同意」タグアーカイブ

セックス同意年齢の問題(9) 私たちはどうやって成熟するのだろうか

まあミル先生も『自由論』でこう言っています。

たぶん、いうまでもないことだが、この理論〔他者危害原則、個人の行動の自由〕は、成熟した諸能力をもつ人間に対してだけ適用されるものである。われわれは子供たちや、法が定める男女の成人年齢以下の若い人々を問題にしているのではない。まだ他人の保護を必要とする状態にある者たちは、外からの危害と同様、彼ら自身の行為からも保護されなければならない。(『自由論』第1章)

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セックス同意年齢の問題(8) 同意能力には何が必要か

このブログの同意の話では、ワートハイマー先生(Alan Wertheimer)の本や論文とりあげることが多いんですが、私がおもしろいと思って読んでるのに、David Archard先生って人のSexual Consentっていう本があります。法哲学者のワートハイマー先生はなんかへんなこと考えながルールをあれこれ模索してるけど、基本的には人間理解がのっぺりしているところがあるんですが、アーチャード先生は法学というよりは哲学や倫理学系の先生で、いかにも人文系哲学者っていう感じの繊細なところを見せてくれるので好きですね。

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セックス同意年齢の問題(6) ジュディス・レヴァイン先生の『青少年に有害!』

アメリカにジュディス・レヴァイン先生というフェミニストのジャーナリストの先生がいて、2002年『青少年に有害!』って本を書いて、アメリカではかなり話題になったみたいですね。日本語訳もあります。それの第4章が「激情犯罪」(情熱の犯罪 crime of passion だと思う)という法定レイプと同意年齢の話にあてられています。

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セックス同意年齢の問題(5) 搾取の問題

年齢が判断能力のだいたい(一応信頼せざるをえない)目安になるように、年齢差が強制や搾取のだいたいの(一応信頼できる)目安になるのかどうか という問題の搾取の方はもっとむずかしい。たしかに搾取的な人間関係や交渉っていうのはあるでしょうね。搾取っていう言葉には、道徳的によくないし、社会的に抑制するべきだという含意がある。しかしどういう関係が搾取的なのかっていうその基準を探すのが難しい。

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セックス同意年齢の問題(4) 強制の問題

年齢が判断能力のだいたい(一応信頼せざるをえない)目安になるように、年齢差が強制や搾取のだいたいの(一応信頼できる)目安になるのかどうか 、という問題について、Wertheimer先生の分析はわかりにくいところもあるけど以下のような感じ。

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セックス同意年齢の問題(3) 年の差セックス!

んで、国内での同意年齢のひきあげで問題になっているのは中学生同士のセックスみたいなやつというよりは、年上の男性と中学生ぐらいの女子のセックスみたいですね。最近もりあがったケースでも「50才の男と14才の少女が!」みたいなのが強調されていて、まあ50才男と14才中学生女子のセックスを禁止したい、そうした改正に反対するやつは少女とセックスしたいペドフィリアだ!とか、「普遍的な基本的人権を否定する人だと思われても仕方がない!」1みたいな話になっていて、ちょっとあれすぎると思います。

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セックス同意年齢の問題(1) Wertheimer先生の変な空想事例

なんかどっかの政党の委員会みたいなので議員が不適切な発言をしたとかでもりあがっていますね。性犯罪に関する各種法律を考えなおすにあたって、セックス(性交)同意年齢みたいなのを引き上げようという動きがあって、反対意見もある、みたいな感じですか。現在日本では13才だけど、16才ぐらいにしようっていう案が出てるのかな?

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よっぱらいセックス問題いったんまとめ

一覧。

よっぱらってセックスするのが好きな人々がいるようですが、危険なのでやめましょう。

「飲み物を飲んだら急に眠くなって、気が付いたらセックスの最中だった!」はおかしいか

なんか、内閣府男女共同参画局関係の広報が炎上していたようです。

「飲み物を飲んだら急に眠くなって、気が付いたらセックスの最中だった!」というツイートが話題になっていて、これは「セックス」ではなく「レイプ」と書くべきだろう、のようなコメントがついているようです。どうでしょうか。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (11) 同意というのはプロセスだ

前のエントリで書いたように、ワートハイマー先生のは私にはちょっと不安があっていろいろ考えるところです。

ところで、(8) 「セックスする気があるとき女性は酔っ払うか」で紹介したDavis & Loftus先生たちの論文の後半は法政策に対する提言になっていて、サーヴェーの結論として次のようなことを言おうとしています。

