セックス」タグアーカイブ

カント先生とセックス (3) 自分の体であっても勝手に使ってはいけません

まあ性欲はそういうわけでいろいろおそろしい。だいたい、いろんな犯罪とかもセックスからんでることが多いですしね。性欲は非常に強い欲望なので、道徳とバッティングすることがありえる、っていうより、他人の人間性を無視してモノに貶めるものだっていうんでは、ほとんど常に道徳とバッティングしてしまう。 続きを読む

カント先生とセックス (2) 性欲は直接に他人の身体を味わおうとする欲望

カントのセックスについての話は、『人間学』、『コリンズ道徳哲学』(死後出版。カント先生の講義ノートをまとめたもの)、『美と崇高の感情性に関する考察』、『人倫の形而上学』、『人類の歴史の憶測的起源』あたりにばらまかれてます。けっこういろんなこと語ってますわ。『コリンズ道徳哲学』の有名なセックス論はこんな感じ。 続きを読む

カント先生とセックス (1) いちおう「人間性の定式」の確認

哲学者・倫理学者といえばカント先生。しかしそのカント先生を専門的に勉強していた人が犯罪で逮捕されたというので話題になっているようです。まあ正直なところまったく同世代なのでいろいろ考えちゃいます。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (11) 同意というのはプロセスだ

前のエントリで書いたように、ワートハイマー先生のは私にはちょっと不安があっていろいろ考えるところです。

ところで、(8) 「セックスする気があるとき女性は酔っ払うか」で紹介したDavis & Loftus先生たちの論文の後半は法政策に対する提言になっていて、サーヴェーの結論として次のようなことを言おうとしています。

  1. 性的な同意というのはある時点での行為ではなく、時間をかけて展開されるプロセスだ
  2. 酔っ払った相手とのセックスは禁じられるべきでは*ない*。酔っ払うほど飲むっていう決断が性的な意図を含意していることはありえる
  3. 意思が途中で変わることはありえるものの、アルコールを摂取したということは被害者の強制されたという主張の信頼性に影響する
  4. reasonableな人にとって、相手のアルコール使用は、相手の同意と同意能力の蓋然的証拠になる
  5. アルコール使用はレイプや強制の虚偽申告の要因になる
  6. 酔っ払っての性的行動に対する規制は、危害の防止と自由の制限という諸刃の剣になる

どれも政治的にちょっとあれで、けっこう論争を呼びそうな主張ではありますね。うしろの方はいろいろ検討しなければならないものを含んでますが、最初の「同意は時間をかけて展開されるプロセスだ」っていう主張は鋭いことを言うな、と思いました。つまりふつうのセックスとかでは「やりますか」「やりましょう」「はっけよい、のこった!」みたいにはならんわけですね。相撲じゃないんだから。

実際のセックスでは、少なからぬ場合最初は女性は(いろんな事情から)ノーと言う場合が多い。これはけっこう研究の蓄積があります。古いのだと、Muehlenhard, Charlene L., and Lisa C. Hollabaugh. “Do women sometimes say no when they mean yes? The prevalence and correlates of women’s token resistance to sex.” Journal of personality and social psychology 54.5 (1988): 872.とか。まあそういうのは女性の弱い立場や抑圧があれだ、みたいな議論もあるのですが、そうでなくてもとりあえず軽く見られないように最初はノーっていう、みたいなのもある。ここはいろいろ議論あるところです。

Davis先生たちは、まあ最初は実際そういうもんだけど、同意しているかどうかっていうのはその最初の返事がどうかってことよりは、そのあとで、いっしょにどの程度酒飲むかとか、遠まわしに誘いかけられたらどうするかとか、手を握られれたらどうするか、耳もとで口説かれたらどうするか、他から隔てられた場所に移動するよう誘われたときについていくかとか、いろんな部分触られたときにどうするかとか、まあそういう時間的に発展していくいろんな合図によって示されるものだ、って主張したいわけですね。ここらへんの見方はワートハイマー先生より女性らしい分析を感じました。なんかよくわからんけど、セックスの同意なんてそんなもんな気がしますね。商売の契約とかギャンブルの賭けとかとは違うです。

Davis先生たちの他の主張は今やるのはちょっと時節がら具合悪いのでしばらくほうっておきます。興味ある人は読んでみてください。

酒飲みセックス問題 (10) 同意の文脈・文化

未成年女子に酒飲ませて公然わいせつした警官が女子から損害賠償訴訟起こされたようですね。このシリーズ、そういう実際の話のことは考えていますが、実際の事件についてなんか言おうというつもりはないです。

