Deborah Davis先生とElizabeth Loftus先生の共著で、”What’s good for the goose cooks the gander: Inconsistencies between the law and psychology of voluntary intoxication and sexual assault.” Handbook of forensic psychology: Resources for mental health and legal professionals (2004): 997-1032. っていう論文があるんですわ。酒飲み行動と性的な意図はどういう関係があるか、みたいな話のサーヴェー論文。
Davis先生はよく知りませんが、Loftus先生は、一時期流行した性的トラウマの記憶回復とかの研究をおもいっきりひっぱたいた人ですね。心理学会では超重要人物のはずです。この論文は、学則や法律で酔っ払った女性とのセックスを性的暴行に推定しようとか、そういう動きに対する反応でなんかそっち系の運動をしている人びとがいやがるようなことを書いてる。
- アルコールは性的な動機や興奮や快感を高めると信じられてるとか
- 酔った女性は性的活動に同意しやすくなると認知されているとか
- 男性は酔った女性の不同意を認知するのが遅くなるとか
- アルコールは両性にとって誘惑の手段として認知されてるとか
- アルコールは、通常は受けいれられない性的行動をする言い訳になると考えられてる
とかそういうのをサーベーで示して、んじゃ実際に女性はどういうふうに酒を飲むのか。
Davis, Follette, and Merlino (1999)っていう研究では大学生に、セックスするつもりのときにデート相手といっしょに酒飲んで酔っ払ったりドラッグ使ったりするか、みたいなことをたずねる、と。ドラッグとかこういうのですぐに出てくるのがアメリカやばい。ドラッグはやめましょう。酒もやめたほうがいいと思う。Davis先生はネバダの大学、ロフタス先生はカリフォルニア。危険だ。
結果は、セックスするつもりがないときに比べ、女性がセックスするつもりがあるときはドラッグを使う可能性がある(33%)、飲む(46%)、酔っ払う(61%)だそうな。男性もそれを予想していて、女性がセックスするつもりのときはそれぞれ57%、61%、75%ぐらいがそう信じているらしい。
んじゃ、セックスするつもりのときだけ酔っ払うのか
84%の女性はセックスするつもりのないときにもデート相手と飲む。セックスするつもりのないときに酔っ払うのは71%。だから酔っ払ったからといって女性はセックスつもりはないと思うべし。ちなみにセックスするつもりのないときにドラッグを使うのは31%。
男性は女性が少し飲んだときにセックスするつもりがあると思うのは8%、酔っ払ったら19%、ドラッグ使ったら28%。まあまともな男性ならば、女性が飲んだからといってセックスするつもりだとは簡単には思わないそうです。
ただまあこういう調査からすれば、女性が飲んで酔っ払ったからといって不同意だ、というのもやりすぎだというのが彼女たちの見解。アルコール使用と性的な意図の間にははっきりした関係がある。アルコールとセックスの間には関係があるということは広く信じられているので、ある程度の経験ある人がそういう行動をとるならば、ある程度そういう意図があるかもしれないということがいえる。当然同意のdefinitive evidenceにはならんけどprobative evidenceにはなるかもしれない、って話。飲んでよっぱらってる方が酔っ払ってないときよりも同意している可能性はある、みたいな。なのでよっぱらった上でのセックスは同意あっても性的暴行と推定して、即罰則、みたいなのはやりすぎだろうという話です。
まあ女性が酔っ払ったらセックスするつもりだとは思わない方がいいです。もしかしたらそういう可能性もないではない、ぐらい。やめといた方がいいです。もちろんあきらかに酔っ払って判断おかしくなってたり、意識なくなるほど酔ってたら性的暴行なのはまちがいないところです。もちろん無理矢理飲ませてなんとかしようとかもだめです。
しかしまあこういうネタっていうのは国内ではかなりやりにくい気がしますが、真理っていうか本当のところをある程度実証的に探求しようっていう努力は偉いですね。
これは見てない → Davis, D., Follette, W. C., & Merlino, M. L. (1999). Seeds of Rape: Female behavior is probative for females, definitive for males. Psychological Expertise and Criminal Justice, 101-140. Washington, D. C.: American Psychological Association.
ロフタス先生の有名な本はこんなの。
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