水しぶきがあがって
君は笑う 悪戯に ニヤニヤと
僕も笑う 声を上げ ゲラゲラと

まあこれはいいですよね。いかにも青春。ただし水しぶきは他人様にかけてはいけませんよ。
youthful days、若い日々ってんだから高校生ぐらいすか。男子高校生と女子高校生のころの思い出を、おとなになってから歌っている、ってことでいいですか。シンガーは俺様。かなりトンガってます。

歪んだ景色に取り囲まれても
君を抱いたら 不安は姿を消すんだ

まあこれもいいです。「抱いたら」っていうのは女子はハグの意味にとるみたいですね。それでいいでしょうか。とにかく難しい高校生の時期にセックスしてました、ぐらいの意味ですかね。

※胸の鐘の音を鳴らしてよ
壊れるほどの抱擁とキスで
あらわに心をさらしてよ
ずっと二人でいられたらいい

んー、まあ「あらわに心をさらす」ってのがどういうことなのか。でもまあセクロスセクロス。これがそういう歌だってことぐらいはファンの間でもコンセンサスありそうですね。

「サボテンが赤い花を付けたよ」と言って
「急いでおいで」って僕に催促をする

キーワードのサボテン。もちろんあのトゲトゲついたサボテンでしょうけど、どういう形のサボテンを想像しますか?サボテンの花というのはあれは鮮やかで美しいものなのでいいですね。

何回も繰り返し 僕ら乾杯をしたんだ

「乾杯する」まあふつうはビールとかシャンパンとかそういうのだろうけど、文字通りにとっていいのかどうか。

だけど朝になって 花はしおれてしまって
君の指 花びらを撫でてたろう
僕は思う その仕草 セクシーだと

サボテンの花をなでたりするかなあ。

表通りには花もないくせに
トゲが多いから 油断していると刺さるや

ここ謎ですよね。どう解釈するでしょうか。

胸の鐘の音を鳴らしてよ
切ないほどの抱擁とキスで
乾いた心を濡らしてよ
ただ二人でいられたらいい

ここはあんまり問題ない。

生臭くて柔らかい温もりを抱きしめる時 (I got back youthful days)
くすぐったい様な乱暴に君の本能が応じてる時 (I got back youthful days)
苦しさにも似た感情に もう名前なんてなくていいんだよ (I got back youthful days)
日常が押し殺してきた 剥き出しの自分を感じる

これ異常ですよね。サボテンが生臭いとは思えないし、柔らかくもない。んじゃ生臭いのは抱きしめている相手(?)だ。生臭い女子高生とかいやですね。しかし生臭いのは女子高生なのか、あるいはその一部なのか……「サボテンに花が咲いた」っていうのは比喩だとしたらいったいなんなのか。チクチクするけど花びらついてて暖かくて生臭くて、ときどき赤い。

あとこの曲、時間の感覚がちょっと微妙で、高校生の頃を懐かしんでいるようでもあり、でも生臭いのを抱きしめているのは今のようでもあり、なんかわかりにくい。これも技法なのかしら。

繋いだ手を放さないでよ
腐敗のムードを かわして明日を奪うんだ

なにかが腐っている?え、これなんの歌なの?さっきのチクチクのトゲもほんとにサボテンのトゲなの?

(※繰り返し)
いつも二人でいられたらいい

わけわからんですね。私にはもうあるイメージがあるのいですが、これは相当ひどい歌だと思います。メッシーというかなんというか。まあ書くと怒られそうだし、各自解釈してみてください。

 

まあミスチル先生の歌詞はわざとわかりにくくしてるんですわ。でも手がかりは残していて、ニルヴァーナほどわけわからんようにはしてない。それがファンの人々が「深い!」とかっていう理由ですが、その内容が深いかどうか。音楽だけでかく歌詞表現もこったものなのもわかるのですが、私はわざとらしくてあんまり好きではないのです。そしてなにより、その歌詞が表現している理念、思想みたいなのが好きではないのです。ごめんねファンの皆様。

ちなみに、歌詞っていうのは、もっと適当というか、アーティストの霊感や直感で書いているはずだっていう意見はあると思うけど、そういうのにしてもなんらかの知的な作業は行われているのがふつうだと思います。ミスチルはそういうのが特にはっきりしている方で、昔いかにも知的な操作で作られた歌詞を分析してみたことがあるんだけど、あれなんていう曲だったか思い出せない。2ちゃんねるに書いたんだけど。

なぜそうなるかというと、適当につくった歌詞、なんの脈絡もない歌詞っていうのは歌う人間が覚えられないんですわ。あるストーリ、あるいは連想、そういうものがあってやっと歌詞をおぼえられる。たんなるゴロだけではおぼえられない。

それにもっと大事なこととして、作詞する場合、なにも背景の連想やアイディアがなければ言葉の選択肢が多すぎて(無限にあるわけだ)、構成できないんですわ。なぜそこにその言葉がはまるのかっていう少なくとも内的な整合性は必要なんよね。まあおうおうにして作家のその内的な整合性ってのが他人に理解できない形になってしまうけど、本人のなかではあるイメージみたいなのがあるはず。ニルヴァーナのSmells like teen spiritもそういうふうにしてできてるんだモスキート。おそらくカートコベイン先生のなかでは、あそこで歌われている個人的な体験とそこに蚊がいたことがみっちりつながってるのだろうと思う。ミスチル先生がこの曲を歌うときも、そのたびに、赤いサボテンの花びらをいじってる指が思い浮かんでるはずです。


