このページ読みおわったら、下の三つも読んでください。
- 剽窃を避ける
- レポートの書き方文章編、というか細かくてわかりにくい話
- レポートの体裁(PDF)
まずとにかく
- 戸田山和久、『論文の教室:レポートから卒論まで』、日本放送出版協会、2002。
- 山内志朗、『ぎりぎり合格への論文マニュアル』、平凡社、2001。
ここらへん1冊でよいから読んでおく。これまで「レポートの書き方」についての本を読んだことのないままにレポート書いたことのある人はかなり反省する必要がある。泳ぎ方を知らないのに海で一人で泳いだりするのに近い。なにごともノウハウ本というのがあります。哲学関係の人には戸田山先生のがおすすめ。
(→ ついでに「レポートの書き方こそ自発的に調べてみましょう)
レポートでないもの
- 剽窃。パクリ。コピペ。他人の文章をそのまま写したもの。 → 「剽窃を避ける」 を書きました。
- 参照した文献のリストがないもの。
- 単なる感想。たいして調査もしていない「あなたの意見」は必要ありません。もちろん自分の解釈や見解や意見を述べるのはよいことですが、その場合は、 十分な論拠 を提示すること。
- レポートでWebにある文章を丸ごとコピペしてくる不届きな人々がいる。それが発覚した場合は当然単位は出さない。
たいしたアイディアはいらない
- 一般の大学のレポートでは、斬新なアイディアなどは必要ない。
- ちゃんと調べるべきものを調べてまとめれば十分。教員は学生が授業内容をちゃんと理解したか確認することを目的にしている。
- むしろ、ちゃんと型にはまったものが書けるようになるのが学生時代の修行。あなた自身のアイディアは卒論ででも表現すること。
- 課題をきちんと把握すること。
様式
- とりあえず大学なんてのは結局のところ型にはまった書類を作る練習をする場所だと思うこと。
- レポートの様式は非常に重要。
- しかし、教員から指定されていないことをいちいち質問する必要はない。指示されていないことは勝手に判断してよい。
- ただし常識としておさえておくポイントはある。
- 手書きの場合は原稿用紙に書くのが常識。指示がなくとも気をつけること。レポート用紙は不可。ただし英文の場合はレポート用紙でもよいが、1行空ける。
- レポートが複数枚になったら、必ずステープラー(商品名ホッチキス)で留めること。クリップはバラバラになることがあるし、かさばって邪魔。
- 表紙をつける場合はステープラー(ホチキス)の位置に注意すること。長方形の紙を縦長に使って横書きにする場合は左上、紙を横長に使って縦書きする場合は右上。
- 必ず各ページに番号を打つこと。趣味があるが、A4横書きの場合はページ下中央、縦書きの場合は左上あたりか。
- 科目名、大学、学部学科、学籍番号、名前を明記すること。学籍番号だけで学科などを書いていないと採点を記入するときに難儀する。
- 大学まで書く必要はなさそうに見えるが、特に非常勤の教員には必要な場合がある。
- 「~文字以内」ような指定があり、かつワープロで作成する場合、最後に(1980文字) のように文字数をつけておくとよい。
文章について
- 文章についてはとりあえず、戸田山和久先生の『論文の教室』と木下是雄先生の本をよく読むこと。正直なところ、文章のうまい下手はどうでもよい。一般の大学のレポートや卒論でうまい文章を書く必要ない。どうしてもうまい文章を書きたい人は本田勝一先生の『日本語の作文技術』(朝日文庫, 1982)を見るべし。
- レポート、論文では「だ/である」体で書くこと。
- 簡潔で明快な文章を心がけること。とにかく文を短くする。「〜が、〜」と続けず、「〜である。しかし〜」。「〜であり、〜であり、〜であり〜」→ 「〜である。また〜である。さらに〜である。」
- 体言止めは避けること。
- 主語は省略しないでいちいち書くこと。目的語もわすれるな。
- 「~のではないだろうか。」でレポートを終わらないこと。
- 必ず読み直して誤字脱字がないか確認すること。音読してみるのがよい。
引用の仕方
- 他人の文章は必ず(1)括弧(「」)に入れるか、(2)段を落して(この場合カッコはいらない)、それを明示する。どこのその文章があるか注をつける。「戸田山和久は、「剽窃は自分を高めるチャンスを自ら放棄する愚かな行為だ」と言っている [1]戸田山和久、『論文の教室』、NHK出版、2002、p.35。 」のようにする。
