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ジャズ入門(33): インタープレイって何やってんの?(2)

ソリストとバックの間でなにをやってるのか、っていうのはおもしろくて私も勉強したいのですが、ソリストどうしでもいろいろやってるわけです。一番有名なのはこれですね。開始時間指定してますが、最初から聞いてください。

3:00のあたりでリーモーガンがパッパッパラーってやって終ってゴルソン先生がそのフレーズをなぞってソロを開始する。この「モーニン」て曲はテーマも黒人っぽいコールアンドレスポンスなわけですが、アドリブでもコールアンドレスポンスしているわけです。

この演奏のこのつなぎ方はお手本としてものすごく有名ですね。アメリカあたりでは、90年代からジャズは(それまでの吹奏楽/ブラスバンドに換わって?)高校〜カレッジレベルでの教育の現場に使われるようになったみたいで、そのレベルの教則本がたくさんあるのですが、この事例はソロの受け渡しの例で必ず使われますね。

指導しているところの動画とかも見た記憶があるんですが、それでも(違う曲だと思うけど)「君、前のソロの人の最後をなぞってからはじめてごらん」「君もバトンを渡すつもりでコーラスの最初の1、2小節吹いていいよ」みたいにやってました。

ベルリナー先生があげてる例をあと2個ぐらい紹介すると。

マイルスのMy Old Flame

これはちょっとわかりにくいんですが、マイルスの1:25のあたりのラリラーラリラーってフレーズを、ロリンズが最初の方でラリラーラリラー、って使ってるわけです。このラリラーラリラーはこのまんまマイルスのソロで何回もつかわれてるわけじゃないけど、(このころ(1951)のマイルス調子悪かったこともあってアイディアでないのか)「ラリラーラリ」ぐらいは何回もやってますよね。ソロ全体がこのラリラーでできてる、といえないことももない。まあロリンズはいちおうその場のリーダーを立ててるのだと思います。

これは泣く子もだまる名演。2:40ぐらいでブラウン先生「ラーソレレー」てやってロリンズにバトンを渡してます。「お題はラーソレレーッっすか……意外だったんでちょっと考えますわ、えーと」。

 

3:00のあたりでマイルスが「おらーコルトレーン行け!パパララパパっ!」、レッドガーランドがすかさず「そうです親分の言うこときけ!ガンガンっ!」、でもコルトレンは「パボー」。「いや、私親分の言うことそんな聞きませんよ!いったん落として、自分の調子でやらせてもらいます」

ジャズ入門(32) 1975年ごろジャズはなにをしていたか

70年代のジャズってなんか低調というか、フュージョンが出てくるまでペンペン草1本生えなかった印象がありますが、その直前にはどうなってたでしょうか。まあヨーロッパとかでは喜んで聞かれてたんですよね。私の75〜6年の印象はこんな感じ。

フリージャズの影響を受けて楽器は鳴らしまくり、バンド全体が一体となってがんばんもりあげる。変拍子だよ!みたいな。

これは76年。基本的にコルトレーンバンドのビアノガンガン鳴らす感じね。

なんか暑苦しいですね。まあロックとか大音量でガンガンにやってる時期だし、それに対抗しないとならん感じもあったんですかね。アメリカでは特にもうぜんぜんジャズのレコーディングができなかったとかそういう話も読んだことがある。

あ、そういやそのころヨーロッパではアートとしてジャズが聞かれるわけですわね。ジョニー・グリフィン先生とかそれで当ててお城買ったとか。

レコードもヨーロッパの小さな会社が名盤を作るようになる。これ紹介するの忘れてた。私ものすごく好きなアルバムで、ジャズ喫茶時代によくかけてました。これも75年ごろ……録音74年ですか。

これものすごくいいんですわ。コニッツ先生とベースのレッドミッチェルの2人だけのコールポーター集。私これでポーター先生好きになった。Night and Dayでミッチェル先生が素人ピアノ弾いてるのもいいんですわ。ぜひアルバムで聞いてください。秋〜冬によい。

ジャズ入門(31): インタープレイって何やってんの?(1)

この「ジャズ入門」シリーズ読みなおしてみて、けっこうおもしろいので継続してみたい。あれ以上はネタ本がないと書けないわけですが、ポール・ベルリナー先生のThinking in Jazz: The Infinite Art of Improvisationっていう本がものすごくすばらしいので、それを紹介していけばいいのかな、みたいなことを考えています。これはすごい。英語読めるひとはそっち読みなさい。

最初はいわゆる「インタープレイ」について解説したいような気がする。なんかジャズ批評とかで「ジャズはインタープレイだ」とか「ビルエヴァンスとスコットラファロのインタープレイが」とかって決まり文句があるじゃないですか。もちろんみんなわかってはいるんだと思うけど、それが具体的になんであるのか、っていうのを詳細に解説してるのはあんまり見たことなくて、ただの印象批評みたいになっちゃってると思うし。そうじゃない。それはちゃんと分析すれば解説できるのだ。ベルリナー先生はそれをやってくれているわけです。

まあそうしたレベルの話っていうのはけっこうむずかしくて、ミュージシャン本人たちはもちろんわかってるけど文章書くより音楽する方が大事だし、文章書くのが得意な人は楽器弾けなかったりするしね。私も楽器は弾けないのですが、聞くのは好きなのでがんばってみます。

さて、「インタープレイ」というのはなんでしょうか。演奏者どうしがなんか交流することです。でも具体的にはなにをしているのだろう?