ポップ音楽でリテラシー(3) 私の思う基本的ポップリテラシー

さっきの聴取ポイントのリストは気づいたら増やしてます。実際におしえるときにどこらへんがキモになるかって考えたり。

基本的な情報はいいわよね。テンポも速ければ元気でおそければ眠かったりだるかったりというのはすぐわかると思う。スマホアプリでBPMはかれるってのは教えたい、そのまえにBPMがなにかおしえないとならんから時計では買った方がいいか。

アーティストの年齢性別服装ライフスタイルステージングPVはいいわよね。それが聴取にどういう影響を与えているかってのを考えてもらうのはメディアリテラシーっぽい。

歌詞はこうやってばらばらにしてしまうと考えやすくなると思う。歌詞の語り手とシンガーは別だし、そのくいちがいがけっこうおもしろいというのははっきり示したい。語られている相手を想定したり想像したりするのは大事ね。

歌詞の進行とともに物語のなかの時間も経過している可能性があることも明示する必要がある。そうじゃないのも多いけど。そこで歌詞がタイプ分けできる。

多くの曲は「ストーリー」があるから、それを読み取れれば一応初級編は終了よね。そして語りの相手へのメッセージ、歌のリスナーへのメッセージを読み取りたい。

楽曲(サウンド)と同じように歌詞も真似られたり批判されたりするものだ、っていうのも指摘したい。たとえば、これまでこのブログで触れた曲だと、aiko先生の「初恋」は宇多田先生の「First Love」と「Automatic」へのアンサーソングでありオマージュだと思う。「私のときはこうだった」よね。ヒントをもらってるだけかもしれんけど。他にもいろんな初恋の歌があって、そういう積み重ねの上で作品が作られるのだ、っていうのはいいたいねえ。カンでつくってるのではない。またポップ音楽は態度を広めるものでもあって、ビートルズもパンクもそういうものよね。

修辞は国語の領域になっちゃうけどこれも大事よねえ。やりがいがあるだろう。

母音や子音の扱いっていうのもエピソードをまじえてなんか語りたい。たとえば井上陽水先生は「か行」が好きらしくて、それは彼自身の声がよく聞こえるかららしい。「か」は固い感じ、「さ」だったらさわやかだし、「な」「ま」はねっとりしているし。母音も「あ」はあかるいしや「お」おおらかだと思う。

「内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?」っていうのも大事で、その歌詞の一番のキモはそういうところにある。そこが理解できると全体の解釈が変わっちゃうような。たとえばミスチルの「Youthful Days」だったら「生臭くて柔らかい」「腐敗」。サボテンの花の話してるのに生臭いのは異常っしょ(あとで書くかも)。

メロディーや音楽やサウンドこそがポップ音楽を音楽たらしめてる部分なので、ここはいろいろやりたいわねえ。
コードと調性の話は楽器やらないひとには難しいと思うけど、他は聴取だけでなんとかならんだろうか。形式はぜひおしえたい。音楽は反復だ。「フック」っていうかその曲の魅力を作る箇所も教えたい。あとこっちも歴史大事よね。

楽器の録音技術とかボーカルの取り方とかも指摘すればわかるんちゃうやろか。

あとは、歌っていうのは必ずしもストレートなものではなく、いろんな表裏のメッセージがあるし、また購買者のこともいろいろ考えてるっていうのも指摘したい。けっこう皮肉やユーモアがわからなくて、まっすぐしか解釈できないひとは多いと思う。

「語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?」っていう問いも入れてみたけど、たとえばニルヴァーナとかリスナーにわかってほしいなんて思ってないような気がする。わかりにくいのがよいのだ、モスキート。

まあもっといろいろあるなあ。

 

 

このパロディの歌詞はこっち


ポップ音楽でリテラシー(2) : 仮にリストを作ってみた

昨日の記事につづいて、んじゃ楽曲をよく聞くってどういうことだろうか、って考えて、とりあえずチェックしてみる項目を列挙してみました。もっとあると思うけど、とりあえず思いつくものだけ。★つけたのは比較的高級な内容で、知識が必要になるので、学生様には説明が必要な場合があるだろう。