- 引用文は勝手に省略したり要約してはいけない。一字一句正確に。表記も原則的に勝手に変更してはいけない。変更した場合はその旨を明記する。
- いずれにしてもレポート・論文には文献リストをつける。文献リストでは、著者、『タイトル』、出版社、出版年、翻訳ならば訳者を明記。
- 複数の著者の論文を集めた本のなかにある論文を参照した場合は、その論文の著者を先に出すこと。
例:江口聡、「ポルノグラフィと憎悪表現」、北田暁大編、『自由への問い(4) コミュニケーション:自由な情報空間とは何か』、岩波書店、2010、pp. 23-46。 - 「著者:江口聡、出版社:岩波書店」などという新聞の書評欄みたいな書き方は×。ちゃんと論文の書き方本を見よ。
- 完全な引用でなくとも、オリジナリティが認められる主張やアイディアには典拠をつける。
- 基本的に文献リストに載せるものは本文中で1回以上言及すること。「戸田山によれば〜」のような形で。
- より詳しくは「引用・参照の方法」。また高橋祥吾先生の指導を参考にせよ。
パクらないために
- 文章をそのまま使わない。自分で一回咀嚼して自分の表現に書きあらためる。
- 自分でよくわからっていないことは書かない。
- 「剽窃を避ける」を参照。
その他細かいこと
- 主語は省略しないこと。
- 「である」体の文章にいきなり「〜です」を入れたりしない。恥ずかしいことです。この文書も実はそういうのを含んでいるが、これは意図的なので真似しないようにしてください。
- 「〜のである」はおおげさであるので多用しないことが肝要なのである。「〜である」と書くのがフラットでよいのである。
- 日本語には斜字体(イタリック)は使わない。強調したい場合は傍点を打つ、下線を引く、フォントをゴシック体にするなど。
- 特別な事情がないかぎり、日本語の文章で〈 〉(山括弧)や“ ”(引用符)は使わない。どうしても引用符を使う場合は向きを揃えること「”ほげほげ”」はだめ。「“ほげほげ”」。
- 「1つ」「2つ」は私の好みではない「ひとつ」「二つ」。「ひと、ふた、み」と数えるときは漢数字。
- 接続詞と副詞はひらがなに開いた方がよい。特に「全て」「従って」は「すべて」「したがって」。
- 各段落の先頭は必ず1文字分字下げすること。
- 基本的に人名は初出時フルネーム。「戸田山は」ではなく「戸田山和久は」と書く。二回目からは「戸田山は」でOK。カントのようにその分野で有名な人は最初から「カントは」でOK。
- 「氏」とか基本的に不要。「戸田山氏」「戸田山教授」ではなく「戸田山和久」と呼びすてにする。二回目からは「戸田山」だけでよい。
- レポートは完全に自分一人で書かねばならないものではない。校正、読み合わせ、構成の相談など自由にしてよい。原稿ができたら、一回誰かに向かって声に出して読んでみるのは非常に効果的。
- この前、どういうつもりか緑色のインクでプリントアウトして提出いる人がいた。良識をつかえ。それは誰にでも平等に与えられているはず。
- ちゃんとした論文の場合は、執筆にあたって協力してもらった人に謝辞つける。「本稿の執筆にあたっては〜氏、〜氏らに草稿段階から有益な助言をいただいた。ここに記して感謝する。」とか。ただし、卒論の場合、指導教員の名前はいらない(指導するのが指導教員の業務で感謝される筋合いはないから)。
- 役職には注意。「〜教授」とか「〜准教授」とか「〜講師」とかまちがうとあれなので避けた方がよいでしょう。こだわる人もいます。「〜先生担当分」ぐらいにしとくのが無難。教授なのが確実ならOK。
- 本文をゴチックにされると読みにくい。本文は原則として明朝体にする。見出し等はゴチックでOK。
- 書名は必ず『』で囲う。二重括弧『』は書名以外に使わない。論文名は「」で囲う。
- 「ミルの『自由論』には〜と書いてある」「〜とある」ではなく、「ミルは『自由論』で〜と述べている」のように書く。
- 「ミルはその著書『自由論』で」→ 「ミルは『自由論』で」でOK。
- 日本文では空白を切れ目に使わない。参考文献など、「J. S. ミル(空白)『自由論』(空白)早坂忠訳(空白)中央公論社(空白)1976」ではなく、「J. S. ミル、『自由論』、早坂忠訳、中央公論社、1976。」
