読書」カテゴリーアーカイブ

ブックガイド:性暴力に関するフェミニスト文献古典

某授業用ブックガイド。作成中。


とりあえず若い女性・男性には以下の2冊読んでおいてほしい。

デートレイプってなに?―知りあいからの性的暴力 (10代のセルフケア)
アンドレア パロット
大月書店
売り上げランキング: 698,085
女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識 (Social Compass Series)
吉川 真美子
世織書房
売り上げランキング: 461,735

下は「強姦神話」というアイディアを展開した本で非常に大きな影響力があった。内容は40年もたった今ではさすがに古いと思う。

レイプ《強姦》―異常社会の研究 (1976年)
ジーン・マックウェラー
現代史出版会
売り上げランキング: 1,407,051

下も同じころにさらによく読まれ、フェミニズト的な性暴力理解の基本。いまでも手に入りやすい古典。マスト。1970年代から90年代ぐらいの主流の考え方。

レイプ・踏みにじられた意思
スーザン ブラウンミラー
勁草書房
売り上げランキング: 197,601
性と法律――変わったこと、変えたいこと (岩波新書)
角田 由紀子
岩波書店
売り上げランキング: 104,142

↓非常に重要な文献で、ブラウンミラーらの解釈を批判している。これを読まないと議論できない。マスト。女性のみならず、男性こそ絶対に読むべきだ。

人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす
ランディ・ソーンヒル クレイグ・パーマー
青灯社
売り上げランキング: 560,178

ブックガイド:フェミニスト的ポルノグラフィ批判

某授業用の日本語文献紹介。作成中。


フェミニスト論争の概説

中立的な概説としては次のものがよい。

 

1冊で知る ポルノ(「1冊で知る」シリーズ)
デビー・ネイサン
原書房
売り上げランキング: 920,954
争点・フェミニズム

争点・フェミニズム

posted with amazlet at 16.07.19
ヴァレリー・ブライソン 江原 由美子
勁草書房
売り上げランキング: 1,135,870

ポルノグラフィを問題視する立場

とにかく下を読むとよいだろう。解説も充実している。

ポルノグラフィと性差別

ポルノグラフィと性差別

posted with amazlet at 16.07.19
キャサリン マッキノン アンドレア ドウォーキン
青木書店
売り上げランキング: 1,024,943
AV神話―アダルトビデオをまねてはいけない
杉田 聡
大月書店
売り上げランキング: 209,482

マッキノンらの反ポルノに対する批判

リベラルフェミニズムの立場。表現の自由を重視する。

ポルノグラフィ防衛論 アメリカのセクハラ攻撃・ポルノ規制の危険性
ナディーン・ストロッセン
ポット出版
売り上げランキング: 896,692

ブックガイド:性風俗産業の実態に関する書籍

某授業用のブックガイド。作成中。

 


 

現在の性風俗産業の実態をおそらくかなり正確に描いているのはおそらく中村敦彦。ただしかなりクセのあるジャーナリストではあるので注意も必要か。数が多いが、どれか1冊読めばよいだろう。

 

図解 日本の性風俗

図解 日本の性風俗

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中村 淳彦
メディアックス
売り上げランキング: 36,830

 

日本の風俗嬢 (新潮新書 581)
中村淳彦
新潮社
売り上げランキング: 7,578

 

女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル (朝日新書)
中村淳彦
朝日新聞出版 (2015-10-13)
売り上げランキング: 19,337

 

職業としての風俗嬢 (宝島社新書)
中村 淳彦 勅使河原 守
宝島社
売り上げランキング: 19,029

風俗嬢自身、元風俗嬢によるものも多い。水嶋かおりんによるものは志が高く洞察も深いと思われる。

風俗で働いたら人生変わったwww (コア新書)
水嶋 かおりん
コアマガジン
売り上げランキング: 4,251

学術的な意識調査としては、若干古いが、次のものが優れていると思われる。

風俗嬢意識調査―126人の職業意識
要 友紀子 水島 希
ポット出版
売り上げランキング: 629,948

ポット出版からの次の2冊は、セックスワーカーの立場からの発言集で高い価値がある。

売る売らないはワタシが決める―売春肯定宣言
要 友紀子 小林 のん 滝波 リサ 国江 響子 佐藤 悟志 松沢 呉一
ポット出版
売り上げランキング: 539,980
ワタシが決めた

ワタシが決めた

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ポット出版
売り上げランキング: 881,975

 

ワタシが決めた〈2〉

ワタシが決めた〈2〉

posted with amazlet at 16.07.19
ポット出版
売り上げランキング: 1,056,827

性風俗・性産業の歴史は

性風俗史年表 昭和戦後編―1945-1989
下川 耿史
河出書房新社
売り上げランキング: 356,199

 

 

ナカニシヤ出版「愛・性・結婚の哲学」を読みましょう (2)

愛 (愛・性・家族の哲学 第1巻)
藤田尚志 宮野真生子
ナカニシヤ出版
売り上げランキング: 352,993

福島知己「恋愛の常識と非常識:シャルル・フーリエの場合」

実は刊行前に目次出たときから一番楽しみにしてたのがこの論文で、フーリエの『愛の新世界』っていう奇怪な大著の翻訳者本人のよる解説っていうか部分的紹介。

増補新版 愛の新世界

増補新版 愛の新世界

posted with amazlet at 16.07.16
シャルル・フーリエ
作品社
売り上げランキング: 116,712

フーリエ先生の『愛の新世界』って本はほんとうに奇怪な本で、図書館には入れてもらったもののどうにも読めない。用語法が異常だし話の展開も異常だし。フーリエ先生は「幻視者」みたいに言われることがあるけど、ほんとうに想像力豊かで、ほとんど妄想に近いものを書きつけている感じ。翻訳もたいへんだったと思う。でもフーリエのその幻視かもしれないヴィジョンっていうのはすごく重要だとは思うわけです。セックスや結婚とかに関して、その後の性的に解放されたコミューン形成とかにもかなり影響与えてるんでしょうね。まあとにかくぶっとんでいる。

福島先生が紹介しているのは、「聖英雄ファクマ」さんのお話。もちろんフィクション。福島先生の紹介の最初のところ書き写すだけでそのぶっとびかたがわかると思う。

「世界的に調和世代が訪れた未来、遍歴騎士団に属して世界各地を転戦して回る人々の一人、美しき偉丈婦ファクマが、小アジアの都市ニニドスに捕虜として捉えられた。彼女が属する黄水仙群団・隊団はおよそ千人の冒険者からなり(地名2行半省略)を経由して、西ヨーロッパに抜ける予定だった。

前哨としてクニドス周辺を探索中のファクマたちを「チェス・ゲームに比すべき陣取り合戦の結果」として捕虜にしたバッコス巫女たちは、「恋愛に関して捕虜たちを所有する権利の一切」をこの後二十四時間にわたってもつが、早く攻撃方に戻りたいので、権利の譲渡を宣言した。捕虜が主人を変えるたびに捕囚期間は常に半分に減額される。捕虜と恋愛する権利を得るため恋愛法廷が開廷されることになった」

すごいっしょ。『シドニアの騎士』みたいっすね。「奇居子(ガウナ)」とか「衆合船(シュガフせん)」とか出てきそう。これでも福島先生がまだかなり抑えてくれた記述になってる。フーリエ先生の本文は読むドラッグみたいな感じ。

福島先生自身もこの世界のとりこまれているふうがあって、この「恋愛法廷」ってのは、「半日間の恋人を決める集団見合いである。街コンであり、出会い系である」って表現している。いやそうじゃないっしょ。奴隷とセックスする権利をどうするか、ってはなしっしょ。奴隷市場じゃないっすか。

ファクマさんは捕虜っていうか奴隷になってしまって、半日だれかの「恋愛」の相手をしなければならないわけだけど、官能愛=唯物愛はいやで、心情愛ならする、なぜなら1ヶ月肉欲の日々を送ったので疲れているから、みたいな。わけわからんです。求愛者っていうかそういうのが8人いて、しょうがないから8人じゃなくて1人なら相手してやるっていう。でも8人の男の話がまとまらないので、んじゃ誰にもやらせませんし恋愛もしません、って宣言する。すると一人がショックで失神してしまう。ファクマさんはそれをかわいそうに思ってうめあわせとして恋愛してあげようと思う。しかし他の男たちからそれはずるいと責められて、人々を苦しめたという掟に反する罪を犯したので、その償いに54人と唯物愛=セックスすることになる。

わけわからんです。いやすごい世界。哲学はたいへんです。

まあこういうフーリエ先生の奇怪なヴィジョンの背景にあるのは、19世紀ヨーロッパでの結婚制度や売春なんかのいろんな問題なんでしょうけどねえ。福島先生の解説もなかなか難しくて、なんとも論評しにくい。

最終節「幸福の条件」を見てみると、福島先生の読みではフーリエは恋愛を政治的に考えて一種の公共事項とみなすべきだと考えていると。まあ世の中なかの不幸の大きな部分はモテないとかセックスできないとか結婚できないとか、そういうのによっているので、恋愛を公共事業にしてしまえばそうした不幸が減る。これがフーリエ先生的な計画セックスですわね。

まあ実際そういう考え方によって、共産村を作ってセックスの相手を計画して毎日変える、みたいなのは19世紀におこなわれていて、あんまりうらやましくないけど話はおもしろいです。フーリエ先生と福島先生のこれを読む前に、下の本読んでおくとこうしたぶっとんだ話が、現実とどう関係しているかがわかって、そのおもしろさがわかるんちゃうかなと思います。

 

ユートピアと性 オナイダ・コミュニティの複合婚実験 (中公文庫)
中央公論新社 (2015-04-24)
売り上げランキング: 139,145

 

あと蛇足だけど、「ブックガイド」で映画『ドッグヴィル』について「結末の惨劇には戦慄せざるをえない」っていうのもものすごく違和感がある。そこじゃないでしょ、ってな感じ。全体にこういうずれた感じがあって、興味深い。

(追記)

ちなみに、p.125で論じられているキェルケゴールの『恐れとおののき』でのアガメムノンやエフタは、「共同体から後世称賛され、栄光を得られると考えているため」に自分の子供を犠牲にするのではない。彼らは共同体の命運をかけた闘いの場で神に帰って最初に戸口から出てきた人間を生贄に捧げるという個人的というよりは民族共同体としての誓いを立てて敵に打ち勝ったために、出てきた娘を犠牲にしなければならなかったわけだけど、それは彼らが(やむをえず?)誓いを立ててしまったからであって、個人としてみんなから称賛されるためではない。

(さらに追記)

功利主義の理解もちょっと問題があって、p.124の「8人の求婚者たちは……自分の幸福を追求しているだけであり、このような要求を経なければ最大幸福の計量もできないわけだから、その意味では功利主義原理にしたがっていないわけではない」もわかりにくい。もちろん欲求や選好を表明しないと功利計算できないってことなのだろうけど、それ自体は功利の原理とは関係がない。「(多数の利益に仕えるという)統一の掟も八人の利己主義者の行動も原理的には同じ」になるというのは意味がわからない。

またベンサムが同性愛を刑罰で禁じることに反対したわけだけど、「その理由はそれが私的な問題であって、法律の対象になじまないから」ではないはず(これはちゃんとした自信がないけど)。こっそりやられている同性愛を法的に罰する利益がなく、不利益は大きいからのはず。快楽はどんな快楽でもそれ自体として価値がある。さらにベンサムは同性愛などが人口抑制などに有益だとかって話もしているはず。

ちなみにベンサム先生はフーリエ先生と同じようにぶっとんでるし言語感覚が異常な感じがあるけど(どちらも新しい制度の設計や、造語・新語が好き)、そんな奇怪な空想はしないわねえ。タイプが違うんだな。

 

 

品川哲彦『倫理学の話』書評

(『週刊読書人』第3124号 2016年1月22日掲載の草稿)

倫理学の話

倫理学の話

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品川 哲彦
ナカニシヤ出版
売り上げランキング: 209,026