基本情報

  1. アーティスト名
  2. 曲名
  3. 楽器編成
  4. ジャンル
  5. リズム・パターン
  6. テンポ

アーティスト情報

  1. シンガー・バンドの年代性別
  2. シンガー・バンドの印象、服装、ライフスタイル
  3. 想定されている楽曲リスナー、購買層、そのライフスタイル

歌詞

  1. 語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等
  2. 語り手とは別に主人公がいる場合はそのアイデンティティ
  3. 語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等
  4. 歌っている場面はいつ
  5. どこで語られているか
  6. いつのことについて語られているか
  7. 語り手と聞き手はどういう関係?
  8. 語り手はどんな状況
  9. 聞き手はどんな状況?
  10. 1コーラス目と2個ラース目の関係はどうか?時間は経過しているか?語りの内容や語り手の態度に変化があるか?間奏のあとは前と同じか、それともなにか違っているか?
  11. どんなストーリーか
  12. 語り手から聞き手へのメッセージは?
  13. ★他のアーティストの作品で似ている内容を歌っているものはないか?同じ態度の楽曲はないか?歌詞の引用はないか?
  14. ★「修辞技法」をチェックせよ。
  15. ★比喩はどうつかわれているか、擬音は使われているか?
  16. ★対句、縁語、かけことば、枕詞、句切れ、本歌取り、引歌、倒置、体言止め、見立て、擬人法、命令、呼びかけ、折り句、もののな、押韻、反復など、和歌や俳句で使われる技法は使われてないか?
  17.  ★母音、子音の使い方に特徴はないか?
  18.  ★内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?

メロディー、音楽、サウンド

  1. ★形式(AABB、AABBCCなど)
  2. ★コードやその進行は単純か複雑か
  3.  ボーカルの声質と唱法はホット?ウォーム?クール?
  4. 歌詞のないボーカル、掛け声等使ってるか
  5. コーラスの使用、性別等
  6. コールアンドレスポンスの使用
  7. ★「フック」、特徴的な音楽的工夫
  8. 前奏・イントロ
  9. ★オブリガート、フィルイン等
  10. 間奏
  11. エンディング
  12. ギター
  13. ドラム
  14. ★ベースライン
  15. ★その他アレンジの特徴
  16. メロディーの形。メロディーラインは上向き?下向き?
  17. メロディーラインの最高音はどこにある?それは歌詞とどうむすびついている?
  18. 全体のサウンドで感じられるエネルギーの頂点は?逆にエネルギーが弱いところは?それは歌詞と同関係がある?
  19. ★他の楽曲の引用はないか?影響を感じるアーティストや楽曲はないか?
  20. ★同じジャンルの10年前、20年前の楽曲との違いはなにか?
  21. ★録音サウンドに特徴はないか?

効果、メッセージ

  1. 語り手が感じていると思われる感情
  2.  ボーカルスタイル、サウンドと歌詞はマッチしているか?
  3. 歌詞の語りの聞き手に引き起こされると期待されている感情
  4. 楽曲のリスナーに引き起こされると期待されている感情
  5. 性的な含み
  6. ★ダブルミーニング
  7.  ★政治的・宗教的メッセージはあるか?
  8. 言葉遊び
  9.  皮肉、からかい、ユーモアは含まれるか?
  10.  調子は高い?低い?
  11.  シンガーと語り手の価値観を推測できるか?
  12.  語り手はなにを求めているか?
  13.  語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?
  14. 解決されない謎、邪推等
  15. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの直接のメッセージ
  16. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの間接的なメッセージ

 


実はこれはビートルズの初期曲を聞きながら、私はなにを聞いているかを考え見たんですわ。表にするとしたPDFのようになる。これ、私自信も確認しておどろいたんですが、Love me do → Please Please me → She loves you → I want to hold your handっていう最初期の4局はそれ自体が一連の流れの上にあるんですね。そう指摘されれば当然だと思うと思うんですが、でも私自身がそれはぼんやりとしか理解してなかった。表の威力はすごいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと面倒で音楽特有のおもしろさは、作詞・作曲・シンガーと語り手とその語り手の相手とリスナー、といろんな立場から楽曲をみないとならんところですね。特に(a)語られてるひとと(b)歌を聞いてるひとの区別はどういう表現使えばいいのかもうちょっと考えたい。

 


ポップ音楽でリテラシー(1) 本を読んで

学生様と話をしていて、好きな音楽の話なんかを聞きたいわけですが、うまく説明できる人は説明してくれる人はそれほど多くないですね。「よい」「好きです」ぐらいで、なにがどうよいのか、どこがどう好きかを説明できる人はあんまりいない。というか、歌詞や曲をよく聞いてないというわけでもないと思うんですが、分析的に聞いたり説明したりすることはなかなか難しいものです。

とかって考えて、そういうので卒論を書きたいという学生様もいたりするので(うちはそういう学部)、ポップ音楽の鑑賞法とか分析法についての本を探しているのですが、日本語ではなかなかないもんですね。英語ならあるかなってんで探しているうちに、Practical Media Literacyって本をKindleでめくってみる機会がありました。

 

 

これは中学や高校ぐらいのクラスルームで、各種のメディアをクリティカルに見る方法を考えながら教えようっていうクリシンの本ですわ。Musicの項目を見てみると、下のような感じ。ちょっといろいろおもしろいと思いました。

まずポップ音楽ってのが特定のリスナーをターゲットにした産業のプロダクションである、って説明するんね。たしかに楽曲の作成からマーケティングまで考え抜かれている業界ではある。単に楽曲だけじゃなくPVや売り方まで含めた商品なのだ。