答:いろいろやってます。

わあ、怒らないでください。そりゃいろいろありますね。こういうのではこたえになない。具体的にはなにをしているのですか、例をあげてください。

はい。いろいろやってます、典型の一つは「まねる」です。誰かが演奏中になんかしたら、それをまねて「私はあなたのことを聞いてますよ、ボス」とか恭順をしめしたり、「それいいっすね」とよいしょしたりしているのです。

課題曲はマイルスデイヴィス先生のBlues by Five、名盤Cookin’に入ってるふつうのブルースですね。テナーはコルトレーン、ピアノはレッドガーランド、ベースはポールチェンバース、ドラムは「フィリー」ジョー・ジョーンズ先生です。

ブルースなので、1コーラスは12小節。こういうのはこのブログ読んでる人はわかりますね。最初の2コーラスはガーランド先生によるテーマの提示。マイルス先生がはいってくるところを「1コーラス目」と呼ぶことにします。

下は、ベルリナー先生が採譜したマイルスのソロの3コーラス目(上のyoutube動画だと1:05から)の2小節目からです。

マイルスがどでぃでぃどどどどどーどどどでぃどどーでぃ!ってやるとすかさずピアノがガン!ってやって、そのすぐあとにドラムがドン!ってやってる。

 

これは1:54のあたりからのコーラスの頭です。マイルスがパッパパ!ってやるとすぐにドラムが「タタ」ってやり、「ッテーテテ」とやるのに対してドラムは同じくタタってやり、ピアノもガっ!てやり同じようにさらにピアノ・ドラムが2回間の手を入れている。

こんな感じで、ソロとってる人に対して間の手を入れる、っていうのがまあインタープレイの一番基本なわけです。

これね、まあ聞いてればふつうにそういのやってるね、ってのでおわるんですが、聞いてるとゆっくりに感じるかもしれないけど、だいたい176BPMとかわれわれが現在聞くポップ音楽としてはかなり速いわけです。1分間に180拍ぐらい、1秒に3拍。上の方の例はマイルスが「ぱ!」ってやっったのに次の拍で反応しているので、1/3秒で反応しているわけです。その1/3秒、実際にはそこでマイルスがいったんそこで息継ぎするって確認してからなので1/10秒ぐらいで反応しているわけです。下の例も、同じ、これは8部♪2個のあとにすぐに2個打ってて、さらに難しい。

この速さで反応できる人はそんないません。私にはできない。ほんの1/10秒のうちに、次に自分がなにを弾くべきかを判断しているわけです。これは難しすぎるので、おそらくしばしばマイルスがパッパパってこのを吹いたらドラムもタタってやる、というのはすでに何十回もやってるんですわね。ジャズのアドリブは即興ですとは言うものの、ぜんぶその場で作ってるわけではなく、むしろ大まかなラインはいつもいっしょ、とかそういうふうになってるはずです。マイルスは特にそういうタイプちゃうかな。

しかしまあビバップからハードバップに至るジャズは非常に競争的であり、自分たちの知的・肉体的な優秀さをディスプレイしているわけですわ。そしてこのほんのわずかな瞬間のなかで自分がやることを決めている、っていうのが、他の譜面があったりするポップ音楽とジャズを決定的に分けているものなのです。(そういうのはフリースタイルラップバトルや、ダンスバトルとかにもつながる非常に男っぽい側面なのですがそれについては私はあんまり解説できない)

 

フィガロの結婚からケルビーノのアリア二つ

大人数の教養科目みたいなので1時間半の授業は長いので、途中で5分ぐらい休憩して音楽とか流すことがあるのですが、今日はフィガロの結婚のケルビーノ君で。この人は思春期にはいったところの美少年お小姓って設定ですね。年齢は知らないけど14才ぐらい?15才?まあイケメンだからなにしても許されるわけです。

「自分で自分がわからない」

歌詞とかはこの歌詞対訳プロジェクトさんがすばらしいですね。→ 自分で自分がわからない

「愛」 amor って言葉を聞いただけで興奮するんですわ、ってときのこのアモールは、単にあこがれてますとか好意をもってます、とかそういうアモールじゃなくて、もっと女性の身体に対するアモールですわね。なんかしらんけど女の体を見るとどんなのでもむらむらして自分がよくわからなくなるのです、へたすると犯罪してしまうかもしれません、どうしたらいいでしょう、ぜんぜん経験しことのない感覚なのです、でも相手がいなくてしょうがないので自分に対して「アモール」を語りますよ、見ててもらえますか、みたいなそういうやばい感じ。でも美少年だから許されてしまって大拍手をもらうわけです。これはやばい。

モーツァルトの音楽はもちろん天才中の天才で、長調と短調がいったりきたりするのが心理的・生理的な浮き沈みを反映していてあれですね。こういう短調(マイナー)なのに性欲をのっけるっっていうのはここらのモーツァルトから、70年代の歪んだギターロックまでずーっと続きます。天才。

「恋とはどんなものかしら」→対訳プロジェクトの歌詞はこっち

これは美少年ケルビーノ君、さっきよりすこし成長している感じですよね。別の演出ではありますが、さっきのシーンのケルビーノ君は多動がはいってるかんじで体を動かすのですが、このシーンいろいろあって軍服みたいなの着てお行儀よく歌う、っていう演出が多いように思います。

さっきの「わからない」のときは実際なにもわからないで興奮して自分にアモールしてたのですが、このタイミングでは少し相手がさだまってきて、行儀よく、「ご婦人がた」っていってスザンナさんと伯爵婦人に「アモール教えてくださいよー、もう自分に語るのやめて外に向かってアモールなんすわ、自分以外とアモールしたいのです、どうにかしてください奥さん、おねがいしますよー」っておねだりしてます。やばい。でもやっぱり美少年だから大拍手。これくらい行儀よいと伯爵婦人も「まあお歌がうまくなりましたね」ぐらいのことは言ってくれるわけです。それが何を意味するのかはよくわからない。

まあオペラとかこういう下品なもので、お上品にスーツにネクタイ、ドレスとか着てこういう下品なものを見てうふふ、って言うものなわけで、なんか西洋人やばいですよね。

このケルビーノ君のみさかいのない性欲、っていうかまだ対象がはっきりしてない性欲については、キェルケゴール先生が『あれか‐これか』のなかの論文で詳しく論じているのですが、ふつうは読んでもなにやってるかわからんと思います。

日本でキェルケゴールが有名なのは、下の河上徹太郎先生の『ドン・ジョヴァンニ』で紹介されているからですが、これもそんな読みやすいものではないかもしれない。キェルケゴール解釈としても微妙かな。でも音楽ファンなら目を通しておきたいですね。

 

この本は読みやすくていいですよ。おすすめ。

 