 

本書は、読みやすい倫理学概論および学説史である。叙述は歴史的順序には従わず、著者独自の観点からの配列となっているが、しっかりした索引、注および相互参照が付記されているため、事典的に読むことも可能である。

全体の四分の三は、近年の英語圏の標準的なテキストで頻繁に扱われている諸倫理学説の紹介と検討である。第一部でまず、倫理学は、他人を教導しようとする「倫理」ではなく、むしろ自分自身の倫理観を反省する哲学であるとする筆者の立場が明確にされる。第二部では倫理の基礎づけとして、倫理を自己利益にもとづいて説明しようとするプラトンとホッブズ、人々との共感を重視するヒューム、理性にもとづいた義務と尊厳を説くカント、社会全体の幸福の促進を目指す功利主義者たちの理論が説明される。第三部は、特に「正義」をめぐって、ロックの社会契約説、ロールズのリベラリズム、ノージックのリバタリアニズム、サンデルらの共同体主義およびその源流としてのアリストテレスとヘーゲルがとりあげられる。

紹介と解説は総じて平明であり、どの章でも初学者が疑問を感じやすい箇所、誤解しやすい箇所に対して相当の配慮がなされていることは特筆に値する。たとえば、功利主義の考え方を論じる上で、「功利主義は多数の人々の幸福のためならば、少数の罪のない人を殺すことを認めてしまう」といった安直な批判に対しては、ヘアの「道徳的思考のレベル」の区別を紹介し、そうした批判は安直な思考実験と道徳的な直観にもとづいたものであって、現代のエレガントな形の功利主義に対しては十分な批判にはならないという考え方を紹介している。こうした細心な叙述は随所に見られ、基本的学説の正確な理解を必要としている読者に有用なはずである。

「正義」に関する議論の後半部分では、ケアの倫理、ヨナスの責任論、レオポルドの土地倫理、レヴィナスの他者論やデリダの正義の脱構築といった、伝統的な正義論の枠組み自体を疑い問いなおそうとする思想の概略とその魅力が紹介されており、これが本書の特徴的な部分となっている。もちろん、こうした思想群にはわかりにくい部分がある。たとえば、ギリガンらによる「ケアの倫理」は、男女の心理学的な発達に関する事実的主張にすぎないのか、あるいはそれを越えて規範的主張としての説得力を持つのか、ヨナスらが主張する「将来世代に対する責任」の根拠は何か、レヴィナスの言う「他者の無条件な歓待」はどのような内容をもつのか、デリダによって脱構築された「正義」観念は我々の道徳的生活にどのような関係をもつのか等々、読者は多くの疑問を抱くことになるだろう。

しかし、こうした思想を紹介することで「正義」を問いなおそうとする著者の試みは理解できないものではない。我々は往々にして、自分のふるまいや考え方は正しく、自分たちは正義にかなっていると思いこみがちである。歴史的に見てこうした思いこみは、「我々」と見なされる人々以外の存在者に対する政治的抑圧や暴力につなってしまう。アカデミックな倫理学研究でさえ、独善的な取組みをすればそうした側面をもちえる。筆者が「正義」についての標準的とされる倫理学説の検討にとどまらず、上述のような思想家たちの紹介によって「正義とは異なる基礎」や「正義概念の脱構築」の可能性を探るのは、そうした政治的意識の反映でもある。

「あと書き」では、ユダヤ人芸術家メナシェ・カディシュマンのインスタレーションが発する「ノイズ」を聞き「自分は苦しんでいる人々の呼び声もあたかもたんなるノイズのように聞き流してしまっているのではないか?」と自問する筆者の姿が描かれる。多彩な倫理学的な立場それぞれの見解に耳を傾けつつ「じっくり考えなくてはならない問題」について誠実に「ゆっくり話す」という手法は、倫理学という営みへ誘いとして適切な方法であることはまちがいがない。

2015年に読んだ本ベスト10

ちょっと早いけど今年印象に残った本10冊程度。今年はあんまり本読まなかったっぽい。読書生活も終りに近づいている。

2014 https://yonosuke.net/eguchi/archives/1056
2013 https://yonosuke.net/eguchi/archives/1082
2012 https://yonosuke.net/eguchi/archives/1105
2011 https://yonosuke.net/eguchi/archives/1043


今年一番影響を受けたのは、なんといってもやっぱりマクゴニガル様の最新疑似宗教ゲーム『スーパーベターになろう』ですか。もうプラシボだろうがなんだろうが、それでいい。とにかく不活発で思いどおりに機能しない、いつも小雨が降ってる気がする、みたいな人は必ず読むべきだ。

基本的には、まあ人生をゲームとして見る。ほんのちょっとしたことでいいから自分の意志でなにかをする、ちょっとした快感や楽しみ、充足感を意識する、とかで自己効力感を高め、パワーアップして、毎日なにかちょっとしたことにチャレンジする(クエスト)、仲間をつくっていっしょに活動する(アライ)、自分の障害になっている内外の敵を見つけて、そいつを倒す(悪玉とのバトル)。そういうゲームの主人公として自分の人生を見ると、考え方が変わるってうまく機能するようになるよ、と。自分で実験してみてます。

スーパーベターになろう!
ジェイン マクゴニガル
早川書房
売り上げランキング: 9,624

『認知行動療法に基づいた気分改善ツールキット』も、これまでの認知行動療法系統の気分気分操作を網羅的に整理してくれていて悪くなかったけど、『スーパーベター』を読んでから見ると堅すぎるか。やっぱり実践可能な形にするにはマクゴニガル先生のような工夫が必要。


気分とからめてずっと興味をもっている幸福感とか選択とかの問題についてはドーラン先生の『幸せな選択、不幸な選択』。

幸せな選択、不幸な選択――行動科学で最高の人生をデザインする
ポール・ドーラン
早川書房
売り上げランキング: 8,221

この分野もだいぶ進んだな、みたいな感じがある。幸福/幸福感についての心理学と哲学の両方にめをくばっている。あと行動経済学を援用した自己啓発本そのものはなに読んでも同じ話ばっかりで飽きつつあったけど、『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』はわりとおもしろかった。


まじめな方では、ピンカー先生の『暴力の人類史』は思想史とか考える上でも重要。

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

posted with amazlet at 15.12.26
スティーブン・ピンカー
青土社
売り上げランキング: 21,932

逆の方向だけど、『戦争の科学:古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史』もおもしろかった。科学の歴史は戦争の歴史だ。勉強的には『モラル・トライブズ――共存の道徳哲学へ』が重要なんだけど、まあ一般向けではないと思う。


自分の幸福の他に、動物倫理その他の関係で、食べ物のことはいつも考えてる。前に『雑食動物のジレンマ』でいろいろ考えさせてくれたポーラ先生の『人間は料理をする』は前作にもましておもしろい。すばらしい上下巻。とにかく上巻の「焼く」だけでも読むべし。パリパリの豚の皮がうまそうだ(食ったことないけど)。

人間は料理をする・上: 火と水
マイケル・ポーラン
エヌティティ出版
売り上げランキング: 37,657
人間は料理をする・下: 空気と土
マイケル・ポーラン
エヌティティ出版
売り上げランキング: 86,352

マンガは一番印象的だったのは阿部先生ねえ。ちょっとシリアスすぎるけど。新しい表現はいつもある。

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)
阿部 共実
秋田書店 (2012-03-08)
売り上げランキング: 21,960

あと、みなもと太郎先生にも今年もお世話になった。

挑戦者たち グループ・ゼロ
グループ・ゼロ (2014-05-27)

古いマンガだけど、『アップ・セット・ボーイズ: 明日葉高校将棋物語』を読んでなつかしかった。名作青春マンガ。

 


そういや、なんといっても池田暁子先生のも衝撃を受けた。これはすごかった。とにかく表現がふつうではない。ADHDとかその手の人のみじめさがよく描かれている。まあこれ読んでなんとか片づけられるようになりつつある。みじめなのいくない。

片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術
池田 暁子
文藝春秋
売り上げランキング: 6,786

『必要なものがスグに!とり出せる整理術! 』も読みましょう。


音楽関係だと細馬先生の『うたのしくみ』が新鮮な知性を感じた。

うたのしくみ

うたのしくみ

posted with amazlet at 15.12.26
細馬 宏通
ぴあ
売り上げランキング: 62,542

あと、勉強っぽいところでは森本先生の『反知性主義』は18〜19世紀について考えるヒントを与えてくれた。私も反知性主義、っていうか反インテリには共感するところあり。

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)
森本 あんり
新潮社
売り上げランキング: 13,857

苦手な美術関係も少し読んでいて、こういう解説書はいいものだな、みたいな。

エロティック美術の読み方
フラヴィオ・フェブラロ
創元社
売り上げランキング: 529,426

他はまあ http://mediamarker.net/u/yonosuke/ でも見てください。

 

 

片づけられない女のためのこんどこそ!

女性というと、掃除が好きで片付けが得意で、みたいな印象をもたれやすいものらしく、男子だったら部屋散らかしてるぐらいではあんまりひどいこと言われませんが、女子はたいへんみたいですね。なんか寮生活とかでもそこらへんで非常にトラブルが多いとかなんとかっていう話を聞いたことがあります。

実際には男性だろうが女性だろうがひどい生活を送っている人々は少なくない。部屋ちらかってるのはみじめだ。必要なものがすぐに出てこず、毎日何時間も書類やらなんやら探して時間つぶすのはつらいし馬鹿だ。いらいらする。時間の使いかたもおかしくて、毎日「あれやんなきゃ、あれしときたい」って思ってるのにいつのまにか夜になってる。いつもなにかに追いたてられてる感じ。心やすまる時がない。毎日毎日みじめで悲惨だ。そういう人々が多いのはよく知っています。そして私もその一人。

そういう人々は自分の生活がなにかおかしい、他の人と違うってことを知っているので、「片付け」本とか「時間管理」とかって本を読むのは好きなことが多い。そして私もその一人。

なのでまあその手の本はいろいろ読んでいるのですが、この前ひさびさのヒットを読みましたね。池田暁子先生の『片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術』。通ってる市立図書館で手にとってしまいますた。これはすごい。

なんというか、生活がうまくいかない人々の生活や考え方、経験をリアルに描いていて、もうどこを読んでもそのみじめさつらさに泣ける。ちょっと多いけど4ページ引用させてもらおう。

池田暁子2池田暁子1

 

 

池田暁子4池田暁子3

最後のコマの八の字の眉毛とか、顔に入った影線とか。みじめな人々はほんとうにこんな感じだと思う。これが描けるっていうのはとてつもない観察力や自己反省力、表現力を感じますね。感動した。

このエッセイマンガは、池田先生がこの生活煉獄からどうやって抜けだすかっていうお話。いくつかのノウハウは、そこらへんでよく見かけるノウハウでそれ自体に目新しさはないんだけど、彼女自身が試行錯誤して発見したり、話には聞いてたことを実感として得たりして感動的。

我々は勉強は学校で教えられるけど生活のしかたっていうのを学ぶ機会は少ない。生活するだれならだれだってできると思われている。でもよく生活することはそんな簡単ではないし、少なくとも一部の人は必死で学ばないとよく生活できない。古代ギリシアの哲学者ソクラテスも、「たんに生活するだけではなく、よく生活することが重要だ」「吟味されない生活は生活するに値しない」と言っておられます1)一部うそ。気になるなら調べててください。。生まれもっての気質や性格、ある種の軽い発達障害みたいなものによって苦しんだりしている人々も多い。そういうのは性格だからしょうがない、って言いたくなるけど、自分自身が苦しいんだからやっぱりなんとかしたい。

