コトバンクを脚注で使うのはやめろ / 周知の情報の出典にWikipediaを貼る必要はない

コトバンクはいりません

前に「なんでも広辞苑を引用してすませるのはやめろ」という記事を書いたのですが、最近目立つのが本文中の語句に脚注をつけてコトバンクからの説明をつける、というタイプのレポートです。まあちゃんと出典1をつけようという態度2はえらい3のですが、ごちゃごちゃうるさいので避けてください。

まず基本的に、説明の必要な語句の説明は脚注ではなく本文中でやるべきです。「功利主義4によれば、積極的安楽死が正当化される場合がある」みたいに書くのはまちがっています。功利主義の説明が必要ならば、本文中で簡単にやってください5

また、「なんでも広辞苑を引用してすませるのはやめろ」でも述べたように、もし説明が必要ならば、辞書ではなく、授業テキストや専門事典などを使ってください。

「注」とはなにか理解しておこう

ところで、脚注や後注の注とは注釈であり、本文ではなく、本文で述べたことに必要な情報、あるいは読者にとって有益な情報を追加的に補足するものです。上で「語句の説明は本文でやれ」と指示したのは、重要な語句の説明は追加的なものではなく、むしろ文章のなかで非常に重要なものだからですね。それがないと理解できないようなことは本文に書くべきだ。

「でも、 よく語句の説明を注でやってるのを目にするよ 」っていう人がいるかもしれませんが、それは高校国語や大学のテキストで使う文章は、その文章や本や国語問題文を作った人、編集者自身が書いた文章ではなく、他人の文章であることが多いことと関係があると思います。文章の抜粋を示したりすることは多いですからね。古い文章で、いまとなっては用語や周辺事情の説明が必要な文章も多い。他人の文章を勝手に変更することは基本的に禁止なので、そうした場合に編集者や問題作成者たちは、難しい語句を高校生や学部生向けにわかりやすくするために注をつけることがあります。学生様たちが自分で文章を書いているときは、自分で語句の説明をすればよいので、脚注を使うのは避けてください。

Wikipediaもいらない場合が多いです

また、教員によっては「ちゃんと自分が参照するテキストの著者が誰であるか確認して、レポートでも簡単に紹介すること」などという指示を出す人がいますが(私です)、わざわざWikipediaを参考文献リストにいれる必要はありません。ある人が哲学者なのか物理学者なのか、いつごろの人なのか、みたいなのは基本的には周知の情報で、ちょっと調べれば出てくるわけなので、そういう(誰でも知っている)「周知の情報」、よく知られている情報には文献の参照は必要ないと思ってください。もちろん、あんまり知られていないけど重要なことを書こうとする場合にはなんらかの参照が必要です。

また、Wikipediaを参照する場合、

https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%9A%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%92%E5%BC%95%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B

みたいな%と数字だらけのURLを貼るのはなにも意味がないのでやめてください。Web上の情報、Wikipediaの参照などはいまだに議論があるところですが、もし必要なときでも、現在の大学生のレポートでは以下のように注をつける程度でかまわんと思います。

フリー百科事典のウィキペディア日本語版を見ると、ウィキペディアを引用・参照する際にはいくつかの形式が推奨されている6

まあ基本はWikipediaそのものよりは、テキストその他の文献を参照した方がよいでしょう。もし文言をそのまま使う場合にはもっとちゃんと「引用」しなければなりませんが、ふつうの学部生レポートではそもそも直接引用は不要だと思う。

Wikipediaの扱いについては昔も「Wikipedia」っていう記事書きましたが、ちょっと古くなってると思う。

あと法文とかも書籍の出典とかいらんのだけど……

あと、

日本国憲法第24条では、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」するとされている。 (注) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION_19470503_000000000000000&keyword=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95

とかもいりません……現行の法律とか誰でも知ってるし何見ても同じものが載ってるわけだからね。けっきょく、なにを見ても同じようなことが書いてあるものはソースの参照とかいらんわけです。でもここはたしかに難しいところはあるんですよね。 → これを見てください。 https://yonosuke.net/eguchi/archives/10072


脚注:

1

故事、成語、引用句および事柄などの出所。また、それの出ている書物。典拠。コトバンクより、2021年7月24日確認!

2

コトバンクによれば、事に臨むときの構え方。その立場などに基づく心構えや身構えとされている。2021年7月24日確認。https://kotobank.jp/word/%E6%85%8B%E5%BA%A6-91652

3

「えらい」にはいくつかの意味があるが(コトバンクより)、ここでは普通よりもすぐれているという意味で使っている。

4

幸福を人生や社会の最大目的とする倫理・政治学説。コトバンク https://bit.ly/3kTAgq4

5

レポートでたとえば「功利主義」をどの程度詳しく説明するかというのは、そのレポートの目的や要求されるレベルによります。

6

「ウィキペディアを引用する」、『ウィキペディア日本語版』、2021年7月24日。

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