ポップ音楽でリテラシー (3) 私の思う基本的ポップリテラシー

さっきの聴取ポイントのリストは気づいたら増やしてます。実際におしえるときにどこらへんがキモになるかって考えたり。

基本的な情報はいいわよね。テンポも速ければ元気でおそければ眠かったりだるかったりというのはすぐわかると思う。スマホアプリでBPMはかれるってのは教えたい、そのまえにBPMがなにかおしえないとならんから時計では買った方がいいか。

アーティストの年齢性別服装ライフスタイルステージングPVはいいわよね。それが聴取にどういう影響を与えているかってのを考えてもらうのはメディアリテラシーっぽい。

歌詞はこうやってばらばらにしてしまうと考えやすくなると思う。歌詞の語り手とシンガーは別だし、そのくいちがいがけっこうおもしろいというのははっきり示したい。語られている相手を想定したり想像したりするのは大事ね。

歌詞の進行とともに物語のなかの時間も経過している可能性があることも明示する必要がある。そうじゃないのも多いけど。そこで歌詞がタイプ分けできる。

多くの曲は「ストーリー」があるから、それを読み取れれば一応初級編は終了よね。そして語りの相手へのメッセージ、歌のリスナーへのメッセージを読み取りたい。

楽曲(サウンド)と同じように歌詞も真似られたり批判されたりするものだ、っていうのも指摘したい。たとえば、これまでこのブログで触れた曲だと、aiko先生の「初恋」は宇多田先生の「First Love」と「Automatic」へのアンサーソングでありオマージュだと思う。「私のときはこうだった」よね。ヒントをもらってるだけかもしれんけど。他にもいろんな初恋の歌があって、そういう積み重ねの上で作品が作られるのだ、っていうのはいいたいねえ。カンでつくってるのではない。またポップ音楽は態度を広めるものでもあって、ビートルズもパンクもそういうものよね。

修辞は国語の領域になっちゃうけどこれも大事よねえ。やりがいがあるだろう。

母音や子音の扱いっていうのもエピソードをまじえてなんか語りたい。たとえば井上陽水先生は「か行」が好きらしくて、それは彼自身の声がよく聞こえるかららしい。「か」は固い感じ、「さ」だったらさわやかだし、「な」「ま」はねっとりしているし。母音も「あ」はあかるいしや「お」おおらかだと思う。

「内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?」っていうのも大事で、その歌詞の一番のキモはそういうところにある。そこが理解できると全体の解釈が変わっちゃうような。たとえばミスチルの「Youthful Days」だったら「生臭くて柔らかい」「腐敗」。サボテンの花の話してるのに生臭いのは異常っしょ(あとで書くかも)。

メロディーや音楽やサウンドこそがポップ音楽を音楽たらしめてる部分なので、ここはいろいろやりたいわねえ。
コードと調性の話は楽器やらないひとには難しいと思うけど、他は聴取だけでなんとかならんだろうか。形式はぜひおしえたい。音楽は反復だ。「フック」っていうかその曲の魅力を作る箇所も教えたい。あとこっちも歴史大事よね。

楽器の録音技術とかボーカルの取り方とかも指摘すればわかるんちゃうやろか。

あとは、歌っていうのは必ずしもストレートなものではなく、いろんな表裏のメッセージがあるし、また購買者のこともいろいろ考えてるっていうのも指摘したい。けっこう皮肉やユーモアがわからなくて、まっすぐしか解釈できないひとは多いと思う。

「語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?」っていう問いも入れてみたけど、たとえばニルヴァーナとかリスナーにわかってほしいなんて思ってないような気がする。わかりにくいのがよいのだ、モスキート。

まあもっといろいろあるなあ。

このパロディの歌詞はこっち

ポップ音楽でリテラシー (2) 仮にリストを作ってみた

昨日の記事につづいて、んじゃ楽曲をよく聞くってどういうことだろうか、って考えて、とりあえずチェックしてみる項目を列挙してみました。もっとあると思うけど、とりあえず思いつくものだけ。★つけたのは比較的高級な内容で、知識が必要になるので、学生様には説明が必要な場合があるだろう。

基本情報

  1. アーティスト名
  2. 曲名
  3. 楽器編成
  4. ジャンル
  5. リズム・パターン
  6. テンポ

アーティスト情報

  1. シンガー・バンドの年代性別
  2. シンガー・バンドの印象、服装、ライフスタイル
  3. 想定されている楽曲リスナー、購買層、そのライフスタイル

歌詞

  1. 語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等
  2. 語り手とは別に主人公がいる場合はそのアイデンティティ
  3. 語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等
  4. 歌っている場面はいつ
  5. どこで語られているか
  6. いつのことについて語られているか
  7. 語り手と聞き手はどういう関係?
  8. 語り手はどんな状況
  9. 聞き手はどんな状況?
  10. 1コーラス目と2個ラース目の関係はどうか?時間は経過しているか?語りの内容や語り手の態度に変化があるか?間奏のあとは前と同じか、それともなにか違っているか?
  11. どんなストーリーか
  12. 語り手から聞き手へのメッセージは?
  13. ★他のアーティストの作品で似ている内容を歌っているものはないか?同じ態度の楽曲はないか?歌詞の引用はないか?
  14. ★「修辞技法」をチェックせよ。
  15. ★比喩はどうつかわれているか、擬音は使われているか?
  16. ★対句、縁語、かけことば、枕詞、句切れ、本歌取り、引歌、倒置、体言止め、見立て、擬人法、命令、呼びかけ、折り句、もののな、押韻、反復など、和歌や俳句で使われる技法は使われてないか?
  17.  ★母音、子音の使い方に特徴はないか?
  18.  ★内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?