こういうのは、ちゃんとできる人からすると「いくらアドバイスしても聞かない」「なんでできないのかわからない」「けっきょくやる気がないからだ」「だめな奴だ」「部屋だけでなく心が腐っている」みたいになっちゃうんですよね。でもできない人はそれなりの言い分がある。できない人ができないのは理由があって、それがなんであるかっていうのはできなかった人でなければわからないし、どう伝えればいいのかわからない。私たちが本当に学ぶことができるのは、整理された知識じゃなく、他人の失敗や試行錯誤の経験談を知り、自分自身で試行錯誤することによってだけだ、みたいなことを言いたくなります。おそらくアカデミックな勉強もそうなんだと思う。

「汚部屋」の人はとりあえずこれ読んでみじめな気持になり、そこから脱出した人もいると知りモチベーションつけましょう。

もうちょっと実用的なのは『整理術』と『時間整理術』。こっちもそれぞれ名作。まあこういうのは実行しないとなにもならんわけですが、図書館とかで読む価値は十分あると思う。

私は汚部屋ってほどじゃないけど整理とか時間管理とかすごい苦手で毎日みじめな思いをしているので、またがんばってみようと思います。汚部屋女子もがんばってください。

あとこういう人にはあんまり言えない生活の悩みみたいのは2ちゃんねるの生活板あたりで互助会みたいな感じでやってることがあるのでそういうところ見てみるのもいいと思う。そういうので時間つかいすぎるのも馬鹿ですけどね。

 

片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術
池田 暁子
文藝春秋
売り上げランキング: 2,408

 

必要なものがスグに! とり出せる整理術!
池田 暁子
KADOKAWA/メディアファクトリー
売り上げランキング: 18,920

 

1日が見えて ラクになる! 時間整理術!
池田 暁子
メディアファクトリー
売り上げランキング: 11,036

 

 

 

References   [ + ]

1. 一部うそ。気になるなら調べててください。

2014年に読んだ本ベスト10

実は今年はここ20年ぐらいで一番本読まなかったんじゃないですかね。なんか気があせって余計な本とか読む余裕がなかったです。まあしょうがない。

でもまあとりあえず印象に残った本を。


ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法
冨田 恵一
DU BOOKS
売り上げランキング: 21,869

現役トップアレンジャー/プロデューサーが音楽(と音)の聞き方を教えてくれるというすばらしい本。音楽はたくさん聞くより何回も聞くものだと教えてもらいました。実践してないけどそうだと思う。


すごいジャズには理由(ワケ)がある──音楽学者とジャズ・ピアニストの対話
岡田暁生 フィリップ・ストレンジ
アルテスパブリッシング
売り上げランキング: 24,694

音楽本だとこれもおもしろかった。岡田先生はクラシック観賞/演奏から回心してジャズピ習いにいって、その先生からいろいろレクチャーを受ける。ストレンジ先生もいろいろ言うべきことをもった知的な方ですばらしい。

あとビートルズ関係のムックとか2、3冊読んだけど最近の研究はすごいね。
ザ・ビートルズ全曲バイブル 公式録音全213曲完全ガイド
ザ・ビートルズ アルバム・バイブル (日経BPムック)
まあ我々か、ちょっと上の世代向けなのね。


ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書)
吉原 真里
中央公論新社
売り上げランキング: 385,343

これは異常におもしろかったですね。こんな世界があるなんてなあ、な感じ。ぶちゃけていて、ふつうの人には書けない。実はインターネット(net news)にはじめて触れたときに、alt.personel.adsとかっていうニュースグループ(掲示板)があることに気づいたんよね。いわゆる「出会い系」なんだけど、そのころはそういう言葉はなかった。どのポストにも「私は〜才のSWMです(straight, white, maleだったかな?)。知的でユーモアのセンスがあり、音楽と読書を好みます。ニューヨークで〜才ごろまでの魅力的な女性を探しています」とかっていうのがたくさん流れていて、「これなんだろう? こんなのが実際に機能するのかな?」とか思ってたんよね。あれはけっこう本気で、最近はそうなっているのね、みたいな。


百姓から見た戦国大名 (ちくま新書)
黒田 基樹
筑摩書房
売り上げランキング: 73,064

新書だとこれもよかった。歴史学もずいぶん変わった。っていうかそりゃ「悪い殿様が農民を一方的に支配してました」とかってんじゃないわよね。あ、新書だとあと『女のからだ――フェミニズム以後 (岩波新書)』が情報量多くて優れてると思った。


一万年の進化爆発

一万年の進化爆発

posted with amazlet at 14.12.29
グレゴリー・コクラン ヘンリー・ハーペンディング
日経BP社
売り上げランキング: 190,281

進化もの一般書だとここらへんか。ついこのまえまで「我々は20万年前と同じ体と心だ」みたいなのが一般的だったんじゃないかと思うけど、そのあともけっこう淘汰かかってますよ、みたいな話だと理解した。『5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まった』も同じ感じ。


心理学ものだとサブリミナル。

しらずしらず――あなたの9割を支配する「無意識」を科学する
レナード・ムロディナウ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 11,534

クルツバン先生の『だれもが偽善者になる本当の理由』を読んでればこれが一番だったけど、まだ積読状態。『錯覚の科学』もそこそこおもしろかった。


社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
ジョナサン・ハイト
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 18,902

まあハイト先生のは挙げとかないとね。


近代科学を築いた人々〈上〉科学への夢/原子/電子/力学
長田 好弘
新日本出版社
売り上げランキング: 1,150,213

19世紀の科学史みたいなのちょっとあれして読んだけどよかった。19世紀はすごい時代だ。


もう一つのヴィクトリア時代―性と享楽の英国裏面史 (中公文庫)
スティーヴン・マーカス
中央公論社
売り上げランキング: 701,328

しかし裏はこんな感じ。有名な『我が秘密の生涯』とかを中心にした19世紀ロンドンあたりの話。おもしろいのは『秘密の生涯』がおもしろいからかもしれん。


あれ、1冊足りない。これで。

「幸せ」の決まり方 主観的厚生の経済学
小塩 隆士
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 264,237

一般向けでもちゃんとしていて偉い。経済学だと『ひたすら読むエコノミクス』が超入門だけどキーワードの説明とかすごくわかりやすくて感心しました。

 

大学での学習・研究の基礎体力をつけよう

(もうすぐ出る某新入生向けテキストの1章。字数の問題でコンピューター・ネット関係削られてしまいました。)

大学は、人類が築きあげてきた学問の成果を学ぶとともに、社会や生活を改善するための知的な活動の方法を学ぶ場所です。ここではまず大学での学習のための心がまえと各種の基本的な知識について確認します。

大学生活の目的と心がまえ

皆さんは、企業に就職する、大学院に進学し学問的真理を追求する、社会に貢献する仕事をする、あるいは企業する、政治家になるなど、それぞれ様々な目標をもって入学してきたと思います。高校までは大学入学試験を通過するために画一的な教科を学ぶことが中心だったでしょう。しかし大学は違います。大学では、お仕着せの教科から進んで、社会学、政治学、経済学といった各種の本格的な学問を学ぶと同時に、社会人として、市民として本格的な知的な活動する訓練をおこないます。

「大人」になるとは、なにより、他人にまかせずに自分で的確に判断できるようになるということです。日本の法律では、二十歳を越えれば誰でも、大金のかかった契約や結婚などを、すべて自分の判断でおこなうことができる大人になります。また、近代社会における民主主義は、そうした啓蒙によって、つまり教育と学習によって、自分で判断し行動できるようになった「市民」が、さまざまな意見を寄せあい批判しあい議論するなかで立法・行政活動がおこなわれることを前提としています。

「大人」や「市民」になるためには、もちろんこれから大学で学ぶような幅広く深い知識を身につけることが重要なのですが、実は、大学で学ぶ知識そのものよりは、むしろこれから一生を通じて自発的に学習し行動する能力を高めることの方がはるかに重要です。高校までは勉強の目的は、とにかく試験問題に正しく答えることだったかもしれません。しかし、今後あなたが大人として、市民として答を出さなければならない問題に「正しい」答があるかどうかはわかりません。あなたがどういう人生を選択するかという問題を正誤問題にして採点してくれる人はいません。また、原発を再稼働するべきかどうか、人種差別的発言を法的に規制すべきかといった現在議論されている社会問題をマークシート問題にしてくれる人もいないのです。

たった4年間の大学生活で学べる知識はたかが知れています。また、大学で学んだ知識の少なからぬ部分は、学んだ時点では最新のものであったとしても、10年、20年経つうちには、たちまち古い知識、役に立たない知識、場合によってはまちがった知識になってしまいます。重要なのは知識そのものというよりは、正しく信頼できる知識を求め続け発展していく「学問」(科学)という営みの基本的な態度と、新しい知識を収集し整理し活用する力、そうした知識を常にアップデートしつづける力、そして自発的に学びつづけようとする習慣です。

実際のところ、大学卒業後に社会人がおこなう知的活動は、企業活動であれ、市民活動であれ、個人的・家庭的活動であれ、大学で行うこととまった同じ構造になっているのです。ある目標を定め、レクチャーを受け、アイディアを練り、データや資料を集め信頼性を検討し、計画や企画書を作り、会合で自分のアイディアをプレゼン(提示)し、仲間や論敵と話しあってアイディアや計画を改善し、決断し計画を実行し、その結果を評価し、次の活動につなげます。現在企業が求めている人材も、まさにそうした能力をもっている人々です。企業への就職活動で、あなたはまず自分の責任で企業の資料を収集し就職活動の見込みのある計画を立てねばなりません。課せられる「面接」はあなた自身のプレゼンの場所であり、「グループディスカッション」は、あなたが積極的に他の人と議論をして全体に貢献できるかどうかを判断するためのものです。

こうしたさまざまな活動のための知的な訓練は、おそらく自発的なものでなければ効果がありません。知的な活動の能力は、自分で考えて考え、自分で選択してみることによってしか身につけることができないのです。

まずは大学ガイドブックから

そこでまず心がけてほしいのは、常に自発的に情報を探しつづける習慣をつけることです。世の中にはさまざまな情報があり、よい情報を入手することができればそれだけうまく活動しうまく生きることができるようになります。

私が大学入学の時点で読む習慣をつけることをお勧めしたいのは、実践的なガイドブックです。

なにをするにもうまい方法があり、そのためのガイドがあります。ガイド情報へのガイドもあります。地図をもたずに登山すれば運が悪ければ遭難するでしょう。健康と美容のためにダイエットしたいと考えたときに、いきなり1ヶ月で5キロ痩せようと思いつきで決め、食事を抜けば痩せるはずだ、と考えて無理なダイエットを実行しても必ず失敗し、一見成功したように見えてもすぐにリバウンドするでしょう。しかし最新のダイエットのガイドブックを見れば、無理のない適正な体重を目指した計画を立て、食事と体重の記録をつけ、筋肉をつけるエクササイズをするべきであること、その実現のための詳しいノウハウやティプス 1)「ティプス」tipsは「ちょっとしたコツ、秘訣」です。 を知ることができます。

同じように、大学に入学はしたもののなにをしたらいいかわからない、時間割の組み方がわからない、勉強の仕方がわからないといった壁にぶつかったときには、とりあえず数冊ガイドブックを読んでみればよいのです。サークル活動や人間関係で悩んだときも、就職活動をはじめるときも、まずはガイドブックで基本的な考え方をおさえてから活動すれば苦労が減ります。もちろんガイドブックを読んでその通りに行動しても自動的にうまくいくことはありませんが、本当に自分で考えるための参考にはなります。

最近は、大学での勉強法についてのよいガイドが数多く出版されています。そのほとんどが、講義の聞き方、ノートの取り方、レポートの書き方、図書館の使い方、よいプレゼンテーションの方法など、大学生活に必要なことを事細かに説明してくれています。ガイドブックを読むコツは、同じ種類のものを複数冊目を通すことです。1冊だけだと、もしかしたらその本は偏った本かもしれませんし、オリジナルすぎる考え方をしているかもしれません。3冊程度目を通せば、おそらくどの本でもだいたい同じようなことが強調されているでしょう。それはおそらくその分野についての非常に基本的な知識です。そこを押えれば、あとは必要ならば気にいったものを購入し、自分の新しいアイディアで試行錯誤すればよいでしょう。

