ファインバーグは重要だった (2)

ファインバーグ先生が「新生児殺しを否認する理由」はちゃんと書いてありました。その部分を訳出。 (前略) 正常の新生児の殺害 現実所有基準説の提唱者たちは、この反論に対する答をもっている。彼らの信じるところでは、道徳的な意味でのパーソンの殺害(マーダー)ではないとしても、新生児殺は不正であり他の根拠から禁じられるのが適切である。この点をクリアにするために、次の二つを区別するのがよいだろう。すなわち、 […]

「関係性」の議論にも苦しんでいます

「進捗だめです」のかわりに。あれは飽きてしまった。 ドゥルシラ・コーネル先生の議論にも困ってるんですが、国内にたくさんいる「関係性」の人々にも困ってるですよね。「女性と胎児の関係性が大事なのだから、女性の決定を尊重しなければならない」ってまあそういう感じの議論。もちろんこれでかまわないんだけど、これを言うためには胎児の権利や利益とかそういうのは女性の権利や利益ほどじゃないことを立証しておかなきゃな […]

進捗どうですか (4)

進捗だめです。 食中毒になった話は前回書きましたが、そのあともしばらく苦しんでました。私はとにかくちょっとでも体に気になるところがあると元気がなくなってなにもできなくなっちゃうんですよね。ヒポコンデリー体質というかなんというか。やっと全快という気分になったのが18日日曜日。発症したのが6日だからまあ10日以上苦しみました。 そのあとはまあなんとか本も読めるようになったのでマクマハン先生とドゥグラツ […]

パーソン論よくある誤解(7) 心理的特徴より感情とか類似性とかペルソナとか呼び声とか二人称とかが大事だ

「パーソン論」はさまざまあるとはいっても、やはり多くの論者が自己意識だとかそこらへんの心理的特徴に訴えかけているのは否定できないです。これに対してはやっぱり70年代前半からさっそくいろんな代替案が提出されています。 有名で典型的なのは中絶翻訳本に収録したジェーン・イングリッシュ「妊娠中絶と「ひと」の概念」(1975)とかですかね。解説転載しておきます。 ジェーン・イングリッシュはカナダの哲学者であ […]

パーソン論よくある誤解(6) パーソン論は人間の間に脳の働きに応じて序列を決める思想だ

これも森岡先生がばらまいた誤解というかなんというかなんともいえない解釈ですね。 先生は『生命学に何ができるか』では「(パーソン論によれば)中枢神経系のはたらきの程度に応じて、人間を一元的に序列化することができる」(p.105)と考えられてる、とか、論文「パーソンとペルソナ」でも「「パーソンである自分とその同類は他のカテゴリの存在者よりも優越しているはずだ」という前提」とかそういう読みをしている。私 […]

パーソン論よくある誤解(5) パーソン論は障害者の抹殺を求める思想である

これももうひどい誤解ですねえ。障害児施設の運営などでがんばっていらっしゃる高谷清先生が月間保団連に「「パーソン論」は、「人格」を有さないとする「生命」の抹殺を求める」という論文を発表しておられました。まあ高谷先生は実務家・思想家として活発な活動をされてはいるもののかなりご高齢のようですし、お忙しいでしょうから直接「パーソン論」の論文を読むことを求めるのは無理でしょうから、責任はそういうおかしな紹介 […]

パーソン論よくある誤解(3) パーソンでないとされた存在者は配慮の対象にならない

なんかこのパーソン論シリーズ、うまく書けなくて自分でもよくわかってないなあという気がしてくじけそうですが、まあ少しづつ書いているうちにうまい説明方法を見つけられるんじゃないかと続けてみます。 よく見かける誤解の一つが、「パーソンでないとされた存在者は配慮の対象にならない」みたいなやつですね。もう面倒なので文献ひっくりかえすのはあとにします。 でもまあ一応森岡ターゲット論文ぐらいは見る。http:/ […]

パーソン論よくある誤解(2) パーソン論は自分の仲間以外を切り捨てようとする自分勝手な思想である

(このエントリは失敗なので書き直します) 「パーソン論は切り捨ての思想だ」っていうタイプの議論は「パーソン論」が国内に紹介された時点から存在していて、特に強い影響力のある森岡正博先生が広めた、と理解しています。先生は『生命学への招待』に収められている「パーソン論の射程」(初出は1987)から『生命学に何ができるか』(2001)、そして比較的近年の論文「パーソンとペルソナ」(2010)まで一貫してそ […]

セックスの哲学と私 (4)

国内に目を向けると、セックスと哲学ってのは実はあんまり議論されていない、っていうかほとんど文献とかないんちゃうかな。「愛」とかそういう形ではあるんだけど、露骨なのがないから目に入らない。まあ婉曲表現だったりするんだろうけどなんかねえ。 大学院生の頃にマックス・シェーラーの授業があって、愛と秘奥人格とかなんとかそういう話があって、なんかわからんなーとか。あれはそういう話だとわかったのはアンソロジーや […]

