フェミニズムやらジェンダー論やら勉強したいひとのためのリストみたいなのがない、みたいな。いやそういうのはたくさんあると思うから私が書く必要はないと思うんだけど、ちょっと一般的な話にからめて紹介したいと思います。
そもそも関心がフェミニズムの特定の論者の特定の論点、たとえばキャサリン・マッキノンのポルノについてのどういう議論をしているか知りたい、ってな感じであれば、そういうのはすぐ出てくる。
ジュディス・バトラー様の深遠な思想について知りたい、というのであれば、解説書と本人のを同時に読めばよい。
んで読んでもよくわからなかったら(わからないことも多いと思う)そこでやめてしまえばよい。
しかし、もうちょっと広い関心があって、なにが問題なのか知りたい、(特定の立場の)フェミニズムを信奉している人々が言うことだけでなく、それの難点やそれに対する批判まで含めて知りたい、ってな感じのときは、またちがう勉強の仕方があると思うのです。
特定の思想家・学者・ライターのものは、やはりその人の思想の色が強くついてしまうもので、いろんな人のを平行して読まないとなんか勘違いしてしまうし、批判的に考える能力もつきにくいと思う。
答はわりとはっきりしていて、図書館で「事典」をひっくりかえしてみる、です。戸田山和久先生も、レポートとか書くときはまずそれを事典ひいてみるのだ、って書いておられます。なぜそれを「レポートを書く」ときだけの手段にするのか。いつもまず事典めくってみればよいのです。
まあこんなのふつうの人は自分のお金出して買うもんじゃないので、図書館に入れてもらってください。
こういうの読みながら、ちょちょちょっとなにかメモをとっておくとよい。同じ項目を複数の事典でひいてみると、執筆者によって見方がちがってたりする。ぜんぶで同じポイントや名前が出てきたら、それはみんなが認めてる大事なところです。そういうふうに複数のもので裏をとりながら勉強してほしい。
上のは英語のを翻訳したものが中心ですが、この手ので1冊おすすめをあげると、
これがいいと思う。翻訳されてるのは英語が多いんだけど、これはフランスのもので英語圏とはまたちがった視点から問題を見ているので読んでいておもしろい。
んでこういうのでだいたいこうなのね、ってわかったら、そういうのをその立場の外から批判したり検討したりしてるやつを読む。できれば大学のテキストにつかわれるようなやつがよい。
たとえばフェミニズムと政治理論の関係だったら、
こういうのを読む。タイトルからでは内部にフェミニズムに関する長い章がはいってるのはわからないわけですが、そういうのは大学の教員が教えてくれるので大学生は自分の大学の先生に聞いてみてください。上のは非常に定評があるテキストで、フェミニズム(とくに北米っていうかカナダ)とそれにたいしてどういう批判があるかわかる。
ここまでいけば、関心にしたがって読んでけばいいと思う。ポルノや売買春、といった特定の問題をフェミニズム・非フェミニズムがどう扱ってるか勉強してもよいし、特定のフェミニズム(たとえばラジフェミやらポストモダンフェミニズムやら)の思想ってのがどんなものかもっとつっこんでいく手もある。
ポイントは聖典をさがしてるんじゃないんだから、いろんな面から読む、論争を理解する、ってところです。
この本なんかもまあなにが問題かよくわかる良書です。とにかく、もし思想家に興味があるのではなく問題に興味があるのであれば、いきなり思想家に直接あたるのはあぶないし効率が悪い。日本の学者先生たちの多くは思想家の傾向があり、かなり自分たちの立場を強く押し出し批判を無視する傾向があるから注意してください。
あとこれおもしろかったんだけど、古本安いからみんな入手しておくとよい。
Views: 132
コメント