えーと、話は酔っ払った行為にも責任がないとはいえない、でも酔っ払ってした同意が、「有効な」同意なのかっていうのはすぐにはわからん、という話まで。
この問題はおそらく、その社会的文脈による、みたいな話になっちゃうんですよね。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (9) 同意したことに責任があっても同意は有効じゃないかもしれない

まあというわけで、酒を飲んで酔っ払ったからといって、行動の責任がなくなるわけではないような感じです。(場合によっては)同意したことや酔っ払ったことは非難に値するという意味で「責任がある」ということになりそうです。

しかし、んじゃ酔っ払ってした同意はぜんぶ有効validなのか、というとそうでもないかもしれない。同意の責任はあるけど同意は有効じゃないよ、だからそういう同意をした人とセックスした人を非難したり罰したりすることは可能かもしれない。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (8) セックスする気があるとき女性は酔っ払うか

Deborah Davis先生とElizabeth Loftus先生の共著で、”What’s good for the goose cooks the gander: Inconsistencies between the law and psychology of voluntary intoxication and sexual assault.” Handbook of forensic psychology: Resources for mental health and legal professionals (2004): 997-1032. っていう論文があるんですわ。酒飲み行動と性的な意図はどういう関係があるか、みたいな話のサーヴェー論文。 続きを読む

アリストテレス先生とともに「有益なおつきあい」について考えよう

まあ「有益な関係」みたいなのっていうのはどうなんですかね。世代的なものかもしれませんが、私なんかだと、そういう損得感情が入っているのは恋愛ではないのではないか、みたいなことをすぐに考えてしまうわけですが、女子はわりとプラグマチックに男性をスペックで見たり、その金とか学歴とか地位とかで見ることもそんな珍しくない感じで、そういう話を聞いてるととまどってしまうことがあります。

しかしプラトン先生自身が恋愛についてなにをいっているのか、というのはすごくわかりにくいんですわ。基本的にプラトン先生は熱情的な人で、こう理屈通ってないこともがんばっちゃうタイプの人で、私自身は苦手です。好きなのはアリストテレス先生。こっちは大人で落ちついている。

ザ・哲学者

ザ・哲学者

アリストテレス先生の恋愛や友情なんかについての考え方は『ニコマコス倫理学』で展開されてます。すごく有名な議論です。

まず「愛する友なしには、たとえ他の善きものをすべてもっていたとしても、だれも生きてゆきたいとは思わないだろう」(1155a)ってことです。この「友」が同性なのか異性なのかていうのはあんまり意識されてないっぽい。いちおう同性を中心に考えますが、異性との話も含まれていると読んでかまわないはずです。お金もってて仕事できても、友達がいないと生きていく甲斐がないです。ここでいう友達っていうのはたんにいっしょにいるんじゃなくて、もっと深い結びつきをもって、お互いが幸せに生きることを願いあうような、そういう関係。

単に趣味をもってるとか、車が好きだ、とかっていってそれが友達のかわりになるわけではないですね。

「魂のない無生物を愛することについては、通常、友愛という言葉は語られない。なぜなら、無生物には愛し返すということがないからであり、またわれわれが、無生物の善を願うということもありえないからである。」

恋愛とか友情とかってものは、一方通行じゃない。少なくとも私らが求めるのは、相手からも同じように好かれたいってことで、これが友情や恋愛のポイントです。片思いしている人も相手に好きになってほしいわけで、「電柱の陰から見つめているだけで十分」っていうのは相手にしてもらえないからそれで我慢しなきゃってだけですよね。

「だが友に対しては、友のための善を願わなければならないと言われているのである。・・・しかし、このような仕方で善を願う人たちは、相手からも同じ願望が生じない場合には、相手にただ「好意を抱いている」と言われるだけである。なぜなら、友愛とは、「応報」が行なわれる場合の「好意」だと考えられているからである」

この「好意」がまあ片思いとかでしょうな。「彼は私の友達です」「あの子は僕の彼女だよ」ってときはやっぱり相手にとって自分が特別なことが含意されてます。

ところで、「劣ったものや悪しきものを愛することはできない。愛されるものには(1)善きもの、(2)快いもの、(3)有用なもの、の三つがある。(1155b)」っていうことです。よく「ダメンズウォーカー」とかっていて「ダメな男」にはまる人がいるようですが、隅から隅じまったくだめな人ってのを好きになることは不可能だとアリストテレス先生は考えるわけです。まあ「だめ夫」っていったってどっかいいところはあるわけですからね。金もなければ仕事もできないけど、セックスはうまいとかちゃんと話聞いてくれるとか笑顔だけはいいとか。愛というのはそういう長所を愛することなわけです。