- ページ表記は、「173頁」とか「p. 173」とか。 「p.」のうしろの点を忘れずに。複数ページになる場合は 「pp. 123-124」のように、pp. をつかう。
- アラビア数字、欧文文字はいわゆる半角文字 1234 abcdで。1234 abcdは避ける。
- カッコに気をつける。>と<はかっこではなく、数学記号(「大なり」「小なり」)。日本語山括弧は〈〉。ぜんぜん違う。
- フォントの大きさ、行間に気をつけろ。通常11ポイント以上。
- 大学生なんだから言葉の定義については国語辞書なんかにたよらず、百科事典や入門書・専門書等を使う。
- 接続詞としての「なので」からはじまる文章は避ける。口語と文語は違う。「したがって」「それゆえ」。
- webページ等を参照する場合は、最低(1) 著者 (2) タイトル、(3)URL の三つを明記すること。必要であれば「最終閲覧日」もつける。Wikipediaなどのように意図的に匿名で集合的に編集しているものを除いて、 誰が書いているかはっきりしないものは参照できない 。
- 図書ならなんでも信頼できるわけではない。著者、出版社の信用に注意。サンマーク出版とかは危険。
- 「授業レジュメから引用」など不要。授業レジュメは資料価値がない。自分の言葉で書き直す。
レポートの書き方関連記事(新しいものから)
- しつこく文献の参照方法
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- なんでも広辞苑を引用してすませるのはやめろ
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- 文章本
- レポートについてつらつら
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- レポートの書き方こそ自発的に調べてみましょう
- 「なんで丸写しじゃだめですか?」
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References
↑1 | 戸田山和久、『論文の教室』、NHK出版、2002、p.35。 |
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コメント
5.「~のではないだろうか。」でレポートを終わらないこと。
とありますが、なぜですか。
長い文章のおわりに「文章の最後が疑問文で終わると気持ち悪いのではないだろうか。」でおわるときもちわるいでしょ?
「というわけで、文章の最後が疑問文で終わると気持ちわるいものだ。」でおわってほしい。
広辞苑を使って言葉を調べ、引用したのですが、参考文献リストにはどのように記載したらよいのですか。
それはいわゆる「広辞苑攻撃」と呼ばれる教員に対する攻撃法で、避けた方がよいです。詳しくは戸田山和久『論文の教室』の最初の20ページ程度を確認してください。
こんにちは。
大学の論述式の試験の解き方について質問があります。
私は試験時間が短い中で、論述することが苦手です。書いていると、修正できなくなってしまいます。そうなってくると、試験の途中で、「どうにでもなれ….」という気分になり、結果、微妙な成績が来ます。
そこで、
①予め問題がわかっている場合、どのように対策したら良いのか
②どのような問題が出るのかすらわからない場合、どのように対策すれば良いのか、
③そもそも、ここでおっしゃっているレポートと、論述式の定期試験はまた別物なのか
アドバイス頂けませんか。
質問の場所が間違っていたらすみません。
いやあ、上のは期末レポートとかの話なので、論述試験についてはよくわかりません。
私めったにそのタイプの試験しませんし。数行の記述問題はだしたりもするのですが、
その場合は大事なキーワードをちゃんと入れて筋の通ったこと書けてるかどうかぐらいで
採点してますね。
長い論述となると先生によってずいぶん考え方が違うんじゃないかと思うので、
(特に人文系だともうばらばらだと思う)
その教員に尋ねてみるのが一番だと思います。
わかりました。聞いてみます。ありがとうございました。