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音楽オタクになろう!(欅坂46「エキセントリック」を題材に)

FDの一貫として、学部教員で1回生向けの「基礎ゼミ」向けのテキストを作っていて、まあ私はごく軽い気分で楽しんで作ってます。自分では最近関心をもってるポップ音楽つかいながらメディアリテレシー教育をする、っていうやつを目指して軽いものを書いてみました。内容よりは、1回生のクラスで適当に最初のスピーチの練習や、ディスカッションの練習もどきをやるための素材って感じ。

まだ校正とかちゃんとしてないんだけど。「エキセントリック」は前にこういうのやろうとおもってそのままになってたのね。

江口聡 (2020)「ポップ音楽オタクになろう!」,京都女子大学現代社会学部編『京女で学ぶ現代社会』,2020年4月30日版.

 

↓のシリーズの続きというわけです。

 

欅坂46というか秋元先生はいろいろおもしろいから、過去にも書いてる。

ポップ音楽でリテラシー (7) 人々をカテゴリ分けさせたい

前のエントリの見本は、去年作った仮の聴取リストをそのまんま使ってしまったんですが、学生様に去年今年と2回やってもらって気づいたことがひとつ。

私が読んだメディアリテラシーの教科書みたいなのでは、アーティストとターゲットのリスナーのアイデンティティみたいなのを推定させるのが最初の作業なんですが、1〜2回生ぐらいだとこれがうまくいかないんですね。

だいたいいつもみんな「10代〜20代の男女」ぐらいになってしまう。こういう答になってしまうのはもちろん私の説明不足なんだけど、学生様たちのあるもの見方や慣れてしまった表現方法なんかについてあることを示している。

つまり、学生様たちはまだ人々のアイデンティティというか、逆に人々の「違い」みたいなのをまだあんまり意識してないかもしれないのね。

欅坂を聞くひととExile聞く人はちがう人々だと思うんですが、それが「10〜20代男女」っていうひとくくりになってしまうわけです。音楽ジャンルは性別、学歴とかにうっすらではあっても対応しているわけですが人々をこまかくタイプ分けするっていうのがまだできてない。人々を勝手にカテゴリ分けするのはよくないことですっていうふうに教育されているのも影響しているかもしれないし、あるいはカテゴリ分けして見てるけどそれを表明することは避けてるのかもしれない。でも2回生ぐらいになれば、聞く音楽からどういう人かっていうのはわかりますわよね。

まあこういうのはおもしろいなと思う。

(おそらくこのエントリはちょっと問題があるんだけど、まあおいおい書き直すです)

ポップ音楽でリテラシー (6) 最初の一歩は見本を示す

下は、あんまり説明してない時点で、1回目の分析(もどき)をやってもらうための課題のためのテンプレというか見本。まあ見本みせないと学生様はなにをやればいいのかわからんし。


アーティスト名: 欅坂46
曲名: エキセントリック
YoutubeのURL: https://youtu.be/65v7JSBpQ4U
作詞: 秋元康
作曲: ナスカ
編曲:?
歌詞: http://j-lyric.net/artist/a05b333/l03efac.html

楽器編成: 打ち込みリズムセクション、ピアノが印象的。
ジャンル: アイドルソング
リズム・パターン: 4つ打ち
テンポ:130BPM ( http://tunalab.web.fc2.com/txt_lib/get_bpm.htm で計測できる)
形式★: あとで


シンガー・バンドの年代性別服装等:女子高生
シンガー・バンドの印象、ライフスタイル: 鬱な女子高生
想定されている楽曲リスナー、購買層: (1) 鬱屈しているオタク男子、中学生〜オヤジオタまで (2) アイドル好き中高生女子、鬱屈?
語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等: 中学生〜高校低学年男子?女子もあり。
語り手とは別に主人公がいる場合はそのアイデンティティ: 語り手が主人公
語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等: 自分自身に語りかけている。もうなにもかにもいや。


歌っている場面はいつ:教室で鬱屈している現在
どこで語られているか: 教室か自分の部屋か。教室の方がドラマチックでよい。
いつのことについて語られているか: 今現在。
語り手と聞き手はどういう関係?: 本人。誰にも関係がない少年少女。
語り手はどんな状況: はみだしている、はぐれている、ぼっち、嫌われてる、敬遠されてる、噂されている
聞き手はどんな状況?: 同上
語り手がかんじていると思われる感情: 絶望、孤独、憎しみ、嫌悪。
歌詞の語りの聞き手が感じていると思われる感情: 同上。
楽曲のリスナーに引き起こされると思われる感情: 同上。
直接のメッセージ: なにもかにもいやです。