「快いもの」っていうのは楽しいもの、いっしょにいいていい感じを与えてくれるものですね。美人やイケメンとはいっしょにいるだけで楽しいということはよく聞きます。以前、ある女子大生様が「やっぱりイケメンといっしょの方がご飯食べてておいしいじゃないですか!」と発言するのを聞いて衝撃を受けたことがあります。たしかにそういうことはありそうだ。すごい実感がこもっていて感心しました。これはおそらく、イケメンがご飯をおいしくするわけじゃないけど、イケメンといっしょにいることによってひきおこされる快適な気分がご飯をおいしくしてくれるのですね。

「有用なもの」っていうのは、それ自体が快楽をもたらすものじゃなく、快楽のために役に立つものですね。お金もっているということはイケメンとちがってそれ自体では快楽をもらたらさないとしても、いろんな楽しい活動をするのに役にたつ。お金いいですね。私も欲しいです。

他にも前のエントリであげたプラトン先生の議論に出てきたような有用さっていうのはいろいろあるでしょうな。古代アテネのパイデラスティアでは、年長のオヤジは少年にいろんなものを提供してくれることになっていた。まずもちろんお金。社会的に成功するには教育とか必要なわけですが、そういうののお金のかかりを面倒見たり。服とかも買ってあげたかもしれんですね。それ以上に重要だったと思われるのが、さまざまな知識の伝授ですわね。本の読み方とか演説の仕方も教えてもらってたかもしれない。学生様だったら年上の彼氏からレポート書いてもらったりしたことある人もけっこういるんじゃないですかね。仕事上のアドバイスを受けることもあるだろう。それに人脈。これも古代アテネでは重要だったようで、「有力者の愛人」とかってのはそれなりにステータスで、いろんなところに出入りするチャンスを得たりすることができたんじゃないでしょうか。やっぱり有力な人と親密なおつきあいするのはとても役に立ちます。

説明が最後になった「善きもの」っていうのが一番どう解釈するのかがむずかしくて、まあ美徳(アレテー)をもっている、ってことですわね。アリストテレス的な枠組みでは、たとえば「勇敢」「知的」「正義」みたいな長所が美徳と呼ばれていて、そういう長所のために人を好きになる。私はここでなんで「イケメン」や「話がおもしろい」が長所に入らないのだろうかと考えてしまうのですが、まあそういうんじゃなくて人格的な美徳を考えてるようですなあ。

アリストテレス先生は最後の美徳にもとづいたお互いが美徳を伸ばしあうことを願う似たもの同士の友愛が一番完全な友愛だと言います。たとえば知性という美徳をお互いに認めあった人びとが、お互いの知性が成長することを願いあう関係とかですかね。まあ今例として「知性」とかをつかったのであれに見えますが、たとえば「サッカーの技能」「忍者としての技能」みたいなものにおきかえることができれば、一部の人びとが大好きなボーイズラブの構図そのものですね。「お前、やるな!」「お前こそ俺のライバルたるにふさわしい!ライバルであり終生の友だ!」みたいに読めばどうでしょうか。このときに攻めとか受けとかあるのかよくわかりません。

まあそういうのが最高の友愛ですが、アリストテレス先生は有用性にもとづく関係とかだめな関係だ、とまでは思ってないみたい。多くの関係がおたがいの快楽をもとめる関係だったり、有用性をもとめる関係だったり、あるいは一方は快楽を提供し、一方は有用性を提供する、みたいな関係ってのもあるかもしれない。最後のは前のエントリで触れた典型的パイデラスティアの関係ですわね。年長者は有用さを提供し、年少者は若さと美と快楽を提供する、というそういう関係。先生はどうも人びと自身の優秀さとか階層とかによって相手とどういう関係を結ぶかが違ってくる、みたいなことを言いたいみたいで、快楽や有益さをもとめた関係とかがすごく劣ったもので軽蔑すべきものだ、みたいなことは言おうとはしてない感じです。すぐれた人びとはもっとよい関係を結ぶものだ、程度。

でもそういう関係ははかない。お金や地位を失なってしまえば有用さを提供することはできなくなるし、若さと美なんてのはもうあっというまに色あせるものですからね。どんなイケメン美人でも10年ピークを維持することは難しいでしょうな。まあそういう持続性の点でも「似たもの同士の美徳のための友愛」が一番だそうです。

『ニコマコス倫理学』は朴先生の訳で読みたいです。岩波文庫のは古い。でもさすがに5000円は出しにくいですよね。光文社でなんとかしてもらえないだろうか。

ニコマコス倫理学 (西洋古典叢書)
ニコマコス倫理学 (西洋古典叢書)

posted with amazlet at 14.07.03
アリストテレス
京都大学学術出版会
売り上げランキング: 65,070

もっとも、実際にアリストテレスとかの専門家筋には岩波も悪くないという評判みたいです。

プラトン先生の『パイドロス』からオヤジらしい口説き方を学ぼう

最近「倍以上男子」という言葉を流行らせようとしている雰囲気があるようですね [1]2017年だと「パパ活」か。 。私はこういうのはなんかバブル時期のことを思いだしてあれなんですが、まあそういうのもあるでしょうなあ。 http://howcollect.jp/article/7240 まあ流行らないと思いますが、こういう記事を書いている人がなにかソースをもっているってことは十分にありそうだとは思います。

