メシアン先生というのはなんとというかへんな方で、ドビュッシーとかラヴェルとかストラヴィンスキーとかの系列なんでしょがなにやってるのかわかならない、みたいな。
ドレミファソラシドじゃない並びを勝手に作って、それにしたがって曲つくってたりしたいたいですね。サティーやドビュッシーやラベルはドレミファだとどうしてもドイツ音楽っぽくなっちゃうから、ミファソラシドレミでスペイン音楽っぽくしてみたり。ドビュッシーは前に書いた「前奏曲集」のVoilesでは人工的なC D E Gb Ab Bbなんて並びの音階で曲作ってみたりしたわけです。こんな人工的な音階でも音楽になるのであれば、もっと人工的にしてもかまわんのではないか、というのがアイディアらしいです。
戦争でドイツ軍につかまって収容所で書いたっていう「世の終りのための四重奏」は名曲っすね。8曲からなる組曲だけど、一番印象が強いのはこの第6曲かなあ。ユニゾンで延々へんな音階を鳴らす。どうもなんか天使がラッパ吹いたりしているのかもしれんです。
あとリズムがおかしくて、これもなんていうか前から弾いても後ろから弾いても同じリズムだよ、みたいなので構成してたりするらしいっす。ベートーベンとかロマン派の音楽ってのは基本的に「こうするとよい音が鳴る」っていう経験則みたいなののかたまりが理論になってんですが、ドビュッシー〜ウェーベルンのあたりから、音楽ってのはもう勝手に「理論」というか音の規則を作って、それを鳴らしてみる形になっていくわけです。もちろん作曲家の「耳」がさらに重要になるわけなんだけど。
ここらへんの曲はもうベートーベンやワーグナーみたいな調性の感じはなくなってますが、音の並びがある程度限定されているので聞きやすいですね。名曲。
好きなのは第5曲とか第8曲の映画音楽みたいなのとか、第3曲のクラリネット無伴奏ソロとか。まあ聞いてみてください。TASHIっていう音楽集団のやつがいいです。
んで、このメシアン先生が戦後に「音の高さを並べてそっから曲を作っているのであれば、音の長さとか強さとかも決めて並べてしまえばよいのではないか」とか言いだして作ってみたのがこの「音価と強度のモード」。音階の一つの音は必ずこの長さ(8分音符だとか付点2分音符だとか)でこの強さ(フォルテだとかピアノだとか)を決めておいて、その並びから音をチョイスして作ったらしい。
ウェーベルンのあの無機的な感じに近い音楽ができてる。あれよりもさらに無機的というか、不思議な美しさがありますね。このころになると、無調だとか12音だとかっていう響きにみんな慣れちゃってたんでしょうな。調性のあのひっぱられる感じは感じられない。
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