間接的なメッセージ:
「なにもかにもいや」っていうのではわれわれは連帯できる。社会やクラスにいるくだらない偽物、インチキな奴らとつきあわず、まともな人間である我々だけで好きなように生きていこう。

その他:

直接には「水清ければ魚棲まず」 http://kotowaza-allguide.com/mi/mizukiyokerebauo.html だが、さらには屈原の楚辞「漁父の辞」にも暗に言及している。


**** 歌詞とその1行1行について気づいたこと★ ****

(次回やる)


こっから中級

性的な含み:
ダブルミーニング:
言葉遊び:
解決されない謎:
歌詞のないボーカル、掛け声等使ってるか:
「フック」、特徴的な音楽的工夫、音楽的におもしろいところ:
コーラスの使用、性別等コーラスの使用、性別等★:
コールアンドレスポンスの使用★:
前奏・イントロの特徴★:
オブリガート、フィルイン等の特徴★:
間奏の特徴★:
エンディングの特徴★:
ギター★:
ドラム★:
ベースライン★:
その他アレンジの特徴★:


これの自慢というか工夫は、「水清ければ魚棲まず」のような引用を発見させようとしているところで、学生様の一人は宇多田ヒカルの”Traveling”から平家物語を発見してくれました


ポップ音楽でリテラシー (5) なんでトライしてみているか

ポップ音楽使ったメディアリテラシーみたいなのに興味があるのはいくつか理由がある。

まず「リテラシー」として、ふつうに目の前にありよく見聞きしているものが、学生様が思っているより内容豊富であるってことを理解してほしいっていうのがある。ビートルズとかからポップ音楽鑑賞をはじめた世代としては、ある程度は歌詞やそのメッセージに注意して聞いてほしいと思っているのだが、J-POP以降の多くのリスナーはそうではないように思える。

ふつうはそうしたリテラシーは古典文学作品を利用して教えるものだと思うけど、昨今はそういうのなかなか難しいし、長い文章や難しい文章だと学生様がついてこれなかったり、私の気力が続かなかったりする。そもそも学生様がそうしたマテリアルに興味をもてるかどうかもよくわからない。小説とかの文学作品なら可能かもしれないけど、私あんまり詳しくないし。ラノベとかにもよいものはあるんだろうけど、よく知らんし。ポップ音楽なら3分だし楽しいし、私もそこそこ知識がある(少なくとも文学よりは)。

ポップ音楽なら歌詞テキストの分析以外にもいろいろやることがある。各種の音楽的な背景や仕掛けや工夫、ビジュアル表現、ライフスタイル、政治的主張、ポップ産業のありかた、広告と、現代のマスメディアとそこで生きる我々の生活を考えるには題材だと思う。

ってなわけで2回生の前期ゼミ半期1回分ぐらいやってみるのはいいんちゃうかと思ってるわけです。1回生後期でもいいかもなあ。

ポップ音楽でリテラシー (4) 音楽分析マストハブ

今年も2回生ゼミ(前期)ではメディアリテラシーみたいなのやっていて、やっぱりポップ音楽からやろうかとしてます。まあそういう題材でゼミするっていうが私に許されるかどうかわからないんだけど、基本的にこの時期は好きなものについて調査したりプレゼンで熱く語ったりできるようになってもらうのが目的なので、題材はなんでもいいといえばなんでもいいというのもあり。私の担当の「倫理学」とかの授業をやっとやってる時期なので、私の専門に近い面倒な話はやりづらいというのもある。

連休つかって、書籍ながめたり、日本の論文いくつかあたってみたり。でもなかなか文献情報が見つからないのでよね。卒論はJ-POP論で書きたい、みたいな学生様たちは全国でかなり大量にいるんじゃないかと思うんですが、手引きがないのはこまりますね。

私が見たものからいくつか紹介しておこうかしら。

おそらく概説でいちばん定評あるのはシュクラー先生のこれだと思う。これは版を重ねていて、楽曲だけでなく、ポップ音楽の歴史やそれをとりまく産業や聴衆とかの話までカバーしたもの。

楽曲に特化して分析の手法を示しているのは下のがいまのところ(私が見たなかでは)最強な感じ。

録音芸術としてのポップ音楽を楽音レベルで分析する手法を提示していて、楽曲の構造やらレイヤーやら歌詞におけるペルソナ(語り手や聞き手やパフォーマー)の問題やら、楽曲を一番大きな単位として考えるときにはとても優れてる。