しかしまあこういうので言われている女子とか年少者にとって有利な恋愛の形というのは当然昔からあって、あの偉大なるプラトン先生も検討しておられます。プラトン先生は恋愛とセックスの哲学の元祖でもあるのです。おそらくソクラテス先生もね。

プラトン先生が考えている恋愛っていうのは、『饗宴』でもそうですが、男同士、年長の男(30代とか [2]40才ぐらいになったらそろそろ少年愛やめて結婚して子供つくるのが正しいと考えられてたようです。 )と年少(10代)とかの関係ですわね。少年愛。パイデラスティア。どうも当時のアテネの一部の階層ではそういうのが一般的だったんですね。美少年が勢いのある中年に性的な奉仕をして、中年男の方は金銭面とか人脈とか各種の知識や技術を教えたりする関係。まさに倍以上男子です。

プラトンが恋愛について書いたものというと、例の「人間はもともと2人で一つの球体だった、それがゼウスに怒られて二つに分けられちゃった、それ以来人間は自分の半身を求めて恋をするのだ」というアリストファネスの演説が入っている『饗宴』が有名ですが、『パイドロス』も同じくらいおもしろくて重要な本ですわね。その最初に、「君は自分に恋していない人とつきあうべきだ」っていうリュシアスという人の演説が紹介されているのです。話はそこから始まる。

まず、「ぼくに関する事柄については、君は承知しているし、また、このことが実現したならば、それはぼくたちの身のためになることだという、ぼくの考えも君に話した」って感じで話をはじめます。まあ自己紹介みたいなのして、自分がどれくらいお金もってるかとか、どれくらい地位が高いかとか仕事ができるかとかまずは説明するわけですね。んで「このこと」っていうのはまあお付き合いですわ。それは両方のためになるよ、ともちかかけるわけです。

口説きは、「ぼくは君を恋している者ではないが、しかし、ぼくの願いがそのためにしりぞけられるということはあってはならぬとぼくは思う」と意外な展開を見せます。君のことを愛しているわけじゃないけどお付き合いしよう、まあセクロスセクロス。

若い人は、自分を愛している人より愛してない人とつきあうべきなのです。なぜか。リュシアス先生は理路整然と説明します。おたがいそうする理由がたくさんある。

(1) 恋愛というのはアツくなっているときはいいけど、それが冷めると親切にしたことを後悔したり腹たてたりする。恋人がストーカーになっちゃった、とかっていうのは今でもよく聞きますよね。でも恋してない人はそういう欲望によって動かされれてるわけじゃなくて冷静な判断から相手に得なことをするから後悔したりあとでトラブルになったりしない。

(2) 恋しているからおつきあいをする、っていうことだったら、新しい恋人候補があらわれたらさっさとそっちに行ってします。「誰より君を大事にするよ」とかいってたって、他に新しい恋人ができたらそっちの恋人を「誰より大事」にするだろうから、古い恋人はひどいめにあうってこともしょっちゅうだ。実際「恋」とかってのは熱病みたいなもので自分ではコントロールすることができないものなのだから、そんなものに人生かけるのは危険だ。

(3)  おつきあいをする相手を自分に恋している人から選ぼうとすると数が少ない。ふつうの人はそんな何十人も候補があるわけじゃないっすからね。でも冷静におつきあいを望んでいるオヤジは多い。よりどりみどりになる。

(4) 恋している男というのは、有頂天になって自慢話におつきあいのことをペラペラと周りにしゃべるものだが、冷静な愛人はそういうことはちゃんと秘密にしてくれる。

(5) 恋している男は嫉妬ぶかい。今どこにいるだの誰とメールしているかとかいちいち詮索してうざい。

(6) 別れるときも恋している男はいろいろうざい。恋してない奴はさっさと納得して別れてくれる。

(7) 恋している男は、相手がどういう人かを知るまえにセックスしようとするが、恋をしてない理性的な人はちゃんと相手を見てからおつきあいする。

(8) 恋をしている人は相手の機嫌をそこねないようにってことばっかり考えて、本当にタメになることは教えてくれない。それに対して恋してない奴はいろいろ有益なアドバイスをくれる。今の快楽だけでなく、長い目で見たら将来のためにこうするべきだ、みたいなことを教えてくれるだろう。