具体的に推薦できる書籍を章末のブックガイドにあげておきました。こうした本は大学図書館に数多く収録されていますので、早めに目を通しておくのがよいでしょう。インターネットにも多数のガイドがあります。特に「名古屋大学新入生のためのスタディティプス」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/stips/)は定評がありますので一見の価値があります 2)同じ名古屋大学の「成長するティプス先生」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/)は大学教員のためのティプスですが、学生とは逆の教員の側から大学を見てみるのも興味深いでしょう。

この文章を読んでいる人が、そうした本を自発的に手にとってくれれば、実はこの文章の目的は完了しています。以下はポイントだけを述べておくことにします。

大学教員という人々

ここで、大学教員という人々について簡単に説明しておきます。大学教員は大学における教育者であり「先生」です。しかし多くの大学教員はむしろ、その専門分野の「研究者」「学者」を自認しています。専門分野の研究者・学者として、大学教員は、より新しい知識、より信頼できる知識、より優れた意見を生産することが求められています。大学教員は各専門分野の研究のプロフェッショナルですが、中学・高校の先生たちとは異なり、実はほとんどの教員は、専門的な「教育」の訓練は受けていません 3)もちろん最近ではFD(ファカルティ・デベロップメント)として大学教育の改善のための取り組みがおこなわれ、多くの教員がとりくんでいます。 。また、高校の教師は教育委員会や先輩教師から授業内容や指導法などを細かく指導されているでしょうが、大学教員は基本的にはすべて自分の責任で、授業内容から授業方法、成績評価をとりしきります。したがって、同じような科目名の授業でも、内容は担当する教員によって千差万別になります。

高校の授業で学んだことは、多くの人々によって承認された基本的な知識でした。大学ではもっと新鮮な知見、現在発見されつつある知見、あるいは新しい問題に対する検討や解決策を紹介し、授業のなかで検討することが期待されています。学生に教えるべきことが定まっていた高校とは違い、大学の講義内容は原則的にその教員に完全に任されており、必然的にその教員の専門的な研究と研究上の立場を反映したものになります。「○○学入門」のような科目名の授業でも、教員は常に新しい知見を取り入れ紹介していきます。大学教員は、授業をおこないながら同時に自分の最新の研究をおこなっているのであり、授業のなかで新しい知見を検討し試行錯誤しながら、自分の研究を磨いているのだと理解してください。

そうした新しい知識や見解は日々更新されるものであり、また常に批判され議論されているものでもあります。A教員が賞賛していた見解をB教員が否定する、C教員がけなしていた本をD教員が推薦する、ということを見ることもあるかもしれません。これは当然のことなのです。大学の教員はまずはその分野の「研究者」であり、現在の最新の研究成果にもとづいて意見を戦わせて、可能なかぎり真理に近いものや信頼できる意見を探しもとめています。高校生の勉強はすでにできあがった知識の体系を学ぶこと(そしてその達成度を大学入学試験などでテストすること)を目標にしていたわけですが、大学生になるということは、そうした知識と学問が刷新され磨きあげられていく場に居合せ、いっしょに研究することだと考えてください。したがって、大学教員の言うことをすべて正しいと考える必要はありません。むしろ批判的にいっしょに考えるという態度をもってほしい、一方的に学ぶだけの「生徒」から、若い「研究仲間」に成長してほしいと教員は願っています。

講義の聞き方

大学では、講義形式の大人数授業も数多く受けることになります。講義は教員のレクチャーを通して、本を読むだけでは知ることのできない知識を獲得することができます。生身のトークによるレクチャーは、本を読むよりもインパクトがあり記憶に残りやすいものです。また、意外な豆知識、裏話、教員自身の考え方などを知ることができるのも魅力です。

また、講義では知識を吸収するだけでなく、各分野の研究者としての教員を観察してください。教員の上手でわかりやすいプレゼンテーション(プレゼン)のコツ、教材(レジュメ)の作り方、発音・抑揚・間の取り方などの話し方、力点の置き方、教壇での姿勢、板書する姿勢等を観察しておけば、いずれ自分がゼミなどでプレゼンするときの参考になるでしょう。

講義で聞いた知らない単語、理解できない専門用語などを放っておかないようにしてください。もしわからない言葉があったら、辞書をひく、教科書(テキスト)をチェックしなおす、各種の事典などを参照するなど工夫して、理解できないことをそのままにしない、という癖をつけてください。

授業中の約束事

ごくあたりまえのことですが、授業には約束事があります。常識で考えればいちいち列挙する必要はないでしょうが、あえていくつか挙げておきます。

  • どの授業でも、私語は厳禁です。私語は他の人の集中を妨害します。遅刻・途中退席も原則的に禁止です。一部には、講義をしている人が、テレビのなかで話をして自分たちの行動とまったく関係のないかのように行動する人がいますが、そうしたことは許されません。
  • トイレや体調不良のときは教員に軽く会釈するなど、それらしき合図して退席してください。再度入ってくるときも邪魔にならぬように。
  • 授業中の飲み物については、いまだに意見が分かれていますので、教員に個別にOKかどうか確認してください。ガムなどで口をもぐもぐ動かすのはみっともないのでやめましょう。机につっぷしての居眠りなども子どもっぽく醜いものです。
  • スマートフォンなどは授業中にも辞書やメモ等に使えて便利なことがありますし、積極的に使用を促す授業もあるようですが、気が散ることを気にする教員が大半です。特に許可のないかぎり、基本的には電源を切りカバンに入れてください。
  • イヤホンで音楽聞く、雑誌や旅行パンフを読むなどはもってのほかです。雑誌を読み音楽を聞くなら、教室よりももっとよい場所があるでしょう。
  • 一番の基本的なことは、自分を透明人間だと思わないことです。人数の多いに授業に出席していると、つい自分は誰にも気にされない透明人間だと思いこんでしまいます。しかし、どんな場所でもあなたの行動や表情は他の人に見え、影響を与えていることを意識してください。

メモとノート

メモやノートをとることは知的活動の一番の基本技術です。基本的に将来のための職業訓練だと思ってください。人間の記憶力などというものはまったく信頼できないものです。研究者であれ、ビジネスパーソンであれ、ジャーナリストであれ、秘密探偵であれ、なにをするにしてもメモをとる癖がついていなければなにもできません。

しかし実際には、メモの取り方・ノートの取り方といったことはあまりにもその人の知的活動の核心部分に近く、プライベートなものでもあるため、実際に書いたものを見せてもらうことは少ないものです。職業上の秘密、秘訣に近いものなので、赤の他人には簡単には教えられないのです。私自身、他の研究者がどういった研究ノート・アイディアメモをとっているかを見たことはありませんし、見せたこともありません。またその手法も非常に多様で、このやり方が一番だ、と言えるものがあるのかどうかもわかりません。知的活動をおこなっている人々は、常によいメモの方法を探索しているといってよいと思われます。

とりあえず言えることは、講義にかぎらず、ノート・メモをとる目標は、話の基本的な組立を再現できるようにすることだ、ということです。大学教員は高校までのように学生がノートを取りやすいように板書してくれたりすることはありません。多くの教員にとって黒板はただのメモ帳です。現在話していることのキーワードを殴り書きするだけの教員も少なくないでしょう。あまりほめられたことではないでしょうが、教員が黒板に書いたことよりも、黒板に書くことを忘れて夢中になって話している内容の方が重要なこともしばしばです。こうしたタイプの講義で、板書されたキーワードだけをノートに写してもなんの意味もありません。また、大学以降の社会で話を聞くことになる人々は、必ずしも話をしなれた人ばかりではありません。要点がわかりにくい話のなかから要点や事実を探しだすことが必要になることも多いものです。そうした場合には、なにが「重要な点」であるかということは自分で判断するしかありません。

したがって、知的訓練として、できるかぎり教員の説明を自分で文章にしてノートにする習慣をつけるべきです。また、板書せずに口頭で説明されたこともできるかぎりノートしてください。余裕があれば、特に重要だと思われることや疑問も簡単でいいのでメモしておきましょう。また、話の内容をコンパクトにまとめた文章を作ってみてください。こうした地道な自発的学習のつみかさねが知的な能力の向上につながります。

典型的なノートの取り方の詳しい手ほどきは、ブックガイドにあげた書籍を参照してください。とにかく最初は「なんでも書きつける」という態度で1時間集中して書いてみればよいでしょう。思考錯誤して自分なりの方法を見つけてください。この章のブックガイドにあげている書籍でもノートの取り方をそれぞれの方法で説明しています。さまざまな流儀があることがわかるでしょう。

またペンやノートの文具は基本的な装備なので書きやすいものを探してこだわりましょう。

ゼミ・少人数授業では積極的に発言する

少人数授業や「ゼミ」こそが、大学教育の核です。自分で調べ、考え、プレゼンし、議論することを学ぶには、やはり少人数の方が効果的です。

一番大事なのはなんらかのしかたで「みんなと協力する」という態度です。積極的に発言しましょう。教員や他の受講者の言うことがわからなかったら、すぐに疑問をぶつけ、また話題を提供しましょう。若いうちは人前で話すことがはずかしいと思ったり、「私がだめだからよくわからないのだ」「私のアイディアや疑問なんか価値がない」と思ってしまって黙りこんでしまったりすることがありますが、そうした思いを捨ててしまいましょう。実社会でのミーティングや会合では、単にその場にいて話を聞くだけでなく、アイディアを出し、疑問を明らかにして、その場にいる全員がなにかをしっかり理解すること、新しいアイディアや知識を身につけること、協力してなにかを発見することが期待されているのです。単に誰かの話を聞いてその通りに行動するだけなら、少人数での会議やミーティングの必要はないのです。アイディアや疑問を共有することこそが学問や共同作業の中心部分であり、ゼミや少人数授業はその技術を学ぶ最善の機会なのです。ポイントを簡単にあげておきます。

    • 必ずなにか発言することを心がけること。なにも発言しないということは、その会合のテーマや、その場にいる人びとに対して関心がないということを意味してしまいます。
    • 人の話を聞く態度や話をする態度や姿勢は非常に重要です。他の人が話しているときはその人の表情や口調、姿勢、その他に注目し観察すること。
    • 自分は内容がよくわかったので質問すべきことがないと思ったときでも、「質問はないです」ではなく「〜ということですね」と確認する。意外に自分が理解したと思っていたことは正確でなかったり、重要なポイントが違ったりするものです。

「本」には気をつけよう

いつの時代も、信頼できる情報を与えてくれるのは書籍・論文です。図書館にも書店にも書籍は大量にあります。しかしすべてがよい本であるとは限りません。なかには、政治的に極端な意見や、明らかにまちがった「科学」情報をどうどうと掲載している本や雑誌もあり、政治や人々の健康などに与える影響が懸念されています。また、ゼミなどで課題を出すと、時々いわゆる「トンデモ本」を参考にしてレポートを書いてしまう人がいます。そうした学生さんに、「その情報はどこから手に入れたの?」と聞くと「本に載っていた」という答えをよく耳にします。本はたしかに知識を与えてくれますが、本もさまざまでああって本として書店で売られているからいるからといって信用できるというわけではありません。

まず、その「本」は誰が書いたものかを常に意識してください。文章は必ず誰かが書いたものです。その「誰か」が信用できる人なのかどうかを確かめながら読まなければなりません。そのために役に立つのが、本の奥付(最終ページ)にある筆者の経歴や業績です。なにが専門分野なのかどんな学歴や職歴なのかを確認してください。たとえば、経歴や職業が医学や保健学となにも関係がない人が書いたダイエット本は、単なる筆者の個人的な経験にもとづいたものでしかない場合があります。そうしたダイエット法は、むしろ不合理で危険なものかもしれません。この『現代社会を読み解く』に掲載されている論文の参考文献を読んでもわかるように、学術的な書籍・論文に付けられる必ず筆者が先頭に表示されます。これは学問の世界では「誰の意見か、誰のデータか」ということが最も重要な情報だからです。先の「その情報はどこから?」という質問に対して教員としては、「○○学者の××が書いた『〜』という本を読んだ」と答えてほしいわけです。そしてその筆者が人びとからどんな評価を受けているのかも意識してほしい。

