セックスの哲学」カテゴリーアーカイブ

バス先生の新刊が出たよ(1) セックス相手獲得に成功してる男の方がレイプしやすいそうです

進化心理学者のデヴィッド・バス先生が新しい本 When Men Behave Badly 出して、ファンなので苦手な英語で読むわけですが、おもしろいっすね。

続きを読む

Hits: 8

セックス同意年齢の問題(6) ジュディス・レヴァイン先生の『青少年に有害!』

アメリカにジュディス・レヴァイン先生というフェミニストのジャーナリストの先生がいて、2002年『青少年に有害!』って本を書いて、アメリカではかなり話題になったみたいですね。日本語訳もあります。それの第4章が「激情犯罪」(情熱の犯罪 crime of passion だと思う)という法定レイプと同意年齢の話にあてられています。

続きを読む

Hits: 10

セックス同意年齢の問題(5) 搾取の問題

年齢が判断能力のだいたい(一応信頼せざるをえない)目安になるように、年齢差が強制や搾取のだいたいの(一応信頼できる)目安になるのかどうか という問題の搾取の方はもっとむずかしい。たしかに搾取的な人間関係や交渉っていうのはあるでしょうね。搾取っていう言葉には、道徳的によくないし、社会的に抑制するべきだという含意がある。しかしどういう関係が搾取的なのかっていうその基準を探すのが難しい。

続きを読む

Hits: 14

セックス同意年齢の問題(4) 強制の問題

年齢が判断能力のだいたい(一応信頼せざるをえない)目安になるように、年齢差が強制や搾取のだいたいの(一応信頼できる)目安になるのかどうか 、という問題について、Wertheimer先生の分析はわかりにくいところもあるけど以下のような感じ。

続きを読む

Hits: 7

セックス同意年齢の問題(3) 年の差セックス!

んで、国内での同意年齢のひきあげで問題になっているのは中学生同士のセックスみたいなやつというよりは、年上の男性と中学生ぐらいの女子のセックスみたいですね。最近もりあがったケースでも「50才の男と14才の少女が!」みたいなのが強調されていて、まあ50才男と14才中学生女子のセックスを禁止したい、そうした改正に反対するやつは少女とセックスしたいペドフィリアだ!とか、「普遍的な基本的人権を否定する人だと思われても仕方がない!」1みたいな話になっていて、ちょっとあれすぎると思います。

続きを読む

Hits: 13

セックス同意年齢の問題(1) Wertheimer先生の変な空想事例

なんかどっかの政党の委員会みたいなので議員が不適切な発言をしたとかでもりあがっていますね。性犯罪に関する各種法律を考えなおすにあたって、セックス(性交)同意年齢みたいなのを引き上げようという動きがあって、反対意見もある、みたいな感じですか。現在日本では13才だけど、16才ぐらいにしようっていう案が出てるのかな?

続きを読む

Hits: 9

石田仁先生のトランス女性フォビアに関する論説について

セックスの話は興味があるのですが、ジェンダーまわりについては勉強が足りなくてこれまであんまりコメントしていません1。特にトランスジェンダーについては知識が足りず、私のような人間がコメントすること自体が問題であるという懸念があるために控えていたのですが、ちょっと気になることがあったので書いておきます。

続きを読む

Hits: 12

トロフィーワイフという(ふつうは)侮蔑語について

なんか、ある学者先生が「セレブバイト」っていうすごい言葉を開発したのに対応して、どういうわけかその先生が言及していない「トロフィーワイフ」っていう言葉がバズってたみたいです1。「セレブバイト」もたいへんやばい感じですが、「トロフィーワイフ」も学者先生たちが使うにはどうなんだろう、という意味合いがあるんじゃないかと思っているので、私もしばらく観察していました。

続きを読む

Hits: 51

浅井春夫先生のセックスワーク論に対する方針の「補正」

『季刊セクシュアリティ』=人間と性教育研究協議会(性教協)は、第47号でのセックスワーク論特集みたいなのに対するAPP研究会とかによる抗議に対応して方針を見直したわけですね。

続きを読む

Hits: 7

セックス産業を見る「多型パラダイム」への補遺・コメント

前のエントリ https://yonosuke.net/eguchi/archives/13333 の続き。

あとワイツァー先生によれば、売買春の実証的調査とかでも、注目浴びやすいものと無視されがちがものがある。売買春を調査するんだ!ってな話になると、

続きを読む

Hits: 2

ワイツァー先生のセックス産業を見る「抑圧パラダイム」と「多型パラダイム」

まあ森田成也先生の本読みながらいろいろ考えてしまったんですが、少しワイツァー先生の紹介したい。この先生はアメリカの犯罪学者で特に売買春とかトラフィッキングとかの専門家です。先生はとにかく実証的なのが好きでちゃんと調査する人なんですね。売春、というかセックスワークについても翻訳がある。これはよい本なのでそういう問題に関心のある人はぜひ読んでみてください。

続きを読む

Hits: 5

森田成也先生のセックスワーク論批判 (2)

森田成也先生の『マルクス主義、フェミニズム、セックスワーク論』第4章の「売買春とセックスワーク論」の後半は、いわゆる「セックスワーク論」への反論がいろいろ列挙されていて、少し確認しときたいです。

