プラスティックラブと並ぶシティポップのもうひとつの代表曲が「真夜中のドア」ですね。
こっちはまあ、歌詞としてはあんまり工夫がないと思うのでコメントするべきことはほとんどないのですが、なんといってもすごいのはサビですね。
Stay with me
真夜中のドアをたたき
帰らないでと泣いた
あの季節が今目の前
これは謎だ。「真夜中のドアを叩いて「帰らないで!」って泣く」、そんな状況ありますか?どんあ状況だろう。まあ二度目の冬に男があきちゃって去っていった、というのはわかる。恋は愛に発展しなかったんですね。これはまたハルワニさんの意見を聞けば、ハルワニ先生は、恋愛の初期段階の熱烈でセックスばっかりしているRL1(ロマンチックラブ1)と、2、3年たって落ちついてあんまりセックスしなくなったけど仲良しでいっしょに生活を楽しむみたいなRL2(ロマンチックラブ2)を区別しようっていうんですわ。もう一人の監訳者の広島大の岡本慎平先生なんかは「それは日本語の恋と愛に対応する区別じゃないか」とかってことを言ってました。
まあとりあえず2年たってどうもうまくいかなくなったわけです。んで主人公の家で別れ話をして出ていったときに、「帰らないで!」って言って泣いてる。男は帰るべき場所があるんですね。もしかしたら不倫かもしれない(独身かもしれんけど)。それなら、別れ話じゃなくても、いつも主人公の家に来てセックスするとさっさと家に帰っちゃうので「たまには帰らないで泊まっていって!」って泣いてるのかもしれないですね。
それにしてもですよ、真夜中に自分の部屋のドアを 内側から 叩きまくる、っていう状況って、ほんとうにあるでしょうか?「んじゃね、バタン」「帰らないでーバンバンバン!」とかやります?ふつうの人はやりません。せいぜいドア開けて腕を掴んだり後ろから抱きついたりするだろうと思う。んじゃどういうときにマンション [1]勝手に決めました の鉄の [2]勝手に決めました ドアをバンバンバンバン叩くのだろうか?
それは、 マンションの他の住民に知らせるためです! バンバンバンバンうるさくすれば他の住民が起きてきてなにごとかと思う。いったいあの部屋何やってんだ?ってことになりますわね。いったん外に出た男もあんまりやばいので部屋の戻らざるをえない。あるいは戻らなかったら女子はバンバンバンンバンいつまでも叩きつづけて近所迷惑になり、同情されたりする。「私は今男に捨てられようとしているのです、男はひどいやつです、私はかわいそうな女なのです、みんな同情して!同情してくれるでしょ!」 つまり、それは演技なのです!メンヘラです!おまわりさんメンヘラです!
まあ不倫なら、騒ぎになってお巡りさんとか呼ばれることになればその男もしょっぴかれて事情聞かれて奥さんに知られることにもなるかもしれませんしね。
とにかくシティポップの歌詞は人工的で演技的なのです。まあそういう歌詞なわけで、やはり メンヘラ女子こそシティポップ 、と思うわけですが、みなさんいかがですか?そして夜とセックス。そして鉄のドア(鉄だって言ってないけど)。ショーウィンドウ。そういう硬いもの、クリスタルなものもシティポップ。
私は私 貴方は貴方と昨夜言ってた そんな気もするわ
グレイのジャケットに見覚えがあるコーヒーのしみ
相変らずなのね
ショーウィンドウに二人映れば
Stay with me
真夜中のドアをたたき
帰らないでと泣いた
あの季節が今目の前
Stay with me
口ぐせを言いながら
二人の瞬間を抱いて
まだ忘れず大事にしていた
恋と愛とは違うものだよと
昨夜言われたそんな気もするわ
二度目の冬が来て
離れていった貴方の心
ふり返ればいつも
そこに貴方を感じていたの
Stay with me
真夜中のドアをたたき
心に穴があいた
あの季節が今目の前
Stay with me
淋しさをまぎらわして
置いたレコードの針
同じメロディ繰り返していた
- メンヘラソングとしての「プラスティック・ラヴ」
- メンヘラソングとしての「真夜中のドア」
- メンヘラソングとしての「都会」
- スージー鈴木先生のシティポップの特徴づけ
- 隠れシティポップ:古家杏子「晴海埠頭」
- マスターワークとしてのプラスティック・ラヴ(音楽的構造の側面)
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