んで次にジャンルの説明をする。ジャンルっていうのは特定のターゲット層に向けて、その期待にそうようにわけられてるんですよ、と。たとえばハードなギターロックだったら学校に退屈しているミドルクラスのティーネイジャーとか、ボーカルも典型的には白人男性である、と。ヒップホップだったら社会に困難な若者で典型的には黒人巨体ラッパーとDJとか、まあそういうことね。うんうん。ジャンルっていうのは、その顧客であるリスナーが「こういう音だよな、こういう感じを与えてくれるだろう」ってんで手にとるように、その期待に会うようにできてる。

あとちょっとだけサウンドについて触れて、とりあえず実践しましょう、ってな方向にすすむ。んでクラスルームでやるのは、1曲好きなヒット曲を聞いて、練習問題を考えましょう、みたいなの。

1. ジャンル(カテゴリー)を考える。
どの要素によってそのジャンルに分類したか。楽器、ボイスの感じ、曲の長さ、テンポ。人種、年齢、性が違うと別のジャンルになるか?選んだ曲の何が自分にアピールしたか。

2. 歌詞を考える
曲を聞き歌詞を読んでどういう感情になるか。ハッピーか、悲しいか、怒りか。歌詞とシンガーの歌い方はマッチしているか。音楽は歌詞や歌い方とフィットしているか(悲しい歌詞なのにアップテンポということもあることを指摘)。メッセージを聞いてどういう感じになるか。歌詞によって語られているストーリーに共感するか。リスナーにアピールするためにどう書かれているか。反対の意味になる歌詞を自分で書いてみよう。

3. 楽器法や曲の構成を考える
使われている楽器、全体の感じ。曲の構造をメモする。印象に残る「フック」があるか。繰り返しのセクションがどういう感じをもたらすか。頭にこびりつく感じがあるか。ダンスしたくなるか眠りたくなるか。ハッピーにするか悲しくするか。同じジャンルの20〜30年前の曲と比べるとどうか。プロダクションのスタイル、楽器用法、アレンジは変わっているか。なぜ、どのように変わっているか。

4. ターゲットのリスナーを考える
誰がターゲットか。アーティストのルックス、ファッション、態度は歌の感じに影響を与えているか。年齢、人種、性が違っていると違う感じになるだろうか。別の人はその曲を違ったふうに解釈するだろうか。メッセージはポジティブなものかネガティブなものか。

5. マーケティングを考える
架空のアルバムのカバーを考えてみる。ジャンルやターゲットリスナーのライフスタイルを考える。

とかそういう感じ。なるほど、おもしろいですね。われわれポップ音楽好きはこういうのは言われなくてもいろいろ考えるわけですが、中高生、あるいは学部生ぐらいだと、こうやって明示的に質問された方がわかりやすいし、意識的に聞くってことに自覚的になるでしょうね。リストや表の形にしておくんですね。いろんなのが作れそうだ。

んで、いろいろ考えたこととか発表したりディスカッションしたりするんでしょうね。これは中高向けかもしれないけど、いずれ私の1〜2回生ゼミの学生様にもやってみてもらおうかという気がします。もうちょっと突っ込んだ問いを設定したいけど、最初はうえみたいな感じかなあ。

上の本全体は、インターネット(Web/SNS)、テレビ、映画、ストリーミング、音楽、ニュースメディア、ヴィデオゲーム、ラジオとオーディオ関連、写真と主要メディアについての簡単な説明と練習問題があって、最後は広告なのね。なるほど、そいうことか、これぞクリシンだ!みたいな。

ちょっとおもしろい鉱脈がここらへんにありそうな気がしています。

 

 

 

 

 


キャリン・スタンバーグ先生の心理学的恋愛相談

Karin Sternberg先生のPsychology of Love 101ってのをざっと見てたんですが、最後の恋愛相談室みたいなのが面白かったのでメモ。翻訳ではなく要約というか、まあ勝手なアレ。質問も答もそれぞれよくある話だけど、それぞれ恋愛心理学の有名論文が参照されるのがよい。キャリン先生は、認知心理学と恋愛心理学で有名なロバート・スタンバーグ先生の奥様らしい。ロバート先生の物語理論にけっこう言及しているのが目につきました。このPsych 101シリーズってのよさそうですね。

Q1. ボーイフレンドが2回も浮気しました。彼は結婚したら浮気はやめる、その前に遊んどく必要があるのだと言うのですが、信頼できるでしょうか。

A1: 心理学の原則として、ある人物の未来の行動を予測する一番の目印は、過去の同種の行動です。彼が今浮気するのをやめられないなら将来もやめられないでしょう。

Q2: 僕と彼女はずいぶん情熱的な関係だったけど最近冷めてきたような気がします。

A2: スタンバーグのトライアングル理論によれば、恋愛の三つのなかで情熱は一番熱しやすく冷めやすいものです。

Q3: 彼と4年つきあっています。よい関係なのですが、結婚の話になると彼はだまってしまいます。

A3: 第一に、将来をコミットするのを嫌う人びとがいるので、期限を切ってコミットするのかどうかたずねて、ダメなら別のを探しましょう。第二に、スタンバーグの物語理論によれば相性の悪いストーリーをもってる人びとはうまくいかない傾向があります。自分と相手のストーリーがマッチするものなのかどうか、自問してみましょう。

Q4: あたらしくできた彼氏が、昔の彼女とうまくいかなくなった話ばかりしてやめません。大丈夫でしょうか?