とかまあ面倒になったからやめるけど、こういう感じ。これは今でもオヤジの口説きに使えそうな部分もあるわけですな。まあいつの時代も人は同じようなことを考えるものです。このリュシアスさんの演説に対して、ソクラテス先生が「おれはもっとうまい話ができるぞ」とか言いつついろいろ検討くわえて「恋愛やおつきあいというものはそういうものではないぞ、もっとええもんなんや」とやっつけていきつつ、その実、実は美少年パイドロス君をナンパしてたらしこんでいく、というのが筋です。そういうのが好きな人は読んでみてください。名作です。

『パイドロス』は岩波文庫のでいいと思います。『饗宴』はいろいろあるけど、光文社の新しいやつ読みやすかった。『パイドロス』訳している藤沢先生は授業受けたことありますが、モテそうな先生でした。

→ プラトン先生の『パイドロス』でのよいエロスと悪いエロス、または見ていたい女の子と彼女にしたい女の子に続く。

パイドロス (岩波文庫)

パイドロス (岩波文庫)

posted with amazlet at 14.07.03
プラトン
岩波書店
売り上げランキング: 11,453
饗宴 (光文社古典新訳文庫)

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

posted with amazlet at 14.07.03
プラトン
光文社 (2013-09-10)
売り上げランキング: 56,410

アテネとかの同性愛がどういう感じだったかというのは、まあまずはドーヴァー先生の本を読みましょう。まちがってもいきなりフーコー先生の『性の歴史』とか読んじゃだめです。

古代ギリシアの同性愛

古代ギリシアの同性愛

posted with amazlet at 14.07.03
K.J. ドーヴァー
青土社
売り上げランキング: 750,418

ハルプリン先生のはゲイ・スタディーズとかの成果をふまえたものでもっとドーヴァー先生のより現代的なものだけど、ちょっと難しいし評価もそれほど定まってない。

同性愛の百年間―ギリシア的愛について (りぶらりあ選書)
デイヴィッド・M. ハルプリン
法政大学出版局
売り上げランキング: 809,485

アテネで女性がどういう暮しをしていたかっていうのは、これかな。

古代ギリシアの女たち―アテナイの現実と夢 (中公文庫)
桜井 万里子
中央公論新社 (2010-12-18)
売り上げランキング: 178,188

References

References
12017年だと「パパ活」か。
240才ぐらいになったらそろそろ少年愛やめて結婚して子供つくるのが正しいと考えられてたようです。

酒飲みセックス問題 (7) 酔っ払い行為の責任続き

酔っ払っての行為の責任というのはけっこう難しいんですよね。こういうのは責任とかにまつわる「自由意志」とかコントロール(制御)とかの複雑な哲学的議論を必要としている。

前のエントリではHurd先生の「酔っ払ってても必ずしも善悪の区別がつかなくなるわけじゃない」「酔っ払ってした行為を許すと酔っ払わないインセンティブが低下する」っていう二つの議論を紹介しましたが、これだけではうまくいかないかもしれない。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (6) 酔っ払い行為の責任

まず、「我々は酔っ払ってしたことについて責任があるか」というのがけっこう難しい。

まあこういう形で問いを作ることに問題があるかもしない。だって、たいていの人は「責任がある」っていうのがどういうことかはっきりとした考えをもってないからです。「責任」っていうのはほんとうに複雑で曖昧な概念ですわ。こういう形で問いをつくってしまったら、まず「責任がある」っていう表現でどういうことを言おうとしているのかはっきりさせないとならん。そのいうことをした上で、「どういう場合に責任があるか」とか「酔っ払ってしたことに責任があるか」とかって話になる。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (5) エロス、ルダス、そして誘惑

ちょっと戻ってさらにだらだらと横道にそれると、まあ相手の欲望を引き起こし抑制を解除する、っていうのはこれはもう恋愛とかの一番重要な局面ですわね。そりゃ世間の正しい人びとっていうのは「恋愛やセックスというのは、長い時間をかけてお互いをよく知りあい、人間的に尊敬しあえる関係をつくり、おたがいの理解の上で一対一のコミットをした上でセックスするべきだ」みたいな美しいことを言ったりするわけですが、それってなんというか理想的すぎるし、そもそも我々が思いえがいている「熱愛」みたいなのの理想でさえないかもしれない。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (4) 薬物の影響そのものは問題ではないかも

セックスにおける同意が問題になるのは恋愛とかセックスとかそういうのには医療行為とか商売上の契約とかとはまったく違う面があるからですね。

お医者が患者を手術したくてしょうがない、みたいなことはないわけです。「手術させろー、シリツシリツ」みたいなのは困るっしょ。それに患者さんに、本人に病気とかがなくても切られたいと思ってほしいとも思わない。まあ「手術受けるならこの先生」ぐらに信頼しててほしいことはあるかもしれませんが、「あの先生に切ってほしいから盲腸になりたい」と思ってほしいとは思ってないだろう。ははは。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (3) 「インフォームドコンセント」で考えると

