んで、この60年代なかばにマイルス先生は何をしていたのかというと、実はたいしたことはしていないわけです。
62〜64年ごろはコルトレーン先生が爆発的な仕事をしているのにたいしたことをしてない。ギルエヴァンスとレコード作ったりしてるけどなんか迷ってる。ライブでは昔の曲をテンポ速くしていろいろ実験しているけど、これが「マイルスの音楽だ」みたいなのが出せない。
んでどうしたかというと、面倒だから腕ききの若手雇ってしまうわけです。トニーウィリアムスっていう天才ドラマーを雇い、モードでみんなベース困ってるときに弾き方を発明したロンカーターを雇い、ファンキーでもビルエヴァンスみたいなのでもなんでも弾けるハービーハンコックを雇う。これにジョージ・コールマンというメロディアスなテナーを呼んで終り。
これのライブは前に聞いたと思いますが、すばらしいものです。私コールマン先生好きなんですけどね。なんかジャズファンの間では評価低いみたいね。どうもこのコールマン先生はトニーウィリアムス先生とかから嫌われたらしくて(なんでかわからん)、どうしようかなってときに目をつけたのが前のエントリのウェインショーター先生。この人はすでにアートブレイキーのところのバンドの音楽監督を3、4年やってて来日なんかもして大人気なのにそれを引き抜くっていうのは、巨人や阪神が他球団からエースや四番を引き抜いてるようなもんですよね。ひどい。ブレイキー怒り狂ったでしょうなあ。でもショーター先生はマイルスバンドがやっぱり音楽的には一番おもしろいメンツだってことで引きぬかれる。
んで第二次黄金クインテット名盤3枚組 Sorcerer、Miles Smiles、Nefertitiができるわけです。もうマイルスは曲とか自分で書いてない。主にショーターやハンコックが書いたもの。
お、なんだそのブルースは。いい曲書いたじゃねーか、俺のアルバムにも入れさせろ。
このドロレスって曲はもうほとんどフリージャズというかオーネットコールマンが4、5年前にやったことと変わらんですよね。ピアノいるとうざいからピアノ弾くな、弾くときは右手一本で弾け、ハーモニーは弾くな、とか注文してるはず。
この大人気曲「ネフェルティティ」ではもうアドリブもない。ショーターの作ったふしぎーなメロディを繰り返しているだけで、トニーウィリアムス大暴れ。
この時期はマイルスが一番芸術的に美しい音楽を作ってたときだと思いますね。私にはクラシックの現代音楽とかより素敵に聞こえます。
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