A4: なにかに依存してた人がそれをやめると禁断症状が出るものです。他に注意すべき点として、第一に、いったん別れたカップルままたくっつくというのはよくあることです。第二に、真面目につきあってるカップルは何度か危機的な状況を迎えるものです。彼と彼女の関係もいまそうなのかもしれません。第三に、ある人が恋愛関係を終わらせようとする時に、他の相手と表面的な関係を結んだりすることもよくあることです。あなたとの関係もそうかもしれません。

Q5: 彼女がとても嫉妬深いのですが、どうすれば彼女を変えられるでしょうか。

A5: 第一に、他人を変えることはできません。マニアタイプの恋愛する女性なのでしょう。また、Shaver, Hazan & Bradshow (1998)の「アンビバレンス的愛着スタイル」をもつ人かもしれません。第二、そういうひとはコミットメントのレベルがあがるとなおさら嫉妬深くなる傾向があります。第三に、彼女のの嫉妬は彼女の問題なのでしょうか?あなたの方に問題はないですか?

Q6: 以前は私と彼氏の間でいろんな深い話をしていたのですが、最近はなにか表面的な話ばかりです。

A6: これもスタンバーグのトライアングルを使うと、親密さと関係があります。つきあいはじめはお互いのことを知りたいのでたくさんおしゃべりしますが、だいたいわかってくるとあきてきます。おもしろいのは、過去の関係の悪いことは話しやすいわけですが、現在のパートナーとのことは当人には話せないということです。また関係の最初ではそれが人生の一番重要なことですが、関係が安定してくると他のことを始めます。Vaughn (1990)が別れの分析をしていて、それはだいたい秘密をもつことからはじまるようです。

Q7. ガールフレンドが、僕自身を好きなのか、僕のイメージを好きなのかわかりません。

A7. スタンバーグの物語理論によれば、われわれは恋愛相手をフィルターを通してみてます。ゴフマンの『日常生活における自己提示』1956によれば、「本当の自己」なんてものはは存在しません。。Sternberg & Barnes 1985では、パートナーが感じているだろうとわれわれが思っていることと、パートナーが実際に感じていることの間には弱い関連しかないことが指摘されてます。


Air Playで学生様にプレゼンしてもらう

プレゼンやグループワークにはKP法(紙芝居プレゼンテーション)が素敵で効果的なのですが、写真などを使ったスライドの発表も魅力があるものです 1)1回生で「あなたの活動や好きなものを紹介してください」みたいな練習をしました。。でも、パワポやキーノートやPDFのファイルをやりとりするのが面倒なんですよね。「PDFでメールで送ってください」とかって言っても.pptで送ってきたり、「USBメモリでもってきてください」って指示しても「忘れてきましたー」とかってことになる。

使っていない古いApple TVが1台あるので 2)Amazon FireTV Stickに乗り換えたから、それを接続してAir Playで学生様の個人iPhoneからやってもらうとなんか「すげー」とか喜んでました。まあなんか先進技術な感じはありますわね。まあ子供だましな感じもあるけど、そういうIT技術とかに興味をもってもらうにはいいかもしれない。

別段ティップスはない。認証はパスワードではなく数字出すやつにして、あと「危険なのでLINEの通知バナーは切っておいてください、いきなりへんなメッセージ出ると危ない」ぐらいか。これ指示すると、「機内モード」にしてしまって接続きれちゃったりします。学生様は機内モード使い慣れてるんですね。

問題は当然Android端末の人は使えないことで、対策ないかとさがしてたらMiracastってのがあるらしく、最新のAmazon FireTV Stickならちょっとお金を出すとAndroidからもiPhoneからもいけるようですね。来年ぐらいに試してみたい(今年はもうやるつもりがない)。

自分の講義でも基本的にApple TVで接続しようかとは思ってます。

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1. 1回生で「あなたの活動や好きなものを紹介してください」みたいな練習をしました。
2. Amazon FireTV Stickに乗り換えたから

文献リストを持ち歩け

教員や他の学生様と卒論の相談をするのはとてもよいことです。どんどん相談してください。

ところで、論文というのは文献をちゃんと読んだり参照したりするのが基本なので、文献情報はとても重要です。レポートでちゃんと参照文献リスト書け、みたいなのを口をすっぱくして言ってるのはその準備作業ですわ。

んで、自分がいまままでどんな文献(本、論文)を読んだのかというのはとても重要な情報です。そのリストがなければ指導とかできない。「えと、その件についてはどの文献みたんだっけ」「わすれました」「なんとかっていうひとの論文みたいなの」「そのなんとかって誰よ、なにを言ってるのかわからんがね」みたいなまったく意味のない会話をしなきゃなならなくなる。

だから、卒論書いている人々には、いつも文献リストをもちあるいてほしいとお願いしております。いままで読んだ関連する書籍・論文のリスト、それに、あちこちで気づいたりした(これから読むべき)文献のリストの2個をいつも持ち歩きましょう。