メロディー、音楽、サウンド

  1. ★形式(AABB、AABBCCなど)
  2. ★コードやその進行は単純か複雑か
  3.  ボーカルの声質と唱法はホット?ウォーム?クール?
  4. 歌詞のないボーカル、掛け声等使ってるか
  5. コーラスの使用、性別等
  6. コールアンドレスポンスの使用
  7. ★「フック」、特徴的な音楽的工夫
  8. 前奏・イントロ
  9. ★オブリガート、フィルイン等
  10. 間奏
  11. エンディング
  12. ギター
  13. ドラム
  14. ★ベースライン
  15. ★その他アレンジの特徴
  16. メロディーの形。メロディーラインは上向き?下向き?
  17. メロディーラインの最高音はどこにある?それは歌詞とどうむすびついている?
  18. 全体のサウンドで感じられるエネルギーの頂点は?逆にエネルギーが弱いところは?それは歌詞と同関係がある?
  19. ★他の楽曲の引用はないか?影響を感じるアーティストや楽曲はないか?
  20. ★同じジャンルの10年前、20年前の楽曲との違いはなにか?
  21. ★録音サウンドに特徴はないか?
  22. カバーの場合、原曲とどうちがうか?変更にはどんな効果があるか?なぜその曲をカバーしたか。リスペクトかパロディーか。時代的背景・音楽的背景の違い。

効果、メッセージ

  1. 語り手が感じていると思われる感情
  2.  ボーカルスタイル、サウンドと歌詞はマッチしているか?
  3. 歌詞の語りの聞き手に引き起こされると期待されている感情
  4. 楽曲のリスナーに引き起こされると期待されている感情
  5. 性的な含み
  6. ★ダブルミーニング
  7.  ★政治的・宗教的メッセージはあるか?
  8. 言葉遊び
  9.  皮肉、からかい、ユーモアは含まれるか?
  10.  調子は高い?低い?
  11.  シンガーと語り手の価値観を推測できるか?
  12.  語り手はなにを求めているか?
  13.  語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?
  14. 解決されない謎、邪推等
  15. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの直接のメッセージ
  16. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの間接的なメッセージ

 


実はこれはビートルズの初期曲を聞きながら、私はなにを聞いているかを考え見たんですわ。表にするとしたPDFのようになる。これ、私自信も確認しておどろいたんですが、Love me do → Please Please me → She loves you → I want to hold your handっていう最初期の4局はそれ自体が一連の流れの上にあるんですね。そう指摘されれば当然だと思うと思うんですが、でも私自身がそれはぼんやりとしか理解してなかった。表の威力はすごいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと面倒で音楽特有のおもしろさは、作詞・作曲・シンガーと語り手とその語り手の相手とリスナー、といろんな立場から楽曲をみないとならんところですね。特に(a)語られてるひとと(b)歌を聞いてるひとの区別はどういう表現使えばいいのかもうちょっと考えたい。

ジャズ入門: エルヴィンジョーンズ先生の「至上の愛」を探求する(2)

前の記事、「ブレイキーのチュニジア、フレーズの流れは2-3なのにクラーベは3-2で打ってるんだよね。」っていう「はてブ」コメントもらってました。なるほど!まあ私はその程度のことがわからない程度の人間なのでそういうつもりで一つおねがいします。

んで「至上の愛」なんですけど、もう一回。

全体はAbのメジャーペンタトニック一発みたいですね。

もちろん4拍子でベースは「ラbーファシbッ」ってのくりかえしてます。4分音符と8分音符2個、と一応考えておく。
ピアノは16分音符で1拍目と2拍目の裏の裏に弾くのが基本。私の耳にはここでベースとピアノが16分音符1個分ずれてるように聞こえますね。ピアノはAbペンタから適当に4度で音拾ってる気がするけどわからん。

んで、問題のドラムがどうなっているかというとやっぱりわからんのですが、バスドラが1拍目と4拍目の裏と裏裏に入ってる。ハイハットが2拍4拍に入って、スネアとタムが1拍目の裏裏、2拍目の(裏)裏と3拍目の裏に入ってる気がします(2拍目の裏に入ることもある)。シンバルは16分音符でチキチキチキーチが基本かなあ。正直聞きとれない。

というわけで、自信ないけどこんな感じ。

んで、まあ何を発見したのかというと、これは実は昨日書いたクラーベなのですわ。バスドラとスネアのリムショットとタムタムで|タン・タン・ンタ|・タンタン・| っていうルンバクラーベができている。ルンバクラーベっていうのは昨日ビデオで見た3-2ソンクラーベと比べると3個目の音符が半拍うしろにずれてるやつ。ちょっと早くてしんどいけど「たんーたんーんた、たんたん、」って手拍子してみてもらうとわかるのではないかと思います。

ポイントは、昨日紹介したパーカーやブレイキーのラテン風リズムに比べて、エルヴィン先生のリズムは4拍子(またはハイハットの刻み)に対して倍の速さになってんですね。

ドラムは1小節のなかに3-2ルンバクラーベが入ってて、ハイハットが2拍4拍刻んでるので4拍子な感じもする。ベースも強力だし。シンバルが細かく刻んでるのですごい忙しいけど、ベースが安定しているのでゆったりした感じもする。よくわかんないけどベースとドラムの2拍目の裏が微妙にずれたりずれなかったりしているのもわからん感じです。ベースの2拍目の裏の音は3連になってるのかな?まあこれがポリリズムってやつなんですなあ。微妙にスイングした4拍子とクラーベと16分刻みが共存している。すごい。まあラテン音楽の影響受けたものはだいたいこういうふうになってるのかもしれないですが。

http://www.drummagazine.com/lessons/post/4-cool-grooves-from-4-hot-rhythm-sections/
上のページも参考にしてください。

こういうふうに採譜してます。解説の部分を訳しておきましょうか。

「至上の愛」はサックス奏者ジョン・コルトレーンが同名のアルバムに収録した歴史の転換点となる曲だぜ。ここでドラマーのエルヴィン・ジョーンは、ベーシストのジミー・ッギャリソンとすげーアイディア交換をしてんだぜ。最初の4小節(0:53から)でメインテーマが提示されてんだけど、そこじゃあんまり飾りはつけれれてない。でも、5小節目になるとエルヴィンはシンコペーション加えてブチ熱狂的になっていくぜ! ギャリソンがそのシグナルを7小節目で受けとめて、ベースラインを複雑にしてるのを見てみろよ!これがノンバーバルコミュニケーションてやつだ!あいつらはリダーにしたがってプレイしてるんだ!

