不倫・浮気・カジュアルセックスの学術論文ください

不倫(婚外セックス)とか浮気とかカジュアルセックス(いわゆる「ワンナイト」)とかについての哲学・倫理学の議論を紹介しようと思って、しばらく国内の文献をあさってたんですが、これって国内の学者さんによってはほとんど議論されてない問題なんすね。

たとえば岩波書店の『岩波応用倫理学講義5 性/愛』や『岩波講座哲学12 性/愛の哲学』の2冊を見ても、そもそも「不倫」も「浮気」も「カジュアルセックス」も出てこないみたい。これは正直驚きました。これおかしいんじゃないですか。不倫はもう普通のことで倫理学的になんの問題もないとか浮気はさっぱりかまわんしみんなしている、とかそういうことになってるんでしょうか。だめです楽しいセックスは全面禁止ですー。

まあつらつら考えてみると、私はわりと国内のフェミニズムやらジェンダーやらセクシャリティやらに関する本はけっこう読んでる方だと思ってるんですが、その手の議論はさっぱり見たことないです。「不倫はだめですか」「浮気は不道徳ですか」「その日に会ったばかりの人とセックスするのはだめですか」とか、まあけっこう多くの人が関心ある倫理学的/哲学的テーマな気がするんですがね。まあ私の生活には関係ないですけどね。ははは。他の哲学研究者の人々の生活にも関係ないんですかね。

まあ国内で「セクシャリティ」とかの倫理的問題としておもに議論されているのは、売買春、ポルノグラフィ、そして同性愛をはじめとしたセクシャルマイノリティに対する差別の三つで、ここらへんはけっこう蓄積があるんですが、不倫や浮気について真面目に議論したものがない、ってのはなんかおかしいような気がする。宮台真司先生あたりのリア充な感じの学者さんとか読まなきゃならないのだろうか。

まあここらへんにも日本のセクシャリティ論だのってての問題があるような気がしますね。5、6年前に生命倫理の文献をいろいろ見てたとき、脳死とか安楽死とかそういうのはたくさん文献あるのに妊娠中絶そのものを扱ったものはめったにない、みたいなのを発見したときと同じいやな感じがします。なんていうか、本当にみんなが気にしている問題、生活に直結する問題を学者さんたちは避けている、みたいなそういう感じ。正直なことを書けば、ある種の偽善みたいなものも感じたりしないでもないです。

いやまあ私が見てないだけなのかもしれんので、「これが定番論文だ」みたいなのがあれば教えてください。おながいしますおながいします。

岩波 応用倫理学講義〈5〉性/愛

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加藤秀一先生の『性現象論』にも出てこないし。

性現象論―差異とセクシュアリティの社会学
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最近読んだのだと牟田和恵先生の『部長、その恋愛はセクハラです!』はおじさん向けの良書だったんですが、既婚者が「恋愛」(あるいはセックス)するということそのものの問題についてはなにも触れてなくて、ちょっと拍子抜けしました。でもまあこの本はみんな1回は読んでおきましょう。

部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)
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この鼎談はけっこう興味深く読みました。西川先生は一夫一婦の結婚生活を維持されておられるらしい。結婚制度は当然フェミニズムの中心的議論対象の一つ。婚外セックスや「愛のないセックス」の話にはある程度関心を共有している印象があるけど、つっこんで議論はなかったような気がする。

フェミニズムの時代を生きて (岩波現代文庫)
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まあ、んで、なんで不倫や浮気やカジュアルセックスが日本の学者によってとりあげられないのか、ってのはどうしても考えてしまいます。仮説はないわけではないけど、どうかなあ。

私の仮説は、このタイプの問題は、非常に男性と女性(あるいはその他)それぞれの集団内部での利益の葛藤にかかわっているために議論しにくいのだ、ってものです。

まあ「不倫はOK、恋愛はすばらしい」って書いちゃえば「なんでうちの嫁を誘惑するのだ!」「うちの旦那を泥棒するつもりか!」って怒る人がいそうだし、かといって「不倫する奴は不道徳だ、人間の屑だ」みたいなこと書くと「おまえはパートナーがいるからそういうことを言うのだ」「お前はやりまくってるのか!」みたいなことを言われてしまいそうだし。これ難しいですよね。ははは。

まあ売買春とかポルノとかだったら、「買う男が悪い!」「そんなもの見て喜んでる奴らは変態だ」みたいなん言いやすいだろうし、セクシャルマイノリティへの差別や偏見が悪しきものなのは当然だから書きやすいのではないか。しかしまあ不倫とか浮気とかが人々の生活に及ぼす負の(そして正の)影響は売買春やポルノと同じくらいでかい気がしますけどね。嫉妬とかってのはDVとかともある程度関係しているんだろうし。

あとはまあ「不倫とか浮気とかみんなしてるのでそれが悪いとか書きにくい」とかか。「ぜんぜん悪いとは思ってない」とか「ふつうする」みたいなので問題を感じてないとか。そんな大きな問題じゃないだろう、とか。「そういう恋愛関係は個人的な理想にかかわることだから学者が関心をもつことではない」とか。最後のやつは興味ふかい論点ですが、それならそれで一本ぐらいそういう論文見つかりそうなものです。

まあここらへんわからんです。しばらく勉強しよう。

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