出版社にも注意してください。当然のことながら、しっかりした出版社はしっかりした本を出す傾向があり 4)世間的に有名でない出版社の本の質が低いということではありません。 、しっかりしたシリーズはしっかりしたシリーズ編集をおこなっていてしっかりした本が収録されている傾向があります  5)私見では、たとえば新書ならば中公新書は非常に高い評価を得ています。また岩波ジュニア新書は非常に良質でどれも読む価値があります。ただしこうした評価も年とともに変わりますし、先に述べたように書籍やシリーズや評価について研究者の意見が食い違うことは多々あります。 。また、一般向け雑誌や学術雑誌にも格付けが存在しています。学問の世界では、一流の学会が発行している雑誌に掲載されている論文は、「査読」という批判的な目にさらされ評価されたものなので、最も信頼がおけるとされています。こうした出版社や雑誌に関する知識は一度には身につきません。どの出版社がしっかりした出版社であるか、といったことは常に情報を集めつづけなければわかりません。

また出版年にも注意してください。新しければよいというわけではありませんが、学術的な情報は常に刷新されているので、たいていの学問領域では20年前の書籍・論文は20年前の時点での知識や意見として受けとめねばなりません。

脚注や後注、書籍の後ろにある参考文献リストや索引がしっかりしている本は内容もしっかりしていることが多いもので、一応の目安になります。

一番簡単なのは、専門の教員に推薦や評価を求めることでしょう。大学教員は研究のプロですので、自分の専門分野について勧める本は基本的に信頼してかまいません。どの本がよい本であるかということは、大学教員たちの一番の関心事であり、専門分野については常に情報交換し評価づけをおこなっています。また、オンライン書店や書評サイトの記事は玉石混交ですが、参考にはなります 6)しかしたとえばAmazonブックストアでぜんぶ最高評価、という本は私ならばあまりに評価が高すぎて関係者や「信者」による「自作自演」を疑います。

図書館を利用しよう

教員と学生にとって、大学施設で最も重要なのは図書館です。大学生と高校生との一番大きな違いは、なんといっても自由な空き時間があることでしょう。読まねばならない本、読みたい本やDVDを自分で購入するのはたいへんな負担ですので、ぜひ図書館を有効に利用してください。学生生活のはじめのうちに、場所を確認し、書架や雑誌室をひとまわりして、どこにどんな本があるかざっと見ておくとよいでしょう。

大学図書館には高校とは比べものにならない大量の本が収蔵されており、その大半は直接本を眺めることのできない閉架書架や学外書庫に納められています。そのため、実際にはOPAC(オンライン蔵書検索)等で検索して利用することになります。使い方は大学の「利用の手引き」等で確認してください。章末の図書ガイドでも図書館の利用方法について詳しい説明が掲載されています。

大学図書館は視聴覚資料も充実しています。また、府立図書館や市立図書館など公共図書館の場所もチェックしておきましょう。一般向けの軽い小説、一般生活のハウツー本などはそうした図書館の方が充実しています。また大学図書館も公共図書館も、「購入希望」「リクエスト」等を受けつけています。あなたが他の人にも有益であろうと判断した本については、積極的にそうした要望を提出してください 7)もちろんその図書館にふさわしい書籍でなければなりません。

また、必要な図書を探すために図書館カウンターの「リファレンスサービス」を利用することもできます。ある程度自分で調べてわからないことがあったり、どうすれば情報を見つけることができるか見当がつかなかった場合には、専門家が本探しを手伝ってくれたり、探し方をアドバイスしてくれるはずです。教員もしばしばお世話になっていますので利用してください。しかしなにも調べずに相談するのは避けてください。まず図書館の「利用の手引き」を熟読して、何を探したいのか、自分はどこまで調べたのかなど、しっかり質問すべきことを考えてからから訪問しましょう。

また、図書館の各種のルールは守ってください。基本的に講義と同様に私語は厳禁です。

インターネットの利用

メールの書き方

大学生になると、メールを送る相手は親しい友人だけではなくなります ので、マナーに注意してください。特に携帯電話・スマートフォンからのメールは失礼になりやすいものなので注意してください。携帯などではメール相手の友人をアドレス帳に登録しているために相手が誰かすぐにわかりますが、友人以外はあなたが誰だかわからないことがほとんどです。基本的に友人以外には携帯・スマホでのメール連絡は避けた方が無難です。

細かいマナーについては、現在、「メールの書き方」等でサーチエンジンで検索すれば適切なマナーや例文が上位に表示されているようですので参照してください。大学教員に対するメールでは、(1)自分の氏名を正しく設定する、(2)必ず「件名」をつける、(3)学部・学籍番号等を明示する、等に注意してください。

検索エンジン・Wikipedia

Google検索 (http://www.google.co.jp/)などの検索エンジンは便利なもので、多くの人が使っているでしょう。Google Scholar (http://scholar.google.com)はネットに大量にある情報のなかから、論文などアカデミックな形になったものだけを収集したものでGoogle本体より効率よく学術情報を探すことができます。日本国内の論文についてはCiNii Articles (http://ci.nii.ac.jp/)も使いやすいでしょう。

Google等の検索エンジンで検索した場合に、上位に表示されるのは一般に、人々が好んで見ているページであるとされています。その表示順番の決定の方法は、一般には明らかにされていません。また、そのページが本当に正しい情報を含んでいるのか、学問的・政治的に見て偏りがないものか、ということはまったく保証されていないことは常に意識してください。まずは書籍と同じように、誰が書いた文章なのかを意識することが最も重要です。匿名の筆者による情報、詳細がわからない企業による情報などは、基本的に信頼することができません。

Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/)もすでにほとんどの人が利用していることと思います。私自身も非常に頻繁に利用します。ただし記事の品質はさまざまですし、誤情報も少なくないので注意してください。くりかえしますが、情報の質を判断する一つの基準は、その出典(ソース)がしっかりしたものかどうかを確認することです。出典のない記事 8)Wikipediaでは出典がない記事は「独自研究」として批判されます。 は信用することができませんし、出典がついていた場合にも、その出典自体がどの程度信頼できるものかを考える必要があります。

ネットでの情報の信頼性をどう扱うかということは、現代の我々に課せられた大きな課題です。デマや誤情報、偏った意見などに惑わされることなく、情報を批判的に吟味することを学んでください。

SNS、ウェブサービス

他に、ネットではさまざま便利なサービスが提供されています。現代の大学生はそうしたサービスを効果的に利用することも意識しておかねばならないでしょう。私自身が頻繁に利用しているものを簡単に紹介してみましょう。

2014年現在、私はMediaMarkerという蔵書管理サービスを使っています 9)「ブクログ」や「読書メーター」といった類似のサービスも多くあります。 。これはオンライン書店のAmazonの情報を登録し、感想コメントや読書メモなどを記録しておくことができるサービスです。他の人々のコメントを参考にすることもできますし、同じような本を読んでいる人を「フォロー」すれば、近い関心をもっている人がどんな本をどう読んでいるかがわかり興味深いものです。興味をもった本は「ウィッシュリスト」に登録しておいて、あとで図書館に蔵書があるか探したり、まとめて発注したりしてします。もちろんAmazon自体も書籍の検索や評価を知るために頻繁に利用しています。

近い分野の研究者、ブログではおもしろい時事評論を書く人、優れた書評記事を書く人々などのブログ、ウェブニュースサイトなども研究の参考になることが多いもので、50〜100件程度、RSSリーダー(Feedly)を使って巡回しています。

各種のメモや思い付き、参考になるウェブサイトの記事の保存などは、Evernoteというサービスを利用しています。また大学と自宅のPCのファイルを同一のものにするためには、DropboxGoogleドライブというサービスを利用しています。

TwitterやFacebookなどの SNSでも近い分野の研究者どうしでフォローしあい、研究に必要な文献の情報やテキストの解釈などをカジュアルに議論することも少なくありません。独り言をつぶやき、日常的な些事について話しあうのも楽しいものです。しかし、SNSなどで発言することは、自分のプライバシーを公開することにつながります。また反社会的な言動などがネットで話題にされ「炎上」することも少なくありません。仲間うちでのネットでのいじめも社会的な問題になっています。ネットは便利であると同時にさまざまな危険もあります 10)江口聡 (2010)「ウェブ炎上・匿名・プライバシー」(加茂直樹・初瀬龍平・南野佳代・西尾久美子編,『現代社会研究入門』、晃洋書房)を参照してください。  。

こうしたネットやPCについての情報や知識、ノウハウもすぐに古いものになるものですから、自分の使う道具やサービスについての情報は常に集め判断し工夫しつづけなければならいわけです。

おわりに

これまで書いてきたような「お説教」のほとんどは、大学に入学したてのときはありがちなお説教として聞き、強制的に読まされても実は身につくものではないでしょう。結局私たちは、自分がなりたいものにしかなることができないのです。大学での勉強や研究も、もしあなたがそれを望まなければなんの役にも立たないでしょう。

しかしもしあなたが自発的になにかをし、何者かになろうとしているならば、大学が提供できることはたくさんあります。あなたによって有意義であると思われる4年間を過ごせるように、常に情報にアンテナをはり、試行錯誤を繰り返してくれることを願っています。

ブックガイド

    • A. W. コーンハウザー (1995) 『大学で勉強する方法』、玉川大学出版部。アメリカの大学向けですが、大学生の心がまえの本として定評があります。薄くて読みやすい。
    • 筒井美紀 (2014) 『大学選びより100倍大切なこと』、ジャマンパシニスト社。これも大学生のこころがまえについての本です。高校での勉強はプールで泳ぐようなものであり、大学からは海で泳ぐようなものです。
    • 佐藤望(編)(2012)『アカデミック・スキルズ』、第2版、慶應義塾大学出版会。ノートの取り方、レポートの書き方、図書館での調査などがコンパクトにまとめられています。
    • 学習技術研究会 (2011) 『知へのステップ』、第3版、くろしお出版。内容は上の『アカデミック・スキルズ』と同様ですが、ノートの取り方等はより詳しく説明されていて参考になるでしょう。
    • 田中共子(編)(2010) 『よくわかる学びの技法』、第2版、ミネルヴァ書房。これも事細かにノート、図書館、ネットでの調査などを解説しています。

References   [ + ]

1. 「ティプス」tipsは「ちょっとしたコツ、秘訣」です。
2. 同じ名古屋大学の「成長するティプス先生」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/)は大学教員のためのティプスですが、学生とは逆の教員の側から大学を見てみるのも興味深いでしょう。
3. もちろん最近ではFD(ファカルティ・デベロップメント)として大学教育の改善のための取り組みがおこなわれ、多くの教員がとりくんでいます。
4. 世間的に有名でない出版社の本の質が低いということではありません。
5. 私見では、たとえば新書ならば中公新書は非常に高い評価を得ています。また岩波ジュニア新書は非常に良質でどれも読む価値があります。ただしこうした評価も年とともに変わりますし、先に述べたように書籍やシリーズや評価について研究者の意見が食い違うことは多々あります。
6. しかしたとえばAmazonブックストアでぜんぶ最高評価、という本は私ならばあまりに評価が高すぎて関係者や「信者」による「自作自演」を疑います。
7. もちろんその図書館にふさわしい書籍でなければなりません。
8. Wikipediaでは出典がない記事は「独自研究」として批判されます。
9. 「ブクログ」や「読書メーター」といった類似のサービスも多くあります。
10. 江口聡 (2010)「ウェブ炎上・匿名・プライバシー」(加茂直樹・初瀬龍平・南野佳代・西尾久美子編,『現代社会研究入門』、晃洋書房)を参照してください。