このエルヴィンジョーンズ先生がちが開発した「ゆったりしているようで忙しい、忙しいようでゆったりしている」ポリリズムはもう60年代後半の音楽を決定してる気がします。

それはたとえばこういう曲にも反映されている。(The DoorsのThe End)

まあこれはクラーベは感じないですが、シンバルとかにエルヴィン先生の影響感じますね。エイトビートと16分や2拍3連や3連とかが混在されるリズムの上での一発ドローン、とかまあロックとしては非常に独特の美しい音楽なってる。9分目ぐらいからの暴れるところかっこいいですね。まあドアーズは基本的にはコルトレーンアあたりのジャズ好きな連中が集まってロックやってるバンドなんすよね。(あれ、これファXクファXク言ってるバージョンだ。下品いかんですね。)

Break on throughとかはハードボサノバですわね。

まあそういうわけでポリリズムは偉い、ということで。

ちなみにパフュームのはポリリズムじゃなくてスリップビートですからね。……いや、4拍子と3拍子がいっしょに鳴ってるからこれもポリリズムか。失礼しまいた。

 

ジャズ入門: エルヴィンジョーンズ先生の「至上の愛」を探求する(1)

まあジャズという音楽様式の特徴の一つはドラムにありますわね。

今日はエルヴィン・ジョーンズ先生の復習。

まあはじめてこの「至上の愛」聞いたときはやっぱりぶっとびました。

テナーサックス、ピアノ、ベース、ドラムの4人しかいないのになんか猛烈に複雑な音がするです。特にドラムはなにやってるかわかりませんね。普通人間は手足あわせて4本しかないので、一度に出せる音は4つしかないわけですが猛烈に複雑。7本ぐらいある感じがしますね。

このエルヴィンジョーンズ先生の60年代中盤の音楽ってのはほんとうに世界を変えたんじゃないですかね。

まあこの曲についていろいろ調べてみたんです。まあアフリカな感じがするわけですが、これがどっから来てどんなことをしているのか探求したい。これは実は初めて聞いた中3か高1のころからの課題であったわけです。

まあジャズと(アフリカじゃなくて)ラテン(キューバ)音楽の関係ってのは本当に深くて、パーカーの時代以前からありますわね。

1940年代後半から50年代にかけてはアメリカとあそこらへんは密な関係だったんですな。

ラテンのリズムというと特にアートブレイキーが有名かなあ。50年代のも有名だけど、わかりやすい60年代はじめの方を。

こういうキューバ音楽のリズムは、基本的にクラーヴェっていう拍子のとりかたにもとづいてるんですね。2-3と3-2がある。説明しにくいのでビデオで。

キューバ音楽では、この2-3や3-2のリズムを感じながら全体の音楽が進むわけです。

このクラーヴェの感覚ってのはラテンのキモらしく、クラブにサルサ踊りに行ったりするとイケメンキューバ人が女の子にサルサの踊り方教えてるわけですが、その時も「ワンツースリー」じゃなくて、こういう感じで「・ウノ、ドス・ウノ・ドス・トレス」ってカウントしててかっこいいです。

もっとハデなの。かっこいい。拍がどうなってるのか数えてみてくだいさい。

 

あれ、サルサの話になってきてしまった。続きはまた。

ジャズ入門(28): ハービー・ハンコック先生は偉い

マイルスバンドで名前を上げたハービー・ハンコック先生は本当に偉大。前にHead Hunterのchameleon を貼ったと思いますが、60年代にもマイルスバンド以外にもいろいろ活動している。

この人はピアニストなのにピアノトリオとか好きじゃないみたいで珍しいタイプっすね。トリオの作品は2、3枚しかないんじゃないかしら。自分で弾きまくるよりも、全体のサウンドを気にするタイプ。そこらへんがマイルスに気に入られたんだと思うです。

自分でやったのだとやはりSpeak Like a Childってアルバムがすばらしい。ちょっと変わった編成のバンドの分厚くて柔らかいサウンドが素敵。

サイドマンとしてもいろいろ活躍していて、フレディー・ハバードのRed Clayのエレピqは最高だと思いますね。この演奏はジャズ・ロックみたいなのの最高峰の一つ。
もうテーマのあとのはバード先生のソロのあとのハンコック先生がすばらしすぎる。

無調音楽入門(16) フリージャズとの関係

んでまあここらへんまで来るともうジャズのフリーインプロビゼーションとかと変わらんところにあるわけですなあ。

セシルテイラー先生とかまあもう完全に1950年代の現代音楽の音だし。

現代音楽より肉体的で素敵ですよね。コルトレーン先生の系統のフリージャズってのはなんかとにかく吹きまくって力で押す、みたいなところがあるですが、セシルテイラー先生の系統のはもっとなんか知的に構成されてる感じ。
ジャズ喫茶で働いてたときはテイラーのソロピアノってのがなぜか人気盤でしたね。私も好きでした。
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テイラー先生が50年代おわりぐらいにこういうの演奏してたら、デイブ・ブルーベック先生がやってきて、「ああ、君の演奏コンセプトはこういうことだろう〜」みたいに言ってきて、それがずばりだったのでテイラー先生が驚いた、とかって話があります。何をしゃべったかってことまではわかんないんですが、まあブーレーズやらシュトックハウゼンやらクセナキスやら、誰それの現代音楽のコンセプトをあれしてるんだろう、みたいな感じだったんじゃないですかね。

キースジャレット先生とかのフリーの独自魅力がある。

あとチックコリア先生なんかもフリーにやってたりもする。

まあ60〜70年代のジャズの一つの音ですわね。

Somewhere Before
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無調音楽入門(15) 吉松隆先生のニューロマン主義

まあ現代音楽はもうほんとうになんでもありなわけですが、吉松隆先生の「朱鷺によせる哀歌」(1981)とか名曲だと思いますね。「もう無調は古いぜ、調性の時代だぜ」みたいな。

現代音楽のマンガっていうと巨匠さそうあきら先生の『ミュジコフィリア』がまんま現代音楽作家・演奏家たちの世界を描いてますね。舞台が京都であちこち知った場所が出てくる。

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いまんとこさそう先生の作品としてはもうひとつもりあがってない気はしますが、きっと大展開してくれるでしょう。