医療におけるインフォームドコンセントだと、おおまかに(1) 同意能力、(2) 十分な情報、(3) 自発性・自律、の三つのポイントが有効な同意のために重要だってされてます。(1)同意能力はちゃんと判断して責任を負う能力があるってことですね。まともな判断できない人は(有効な)同意ができない。(2)の十分な情報ってのは、病気やその予想予後、薬の作用や副作用とか手術の危険性とかそういうのは患者は知らないことが多いので、情報を与えてもらわないとまともな判断できないし、それゆえ有効な同意もできない。(3)強制されてたり他からの圧力がかかってたりすると本人の意にそった同意ができないので同意が有効でなくなってしまう、というわけです。

この医療のインフォームドコンセントというモデルがセックスに適用できるかっていうのは、実は私自身はちょっと疑っていますが、それで考えてみる。

(1)の同意能力がセックスでも必要なのはふつう考えればその通りですわね。子供は自分の利益とかちゃんと判断できないから同意できない。だから日本の法律だと13歳未満の女子とセックスすると問答無用で強姦です。これはおそらく13歳未満の女子は同意する能力がないと考えられているからですね。しかし男子はOKっていうのはへんな気がしますね。まあ根拠はあるんでしょうが。こうした法定レイプを定めている国は多いです。一般には男女共通の場合が多いみたい。ただ「法定レイプ」statutory rapeの年齢を何才にするかっていうのは国によってまちまち。米国とかだと州によって違うと思う。

(3)はまあ当然。強迫してセックスというのはこれは強姦に他ならないわけです。っていうか(3)の自発性こそが性暴力とそうでないものを分けると考えられる。

これに対して、(2)の十分な情報っていうのが私が気になっている点で、セックスにおける十分な情報っていったいなんなんだ、みたいなことは思います。「私とセックスするとこういう感覚を味わいます」みたいな情報を提示する必要があるかとか。結婚してるかどうかとか性体験の数とかを秘密にしたりするのは許されるかとか。まあこれはまたあとで議論したい。

酒飲みセックスが問題になるのは、とりあえずお酒の影響で(1)の同意能力が損なわれている可能性があるからですね。まあちゃんと考えられなくなりますからね。前の記事でのアンチオク大学やブラウン大学は、アルコールがそうした能力を損うためにそういうセックスはいかん、と言いたいようです。

あと実は(3)の自発性もあやしい。お酒を飲んだのが完全に自発的だとしても、そのあとのセックスに対する同意みたいなのが本当に自発的といえるものなのかどうか。「お酒が私をそうさせたのだ」みたいな表現がありますが、酒を飲んでやった行動が自発的なものなのかっていうのはかなり疑問の余地がある。

まあこういうわけでインフォームドコンセントのモデルを使って酒飲みセックスを考えると、その条件を満してない場合がたくさんありそうで、ここらへんが倫理学者や法学者の関心をひくわけです。

そういやツイッタでは紹介しておいたけどこのビデオおかしい。私は何言ってるかまではちゃんと聞きとれないのでトランスクライブほしいな。途中でライトで酔っぱらってるかどうか確認してますね。用心深い弁護士だ。私も万が一のため、この女性弁護士雇ってみたいです。

酒飲みセックス問題 (1) 酔っ払ってセックスするのは許されるか

なんか(女子)大学生が酒飲んで街中で大量に倒れたりして話題になってますね。アルコール濫用はやめましょう。

まあ一部のサークルとかではほんとにお酒を使ってやばいことをしているようで、なんというか命の心配もあるし各種の性的暴行なんかも行なわれたりするだろうしいやな感じです。

そういや昔某学会で「性的同意」の問題をとりあげて、論文にしないでそのまんまになってたことを思いだしました。どういう同意が有効かっていうのはセックス倫理学のおもしろいネタで、特に酔っ払いセックスは実際の性犯罪やセクハラなんかと関係していて関心があります。