まあ紙でもってあるく必要はまったくないので、EvernoteGoogle Keepのようなメモ帳サービスにどんどん追加していけばいい。大学来た時それみて図書館から本を借り出すとか、府立図書館の近くを通った時借り出すとか。

そういうメモを残して見直したり利用したりする習慣というのはとても重要で、だからこそ1回生のときからメモを取れメモを、とかずーっと言ってるわけです。4回生ぐらいになってもそういうのがわかってないようではやばい。会社入っても同じこと言われます。


PDFは専用アプリで読むのだ

講義やゼミの学生様たちに、教材として自分で作った各種のPDFや、場合によっては裁断してスキャンした書籍の一部抜粋などを、メールしたりオンラインの状態で渡すこともあるわけですが、それをiPhoneやiPadなどのスマホやタブレットで読もうとするときに、いちいちリンクをたどってスマホのブラウザで読んでたりすることに気づきました。オジさんびっくりしましたよ。

まあそれでも読めることもあるだろうけど、いちいちネット使って見ていて遅くて重くてイライラするっしょ。私そういうのに耐えられる神経がわからないです。もっとサクッと一発で読みたい。

PDFなどは端末にダウンロードして、専用のアプリで読むものです。

iBookとかの標準のアプリつかってもいいけど、Adobe Acrobat Readerなどの専用アプリがあるのです。こういうのは動作もブラウザで読むのに比べればずっと速いし便利。

ネットで「iPhone PDF」などで検索すればいろんなサイトが引っかかってくるからそういうの参考にして設定するべし。ファイルの転送はケーブルでPCとつないでもいいし、Dropboxなどを中継に使っても簡単。

私自身は、今のところ横書きのはGoodreader、縦書きのはi文庫HD(iPad専用)ってので読むことが多いです。他にもよさげなアプリはけっこうある。

あと、タブレットは便利なので1枚もっておきたい。iPhoneで十分ってのはないと思う。おすすめはiPadの10インチのやつ。大きくて見やすい、重さもがまんできる。

それにしても、道具に無頓着というのは大学教員として非常に気になります。学生様のみなさまにおかれましては、いちおう大学を出て知的な仕事をする職業につこうとしているわけで、WordやExcelの使い方などには習熟してなきゃならないし、スマホその他の機材やネットサービスの使い方を知っていれば、知らない人よりはるかに効率的に仕事ができる(はず)。いまやってる作業や課題や仕事をもっと楽にする方法はないのか、いつも考えてみてほしい。

少しでも楽に生産性をあげるために、ちょっとぐらい情報収拾し試行錯誤する時間やお金を投資してみてもいいのではないかと思います。


℃-ute「Danceでバコーン!」も名曲

学生様から「Danceでバコーン」を教えてもらってのですが、これなかなかの名曲、っていうかダンスまで含めてすばらしいプロダクションですね。

最初聞いたときは、E7一発な感じからいきなり歌謡曲になるのでとまどったのですが、歌詞の内容とかをふまえるとなるほどってな感じで、私が見聞きしたことを書いてみようと思います。

まず歌詞と構成はこんな感じね。

 コーラス1コーラス2 
(a)ファンキー男子
旅立つ時間だ
ファンキー姉ちゃん
ときめく時間だ
ファンキー幹事
宴も酣だ
ファンキー委員長
始業の号令だ
E7(#9)一発
メロディーラインはださい。
(b)諦めやしない
私の未来
誰のものでもない
もちろん玉の輿
そりゃ乗りたい
毎日が勝負パンツ
輝くしかない
うちらの時代
誰にも任せない
もちろん馬鹿じゃいかん
時代を読んで
レバレッジきかせてこう
E7(#9)一発
おなじくダサい。
(c)ジャッジャッジャージャッジャッジャーギタフリマネ
(d)AH- やだー
またちょっと太った
もうやだー
手柄取り上げないでー
AH- やだー
また上司怒ってる
もうやだー
人のせいにしないで
A | E | B | E |
A | E | F | E |
このF→Eで無理やり転調する。
(e)ダンスでバコーン
なんか全部忘れたい
ダンスでバコーン
涙がとまらないよ
ダンスでバコーン
今日は全部わすれるよ
ダンスでバコーン
慰めはいらないわ
こっからコードが月並みに激しく動く歌謡曲。
A | A | F#m | D/ E |
A | A | C# | C# |
キーはA。
(f)こんなにすごく切ないの
どうしてかわかんない
今までためたストレスと
今夜でおさらばさ
心がずいぶん軽くなる
お腹が減ってきたわ
帰りにうどんたべてくわ
明日が待ってるもん
ここがよい。アゲ。テンポが半分に聞こえる。
Bm E A F#m D E F#
とか

イントロからいわゆる「Aメロ」の(a)と(b)までを支配しているのはギターのE7(#9)っていうコードで、ジミヘンが有名曲で愛用したのでジミヘンコードとか呼ばれることもあるやつです。E7にb3度が入っているのですごい不協和音で、濁ったブルースっぽい感じになる。このE7(#9)一発でコードには動きがなくて、抑圧された感じになります。前にファンクとか黒人音楽の特徴は抑制だ、っていうこと書いたおぼえがあるのですが、まあそういう感じ。