  1. 性的な同意というのはある時点での行為ではなく、時間をかけて展開されるプロセスだ
  2. 酔っ払った相手とのセックスは禁じられるべきでは*ない*。酔っ払うほど飲むっていう決断が性的な意図を含意していることはありえる
  3. 意思が途中で変わることはありえるものの、アルコールを摂取したということは被害者の強制されたという主張の信頼性に影響する
  4. reasonableな人にとって、相手のアルコール使用は、相手の同意と同意能力の蓋然的証拠になる
  5. アルコール使用はレイプや強制の虚偽申告の要因になる
  6. 酔っ払っての性的行動に対する規制は、危害の防止と自由の制限という諸刃の剣になる

どれも政治的にちょっとあれで、けっこう論争を呼びそうな主張ではありますね。うしろの方はいろいろ検討しなければならないものを含んでますが、最初の「同意は時間をかけて展開されるプロセスだ」っていう主張は鋭いことを言うな、と思いました。つまりふつうのセックスとかでは「やりますか」「やりましょう」「はっけよい、のこった!」みたいにはならんわけですね。相撲じゃないんだから。

実際のセックスでは、少なからぬ場合最初は女性は(いろんな事情から)ノーと言う場合が多い。これはけっこう研究の蓄積があります。古いのだと、Muehlenhard, Charlene L., and Lisa C. Hollabaugh. “Do women sometimes say no when they mean yes? The prevalence and correlates of women’s token resistance to sex.” Journal of personality and social psychology 54.5 (1988): 872.とか。まあそういうのは女性の弱い立場や抑圧があれだ、みたいな議論もあるのですが、そうでなくてもとりあえず軽く見られないように最初はノーっていう、みたいなのもある。ここはいろいろ議論あるところです。

Davis先生たちは、まあ最初は実際そういうもんだけど、同意しているかどうかっていうのはその最初の返事がどうかってことよりは、そのあとで、いっしょにどの程度酒飲むかとか、遠まわしに誘いかけられたらどうするかとか、手を握られれたらどうするか、耳もとで口説かれたらどうするか、他から隔てられた場所に移動するよう誘われたときについていくかとか、いろんな部分触られたときにどうするかとか、まあそういう時間的に発展していくいろんな合図によって示されるものだ、って主張したいわけですね。ここらへんの見方はワートハイマー先生より女性らしい分析を感じました。なんかよくわからんけど、セックスの同意なんてそんなもんな気がしますね。商売の契約とかギャンブルの賭けとかとは違うです。

Davis先生たちの他の主張は今やるのはちょっと時節がら具合悪いのでしばらくほうっておきます。興味ある人は読んでみてください。

酒飲みセックス問題 (10) 同意の文脈・文化

未成年女子に酒飲ませて公然わいせつした警官が女子から損害賠償訴訟起こされたようですね。このシリーズ、そういう実際の話のことは考えていますが、実際の事件についてなんか言おうというつもりはないです。

えーと、話は酔っ払った行為にも責任がないとはいえない、でも酔っ払ってした同意が、「有効な」同意なのかっていうのはすぐにはわからん、という話まで。
この問題はおそらく、その社会的文脈による、みたいな話になっちゃうんですよね。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (9) 同意したことに責任があっても同意は有効じゃないかもしれない

まあというわけで、酒を飲んで酔っ払ったからといって、行動の責任がなくなるわけではないような感じです。(場合によっては)同意したことや酔っ払ったことは非難に値するという意味で「責任がある」ということになりそうです。

しかし、んじゃ酔っ払ってした同意はぜんぶ有効validなのか、というとそうでもないかもしれない。同意の責任はあるけど同意は有効じゃないよ、だからそういう同意をした人とセックスした人を非難したり罰したりすることは可能かもしれない。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (8) セックスする気があるとき女性は酔っ払うか

Deborah Davis先生とElizabeth Loftus先生の共著で、”What’s good for the goose cooks the gander: Inconsistencies between the law and psychology of voluntary intoxication and sexual assault.” Handbook of forensic psychology: Resources for mental health and legal professionals (2004): 997-1032. っていう論文があるんですわ。酒飲み行動と性的な意図はどういう関係があるか、みたいな話のサーヴェー論文。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (7) 酔っ払い行為の責任続き

酔っ払っての行為の責任というのはけっこう難しいんですよね。こういうのは責任とかにまつわる「自由意志」とかコントロール(制御)とかの複雑な哲学的議論を必要としている。

前のエントリではHurd先生の「酔っ払ってても必ずしも善悪の区別がつかなくなるわけじゃない」「酔っ払ってした行為を許すと酔っ払わないインセンティブが低下する」っていう二つの議論を紹介しましたが、これだけではうまくいかないかもしれない。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (6) 酔っ払い行為の責任

まず、「我々は酔っ払ってしたことについて責任があるか」というのがけっこう難しい。

まあこういう形で問いを作ることに問題があるかもしない。だって、たいていの人は「責任がある」っていうのがどういうことかはっきりとした考えをもってないからです。「責任」っていうのはほんとうに複雑で曖昧な概念ですわ。こういう形で問いをつくってしまったら、まず「責任がある」っていう表現でどういうことを言おうとしているのかはっきりさせないとならん。そのいうことをした上で、「どういう場合に責任があるか」とか「酔っ払ってしたことに責任があるか」とかって話になる。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (5) エロス、ルダス、そして誘惑