米国のブラウン大学で90年代なかばに有名な事件があったんですね。新入生のサラ(仮名)が土曜日に自分の寮の部屋でウォッカ10杯ぐらいのんで酔っ払って(私だったら死んでます)、そのあと近所でやってるフラタニティパーティー(まあ飲みサーのパーティーですな)にボーイフレンドに会いに行った。アダムという別の男が、サラが友達の部屋でリバースして横になってるのを見つけて水が欲しいか聞くとサラはイエスと答えた。アダムは水もってきて飲ませて、しばらく話をした。アダムがサラに、彼の部屋に行きたいかと聞くとサラはイエスって答えたので部屋に行った。サラは自分の足で歩けた。サラはアダムにキスして、服を脱がせはじめた。さらにアダムにコンドーム持ってるかとたずねた。アダムはイエスと答えて、セックスしたわけです。事後に二人は煙草吸って寝たそうな。起きてからアダムがサラに電話番号を聞くと、サラは教えたそうな。しかしサラさんはしばらくしてからやっとやばいことに気づいて、あわてたと。んで3週間後に寮のカウンセラーに相談してアダム君を訴えることにしたわけです。ブラウン大学は厳しいところらしくて、在学生規程みたいなのに「違反学生が気づいた、あるいは気づくべきであった心神喪失あるいは心神耗弱」の状態にあった相手とセックスしたら学則違反だというのがあるんですね。

まあこういう状態の女性(あるいは男性)とセックスするのは許されるかどうか。まあ正しい人びとは「そんなんもんちろんダメダメ」って言うかもしれなけど、ほんとうにそんなに簡単な話かな? 某学会ではこういう問題にとりくもうとおもってまあちょっとだけやりました。ネタ本はAlan Wertheimer先生のConsent to Sexual Relationsってので、これはおもしろい。

まあワートハイマー先生の議論はそのうち詳しく議論することにしましょう。今日 http://sexandethics.org っていうサイトを見つけて、こういうありがちなセックスにまつわる倫理問題みたいなのを議論する性教育カリキュラムを提示していておもしろいです。ここらへんのネタはやっぱりワートハイマー先生の枠組みでやってる(ただし全体の雰囲気はワートハイマー先生より女性に有利な感じなフェミニスト風味)。

たとえば次のような問題について議論してみよう、ってわけです。上のブラウン大学の学則は、飲んでセックスするのを禁止しているわけじゃなくて、意識なくなったりすごく酔っ払ってまともな判断が下せなくなっている場合にはだめだっていってるわけです。では、

  1. 女性が飲酒している場合、もし女性が飲酒していることを告げなかったとしたら、男性はその同意を信頼することができるか?
  2. もし男性が飲酒していてリバースしたばかりだとしたら、それは彼の同意の能力にどういう影響を与えるか?それはなぜ?
  3. もし男性が意識を失なったら、女性は彼に対して性的なことを続けてもよいだろうか?それはなぜ?
  4. もし女性が飲酒していて、男性に部屋に戻ってセックスしようと誘ったら、その誘いは有効だろうか? それはなぜ?
  5. もし男性が飲酒していて、女性に部屋に戻ってセックスしようと誘ったら、その誘いは有効だろうか?それはなぜ?
  6. 直前の二つの問いがジェンダーによってちがうとしたら、それはなぜ?

上のブラウン大学の実際の事例とか考えながら答えてちょうだい、と。

さらには、ワートハイマー先生はあれな人なので、もっと奇妙なケースも考えてて、上のsexandethics.comの人も紹介してます。

【パーティー】 AとBはデートはしていたがセックスはしていなかった。Aが「今夜どうかな」とたずねると、Bは「うん、でもまずお酒飲みましょう」と答えた。お酒を飲んでBはハイになり、Aの誘いにこたえた。

【抑制】 AとBはデートする関係だった。Bはまだセックスするには早いと言っていた。Bの経験と他の情報から、Bはお酒を飲むと判断がおかしくなることを知っていた。しかしそれについてあまりよく考えず、Bはパーティーで何杯か飲んだ。AがBにセックスしようかと言うと、Bはいつもよりもずっと抑制を感じずに、「なんでも初めてのときはあるよね」と生返事をした。

【コンパ(フラタニティーパーティー)】Bは大学新入生だった。Bはそんなにたくさん飲んだことがなかった。Bははじめてコンパに参加して、酎ハイ(パンチ)をもらった。Bが「お酒入っているの?」と聞くと、Aは「もちろん」と答えた。Bは何杯か飲んで、人生ではじめてとてもハイになった。Aが自分の部屋に行くかと聞くと、Bは合意した。

【アルコール混入】 Bははじめてコンパに参加した。部屋には、ビールの樽と、「ノンアルコール」と書いてはいるが実はウォッカで「スパイク(混入)」されているパンチ飲料が置かれていた。Bはパンチを数杯飲んで、とてもハイになった。Aが自分の部屋に行くかと聞くと、Bは合意した。

【空勇気】AとBはデートする仲だった。Bはまだセックスの経験がなく、セックスについて恐れや罪悪感を抱いていた。シラフではいつまでも同意できないと思ったBは、1時間に4杯飲んだ。キスとペッティングしてからAが「ほんとうにOK?」と聞くと、Bはグラスを掲げてにっこり笑って「今なら!」と答えた。

