『月曜日のたわわ』広告問題(7) モノ化・セクシー化も許されません

続き。

ハフィントンポスト「「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは?」 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_624f8d37e4b066ecde03f5b7

というわけで、イギリス広告基準協会のアドバイスでは、「制服女子などを性的な文脈で使用するのはやめなさい」と言われているわけですが、問題のたわわ広告そのものが「性的な文脈で使用」しているかどうかはよくわからない。 作品 が女性を性的な文脈に置いているのははっきりしていると思います。豊かなバストをもつ女性たちの性的魅力と、それに対するまじめ系・良識系男子のとまどいや欲望を描いている。しかし、前のエントリ(5)の製品と広告の区別の話をもってこられるとどうなるのか……

「一枚絵は実は電車痴漢が獲物を狙っている視点からのものなのだ!」みたいな解釈はできないことはないかもしないけど、かなり被害妄想的になってしまっている感じもあります。

しかし!アドバイスはさらにまだあるのです。

https://www.asa.org.uk/advice-online/offence-sexism.html

前エントリの「児童を性的に使うな!」のアドバイスは2018年のものですが、こっちの「セクシー化とモノ化」は2022年3月に発表されたもので、最新のものですね。これもおなじく法的アドバイスでも基準協会の審査を縛るものではない単なる(消費者からの苦情を避けるための)アドバイスという位置づけです。

人々を性的に描くことがかならずしも不快だということはできないが、人々をセクシーに見せたり必然性のないヌードとかは、重大で広範な不快をもたらして、苦情のもとになるので気をつけなさい、ということですね。

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↑ こんなのが規制されたらしい。Tシャツの広告にお尻を出す必要があるのか、みたいな。

それに人物をモノみたいに扱っているやつはだめだ、と。ただし、広告というのはたいてい人物を 鑑賞物として使用する ものなので、この モノ化 はそういう意味じゃなく、人間を椅子がわりにするとかそういうやつでしょうね。

他にも、あまりにも人物を過剰に性的に描いている(セクシー化)のは基準協会から規制されることがあるようです。これはアニメ絵みたいなのについても同様。いくつか規制された実例がのっているので、自分でググってみてください。「会社名 + banned ad」でGoogle画像検索するとどういうのが規制対象になったかだいたいわかります。

あと当然、18才未満の児童をセクシーに見せるのもアウトです。17才に見えるんだったら実際には33才でも17才です!

まあこの児童のセクシー化は非常におもしろい論点で、前に一連のエントリ書きました。

とりあえず人々を鑑賞用 だけ のモノとして扱う態度を見せている広告や、必然性がないセクシーな広告、そして児童をセクシーに見せている広告は、イギリスでは規制される傾向にあるし、他の先進国でもそっちの方向に向かうのかもしれません。

また、(性的な)モノ化やセクシー化というのは、女性や男性の性的な魅力を強調する傾向があるわけですが、この性的な魅力というのはある程度ステレオタイプ的なものになりがちで、その意味でジェンダーステレオタイプと関係があるのもわかる。

しかし再度このモノ化・セクシー化の観点から「たわわ」広告を見るとどうかというと、これもモノ化しているとか児童をセクシー化しているとか、その一枚絵からだけは言いにくいですね。広告の左下の第1巻の表紙はかなりバストを強調しているのですが、それだけでセクシー化と言えるのかどうか。第1巻の作品の中身が児童をセクシーに描いている、というのはその通りだと思いますが、それだけなのか、という話になる。

ちなみにこの『月曜日のたわわ』の新刊である第4巻は、バストにタッチしている表紙なのですが、それは用心深く広告自体からは排除されてますね。この広告、講談社・ヤンマガ編集部は、ここまで書いたようなポイントをかなりよく知って考えて作っていることがわかります。広告基準協会の「アドバイス」まで考慮に入れたうえであの広告を見たとき、それがまったくクリーンかというと作品やその表紙の性質からしてそうではないかもしれないけど、アウトっていうほどではない、というのが私の判断です。(それでは甘いって思う人もいるかもしれない。あとで議論するかもしれません)

とにかくここまで来ると、ハフィントンポストの記事にある

海外では、ジェンダー平等の実現を妨げる広告に対し、厳しい対応をとる動きもある。イギリスでは2019年から広告標準化協会が「性別にもとづく有害なステレオタイプ」を使った広告を禁止している。治部准教授は「今回の全面広告は、こうした国際的な潮流に日本の企業やメディアが取り残されていることを明白にした」と指摘する。

というのは、今回の全面広告が、広告基準協会が規制している性別にもとづく有害なステレオタイプになっていて その基準では規制されるに値するものだ 、といっているわけでは ない ことに気づかされます。たんに「ジェンダーやセックスについてはイギリスあたりは厳しくなっている方向だ」と述べてるにすぎない。そしておそらく「セクシー化は避けられる 傾向にある のに、なにも気をつかってないな!」と非難しているにすぎないのかしれない。私は読みまちがえてましたね。しかし、人を誤解させる、ミスリーディングな書き方だと思います。

まだ続く。国連Womanの話に。

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『月曜日のたわわ』広告問題(7) モノ化・セクシー化も許されません” に1件のフィードバックがあります

  1. アリア

    >必然性のないヌードとかは

    必然性云々を言い出したら広告そのものが必然性がない、という結論になりますが
    まあ性嫌悪の方々のありがちなステレオタイプ(笑)な難癖ですな
    結局難癖のためにイギリスのことを持ち出して、だからどうした?でしかないのですが

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