「愛と性の西洋思想史」読書案内

最初にブラックバーン先生の『哲人たちはいかにして色欲と闘ってきたのか』読むとよいと思う。

古代ギリシア・ローマ

サッフォーの恋愛詩は岩波文庫の呉茂一訳『ギリシア・ローマ抒情詩選』にはいってます。

プラトンは『饗宴』だけでなく『パイドロス』も読みましょう。どちらも岩波文庫にあります。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』は京都大学出版会の朴先生の訳で読んだ方がよい。ちょっとむずかしい。

ディオゲネス・ラエルティオスの『哲学者列伝』は古代ギリシアの哲学者たちの言動の記録、ゴシップも多くて楽しめる。哲学者たちの性生活もかいま見える。とくに享楽的な生活を送っていたとされるアリスティッポスに注意。

オウィディウスの『アルス・アマトリア』はぜひ読みましょう。いくつか邦訳がありますが、とりあえず岩波文庫の沓掛先生の『恋愛指南』で。古代ローマ人たちの愛欲生活は木村凌二先生の『愛欲のローマ史』がおもしろい。アルベルト・アンジェラっていう先生の『古代ローマ人の愛と性』もよい。

アウグスティヌスの『神の国』で、神様「知恵の木の実を食べてはならん」って言ってんのにアダムとイブが食べちゃったせいで、セックスについて知り性欲に悩まされてつ生殖するようになったのだ、みたいな話がある。『告白』もおもしろいので読みたい。最初の告白文学。「性欲に困った僕は、神様に「性欲をなくしてください」とお願いしたんですが、「でもいますぐじゃなくて」ってつけ足しちゃいました」みたいな。ははは。

(告白文学というくくりはおもしろくて、ピコ・デラミランデラの『告白』、ルソーの『告白』、トルストイの『懺悔』も読みたい。)

中世

中世はよくわからない。カペルラーヌスの『宮廷風恋愛の技法』ぐらい。

トリスタンとイゾルデ神話については、ドニ・ド・ルージュモンの『愛について』が名著とされているけどどうなのか。

哲学者のアベラールとその愛人エロイーズの話が中世的な熱烈な恋愛の話として有名なんですが、これってどうなんかな、みたいな。岩波文庫の『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』読んでみてください。私はアベラール先生はだめな奴だと思うです。

近世

モンテーニュの『エセー』の第3巻第5章の恋愛・セックス論「ウェルギリウスの詩句について」は岩波文庫の5巻本のやつか、最近出た白水社の宮下志郎先生の訳でないと読めません。腐女子傾向のある人は第1巻28章『友情について』も読みましょう。

哲学でも思想でもなんでもないけど『サミュエル・ピープスの日記』おもしろいので読みましょう。ニュートン先生ともつきあいのあった公務員の性的生活。でもいきなりは読めないので、とりあえず臼田先生の『ピープス氏の秘められた日記』(岩波新書)で。

ルソーは『エミール』『告白』。『新エロイーズ』は入手困難。

カントの女性論・男性論は『人間学』にあります。『倫理学講義』(『コリンズ道徳哲学』)には性的関係についての考察が含まれています。婚外交渉や売買春だけでなくマスターベーションもたいへんな悪徳らしいです。

「サドマゾ」の語源のマルキ・ド・サド。『悪徳の栄え』など。岩波文庫に『美徳の不幸』入ってますが、エッチというよりは哲学的です。カントあたりの哲学とすごく関係があるんですわね。

ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』は女子教育運動や女性解放運動の原点ですので必ず読みましょう。

スタンダールの『恋愛論』は読みにくいですが、非常に有名なので「結晶作用」のところだけは読みましょう。

キェルケゴールの『あれか/これか』。「誘惑者の日記」だけでまあいいでしょう。ドンファン論とかもおもしろいんですけどね。一般読者がキェルケゴールを読むのは無理でです。

エンゲルの『家族、私有財産、国家の起源』はそれ以降の女性解放運動などにも影響を与えています。ただし中身の歴史的事実に関する話はほとんどぜんぶ間違いということになっています。

 

20世紀になると

フロイトの『性欲論』とラッセルの『結婚論』は影響力があったのでぜひ読みましょう。

古典小説

ラファイエット夫人『クレーブの奥方』。ラクロ『危険な関係』。ゲーテ『若きウェルテルの悩み』、スタンダール『赤と黒』『感情教育』、ジェーン・オースティン『高慢と偏見』、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、D.H.ロレンス『チャタレー夫人の恋人』。

こうした小説の案内は木原武一『恋愛小説を愉しむ』(PHP新書)など。

社会心理学、進化心理学

最近の心理学研究は、とりあえず麻生一枝『科学でわかる男と女の心と脳』と金政他『史上最強図解 よくわかる恋愛心理学』あたり。斉藤勇先生とかもたくさん出してますが、ちょっと古いし一般向けすぎます。松井豊『恋ごころの科学』は立派な本でしたが、もう20年前なので情報が古いです。

進化心理学ではデヴィッド・バスがとにかく大物です。『女と男のだましあい』『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男』は重複するネタが多いですが必読。ミラーの『恋人選びの心』あたりまでいけばだいたい恋愛とかそういうのについて進化心理学がどういうことを考えているのかがわかる。

 

2013年に読んだ本ベスト10

風雲児たち 幕末編 21 (SPコミックス)
みなもと 太郎
リイド社 (2012-11-29)

昨年末から1月にかけて読みました。おもしろいねえ。やっぱり大志は大事だ。それぞれ自分の役目があります。


非常にすっきりしていて頭よくなった気がする。歴史は大事です。


ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー
早川書房
売り上げランキング: 12,336

実験倫理学というか。我々がどんな悪いやつであるか。いろいろ味が悪いんだけど必読。


ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
ダニエル・カーネマン
早川書房
売り上げランキング: 1,222

カーネマン先生直々の解説。必読。


あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか
レイチェル・ハーツ
原書房
売り上げランキング: 95,583

嫌悪感というのは大事です。


WILLPOWER 意志力の科学

WILLPOWER 意志力の科学

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ロイ・バウマイスター ジョン・ティアニー
インターシフト
売り上げランキング: 10,921

最近出たやる気本ではこれがベスト。


失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

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吾妻ひでお
イースト・プレス
アル中怖いです。

ユーモア心理学ハンドブック
ロッド・A. マーティン
北大路書房
売り上げランキング: 587,017

笑いというのの心理学的分析。ハーレー先生たちの『インサイドジョーク』の出版が待たれる。


ビートルズ音楽論―音楽学的視点から
田村 和紀夫
東京書籍
売り上げランキング: 473,718

今年一番関心した著作家は田村先生。なんというか音楽を本当によく理解している感じがする。


The Oxford Handbook of Happiness (Oxford Library of Psychology)
Oxford University Press, USA
売り上げランキング: 49,519

勉強になったのはこれかな。心理学、哲学、宗教学と多方面からアプローチ。対立する立場もいろいろ紹介されていて見通しがいい。ペーパーバックとKindleも出てるはず。でも高いよね。

 

赤川学先生の『子どもが減って何が悪いか!』

ゼミとかではいろんな本のおもしろいところを紹介してもらったりするのですが、最近赤川学先生の『子どもが減って何が悪いか!』(ちくま新書、2005)ってのを紹介してもらいました。10年近く前でかなり古い感じですが、「データをちゃんと見よう、自分で分析してみよう」みたいな感じでよい本だと思ってました。

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)
赤川 学
筑摩書房
売り上げランキング: 51,019

でもその発表ではなんかへんなところがあって、気になるのでメモ。

p.81から赤川先生は「産みたくても産めない仮説」に疑問を呈しているのですがここの議論どうなんですかね。女は産みたくても経済的理由や仕事と子育ての両立の困難さから産めないのだ、という議論というか仮説というか通念があるけれども、この本の執筆時の2004年ごろにはそれを直接検証するデータはない、と(p.82)。そこでまあ岡山市の調査を使ってみていている。何年の調査かわからないんだけど、 これかなあ。 http://www.city.okayama.jp/contents/000053197.pdf ……あ、注を見ると2000年の調査ってことです。(岡山市はその後も調査継続してみるみたいですね http://www.city.okayama.jp/shimin/danjo/danjo_s00092.html

この調査の質問のなかに、「最近、女性が一生の間に産む子どもの数が少なくなっていると言われていますが、あなたはその原因をなんだと思いますか」っていうのが含まれてるのね。学生様はこれを紹介してくれた。

私それ聞いて、これってひどい調査だなと思いましたね。「その原因をなんだと思いますか」って聞いていったい何がわかるんだろう?少子化の原因がわかるんではなく、一般の人が少子化の原因について「どう思いこんでいるか」ってのがわかるだけですよね。そんな調査してどうすんだ、と思いました。もしそういう調査をしたいのであれば、希望する子どもの数を聞いて、実際の子どもの数を答えてもらって、もし少なかったら「なんでもっと産まないんですか?」って聞けばいい。これならちゃんとした答が得られそう。んで学生様にはそこらへんどう考えてるのかつっこんでしまったんですが。

赤川先生の本を読んでみると「これらの質問は、回答者に「少子化の原因を何と考えるか」をたずねたにすぎず、「少子化の原因」を直接検証するものではない」(p.82)ってちゃんと書いてる。偉い。まあ社会学者だったらもちろんこう書きますわよね。安心しました。「このような調査結果をもとに、「少子化の原因はかくかくで、だから、しかじかの対策が必要だ」と主張することは、大衆迎合的なポピュリズムではあるかもしれないが、社会政策設計としては邪道である」とおっしゃっておられます。正しい。

しかしこっから先がわたしわからんのよね。回答では「経済的負担がでかいから」みたいなタイプのがかなりの数を集めてるんだけど、赤川先生によれば、こう答えた人がどういう人かをちゃんと分析しみると、既婚者や子どもが多い人の方が、未婚者や子どもがいない・少ない人よりも統計的に有意に多い、ってことになる。こっから赤川先生は次のように推論するわけです。

仮に「産みたくても産めない」仮説が正しいとするならば、子育ての経済的負担や、仕事と子育て両立難を感じる女性は、既婚者よりも未婚者に、子どもが多い人よりも少ない(ないしいない)人に多いはずである。なぜならそれが、結婚や出産をためらわせる理由だからである。しかし事態は、まったく逆である。未婚者よりも既婚者が、子どもがいない人よりいる人が、子育ての経済的困難をより感じている。育児ネットワークの多い有配偶女性のほうが、両立難を感じている。」(pp. 85-86)

あれ、なんかおかしいですよ。質問は「(一般の)少子化の原因は何だと思いますか」ってな感じなんだから、自分が経済的負担や両立難を感じているかどうかではなく、一般の人はどう感じていると思ってるかを答えているはずなので、こういうことは言えないんじゃないかな。

赤川先生はここからさらに、子育て支援したり両立支援しても、「子どもがいない人が出産を選択するっていう効果をもつとは言い難い」(p.86)、みたいな結論にもってっちゃってる。なんだかなあ。

これを言うためには、たとえば「もし経済負担が問題なのであれば、子なしの人の方が子ありの人よりも「社会全体の少子化の原因を経済的負担と答える傾向が高いはずだ」ってことが言えなきゃならんけど、これはどっから出てくるんだろう?