無調音楽入門(14) まああとはなんでもあり

まあケージ以降はもうなんでもありっすな。

五線譜に書かないで図形見せて「これで適当に弾け」とか、断片だけ並べて「目にとまった順に弾け」とかもう滅茶苦茶。現代音楽とかやっぱりケージあたりで終ってる、というかはじまってる、というか、もうみんなアイディア勝負だし耳の勝負。ただうるさいだけのやつもあれば、なんか素敵な音が鳴ったり奇妙な手触りがしたりするものもある。まあどれもメロディーっていうか音の並びをおぼえたりするのは難しいけどねえ。

実際にはけっきょくどう聞こえるか、ってのが勝負なんで、裏でどういうこと考えてるのかはわからないし聞いてる方にはどうでもいいことですなあ。

日本人作曲家のもいくつかあれしますかね。

武満先生のギター音楽はいいですよね。ベルクみたいなロマンチックなものも感じるし、メシアンやブーレーズの響きもする。武満先生は文章もうまいので人気ありましたね。正直なところ、私が現代音楽とか聞きはじめたのは武満先生の文章のせいです。

近藤譲先生好きなんですが、このひとはもうなにも考えずに五線譜に音置いてくって主張してます。ほんとかどうかはわからん。NHK FMで「現代の音楽」っていう番組やってて、それでエアチャックした「時の形」っていう曲が好きでねえ。一昨年ぐらいにライブ録音したとかって情報が流れてたけど、CD出ないのかな。

もう一人、八村義夫先生っていう人紹介しますか。この「錯乱の論理」って曲はすごい名曲だと思うんすけどね。ヒステリー体質の女性(ピアノ)が錯乱してる感じ。

まあもっといろいろあるけど、入門編はこういうのでおしまいっすね。私は中級の下ぐらいで上級の人がなにを考えて音楽聞いてるのかはよくわからんです。

あとまあバルトークの方向性を追求してみたルストワフスキ先生とかベリオ先生とか、ペンデレツキだクセナキスだとまあいろんな方がいらっしゃいますが、そういうのは本でも読みつつ楽しんでください。youtubeはたいていの人のが手にはいってすばらしいですね。PCのスピーカーで鳴らしてももうひとつですがヘッドホンならなんとか聞けますからハブファンしてください。

イン・メモリアム~武満徹ギター作品集
福田進一
日本コロムビア (2007-12-19)
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音、沈黙と測りあえるほどに
武満 徹
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無調音楽入門(13) でもそれじゃでたらめやっても同じじゃないですか

しかしこうなってくるとあれですわね。リスナーにはどうやって曲つくってんのかわかるわけもないわけだし、ちゃんとした構造みたいなものはもう聞こえなくなってる。サウンドがすべて、というか。

んじゃ、わざわざ音並べてセリーだなんて言わなくてもいいじゃん、ていう発想が出てきますなあ。

現代音楽といえばジョン・ケージ、ケージといえば現代音楽な先生は、「もうそういうのやめてサイコロ振って音置いてっても同じじゃん」と言ったのか言わないのか。

とりあえずこんな音楽を作ってみる。中国の易を利用して偶然性を導入したのじゃ、あらかじめ音の高さ、長さなどを設定しておいて、それをサイコロで決定したのじゃ、みたいな。

まあしかしですね、ケージ先生がこの曲を本当にサイコロ振って作ったのかどうかは疑わしいんじゃないですかね。思ったように鳴らないと「あ、いまのサイコロなし。こんどが本当のサイコロだし」とかやってたんじゃないかと思いますわ。

ケージ先生はこういうやる前にすでにプリペアドピアノで有名になってて、まあピアノの内部に消しゴムやピンつめたりして打楽器にしちゃって鳴らす。インドネシアのガムランとかの影響だとか。けっこういいです。

ガムラン(gamelan)はドビュッシーなんかもすごく気にいったっていう話だけどたとえばこんな音。

ケージ先生は他にもいい曲がたくさんある。4:33とかのアイディア一発の人ではないです。ちゃんとした耳をもった音楽家。

John Cage:Sonatas and Interludes for Prepared Piano
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無調音楽入門(12) ブーレーズ先生とかのセリー音楽

指揮者として超有名なブーレーズ先生ですが、この人もともとはキレキレの作曲家だったわけっす。メシアン先生とかとつきあいがあったりして。評論家でもあって、「シェーンベルクは死んだ、これからはウェーベルンの時代だ」みたいなのを1951年ごろに論文書いて大ウケしたりして。

メシアン先生は音の高さ(音階)に加え、音の長さや音の強さも並べてそっから音をチョイスするっていう方法を考えだした。でもメシアン先生がそのなかのどの音を選ぶかっていうのは、まあよくわからんというかメシアン先生のセンス。

でもこれでもヌルい、と。シェーンベルク〜ウェーベルンたちの12音技法ってのは音の「順番」を決めて、それを前から鳴らしたり後ろから鳴らしたりひっくりかえしたりしてた。んじゃ、これとメシアン先生のやりかたをミックスしたらどうだろう。あらかじめ音の高さ(音階)だけじゃなくて強さや長さも順番決めた列(セリー)にしておいて、それを操作して曲作ったらかっこいいんちゃうか、と。

まあそんなん聞いてる方にはなんだかわからんですけどね。私も特に好きじゃないです。

でもこのやり方で名曲ができるんですな。「ルマルトーサンメートル」「主なき槌」ですか。どういう詩なのかは知らんです。

どこが名曲なんですかっ!って聞かれるとうまく答えられないけど、なんか独特のヒリヒリする感じがかっこいい。楽器の選択とかね。女性ボーカルなんかも入っていて、シェーンベルク先生の「ピエロ」を40年後にやってみた、感じなんですかね。

この技法でシュトックハウゼン先生なんかも有名になるんですが、私この先生のは好きな曲ないから飛ばします。ははは。

Le Marteau San Maitre
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無調音楽入門(11) メシアン先生の実験

