堀田義太郎さん & 弁護士JPニュースの「男性へのヘイトスピーチ」記事 (3)

弁護士JPニュースの「“男性特有の匂いが嫌い”や“おじさん詰め合わせ”は「差別発言」指摘も…男性への「ヘイトスピーチ」とはいえない明確な理由」へのコメント続き。

日本国内で「日本人差別」は成立する?

次が難しいところですね。同じ問題をアリアン・シャフヴィシ『男はクズと言ったら性差別になるのか』が扱ってます。

そもそも、「差別を煽動する」とは、具体的にどのような行為をさすのか。

堀田准教授は「特定の集団に対する差別とそれを正当化する言説が過去・現在を貫いて多数存在していることに依拠しながら、それらを総体として肯定し、未来に向けてそれを煽る行為」と表現する。

たとえば、「日本人を叩き出せ」という言葉は、表面上は「日本人への差別煽動」のように見受けられる。しかし、日本国内では、過去にも現在にも「日本人」であることを理由にした迫害・差別・排除などは存在してこなかった。つまり、差別を成立させるための慣行や言説、背景や文脈が存在しないため、煽動される「日本人差別」も存在しない。

「『日本人を叩き出せ』は、不快な発言ではあるかもしれません。しかし、日本社会では、在日朝鮮人や外国人、部落出身とされる人々などへの差別煽動と同等のものとして扱うことはできません。

ふむふむ、しかしなぜ 過去 にその差別が多数存在していることが条件になるのだろうか。さっきの差別禁止条約は、「すべての人間が法律の前に平等」でありすべての権利と自由を差別なく享受することができるとかそういうことが唱われているわけですが、差別の扇動が 過去に 存在していたことを要求するものはなにもないように思えます。法務省や国連のヘイトスピーチの定義にもないように思う。

もちろん、ヘイトスピーチなどが、過去から現在まで続いている差別を是認し助長し扇動するものであるという理解に文句はないのですが、過去にその差別がおこなわれていなければならない、という条件は私は理解できません。

弁護士の小倉先生が書いていましたが(そして私もツイートで同様のことを指摘していますが)、たとえばルワンダで起きたことは(権力者・上位者としての)マジョリティであり、差別をおこなってきた人々(ツチ)に対する、多数ではあるが劣位者であるという意味でマイノリティである人々(フツ)によるヘイトスピーチが、憎悪を煽ることによって生じたと理解しています。それじゃそのときの憎悪に満ちたスピーチ(コックローチがはびこってる、コックローチを殺せ!)がヘイトスピーチじゃなかったのか、っていったらそうじゃないっしょ。

だから過去の差別の存在という条件は私はいらないと思う。もちろん、 そういうふうに定義したい というのならばそれは論者の勝手です。でもそれに我々がしたがう理由はなにもない。

日本人男性、あるいはその一部について、誤情報(特に男性は道徳的に劣っているとか、実際よりも危険な存在だ、などと)を公言し広めようとするならば、それは十分ヘイトスピーチになりうる。だから、これまで男性差別がなかったからといって(私はそう思いませんが)、男性に対するヘイトスピーチをおこなうことができない、と私は考えません。もっとも、「男性の匂いが苦手」や「詰め合わせ」程度のものが差別の扇動だとも思いませんが。単に、上の堀田さんの論証は失敗している、というだけのことです。

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