ただしこの曲は黒人ダンス音楽ではない。まずテンポが速すぎる。ふつうのダンス音楽というのはだいたい120BPM(1分間に4分音符120拍)ぐらいにするものです。フォーチュンクッキーとかが125、ハイテンションは130,フライングゲットは132ぐらい。ここらへんもダンスとしてはちょっと速いかんじですね。このバコーンは150あって、快適に体を揺らすことができるテンポではなく、むしろ、痙攣とまでは言わないにして「踊る」っていうテンポではないです。(ヘビーローテーションは180BPMあってすごく速いんですが、あれは歌のメロディーはゆったり倍の長さになっててむしろゆったり半分のテンポに感じられる、実は90BPM)それにダンスや黒人音楽ではギター使わないんすよ。ジャジャジャーとかやらない。そういうのは、白人ロックの民が使う。ここらへんがまず前提となる基礎知識。

さて、私学生様と音楽の話をしようってときは、(楽器やらない人に楽理の話をしてもわからないから)まず歌詞をちゃんと味わおうって提案するわけです。そのために必要なのはまず、誰が何を歌っているのか、いつ、どこで、どんな状況でかを考えろっていうわけです。5W1Hっていうやつですか。これはいつでも大事ね。

ではこの曲は誰がいつどんな状況でなにを歌っているのか?

最初このPV見たときは、当然10代女子の歌かと思ってましたが、違いますね。OLさん、それも2、3年目ぐらいか。「ファンキー姉ちゃん」とかそう呼ばれちゃう感じで、すでに会社にもそれなりになれてるので20代なかば。

いつか?会社おわって男子も姉ちゃんも「旅立つ時間、ときめく時間」。7時はちょっと早いかな。ちょっと残業して7時半ぐらいっすか。これから会社の男子女子いっしょに遊びにいくんですね。

どこに行くんだろう?これが最大のポイントです。ファンキー男子と姉ちゃんなのでディスコだろうか?違う。なぜならディスコではギタージャッジャッジャーなんてダサい音楽は鳴らないからだ。考えられるのは、(1) V系ロックのバンドのライブ、(2) カラオケボックス、の二つぐらいで、男子が一緒にいくのだからロックのライブではない。広めのカラオケボックスなのです。驚きましたね。

ちょっと太っていやだとか、手柄取り上げられるとかもまあOLさんの世界ね。OLさんに手柄があるってのは単なる事務職ではないかもしれない。あとで「レバレッジ」とか出てくるから、証券会社の営業さんとか製薬会社のMRくらいで考えとけばいいのではないかと思う。

この曲のよさの一つは、1コーラス目から2コーラス目への時間の経過と気分の変化がはっきりしているところですね。上で対比してみたけど、2コーラス目になると、ファンキー男子はファンキー「幹事」になり、ファンキー姉ちゃんはファンキー「委員長」に昇格していて、まあカラオケボックスはもりあがってる感じですね。

ここでダンスについても言及すれば、上の区分の(a)の部分の股開く動作や(b)の勝負パンツ見せる動作とかはあんまりセクシーじゃなくて、むしろ下品。「あたし毎日勝負パンツ履いてんのにぜんぜんだめだわ、がはは」。ここで「ファンキー」というのは「陽気な」「おどけた」「品のない」ぐらいの意味で理解されてると思う。

対比したのでわかりやすいと思いますが、1番から2番に移行すると、「全部忘れたい」→「全部忘れるよ」、「涙が止まらない」→「慰めはいらない」、こんなにすごく切ない」→「心がずいぶん軽くなる、おなかがへった」、って感じでポジティブになってる。お腹が減ったはとてもよくて、それまで飯を食う気にさえなれない軽い鬱だったのがなおって欲求が回復したわけですわね。エクササイズと食事と睡眠は大事です。

まあ歌詞はこういう感じ。つまり、私が読むところによれば、証券会社勤続2、3年めの女子が、男子といっしょにカラオケに行って、ロックで適当におどけて歌って踊って元気になって、少し元気になってうどん食って帰る、というそういう歌なわけです。平日夜なのか、金曜の夜かはわからん。

音楽的には上の表の(a)と(b)のところはさっきも述べたE7(#9)。これは「ミ」と「ミ♭」の音が一緒に鳴っているので、ギャーンという感じの一番きつい不協和な感じの音です。ずっとそれに支配されている。そのあとの(c)のところでコード進行が| A | E | B | E | ってな感じの進行があって、これがカデンツ(ケーデンス)ってやつです。キーがEのときに、AやBのコード(特にドミナントコードと呼ばれるB)を鳴らすと、キーが「確定」するんですわ。キー(調性)はやはりEだ、イントロから続いているE7の厳しい感じを強調する感じになってます。「うちらはなにをしてもEなのだ!これからもずっとあのイライラしたE7(#9)なのだ!」って言われる感じね。

ところが、そのあと無理やり| F | E |とやってキーをAに転調するんですわ。ここが一回目のききどころですね。E F# G G# (ミファソソ#)って盛り上がっていくところです。Eの圧力に対抗して、無理やり歌って踊って盛り上げてる感じ。