続きを読む

Hits: 38

森田成也先生のセックスワーク論批判 (1)

森田成也先生という先生が『マルクス主義、フェミニズム、セックスワーク論』という本を出版して、読んでみたんですが、私が見るところ問題が多いと思います。いくつか問題を指摘しておきたいと思います。

続きを読む

Hits: 39

セックス経済論 (10) ちょっとだけコメント

しかし投げっぱなしだと誤解されそうなのでちょっとだけコメント。

バウマイスター & ヴォース先生たちの「セックス経済論」は、社会学でいう「社会的交換理論」の一バージョンですね。まあ経済学も含め、非常に一般的な理論というか考え方なので、名前なんかいらないくらい。バウ先生たちは、経済学者のゲイリー・ベッカー先生の The Economic Approach to Human Behavior (1976) 1 の四つの想定をひきあいに出してます。

続きを読む

Hits: 11

セックス経済論 (9) 女性のセクシュアリティの抑制

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review, 8(4), 339–363.

女性のセクシュアリティの抑制

多くの文化で女性のセクシュアリティ1が抑制されているとされます。まあ女性の性的な活動は好ましくないとか、性的な魅力をみせびらかすような服装はつつましくないとか、極端なケースでは女性の性的な快楽を削減するために性器に外科手術を施す(FGM)とか。

続きを読む

Hits: 11

セックス経済論 (8) セフレ/名誉か汚名か/女性間攻撃/結婚勾配

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

セックスは(男性にとっては)利得

前の「セックスに対する態度」のところが私にはいちばんおもしろかったのですが、あとは駆け足で。

続きを読む

Hits: 12

セックス経済論 (7) セックスに対する態度の性差、特にポルノと売買春

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review, 8(4), 339–363.

セックスに対する態度の性差

セックスを商品とした男女の交易、っていう観点からすると、男女の間にはセックスに対する態度の差があるはずだ。まあこれもほとんど自明というか常識なわけですが、バウ先生たちはあれやこれや態度の差をあげていきます。セックスの値段が安いと男性が得、高くなると女性が得なので、それぞれそういう態度をとっているだろう、っていうのが理論からの予測になります。んでそういう証拠はたくさんある。

続きを読む

Hits: 14

セックス経済論 (6) 性暴力/男性不足

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

性暴力

セックス経済論だと、セックスは財である、って考えかたなので、レイプとか痴漢とかっていうのは強盗やスリに似た犯罪ってことになってしまい、これはおそらく被害者の被害感情とかにそぐわないので不快に思う人はいると思いますね。

続きを読む

Hits: 10

セックス経済論 (5) 結婚と交際

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

売買春以外のお金とセックスのやりとり

もちろん売買春以外にも男女のあいだでお金とセックスのやりとりは(偽装された形で)頻繁におこなわれている。そしてここは以前の「男らしさと支配」のシリーズであつかったところそのまんまですね。

続きを読む

Hits: 8

セックス経済論 (4) 証拠とされるものを見てみよう、まず売買春

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

というわけで、バウマイスター&ヴォース(フォースかも)先生たちのセックス経済理論は、女はセックスという資源を売り男がそれを買う、ていうだけのごく単純な理論なんですが、こういう「理論」っていうののおもしろさっていうのは、(少なくとも素人には)その理論が「ほう、そうですかー!」とかってもんじゃないんですよね。むしろ、どういう統計や実験的事実や観察を自分たちの理論を裏づける証拠としてもちだしているかとか、どういうふうにして他の理論をやっつけに行ってるかとか、そういうのがおもしろい。あと、理論に一見合致してないように見える事実をどう説明するかとか、その理論から予測を立てて、どういう実験や調査をやればいいだろう、みたいなのも興味深い。

続きを読む

Hits: 8

セックス経済論 (3) しかし値段は簡単には決まらない

モノやサービスの値段というのはどうやって決まるかというと、高校でも習う需要と供給のバランスによる。漠然とした話ではありますが、供給が少なく需要が多い(強い)と値段は上がるし、その逆だと値段が下がる。

続きを読む

Hits: 6

セックス経済論 (1)「男性による女性の支配」とは別の考え方はどうだろう

このブログ、ここ最近「文化のセクシャル化/セクシー化」の話と、「男らしさと支配」の話を平行してつぶやいてるのですが(もうブログもツイッタも同じようなもの)、「男性が女性を支配しているのだ」っていう信念は非常に一般的ですが、他の考え方ないっすかね。私どうもこの「支配」ってやつ信じられなくて。

続きを読む

Hits: 31

男らしさへの旅 (6) 「吹きあがる男性を冷却」は気になるが、男は黙って話を聞くべきだ

(前からのつづき)というわけで、だいたい男性学がどういうのので、どういうふうであるべきと考えられているのかっていうのはそこそこ納得はしているのですが、気になるところもあるんですよね。次のは澁谷知美先生の文章(澁谷知美 (2019)「ここが信頼できない日本の男性学」、『国際ジェンダー学会誌』第17号)。

続きを読む

Hits: 7