しつこく文献の参照方法

レポートでの文献の参照方法はなかなか理解しにくいようなので、何度でもお説教させてもらいます。


まずは基本的な考え方を確認してください。教員や大学が配ってるであろうレポート執筆マニュアルを熟読してそれにしたがえばよいわけですが、どうも何回読んでもああいうものが頭に入ってこない人がいるみたいですね。

基本として頭に叩き込む必要があるのは、レポートで自分が参考にした文献を参照するのは、なにより、読者(評価する教員を含む)が、あなたがレポート作成にあたって参考にした 情報源に簡単に辿りつけるようにするため だということです。他にも著作権や剽窃にかかわるポイントもあるのですが、基本はとにかく情報源を確認できるようにすることだ、と理解してください。

簡単に情報源に辿りつけるようにするために、著者 、 発行・発表 タイトル出版社 あるいは雑誌名の4つは必ず必要です。したがって参考にした文献リストにはこの四つは必ず載せます。世の中には同じタイトルの本がありますし、いつごろに出た本なのかというのも大事な情報です。文献リストはレポートの末尾にまとめます。翻訳書の場合は訳者も書いてください [1]翻訳もたいへんな苦労で、また翻訳にあたって訳者の解釈や編集が入っていたりするので必ず掲載します。

トムソン, J. J. (2011) 「妊娠中絶の擁護」、塚原久美訳、江口聡編監訳『妊娠中絶の生命倫理』、勁草書房

という形になりますね。

あと、文献に言及する場合は、本文中でもリストでも、必ず著者を書く、著者がタイトルの前につく、と考えてください。

文献リストはよいとして、学生様たちが困るのがレポート本文中での参照の方法ですね。これが学生様を困らせてしまうのは、学問の専攻によって慣習がちがったり、大学の先生によって参照する形式の指定が違ったり、また先生自身が講義資料などでまともな文献情報出してなかったりするからですね。

ここでもうひとつ、文献参照の重要な原則があります。それは、 文献情報は読むときに煩雑にならないようにする です。短いレポートの本文中に上の文献リストに載せる四つの情報を書くのは文字数がたいへん増えてしまい、文章が読みにくくなってしまいます。そこでよく使われるのは次の二つの方法です。

  1. 脚注にする(レポート作成にMS Wordのようなものを使っている場合は脚注機能を使ってください)
  2. (著者姓, 2022, p.99)のような略記で()のなかにいれる

ポイントはとにかく本文の邪魔をしないことです。2. のタイプで書くときは、フルネームで書くと面倒なので著者の 姓だけ にするのが一般的です。訳者とかもいりません。この2.のタイプのものは、うしろに文献リストが存在していることを前提にして、「細かい情報がほしければ末尾の文献リストを見ろ、ここではどこかわかるようにだけ略記する」という判断をしているわけです。

J. J. トムソンは論文「妊娠中絶の擁護」で有名なヴァイオリニストの比喩による議論を提出している(トムソン 2011, p. p.13)。

という形になりますね。くりかえしますが、このタイプの略記は、うしろに文献リストがあってそこからすぐに探せることが前提です [2]探しやすくするために、リストは姓のアイウエオ順など、ちゃんとした順番に並んでいる必要があります。

2.のタイプのは結局目印・略記です。あなたが参照している文献が一つだけなら、本文中で「〜の『〜』という書籍を参考にする、以下()のなかで当該ページを記す」とか断わってしまえば、(p.99)だけでもよくなります。同じ著者の本を2冊以上つかわないのなら、(姓 (年) p.99)という書き方の年の部分も書かなくてもよいかもしれない。学部のレポートならこの程度でも減点されてしまうことはめったにないでしょう。結局のところは、 読者が大きな負担なく、また気を散らされてしまうことなく、必要なときに情報源に辿りつけるようにすりゃいい わけです。だから場合によって、

このレポートでは J. J. トムソンの論文「妊娠中絶の擁護」(原著1971、翻訳2011)を紹介する。彼女は有名なヴァイオリニストの比喩による議論を提出している(p.13、以下は文献のページ番号だけを示す) 。

でもOKって場合も少なくないです。

あと「〜著」の「著」はいりません。「〜訳」は必要です(ですが、本文中ではいりません)。

さらに付け加えておけば、文献リストに掲載するものは、基本的に本文または脚注で必ず言及するものだ、と考えておいてください。


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1翻訳もたいへんな苦労で、また翻訳にあたって訳者の解釈や編集が入っていたりするので必ず掲載します。
2探しやすくするために、リストは姓のアイウエオ順など、ちゃんとした順番に並んでいる必要があります。

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