そのあとの(e)からのキーはA。これでさっきから(a)(b)(c)のパートでずっとなってたE7は、Aで解放されるためのドミナントでした、いままでずっと続くと思っていたEは、実はAで解放されるための前フリにすぎなかったのだ!、人生のスパイス程度のものなのだ、ってのがはっきりするわけです。これは快感。

このE (ドミナント、属和音)→A(トニック、主和音、主調)に転調、あるいは解決するっていう快感はもちろん定番で、これがないと西洋音楽はなにもできないってくらい定番ですが、単純にやるとものすごい効果がある。

サビの(e)ではダンスでバコーンで| A |F#m | D | E | これもケーデンス、ただし「いや、キーはEではなくAなのだ!」と強く主調している。さらにサビ(f)でももっと強くAが中心なのだ、われわれはAなのだ、と主張するわけです。ここは本当にきもちがいい。

特に(f)の「こころが少し軽くなる」のところでは、音楽では2拍4拍を強調し、ダンスでも2と4で腕を上にアゲアゲにして一番からだが大きくみせて、さらに女子が横向いているので乳や脇を見せつけて、腰も浮いて非常にセクシーになってる。最初の方で、もううちら全然だめで芸もないから、ウケるにはファンキーに股開いたりケツとパンツ見せたりするしかないわあ、みたいな下品で低級な(?)女になってたところが、ここではきちっと上を向いてそこそこ上品なセクシーさを出して踊れるようになってるわけです。さらにリズム的にもうるさいごちゃごちゃがなくなって、聴感ではテンポが半分になってゆったりアゲいるように聞こえると思う。

(f)のところのダンスは、「こころが少し軽くなる」のところの横向いて手を上げるのもいいんですが、そのあとの「帰りにうどん食べてくわ」のところの「わ」のところの小さいジャンプもものすごく効いてますね。あの小さいジャンプがないと、心が軽くなってるところがわからない、あれが最大のキモだと思います。イラついたOLもカラオケで元気になれば小学生のようにちょんと飛べるようになるのだ。

2コーラスめ歌ったあともイライラしたE7(#9)のギターは再び攻めてきますが、それにつづく間奏はもう一発ではなく、歌謡曲的なホーンの勝利のラッパがなって 1)これを本物のホーンを使わずにキーボードのチープな音にしているのもよい。 、2番のサビの歌詞を繰り返しておわる。最後にイントロのリズムがもどってきますが、最初の(#9)のトゲは抜かれている。これは名曲・名ダンスです。

まあ、この曲の主人公の女子たちは正直いって安い。安いというのは、お金もないし、趣味もそれほどよくないかもしれないし、芸もあんまりないかもしれないし、勝負パンツは履いてるのに彼氏もいないし、仕事もうまくいかずに上司から怒られたりで不満だらけだし、ダイエットもうまくいかないまま年をとりつつある。不安だらけ。六本木でR&BやEDMで踊っているようなセクシーな姉さんたちにはダサいとバカにされてるかもしれない。でもカラオケでみんなで歌って騒いで踊って楽しくやれば、明日を生きることはできるのです。大衆向けの曲というのはこういうふうにできてないとならん。

私、震災のあとに「フォーチュンクッキー」を聞いて音楽やダンスの力を感じて、アイドル曲のプロダクションのよさがやっとわかるようになったんですが、このバコーンはその前で、曲の造りや腕をぐるぐる回すダンスなんかに影響が見えてる気もしますね。音楽とダンスにはストレスから解放してとりあえずうどん食いたくならせるような力があるわけです 2)というか、「フォーチュンクッキー」が「バコーン」へのオマージュでありアンサーソングであった、という可能性は十分あると思う。

どうもこのユニットはおとなになって解散したようですが、この曲の主人公たちの年齢になったところで解散というわけですね。その成長とかも、まあライブで(f)で「ん・オー・ん・オー」ってライト振り回して応援しているオタ兄さんたちにはよかったでしょうな。

 


あと、音楽の話で、E7(#9)の音ってのはジミヘンのこんな感じ。

ジャジャジャーはいろいろあるけどこれ。正直、ジャッジャッジャーのリズムはものすごくダサい。つんく先生はださすぎないようにいろいろ工夫してます。なにを工夫しているかはよく聞いて考えてください。

一番大事な、一発もので5度下に進行して快感があるってのはこの曲。E7でじりじりしていて、「おれ、もうブリッジいっていいか?いっていいか?ブリッジいっていいか?」ってやってAに落ちるのが気持ちいい(実際にはEbとAb)。2:00〜2:30ぐらい。単純にやればこれでも気持ちいいんですが、大衆にはわからんからつんく先生みたいにする必要がある。

 

まあこの曲の主人公がカラオケのあと発展してセックスマシーンだったということはないとおもいます。


→ 歌詞を考える


References   [ + ]

1. これを本物のホーンを使わずにキーボードのチープな音にしているのもよい。
2. というか、「フォーチュンクッキー」が「バコーン」へのオマージュでありアンサーソングであった、という可能性は十分あると思う。