ちょっと戻ってさらにだらだらと横道にそれると、まあ相手の欲望を引き起こし抑制を解除する、っていうのはこれはもう恋愛とかの一番重要な局面ですわね。そりゃ世間の正しい人びとっていうのは「恋愛やセックスというのは、長い時間をかけてお互いをよく知りあい、人間的に尊敬しあえる関係をつくり、おたがいの理解の上で一対一のコミットをした上でセックスするべきだ」みたいな美しいことを言ったりするわけですが、それってなんというか理想的すぎるし、そもそも我々が思いえがいている「熱愛」みたいなのの理想でさえないかもしれない。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (4) 薬物の影響そのものは問題ではないかも

セックスにおける同意が問題になるのは恋愛とかセックスとかそういうのには医療行為とか商売上の契約とかとはまったく違う面があるからですね。

お医者が患者を手術したくてしょうがない、みたいなことはないわけです。「手術させろー、シリツシリツ」みたいなのは困るっしょ。それに患者さんに、本人に病気とかがなくても切られたいと思ってほしいとも思わない。まあ「手術受けるならこの先生」ぐらに信頼しててほしいことはあるかもしれませんが、「あの先生に切ってほしいから盲腸になりたい」と思ってほしいとは思ってないだろう。ははは。 続きを読む

酒飲みセックス問題 (3) 「インフォームドコンセント」で考えると

医療におけるインフォームドコンセントだと、おおまかに(1) 同意能力、(2) 十分な情報、(3) 自発性・自律、の三つのポイントが有効な同意のために重要だってされてます。(1)同意能力はちゃんと判断して責任を負う能力があるってことですね。まともな判断できない人は(有効な)同意ができない。(2)の十分な情報ってのは、病気やその予想予後、薬の作用や副作用とか手術の危険性とかそういうのは患者は知らないことが多いので、情報を与えてもらわないとまともな判断できないし、それゆえ有効な同意もできない。(3)強制されてたり他からの圧力がかかってたりすると本人の意にそった同意ができないので同意が有効でなくなってしまう、というわけです。

この医療のインフォームドコンセントというモデルがセックスに適用できるかっていうのは、実は私自身はちょっと疑っていますが、それで考えてみる。

(1)の同意能力がセックスでも必要なのはふつう考えればその通りですわね。子供は自分の利益とかちゃんと判断できないから同意できない。だから日本の法律だと13歳未満の女子とセックスすると問答無用で強姦です。これはおそらく13歳未満の女子は同意する能力がないと考えられているからですね。しかし男子はOKっていうのはへんな気がしますね。まあ根拠はあるんでしょうが。こうした法定レイプを定めている国は多いです。一般には男女共通の場合が多いみたい。ただ「法定レイプ」statutory rapeの年齢を何才にするかっていうのは国によってまちまち。米国とかだと州によって違うと思う。

(3)はまあ当然。強迫してセックスというのはこれは強姦に他ならないわけです。っていうか(3)の自発性こそが性暴力とそうでないものを分けると考えられる。

これに対して、(2)の十分な情報っていうのが私が気になっている点で、セックスにおける十分な情報っていったいなんなんだ、みたいなことは思います。「私とセックスするとこういう感覚を味わいます」みたいな情報を提示する必要があるかとか。結婚してるかどうかとか性体験の数とかを秘密にしたりするのは許されるかとか。まあこれはまたあとで議論したい。

酒飲みセックスが問題になるのは、とりあえずお酒の影響で(1)の同意能力が損なわれている可能性があるからですね。まあちゃんと考えられなくなりますからね。前の記事でのアンチオク大学やブラウン大学は、アルコールがそうした能力を損うためにそういうセックスはいかん、と言いたいようです。

あと実は(3)の自発性もあやしい。お酒を飲んだのが完全に自発的だとしても、そのあとのセックスに対する同意みたいなのが本当に自発的といえるものなのかどうか。「お酒が私をそうさせたのだ」みたいな表現がありますが、酒を飲んでやった行動が自発的なものなのかっていうのはかなり疑問の余地がある。

まあこういうわけでインフォームドコンセントのモデルを使って酒飲みセックスを考えると、その条件を満してない場合がたくさんありそうで、ここらへんが倫理学者や法学者の関心をひくわけです。

そういやツイッタでは紹介しておいたけどこのビデオおかしい。私は何言ってるかまではちゃんと聞きとれないのでトランスクライブほしいな。途中でライトで酔っぱらってるかどうか確認してますね。用心深い弁護士だ。私も万が一のため、この女性弁護士雇ってみたいです。