パーソン論まわりについて書いたもの

大庭健先生経由で小松美彦先生を発見してパーソン論について考えはじめる。 ← 発端 パーソン論と森岡正博先生とか児玉聡先生とか攻撃したり批判したり勉強したり 加藤秀一先生と「美味しんぼ」。加藤先生の本についての言及を一部操作ミスでなくしちゃってる。 「パーソン(ひと)」の概念についてのマイケル・トゥーリーとメアリ・アン・ウォレンの議論や、それらへの批判はこちらで読めます。 妊娠中絶の生命倫理 pos […]

生命倫理学とわたし

なんちゃって。「功利主義とわたし」 の兄弟編。 前史 学部~Mのころはなにも考えてなかった。アルバイトだし。卒論はキェルケゴール。修論も。 でも小学生のころから医学とか生物とかそっち系の科学とは好きだったねえ。学研(?)の学習マンガシリーズで『人体の不思議』とか『生命の神秘』とか買ってもらってね。小学3~4年生で子どもが『生命の神秘』読んでたら親心配したろうねえ。なんか男性が水撒きホースにぎってま […]

品川哲彦先生のもゆっくり読もう(7)

久しぶりにちゃんとした哲学者が倫理学考えている本という感じ。 ヨナスとケアの倫理に関しては十分に紹介検討されていなかったので、この本は貴重。 全体、しっかり真面目に地道にやっててとてもよい。私も見習いたい。 ジョン・ロックのところとかも正確だし。たくさん真面目に勉強してるなあ。 注、文献情報なども充実していていかにも学者の作品でとてもよい。 特に第2部は綿密に研究されていて勉強になる。 どうしても […]

品川哲彦先生のもゆっくり読もう(1)

正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理 作者: 品川哲彦 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版 発売日: 2007/10/25 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 33回 この商品を含むブログ (23件) を見る とりあえずすでにざっと読んでるんだけど、機会があるので10日間ぐらいかけてゆっくり読んでみたい。 品川先生は私が子どものころから某研究会の中心的なメンバーだったので、 […]

森岡先生の膣内射精暴力論を読んでみる

(このブログ記事から発展した研究会レジュメは https://yonosuke.net/eguchi/papers/morioka200806.pdf )   http://www.lifestudies.org/jp/sexuality01.htm森岡正博先生の文章はいろいろおもしろくて、いつかまじめに考えてみたいと思ってた。今回機会があるのでじっくり読んでみたい。でもまともなことが書 […]

3回生のうちに絶対読みましょう

労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書) 作者: 中野麻美 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2006/10/20 メディア: 新書 購入: 5人 クリック: 201回 この商品を含むブログ (70件) を見る 今ごろ読んだんだけど、非常に重要。いろいろ出ている「格差本」のなかで一番まともなじゃないかしら。非正規雇用(派遣やパート)の労働状況の現状(2、3年前だけど)を描いている第 […]

加藤秀一『〈個〉からはじめる生命論』

(NHKブックス) 2章でロングフルライフの議論からパーフィットと全面対決しているのはすばらしい。 議論が成功しているとは思えないけど*1、非同一性問題のところは難しくてふつうの人はなかなか手が出せないところなので、 がっぷり戦おうという気概がすばらしい。論述も手探りで哲学している感じでよい。 若い人々がこれ読んで、自分でパーフィット読んでみていろいろ発展させてくれるといいな。パーフィットはなんと […]

一年の反省

この日記の1年分を読みなおしてみる。 まあごちゃごちゃ書いてきたが、勉強になったところもあれば ならなかったところもあり。全体にネガティブで傲慢でoffensiveだけど、 そんなに大きくまちがったことは書いてないしまちがっているところは恥をかいていると思うので、 もうちょっと続けてみるかな。 書き方が悪くて一部の人に不快を与えているかもしれないのは いろいろ反省。また意図的に傲慢な書き方をしてみ […]

森岡先生のパーソン論批判の残りふたつ。

パーソン論は脳の機能中心の貧弱な人間理解にもとづいている。 なにが自己意識であり理性であるかは「関係性」によってしかわからん。 うしろの方から。 ・・・そもそも人間にとって、具体的に何が「自己意識」であるか、何が「理性」であるかというのは、それを判断される人間と、判断する人間のあいだの関係性によって決定されるからである。たとえば、痴呆性老人と言われる人間であっても、親しく看護しているボランティアか […]

「パーソン論」は保守的か

んで森岡正博先生粘着のつづき。 isbn:4326652616 ・・・パーソン論は見かけ上のラディカルさに反して、その内実は保守主義であるという点に注意を払うべきである。・・・よく考えてみれば、パーソン論の主張とは、生命の平等というお題目にもかかわらず、われわれが現実に行なっていることをありのままに描写したにすぎない。 (p.110) パーソン論とは、われわれの多くがこの社会で実行しているところの […]