セックス同意年齢の問題(6) ジュディス・レヴァイン先生の『青少年に有害!』

アメリカにジュディス・レヴァイン先生というフェミニストのジャーナリストの先生がいて、2002年『青少年に有害!』って本を書いて、アメリカではかなり話題になったみたいですね。日本語訳もあります。それの第4章が「激情犯罪」(情熱の犯罪 crime of passion だと思う)という法定レイプと同意年齢の話にあてられています。

この章では21才のちょっといけてない青年と13才のけっこう賢い少女のカップルが家出して問題になって青年の方が法定レイプその他で懲役12〜24年の刑を受けることになった、っていうイケてないロミオとジュリエットみたいな話を中心に、アメリカでの法定レイプの問題がいろいろ議論されています。

  • 法定レイプ/同意年齢制度は、未成年は特別な保護をうける権利があるという原則にもとづいている(あたりまえ)
  • もともとは保護される対象は子供自身というよりは処女性(父親の財産)
  • したがって、子供の保護というより女子の保護が中心

ここらへんはよく聞く話。レヴァイン先生の評価はこう。フェミニストらしいっすね。

この法律には性差別的な考えかたが含まれている。性交においては欲望を持つ側は片方だけ、男性だけだという考えかただ。ロマンチックな言葉で言えば、男性は誘惑者であり、女性は堕落者となる。ゴシック趣味と社会生物学的専門用語をかけあわせた言葉では、男は捕食者、女は獲物。法律用語では、男は加害者、女は被害者となる。すべてにおいて、ひとりに罪があり、もうひとりには罪がない。年齢が近ければほとんど差がないはずなのだが、年齢は、性別による偏見の代役をつとめているにすぎない。つまり、男性は欲望をもつことが許されるが、男性の本質として性的に略奪するものだと疑われ、道徳的に罪を問われるのだが、ここでは男が年上なら法的に罪を問われるのである。(p.132)

法定強姦というのは、被害者が望まないといているセックスについて言うのではない。それは、彼女が 望んだ セックスなのだが、それを大人のほうは、彼女は自分が望んでいなことをわかるほど大人になっていないから望んでいると思っただけなのだと信じている。(p.133)

1995年ぐらいからは十代で出産した未婚女性の相手は半分以上20歳以上、みたいな調査が発表されたりして、そりゃ児童虐待だって話がもりあがり、年上のプレデター対策みたいなのが盛んになる。アイダホなんかでは妊娠に至った十代のセックスはぜんぶ犯罪とかにしたそうな(いまもそうかは知りません)。

こういう法律っていうのは、なんというか、人々を幸福にしないというかむしろ不幸にしてしまうので批判も多い。そもそも本人たちが望まないわけですからね。

サンホセのある十代の母親は辛抱強く記者に説明した。「ねえ、男が刑務所に行っちゃったらどうなる?母親のほうは誰にも助けてもらえなくなって、しまいには福祉のお世話になるしかないでしょ」p.145

アメリカで歴史的に早熟で性的に活発な若い女子たちが犯罪者とされたり、矯正施設に送られたりした話とかも出てきて、そういうのは別のでもいろいろ読んだり、映画(『マグダレンの祈り』)も見たりしましたが、なんか暗然ととしますね。

まあしかし、青少年に対して有害なセックスというのはたしかにあるし、搾取的な大人、とくにオヤジたちから守らねばならん、というのはやっぱりあるわけで、どうしたらいいだろう。

レヴァイン先生の答はとりあえずまず調査です。子供、ひいては人々がどういう恋愛やセックスをしているのかちゃんと調べてみたらいい。 まず子供にちゃんと話を聞いてみましょう 、と(バイアスがはいるのでそのとき「性的虐待」とかって言葉を使う必要はない)。

Allie Kilpatrik先生の501人の女性に対する調査(Long-Range Effects of〜)だと(私見てません)、その45%が14才までになんらかのセックスを体験し、思春期に体験したのは83%、そのなかの17%は虐待的だと感じ、28%は自分にとって有害だったということらしい。しかし、過半数は楽しいと感じていて、有害だとか罪悪感がのこったとかそういうのではないと。セックスを経験した年齢によるちがいは見つからない、ということらしいです。あとやぱり年上の男性と恋愛/セックスをしてハッピーになる人も相当いるみたい。別の調査でもどうも少女たちは年上の男性との関係をかなり理性的に求めているのがうかがわれる、とか。シャロン・トムソンというジャーナリストの調査(Going All the Way)だと、200人のティーネイジャー女子のうち10%が5才かそれ以上の相手との性体験を積極的に選んだと言ってたとか。まあここらへんは非常に難しいティーネイジャー女子たちの心理があるみたいで、虐待的な関係もあれば、女子の方が「攻撃し、つきまとい、捨てた側」になってるのもありでよくわからんですね。

まあこの本はおもしろいし、注や文献表とかもしかかりしているので(もちろん2002年の本だから古いけど)、青少年とセックスの話を考えたい人は一回読んどくといいと思います。

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