恋愛の類型学 (2) スタンバーグの三角形理論

スタンバーグ先生は恋愛心理学の一発屋ではなく、認知心理学とかのほうでけっこう大事な仕事した人なんじゃないですかね。

リー先生の恋愛の色彩理論は、恋愛を六つなり八つなりのタイプに分けるって考え方(類型論)なわけですが、まあそんなすっきりタイプに分かれるもんでもないだろう、みたいに思った人も多いと思います。スタンバーグ先生の理論は、恋愛ってのには三つの要素があって、それの強弱でいろんなタイプの恋愛があると考えます(特性論)。

これはパーソナリティー心理学なんかが20世紀前半の類型論から20世紀後半の特性論にシフトしていったのと平行関係にあるんでしょうね。この分野では昔(クレッチマーなんか)は几帳面な「がっちり型」、社交的な「肥満型」、非社交的な「細長型」みたいな三つのタイプがある、とかって言ってたわけですが人間そんなタイプにすっぽりおさまるもんじゃない。アイゼンクって偉い先生が「性格には大きく二つの要素があるのじゃ、外向的か内向的か、神経症傾向が高いか低いかの二つじゃ」とか言いはじめた。これだとそれだけで2×2で4種類いるわけだし、外向/内向も程度を考えることができるから無数のタイプが存在しうる。今主流になってるビッグ5パーソナリティー特性とかだと外向性、神経症傾向、調和性、良心性、経験への開放性の五つぐらいの独立の要素があってこれの強弱の組み合せでいろんなパーソナリティーがある、みたいになってるんだと思うです。知らんけど。

スタンバーグがやったこともこのラインなんだと思う。知らんけど。恋愛には、

  • 情熱
  • 親密さ
  • コミットメント

の三つの要素がある、と。情熱はまあわかるあのカッとなる感じ。親密さはおたがいをよく知りあったり共感したり。コミットメントは訳せないんだけど、約束したりずっといっしょにいるとかそういう決意とか意志とか。感情的に要因(情熱)、認知的要因(親密さ)、意志的要因(コミットメント)という説明も見たことあるような気がする。

親密単なる「好き」。いいひとなんだけど、ドキドキしないのよね。
情熱のぼせ。もう好きで好きで。どういうひとだか知らないけど。
コミットメント空虚な愛。もう完全に冷めてますけど別れません。
情熱親密ロマンチック。この一時を二人だけでいっしょに過ごせればいいの。でも将来のこととか考えらんない。卒業したら遠距離だし。
親密コミットメント共感的愛。ドキドキしないけど、二人でいるとポカポカするからずっとポカポカしていくわ。
情熱コミットメント愚かな愛。あの人どういう人かわかんないけど、結婚するわ!もう決めたの。
情熱親密コミットメント至上の愛。

ちょっと表がうまく作れないけどこんな感じか。

まあ情熱と親密さとコミットメントの三つがそろった「至上の愛」みたいなんの典型はベルサイユのばらのラストの方だわねえ。革命期に情熱はもえあがり、将校と従僕という長い関係のなかでおたがいを深く知りあい、そして「わたしだけを愛すると誓うかーっ」ってんでコミットメントもそろって鼻血が出そうです。

論文は R. J. Sternberg, “A Triangle Theory of Love”, Psychological Review, 1986 ってやつ。ネットにPDFが転がってるかもしれません。

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