既婚者子ありの方が経済的負担や両立難を感じているからといって、未婚者や子なしの人々が未婚や子なしでいる理由の大きなものの一つに経済的負担や両立難が入ってないともいえない。まあだめな調査からはなんもわからん、としか言いようがないんではないか。

私これわからんですよ。おかしな調査をもとに勝手な推論をしてしまってるんじゃないんかな。まあ細かいところだけど、慎重なよい本だと思ってたのに残念です。余計なこと書かないで、「こういう調査じゃまともなことわからんよ」ぐらいにしておいてほしかったです。赤川先生ぐらい大物になると、学生様が読んでいろいろ信用しちゃうので困ります。(っていうか私が「赤川先生だったら安心だよ」みたいなん言ってしまったのがいかんかったです。)

まあ私こういう社会調査やデータ扱うのはぜんぜん勉強したことないのでおかしいこと考えちゃってるのかもしれないので、まちがってたら教えてください。

進化と道徳の本

進化と道徳の関係について、いろいろ本があるなあ、とか思ったり。いっぱいありすぎてわけわからんわね。学生様になにをおすすめすりゃいいのか。私もずいぶん読んだんですが、特におすすめのやつ。

超基本書。読んでない人は読書人としてモグリ。

利己的な遺伝子 <増補新装版>
リチャード・ドーキンス
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 9,292

偉い先生の。内井先生の名著だと思う。いまとなってみるとつっこみというか情報が不足しているかもしれないけど、その状況で書いたものとしてはすばらしい。でもまあ倫理学者向けだわね。

進化論と倫理 (Sekaishiso seminar)
内井 惣七
世界思想社
売り上げランキング: 726,461

これは古いか。

徳の起源―他人をおもいやる遺伝子
マット リドレー
翔泳社
売り上げランキング: 651,552

おもしろかった。孤独な人は読みましょう。孤独は健康に悪いです。ははは。

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか
ウィリアム・パトリック ジョン・T・カシオポ
河出書房新社
売り上げランキング: 105,508

読みやすい一般書。

友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学
ロビン ダンバー
インターシフト
売り上げランキング: 13,197

ハイト先生は2000年代で倫理学にとって一番重要な人々の一人。

しあわせ仮説
しあわせ仮説

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ジョナサン・ハイト
新曜社
売り上げランキング: 122,332

道徳の問題考えるときに進化心理学とか社会心理学とかちゃんとおさえておかないとならん時代。

進化と感情から解き明かす 社会心理学 (有斐閣アルマ)
北村 英哉 大坪 庸介
有斐閣
売り上げランキング: 71,091
人間の本性を考える  ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)
スティーブン・ピンカー
NHK出版
売り上げランキング: 189,320

ブックガイド: 恋愛心理学のおすすめ本

ひさしぶりに学生様用お説教ネタ。

卒論を恋愛関係で書きたいっていう学生様はけっこういるわけですが、最低限おさえておく心理学系の本。ゴミみたいな本が多いので、まともな学問的な心理学の本を読むのがコツです。

スーザン・ヘンドリック先生はとりあえず権威なので2冊読む。どっちか1冊なら『恋愛学』の方。

スーザン ヘンドリック クライド ヘンドリック
乃木坂出版
売り上げランキング: 798,622

 

「恋愛学」講義

「恋愛学」講義

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スーザン・S. ヘンドリック クライド ヘンドリック
金子書房
売り上げランキング: 422,185

下の本は実際現在国内最強なので必ず読む。一番最初に読んだ方がいいかも。

史上最強図解 よくわかる恋愛心理学
金政 祐司 相馬 敏彦 谷口 淳一
ナツメ社
売り上げランキング: 41,997

生物学、進化論、進化心理学から攻めるのが今風のやりかたです。

ちょっと古いけど悪くはない。

男と女の対人心理学

男と女の対人心理学

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和田 実
北大路書房
売り上げランキング: 471,712

下のはいま一番新しい感じ。翻訳にちょっと難があるかもしれないけど最新。これ読めれば中級。けっこうむずかしくて、心理学一般ついてそれなりの知識がないと読めない。

愛の心理学

愛の心理学

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北大路書房
売り上げランキング: 665,928

古いけどこれも悪くない。基本書。

恋ごころの科学 (セレクション社会心理学 (12))
松井 豊
サイエンス社
売り上げランキング: 26,637

フィッシャー先生も権威。

人はなぜ恋に落ちるのか?―恋と愛情と性欲の脳科学

ヘレン フィッシャー
ソニーマガジンズ
売り上げランキング: 448,119

恋愛っていうより性欲とか浮気とかセックスとかそういう暗い方になっちゃうけどバス先生は読んでおかないとならない。

女と男のだましあい―ヒトの性行動の進化
デヴィッド・M. バス
草思社
売り上げランキング: 319,595

<

一度なら許してしまう女 一度でも許せない男―嫉妬と性行動の進化論
デヴィッド・M. バス
PHP研究所
売り上げランキング: 420,679

 

2012年に読んだ本ベスト10

 

叶恭子の知のジュエリー12ヵ月 (よりみちパン!セ)
叶 恭子
理論社
売り上げランキング: 62,722

この本が一番衝撃的だったかなあ。「わたくしは自分の価値観で生きています。いろいろなことを言われているのは知っていますけれども、それによってわたくしの価値観や生き方を変えるつもりはありません。たとえ、そのことによって誰からも好かれないとしても、かまわないのです。」という最初の文章にぶっとばされて鼻血出そうでした。わたくしは、とにかく、自己肯定がなによりたいせつなのだということを、まなんだのです。

 

風雲児たち (20) (SPコミックス)
みなもと 太郎
リイド社

非常に勉強になりました。世のため人のために生きることは大事。1冊読むのがとんでもなく時間がかかります。日本史で習ったことが「こういうことなのか」と理解できるようになるので、高校生は受験のためにも大志を抱くためにもぜひ読みましょう。そして学問は大事。

 

遺伝子の不都合な真実: すべての能力は遺伝である (ちくま新書)
安藤 寿康
筑摩書房
売り上げランキング: 5,941

タイトルは刺激的だけど、現在までの人間の形質や行動についての遺伝学研究を慎重にコンパクトにまとめた良書。この先生のは他のも「そうなのか」って感じでおもしろい。『心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観』』 はもう古いんですが、遺伝とかについてひっかかっていた疑問に答えてもらって有用でした。『遺伝マインド –遺伝子が織り成す行動と文化』 も。

ワインバーグの文章読本

ワインバーグの文章読本

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Gerald M. Weinberg ジェラルド・M・ワインバーグ G.M.ワインバーグ
翔泳社
売り上げランキング: 229,315

なにか書いたりするためには石を拾って歩いてつみあげて壁を作るのだそうだ。私はまだできないけど勉強にはなった。大学院生は必読だと思う。あと『英文翻訳術』も勉強になりました。

よいこの君主論 (ちくま文庫)
架神 恭介 辰巳 一世
筑摩書房
売り上げランキング: 7,972

マキアベッリ先生の『君主論』を小学生にも読めるようにしたもの。生徒様はこれで勉強してクラスを制圧し愚民をおさえこみ、いじめのない善政をしきましょう。教授会でも使えないだろうか。

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか
ピアーズ・スティール
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 21,522

先延ばしは私の宿病。同じようなものを数冊読んだけど、これはおもしろかった。克服できないまでも症状を軽くするためになんとかがんばります。 『自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学』も堅くてすごい本でした。

 

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える
アビジット・V・バナジー エスター・デュフロ
みすず書房
売り上げランキング: 1,992

これもきっちり経済学の立場から貧困を真面目に考えている。倫理学とかよりこういうのの方が重要なんではないか、みたいな。『幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)』もとてもよかった。あと『この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講』『この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講』の2冊はとてもわかりやすい。

人間仮免中

人間仮免中

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卯月 妙子
イースト・プレス

統合失調症の闘病記なわけだけど、読むドラッグとしか言いようがない。そして人間ってのは豊かなものだな、みたいな。でもこういうのに弱い人は多いだろう。うなされます。

 

隠れた脳

隠れた脳

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シャンカール・ヴェダンタム
インターシフト
売り上げランキング: 130,826

これは恐い本。適応的無意識とか認知バイアスとか。各種の偏見、集団的無行動、カルトとかがどうやって発生するのか。とにかく「自分を知る」ことは難しい。同種の本もけっこう読みました。

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学
ジョー・ナヴァロ トニ・シアラ・ポインター
河出書房新社
売り上げランキング: 350,412

第一印象とかしぐさとか。細かいことがいろいろ勉強になる。 『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』もよい。学生様に一部読ませたらたちふるまいが美しくなりました。学生様は『論理的に話す技術 相手にわかりやすく説明するための極意 (サイエンス・アイ新書)』ぐらい読んどくといいと思う。話し方だけでなく、聞き方や態度についても触れている。

 

ブックガイド:倫理学入門の読書順

サンデル先生がテレビで放映されたり児玉聡先生の『功利主義入門』が出たりして(英米系の)倫理学が人気なようです。入門書を読んでいくおすすめの順番を考えたり。

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)
児玉 聡
筑摩書房
売り上げランキング: 11,458

まあやっぱりここらへんから。非常にクリアなのでどんな人でも読めるはずです。

プレップ倫理学 (プレップシリーズ)
柘植 尚則
弘文堂
売り上げランキング: 322,057

これは超初歩。クセがなくていいけど、ちょっと教科書っぽすぎるかもしれない。

2015年に出た品川哲彦先生の『倫理学の話』もここらへんで読みたい。大陸系の考え方も検討しているのがポイントです。

倫理学の話

倫理学の話

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品川 哲彦
ナカニシヤ出版
売り上げランキング: 209,026

 

まあでもやっぱり英語圏のやつをちゃんと読みたい。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
マイケル サンデル
早川書房
売り上げランキング: 1,748

最初の方だけ読んでわかったつもりにならないで、最後まで読みましょう。ネットで「トロリー問題で議論するサンデルは〜」って言ってるひとたちは最初の方しか読んでないみたいです。サンデル先生自身の立場はうしろの方に出てくる。

現実をみつめる道徳哲学―安楽死からフェミニズムまで
ジェームズ レイチェルズ
晃洋書房
売り上げランキング: 214,525

いま国内で出ているなかで、一番標準的な倫理学の教科書として使えるのはこれです。

 

法哲学

法哲学

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瀧川 裕英 宇佐美 誠 大屋 雄裕
有斐閣
売り上げランキング: 116,507

『法哲学』ってことになってるけど、倫理学と共通の部分も多いし、権利や自由などの面倒な概念についてわかりやすい説明があるのでおすすめ。

動物からの倫理学入門

動物からの倫理学入門

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伊勢田哲治
名古屋大学出版会
売り上げランキング: 237,511

伊勢田先生のこの本も入門書としてとてもよい。肉食とか菜食主義とかそういうのからはじまって具体的な問題を通して進んでいくので実感しやすいはず。

 

新版 現代政治理論

新版 現代政治理論

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W. キムリッカ
日本経済評論社
売り上げランキング: 38,464

これはほぼ専門書というか、この本読みおえたら倫理学入門はおしまいです。「倫理学」の授業のテストでは必ずAをもらえるでしょう。

私個人としては、本当は倫理学ってのは、上にあげたような「正しさ」「正義」「権利」なんかだけじゃなく、もっと個人的な幸福、よい生き方、それにさまざまな道徳的・非道徳的感情を扱うもんだと思うけど(そこに政治哲学や法哲学との考察対象の違いがある)、そっち方面でよい入門書は今のところあんまりおもいつかない。

文章本

まあレポートとか卒論とか、文章は簡単には書けないです。私もこの歳になってもいろいろ反省したり。大学生ともなれば、はやいうちに「文章の書き方」関係のハウツーは何冊か読んでおく必要があります。

論理的に書く方法―説得力ある文章表現が身につく

論理的に書く方法―説得力ある文章表現が身につく

この本よい本だと思うので、amazonで安かったらどうでしょうか。「よい文章を書く」といよりは「よくない文章を見わける」「どこがよくないのかを具体的に指摘できるように」「よりよい文章に書き換えられるように」を目標としているのがなかなかよいです。
学生さんはお金がないのもあってこういう本にお金を使わない傾向があるみたいですが、最低限の自己投資はしなきゃならんです。買いましょう。けっきょく企業で働くとかってのも、企画書や報告書、マニュアルといった書類を作るのが主な仕事になるんでね。
文章のよしあしに敏感になると、好ましい副作用として、おかしな文章やおかしな意見やおかしな人を見わけることができるようになるかもしれません。
あれ、文庫になってるのね。

論理的に書く方法 (PHP文庫)