メシアン先生というのはなんとというかへんな方で、ドビュッシーとかラヴェルとかストラヴィンスキーとかの系列なんでしょがなにやってるのかわかならない、みたいな。

ドレミファソラシドじゃない並びを勝手に作って、それにしたがって曲つくってたりしたいたいですね。サティーやドビュッシーやラベルはドレミファだとどうしてもドイツ音楽っぽくなっちゃうから、ミファソラシドレミでスペイン音楽っぽくしてみたり。ドビュッシーは前に書いた「前奏曲集」のVoilesでは人工的なC D E Gb Ab Bbなんて並びの音階で曲作ってみたりしたわけです。こんな人工的な音階でも音楽になるのであれば、もっと人工的にしてもかまわんのではないか、というのがアイディアらしいです。

戦争でドイツ軍につかまって収容所で書いたっていう「世の終りのための四重奏」は名曲っすね。8曲からなる組曲だけど、一番印象が強いのはこの第6曲かなあ。ユニゾンで延々へんな音階を鳴らす。どうもなんか天使がラッパ吹いたりしているのかもしれんです。

あとリズムがおかしくて、これもなんていうか前から弾いても後ろから弾いても同じリズムだよ、みたいなので構成してたりするらしいっす。ベートーベンとかロマン派の音楽ってのは基本的に「こうするとよい音が鳴る」っていう経験則みたいなののかたまりが理論になってんですが、ドビュッシー〜ウェーベルンのあたりから、音楽ってのはもう勝手に「理論」というか音の規則を作って、それを鳴らしてみる形になっていくわけです。もちろん作曲家の「耳」がさらに重要になるわけなんだけど。

ここらへんの曲はもうベートーベンやワーグナーみたいな調性の感じはなくなってますが、音の並びがある程度限定されているので聞きやすいですね。名曲。

好きなのは第5曲とか第8曲の映画音楽みたいなのとか、第3曲のクラリネット無伴奏ソロとか。まあ聞いてみてください。TASHIっていう音楽集団のやつがいいです。

んで、このメシアン先生が戦後に「音の高さを並べてそっから曲を作っているのであれば、音の長さとか強さとかも決めて並べてしまえばよいのではないか」とか言いだして作ってみたのがこの「音価と強度のモード」。音階の一つの音は必ずこの長さ(8分音符だとか付点2分音符だとか)でこの強さ(フォルテだとかピアノだとか)を決めておいて、その並びから音をチョイスして作ったらしい。

ウェーベルンのあの無機的な感じに近い音楽ができてる。あれよりもさらに無機的というか、不思議な美しさがありますね。このころになると、無調だとか12音だとかっていう響きにみんな慣れちゃってたんでしょうな。調性のあのひっぱられる感じは感じられない。

Quartet for the End of Time
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ファンク入門(9) ニュージャックスイング

私は60年代なかばの生まれなので、80年代末〜90年前半のNew Jack Swingとか好きなんですが、久しぶりにGuyのGroove MeのPVなんか見てみたりすると、このリズムの秘密みたいなのがわかったかんじ。
このバンドのテディー・ライリーとかJam & Lewisとかこういうニュージャックスイングってリズム流行らせたわけです。上の方でチキチキうるさくて、ベースがドンっドッツドッドッドて裏で入ってくるハネた16がニュージャックスイング。
ファンクってのはOn 1だ、とにかく小節の頭で強くダウンするのだ、って強調してきたわけですが、このリズムは一拍目はアップな感じなんですよね。踊ってる連中はみんな拍で上向きの勢いを感じて、拍の裏で落ちてくるみたいな感じ。Hip Hopの連中もヨーヨーってやるときに手が上に上がるんですよね。こういうのおもしろいですね。

ジャズ入門(27) マイルス先生ロックに接近する

Nefertitiあたりの音は本当に美しいんだけど、どうも売れなかったらしいです。なんか高級すぎて頭いい人たちのための音楽になっちゃってるんですよね。現代音楽みたいになっちゃってる。やっぱりジャズとかってのはポピュラー音楽だから楽しくて踊れないと。あとウェインショーター先生が強力すぎて、ショーター五重奏団みたいになっちゃってるし、そこらへんもおもしろくなかったかもしれない。

マイルス先生は市場調査ちゃんとしているのでそういうのの対策に出るわけですわ。んで、もうパクりまくる。っていうかマイルスはずっとパクってるわけですけどね。そういうのはピカソとかストラヴィンスキーとかバルトークとかと同じ。偉大な芸術家は模倣し、天才は盗むのです。

まず目をつけたのは、昔子分だったキャノンボールアダレーがヒットさせたマーシー・マーシー・マシーのエレキピアノ。ジョーザヴィヌル先生が弾いてるんですが、この音がとてもいいので使おう、と。

あとなんといってもリズムですわね。モードぽいのやってるときにはもうベースが4拍ずんずんやるのは捨てて自由にロンカーターにやってもらってたわけですが、4ビートはもうだめだ、これからはロックの8分音符のフィーリングだぜ、みたいな。ドラムのトニーウィリアムスもビートルズとか好きだったみたいなのでここらへんはうまくいきます。ベースもロンカーターからデイブホラントにとっかえて、ピアノもハービーハンコックが遅刻魔だからクビにしてチックコリアを雇う。チック先生はスタンゲッツとかとすばらしい演奏してたんですね。

んでこんな音楽をやる。「キリマンジャロの娘」のころのセッション。実際には「ウォーターベイビー」ってあとで発売されたアルバムに入ってるけどかっこいい。マイルス先生が完全に全体をコノトロールしてる。なんかここらへんから「Directions in music by Miles Davis」ってアルバムに入れはじめたらしいんですが、それはその前までディレクターはショーターだったってことでもあるかもしれんです。

マイルスは一生を通じてファンキーなフィーリングはほとんど出さないんですが、この曲は全体としてファンキーになってますよね。ショーターはファンキーにやってる。んでチックコリアのエレピがキレまくってる。チックのはただの黒人ファンキーじゃなくてなんか人工的なファンキーさなんすね。デイブホラント先生も、アコースティックベースでこういう強力なノリを出せるのはこの人しかいなかったんじゃないですかね。イギリス白人なのに。すばらしすぎる。なんでこの曲1967年のタイミングでリリースしなかったんでしょうね(Splashって曲もこの曲とほぼ同じ曲)。10年ぐらい前に出た「コンプリート・イン・サイレントウェイ・セッションズ」ってのはマイルスのここらへんの過渡期をばっちり収録してるのでおすすめですわ。