【媚薬】媚薬が開発されたとする(現在のところ存在していない)。AはBの飲み物に薬を入れた。それまでセックスに関心を示さなかったBは興奮して、セックスしようと提案した。

【ラクトエイド】Bは、お腹が痛いという理由でAとのセックスを拒んでいた。乳糖不耐症が原因であることが判明したので、Bは乳糖不耐症用錠剤を飲んだ。この「薬」のおかげでBは気分よくなり、セックスに合意した。

ここらへんのそれぞれについて、同意が有効なのかどうか考えましょう、と。おかしなこと考えますね。みんなで考えましょう。

Consent to Sexual Relations (Cambridge Studies in Philosophy and Law)
Alan Wertheimer
Cambridge University Press (2003-09-18)
売り上げランキング: 1,552,909

2018年追記。上のブラウン大の事件は下の本でも扱われてます。良書なので読みましょう。

メモ: レイプと同意関係の洋書

Making Sense Of Sexual Consent

Making Sense Of Sexual Consent

posted with amazlet at 13.08.18
Ashgate Pub Ltd
売り上げランキング: 1,543,803
Sexual Harassment & Sexual Consent (Sexuality and Culture)
Transaction Pub
売り上げランキング: 1,635,589
Sexual Consent

Sexual Consent

posted with amazlet at 13.08.18
David Archard
Perseus
売り上げランキング: 2,067,157
Consent to Sexual Relations (Cambridge Studies in Philosophy and Law)
Cambridge University Press (2003-10-06)
Date Rape and Consent

Date Rape and Consent

posted with amazlet at 13.08.18
Mark Cowling
Avebury
The Ethics of Consent: Theory and Practice

The Ethics of Consent: Theory and Practice

posted with amazlet at 13.08.18
Oxford University Press < br />売り上げランキング: 285,360
Exploitation

Exploitation

posted with amazlet at 13.08.18
Alan Wertheimer
Princeton Univ Pr
売り上げランキング: 675,676
Coercion (Studies in Moral, Political, and Legal Philosophy)
Alan Wertheimer
Princeton Univ Pr
売り上げランキング: 480,336

アンソロジーの計画をしてみたり

英米系セックス哲学アンソロジーを組んでみたいと思ったり。まあ私自身がアンソロジー好きなんよね。翻訳して出版したい。

たとえば売買春だとどうなるかな。

  • Jaggar, “Prostitution”
  • Ericsson, “Charges against Prostitution”
  • Pateman “Defending Prostitution”
  • Shrage, “Should Feminists Oppose Prostitution?”
  • Green, “Prostition, Exploitation, and Taboo”
  • Nussbaum, “Whether from Reason or Prejudice?”
  • Primoratz, “What’s Wrong with Prostituion?”
  • Schwarzenbach, “Contractarians and Feminist Debate Prostituion”

うーん、これでは多いね。ここでセンスが問われることになるわけだ。ShrageとPrimoratzとNussbaumでいいかなあ。大物度でいけばPateman入れたい気がする。

まあ
  • 概念的問題
  • 同性愛とか「倒錯」とかクィアとかまわり
  • 結婚、不倫、浮気、カジュアルセックス
  • 売買春
  • ポルノ
  • モノ化、性的使用
って感じになるだろうなあ。3〜4本ぐらいずつと考えるとこれでも20本越えてしまう。同性愛関係は需要からも政治的にも入れないわけにはいかないだろうなあ。あえてポルノは外すかな。

歴史的哲学者たちのセックス論のアンソロジーも出したいんよね。こっちも実は準備はしている。

そういや出版予定の(?)ソーブル先生の翻訳はどうなったんだろう?

不倫・浮気・カジュアルセックスの学術論文ください

不倫(婚外セックス)とか浮気とかカジュアルセックス(いわゆる「ワンナイト」)とかについての哲学・倫理学の議論を紹介しようと思って、しばらく国内の文献をあさってたんですが、これって国内の学者さんによってはほとんど議論されてない問題なんすね。 続きを読む

過去1年間、あなたは配偶者(夫・妻)恋人以外の人何人とセックスをしましたか

不倫っていうかカップル外セックスはどの程度の人がどれくらいやってるのか、ってことですが、あんまり信用できるデータがなくてねえ。

NHKの調査は信頼できるだろう、と思うわけですが、こんな感じですね。もっと新しいデータ欲しいっすね。

質問は「過去1年間、あなたは配偶者(夫・妻)や恋人以外の人何人とセックスをしましたか。ただし、お金を払ったりもらったりしてセックスをした相手はのぞきます。」です。

続きを読む