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同じ著者の

論理的な作文・小論文を書く方法―ナルホドと読み手を納得させる

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もいいかも。注文してみた。
あと大学生としてはamazonやbk1といったオンライン書店のアカウントを一つもっておくべきだと思いますね。本屋で探せない本もオンラインなら買えるし早い。ただしクレジットカードの使いすぎには注意してください。
お金がないひとは図書館を有効利用すること。大学図書館には購入希望を出す。京都市立図書館はかなりの品揃えで、オンラインで一番近い図書館に配送してくれます。便利。CDも借りられるよ。

梅棹忠夫先生を読みなおしてみる

ちょっと興味があって、「知的仕事術」の系譜を見てみたり。
昭和にはやった「知的生産」とかってで流行になったのはどんなもんなのか、とか。 東谷暁先生の『困ったときの情報整理 (文春新書)』を参考に*1

まずどうもとにかくここからはじまるらしい。未読だと思う。

整理学―忙しさからの解放 (中公新書 13)

整理学―忙しさからの解放 (中公新書 13)

川喜田先生登場。ブレインストーミングとかも流行る。一応読んだけど理屈っぽいばっかりで。

発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))

発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))

とんでもない影響力をもった名著なのか怪書なのか。読みやすいのがアレだ。B6カードは大学生のときに1袋だけ買ったことがある。

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

これも流行したらしい。読んでないと思う。いや、読んだかな?印象にない。

考える技術・書く技術 (講談社現代新書)

考える技術・書く技術 (講談社現代新書)

渡部先生のは高校生のときに読んで、ちょっとあこがれたりした。恥ずかしすぎ。まあでも「教養」ってのはいつでもよいものだ。「書斎」なんてばかげたものに男たちがあこがれはじめる→おそらく現在まで続く。ホットミルクはいまだに時々飲んでる。

知的生活の方法 (講談社現代新書)

知的生活の方法 (講談社現代新書)

ここらへんからは同時代。立花先生が川喜田先生批判したりして。「ああいうのは無能な連中がやること。賢い奴は違うぞ」

「知」のソフトウェア (講談社現代新書)

「知」のソフトウェア (講談社現代新書)

 

もっとプラクティカルになって。システム手帳ブームが来たけど私はお金
なくて買えなかった。買っても使えなかった。ここらへんバブル時代の印象と
結びついている。山根先生の下の2冊は読んでないと思うけど、週刊誌ではよく
見かけていた。

スーパー書斎の仕事術 (アスペクトブックス)

スーパー書斎の仕事術 (アスペクトブックス)

スーパー手帳の仕事術

スーパー手帳の仕事術

傑作シリーズ。失なわれた10年でもがんばる。「整理法」より「ToDoボード」の方が印象強い。
(超整理袋システムはだめ)

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

「超」整理法〈3〉 (中公新書)

「超」整理法〈3〉 (中公新書)

 

あと「ワープロ活用」の系譜が80年代後半~90年代前半にあるはずだよな。

んで、梅棹先生の読書論。

田中美知太郎氏は、材料の配合をかんがえてバランスのとれた健康的な
食事を用意する一種の料理法のようなものが、読書についてもかんがえられるであろうとのべている。(p. 98)

ふん、おもしろいね。なんかギリシア的だ。

「本というものは、はじめからおわりまでよむものである。」そうですか。
前の文章もそうだけど、梅棹先生は日本語表記にも一応の影響を与えてるよな。
(第7章でいろいろ提案している。私は賛成できないけど。)

読書記録(確認記録と読書カード)つけなさい。
そうですか。「はてな」でもそういう人は多いですね。

本は「一気に読む」。そうですか。

「傍線をひく」。最初はノートをとらずに「心おぼえの傍線をひくほうがよい。とりあえずこうして印をつけておいて、かきぬきもノートも、すべて一度全部をよみおわってからあと、ということにするのである。」そうですか。

「線をひくのに、赤鉛筆や青鉛筆をつかうひともすくなくないようだ。・・・
わたしは2Bの鉛筆で、かなりふとい線を、くろぐろといれる。」そうですか。
森口先生もそうしているようです。まあボールペンとかのインク類より鉛筆が優秀ですよね。
これは先生のこの本で一番同意できる点です。

他に「読書ノートをつける」「本は二どよむ」「本は二重によむ」とか
まあここらへんは言いたいことはわかります。

全然予想してない文章に出会ったのはここ。

たくさん本をよんで、それから縦横に引用して何かをのべる。いかにも
学問的で、けんらんとしているようにみえるが、じつはあまり生産的なやりかたとは
おもえない。わたしのやりかたでいけば、本は何かを「いうためによむ」のではなくて、
むしろ「いわないためによむ」のである。つまり、どこかの本にかいてあることなら、
それはすでに、だれかがかんがえておいてくれたことであるから、わたしがまたおなじことを
くりかえす必要はない、というわけだ。自分のかんがえがあたらしいものかどうかを
たしかめるために本をよんでいるようなものだから、よんだ本の引用がすくなくなるのは
あたりまえなのである。こういうふうにかんがえると、引用のすくないことをはじる
必要はない。むしろ一般論としては、引用のおおいことのほうが、はずかしいことなのだ。
それだけ他人の言説にたよっているわけで、自分の創造にかかわる部分がすくないということになるからだ。(pp. 116-7)

なるほど、これか!ちょっと目が覚めた。
霊長類研や人文研の気高く美しい伝統。独創性。
ちょっと前の京都新聞で、今西錦司先生あたりを中心にした研究会では
「文献調査はいらん、オリジナルのデータとオリジナルな考察を出せ」とかってのが
標語だったとかいう主旨の記事を読んだのだが、それを思いださせる。

梅棹先生の言うことはわかる。
しかしこれが(志の低い学生には)なんか悪影響を与えていたかもしれないとも思う。けっこう微妙。
梅棹先生たちはそれでOKだったわけだし、非常に創造的な仕事ができた。
でもそれはその前の世代がちまちまいろいろやってたおかげだろう。
そのちまちまが共有されている間はそれでよかったろうが、
梅棹先生たちを読んで育つ人びとは
けっきょく同じ発明を二度三度くりかえさなきゃならなくなったんじゃないかな?
そんなことはないか。私自身は引用が多かったり、他人の言説にたよったりすることはなにも恥ずかしいと思わないし、恥ずかしいと思うべきでもないと思う。さっきの田中美知太郎先生の文章も どこに書いてあるのかわかんないしね*2。まあ新書だからあれだけど。

「京大人文研的なものの功罪」ってのはなんかありそうな気がする。

*1:この本自体はあんまり強い印象を与えるわけではないけど、歴史的概観が役に立つ。

*2:おもしろいと思っても調べようないじゃん。手前の手間はぶいて生産性とやらを上げて、それでどうした?とか言いたくなるところがある。もちろん梅棹先生にそんなこと言う気はない。

ミル自伝

みすず書房から出た村井章子訳の『ミル自伝』(「大人の本棚」とかってシリーズ)。解説のたぐいがまったくない。訳注もないみたい。人名ぐらい注つけてもいいのに。 『自伝』原稿出版の経緯 1)生前は出版されなかったし、養女のヘレン・テイラーがいろいろ手を加えた部分がある。ミルが自分の性生活について書いてるのが残っていればおもしろかったのにね。ハリエットテイラーとはずっとプラトニックでした、とか。 や実際に訳出した版や原題 2)そりゃAutobiographyに決まってるけど。 すらもわからんのだが、みすず大丈夫か?光文社の例のシリーズの対抗なんだろうけど、ミルが誰かもわからず、人名も誰が誰やらわからんという状態でだいじょうぶなんだろうか。学生に勧めたいような勧めたくないような。微妙。

訳文は読みやすくていいんだけど、ちょっと文学臭が薄くなってしまっているような気がする。まあしょうがないかな。

たとえば

At first I hoped that the cloud would pass away of itself; but it did not. A night’s sleep, the sovereign remedy for the smaller vexations of life, had no effect on it. I awoke to a renewed consciousness of the woful fact. I carried it with me into all companies, into all occupations. Hardly anything had power to cause me even a few minutes oblivion of it. For some months the cloud seemed to grow thicker and thicker.

有名なこの「危機」 3)どうでもいいけど、ミルの「危機」の時代にインターネットがあったらどうだったろうとか考えちゃう。やっぱり2ちゃんねるメンヘル板や半角板に出入りしたかな。 の箇所は次のようになってる。

はじめのうち私は、すぐに抜け出せると思っていた。だがそうはならなかった。日々の小さな悩みを忘れさせてくれる一夜の眠りも、このときばかりは効き目がなく、朝になればたちどころに自分の惨めな状態を思い出す。友といるときも、仕事をしているときも、逃れられない。ほんの数分でいいから忘れさせてくれるものがあればよいのに、それもなかった。数か月の間、私はますます深みにはまるように感じられた。

岩波文庫の西本正美先生の訳だとこんな感じ。(戦後の版のやつが見つからないので戦前のやつの表記を変更して引用。みつかったら入れかえる)

最初私は、こうした心の雲はひとりでに消えるだろうとたかをくくっていた。ところが中々そうはいかなかった。人生の些細な煩悶を医するにはこの上もない薬である一夜の安眠も、私の悩みには何の効き目もなかったのである。私は目を覚ますと、新たにこの痛ましい現実に対する意識が更生するのを覚えた。いかなる友と交わるにも、如何なる仕事をするにも、この意識は私に常につきまとっていた。せめて数分間でもそれを私に忘れさすだけの力をもったものはまずなかったのである。数カ月間は、この雲はますます濃くなって行くのみであるように思われた。

この暗い雲 4)リストに”Nuages gris”っていう曲があるね。あら、International Music Score Library Projectって閉鎖したのか。  っていうイメージは大事だと思うんだけどね。陳腐だけど、陳腐さはミルの魅力の一部文学作品だとやっぱり残さないわけにはいかないだろう。でも村井先生の訳し方もありだな。装丁とか悪くない。このシリーズはけっこう楽しみだ。けど、2000円以内に収めたかった。無理か。

References   [ + ]

1. 生前は出版されなかったし、養女のヘレン・テイラーがいろいろ手を加えた部分がある。ミルが自分の性生活について書いてるのが残っていればおもしろかったのにね。ハリエットテイラーとはずっとプラトニックでした、とか。
2. そりゃAutobiographyに決まってるけど。
3. どうでもいいけど、ミルの「危機」の時代にインターネットがあったらどうだったろうとか考えちゃう。やっぱり2ちゃんねるメンヘル板や半角板に出入りしたかな。
4. リストに”Nuages gris”っていう曲があるね。あら、International Music Score Library Projectって閉鎖したのか。

読書『女が男を厳しく選ぶ理由』

女が男を厳しく選ぶ理由(わけ)
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だいたい同じような話だろうと思っていると、ちょっとづつ進んでるのね。この手の学問やってる人はたいへんだろうけどやりがいもあるだろうなあ。ただ、たしかにこの本はかなり誤解されやすような気がする。
的確な書評は http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20080116#1200490717 。もう私は shorebird さんが紹介してくれたものを順に読んで生きていくわけだ。

個人的におもしろかったのは、この人たちが金髪碧眼嗜好をわりと普遍的なものと考えている様子なところ。私自身の内観ではそういう嗜好をさっぱり見つけられないのでなんか愉快。さすがにバイキングたちの息子は違う。風に飛ばされてきた髪の毛一本から、「金髪のメリザンドよ」とやっちゃうに違いない。きっとわたしのご先祖にはそういう淘汰がかからなかったのだろう。南方系? カナザワ先生もブロンド好きなのかなあ。あ、ブロンドの女は馬鹿偏見の説明 1)それは若いから。 もよかった。 でもニキビ面馬鹿 2)若いから 仮説とか背の低いのは馬鹿 3)若いから 仮説が成立しなかったのはなぜか?他のところも、この人々独自の説明はなんかちょっと甘いんだよな。

References   [ + ]

1. それは若いから。
2, 3. 若いから