ザ・コンプリート・イン・ア・サイレント・ウェイ・セッションズ
マイルス・デイヴィス
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Sweet Rain (Dig)
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ジャズ入門(26) そのころマイルス先生は何をしてましたか

んで、この60年代なかばにマイルス先生は何をしていたのかというと、実はたいしたことはしていないわけです。62〜64年ごろはコルトレーン先生が爆発的な仕事をしているのにたいしたことをしてない。ギルエヴァンスとレコード作ったりしてるけどなんか迷ってる。ライブでは昔の曲をテンポ速くしていろいろ実験しているけど、これが「マイルスの音楽だ」みたいなのが出せない。

んでどうしたかというと、面倒だから腕ききの若手雇ってしまうわけです。トニーウィリアムスっていう天才ドラマーを雇い、モードでみんなベース困ってるときに弾き方を発明したロンカーターを雇い、ファンキーでもビルエヴァンスみたいなのでもなんでも弾けるハービーハンコックを雇う。これにジョージ・コールマンというメロディアスなテナーを呼んで終り。これのライブは前に聞いたと思いますが、すばらしいものです。私コールマン先生好きなんですけどね。なんかジャズファンの間では評価低いみたいね。

どうもこのコールマン先生はトニーウィリアムス先生とかから嫌われたらしくて(なんでかわからん)、どうしようかなってときに目をつけたのが前のエントリのウェインショーター先生。この人はすでにアートブレイキーのところのバンドの音楽監督を3、4年やってて来日なんかもして大人気なのにそれを引き抜くっていうのは、巨人や阪神が他球団からエースや四番を引き抜いてるようなもんですよね。ひどい。ブレイキー怒り狂ったでしょうなあ。でもショーター先生はマイルスバンドがやっぱり音楽的には一番おもしろいメンツだってことで引きぬかれる。

んで第二次黄金クインテット名盤3枚組 Sorcerer、Miles Smiles、Nefertitiができるわけです。もうマイルスは曲とか自分で書いてない。主にショーターやハンコックが書いたもの。

お、なんだそのブルースは。いい曲書いたじゃねーか、俺のアルバムにも入れさせろ。

このドロレスって曲はもうほとんどフリージャズというかオーネットコールマンが4、5年前にやったことと変わらんですよね。ピアノいるとうざいからピアノ弾くな、弾くときは右手一本で弾け、ハーモニーは弾くな、とか注文してるはず。

この大人気曲「ネフェルティティ」ではもうアドリブもない。ショーターの作ったふしぎーなメロディを繰り返しているだけで、トニーウィリアムス大暴れ。
この時期はマイルスが一番芸術的に美しい音楽を作ってたときだと思いますね。クラシックの現代音楽とかより上。

ジャズ入門(25) モードジャズはどうなりましたか

まあコルトレーン先生ががんばって「モードジャズ」みたいな一発は発展した、というかこう細かいコードをあんまり考えずにブリブリ吹きまくるみたいなスタイルが定着したりしました。

コルトレーンの「至上の愛」っていう名盤。もう力入りまくっててすごい。一応コード進行あるんだけど、II-Vしてない。私にはマイナーキーのV7がずっと続いているように聞こえる。ピアノがレファラドみたいな3度重ねじゃなくて、レソドみたいな4度重ねになってうので50年代のジャズみたいなはっきりした調性感が出ない。クラシックだとドビュッシーやバルトークがいろいろやってた音なんですわ。あとピアノのマッコイタイナーがペンタトニックスケール(ドレミソラとかレミファラシの並び)を使えばコードと関係なく何を弾いてもいい、ってことを発見したりしたみたい。

実際には1960年代はファンキージャズの全盛期で、ミュージシャンが「モード」をやるのは、コルトレーンとか最先端の人を除いて、まあライブで2、3曲、みたいな感じだったんだと思うです。

コルトレーンのグループとは派閥がちょっと違うと思うんだけど(マイルス組)、ハービーハンコックなんかは両方やる感じでなにやらせてもうまい。
ファンキーのだとこんな感じ。上のコルトレーンと同じ1964年。
んで、「モード」の方はこういう感じにする。1965年ですか。これくらい腕のある人だと一発だとおもしろくないらしくて、コードをこう意外で予測できないように連結する。II-Vははっきりわかる感じでは使わないのですがすがしい感じになる。
まあ有名曲すぎますけどね。もう1曲ウェインショーターの曲を。1966年。ブルースもこういう感じでブルースではあるんだけどふしぎーな感じになる。
ここらへんの「モード名盤」みたいなのはショーターとかハンコックとか一部のキレてる人々がやってるだけで、本流はハードバップとかファンキーとかだったとは思うですね。でも今「名盤」として生き残ってるのは、こういう先端を行ってる音楽になってる。ここらへんはおもしろいところです。新しいことをやったから名盤になっているのか、名盤作れる人々が新しいことをやりたがったからこうなったのか。私は後者だと思います。

無調音楽入門(10) ウェーベルン先生は新しい音楽を作ったかもしれない

まあシェーンベルク先生やベルク先生は、なんというかロマンチックで19世紀のドイツ音楽の後継みたいな感じなんですが、ウェーベルン先生はもっとラジカルで音楽そのものを変えちゃった感じがあります。

ピアノ変奏曲はもう聞いたので、「子どものための作品」とかどうぞ。

まあやっぱりウィーンな雰囲気は残ってるけど、こう音がまばらで密度が高い。あの暑苦しいドイツ音楽とはなんかぜんぜん違うものが発生してる感じ。

なんというか、音楽を聞く態度そのものを変更させてしまうところがあるですな。19世紀音楽の「感情」とか「情動」とかを無理矢理動かそうとするのとはぜんぜんちがう。19世紀の音楽だと「きれいねー」「ロマンチック」「情熱」みたいな感じだけど、ウェーベルン先生のはなんか鉱物かなにかを観察してるみたいな感じになる。ほう、そっちからだとそういうふうに輝きますか、みたいな。