同じようなのをもう一冊おさえておくとすれば下の。

こっちはもっと大きく楽曲を売ったり享受したりするところまで分析しようってものだけど、歌詞の分析に一章使ってる。ここまでの3冊もって目を通しておけば、まあそれなりにしったかぶりとかできそうな気がしてるんだけど、どうだろう。

下のは、実際に1人1曲を担当して細かく分析してみせてくれているもの。

他にも、私が目を通してみたのはここらからいくつか拾えると思う。
https://booklog.jp/users/yonosuke1965?keyword=popular&display=front

下の『ユリイカ』特集目を通してみたんですが、文献情報もそれなりにあって勉強になりました。15年ぐらい前の「J-POP」の歌詞にまわつわる問題意識がわかる。

それに収録されている増田聡先生や北田暁大先生の論文を観ると、ポップ音楽研究で国内でわりと有名なのが下のものらしいけど、私は未読。入手がむずかしそうでまだ見てないです。

ポップ音楽でリテラシー (3) 私の思う基本的ポップリテラシー

さっきの聴取ポイントのリストは気づいたら増やしてます。実際におしえるときにどこらへんがキモになるかって考えたり。

基本的な情報はいいわよね。テンポも速ければ元気でおそければ眠かったりだるかったりというのはすぐわかると思う。スマホアプリでBPMはかれるってのは教えたい、そのまえにBPMがなにかおしえないとならんから時計では買った方がいいか。

アーティストの年齢性別服装ライフスタイルステージングPVはいいわよね。それが聴取にどういう影響を与えているかってのを考えてもらうのはメディアリテラシーっぽい。

歌詞はこうやってばらばらにしてしまうと考えやすくなると思う。歌詞の語り手とシンガーは別だし、そのくいちがいがけっこうおもしろいというのははっきり示したい。語られている相手を想定したり想像したりするのは大事ね。

歌詞の進行とともに物語のなかの時間も経過している可能性があることも明示する必要がある。そうじゃないのも多いけど。そこで歌詞がタイプ分けできる。

多くの曲は「ストーリー」があるから、それを読み取れれば一応初級編は終了よね。そして語りの相手へのメッセージ、歌のリスナーへのメッセージを読み取りたい。

楽曲(サウンド)と同じように歌詞も真似られたり批判されたりするものだ、っていうのも指摘したい。たとえば、これまでこのブログで触れた曲だと、aiko先生の「初恋」は宇多田先生の「First Love」と「Automatic」へのアンサーソングでありオマージュだと思う。「私のときはこうだった」よね。ヒントをもらってるだけかもしれんけど。他にもいろんな初恋の歌があって、そういう積み重ねの上で作品が作られるのだ、っていうのはいいたいねえ。カンでつくってるのではない。またポップ音楽は態度を広めるものでもあって、ビートルズもパンクもそういうものよね。

修辞は国語の領域になっちゃうけどこれも大事よねえ。やりがいがあるだろう。

母音や子音の扱いっていうのもエピソードをまじえてなんか語りたい。たとえば井上陽水先生は「か行」が好きらしくて、それは彼自身の声がよく聞こえるかららしい。「か」は固い感じ、「さ」だったらさわやかだし、「な」「ま」はねっとりしているし。母音も「あ」はあかるいしや「お」おおらかだと思う。

「内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?」っていうのも大事で、その歌詞の一番のキモはそういうところにある。そこが理解できると全体の解釈が変わっちゃうような。たとえばミスチルの「Youthful Days」だったら「生臭くて柔らかい」「腐敗」。サボテンの花の話してるのに生臭いのは異常っしょ(あとで書くかも)。

メロディーや音楽やサウンドこそがポップ音楽を音楽たらしめてる部分なので、ここはいろいろやりたいわねえ。
コードと調性の話は楽器やらないひとには難しいと思うけど、他は聴取だけでなんとかならんだろうか。形式はぜひおしえたい。音楽は反復だ。「フック」っていうかその曲の魅力を作る箇所も教えたい。あとこっちも歴史大事よね。

楽器の録音技術とかボーカルの取り方とかも指摘すればわかるんちゃうやろか。

あとは、歌っていうのは必ずしもストレートなものではなく、いろんな表裏のメッセージがあるし、また購買者のこともいろいろ考えてるっていうのも指摘したい。けっこう皮肉やユーモアがわからなくて、まっすぐしか解釈できないひとは多いと思う。

「語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?」っていう問いも入れてみたけど、たとえばニルヴァーナとかリスナーにわかってほしいなんて思ってないような気がする。わかりにくいのがよいのだ、モスキート。

まあもっといろいろあるなあ。

このパロディの歌詞はこっち

ポップ音楽でリテラシー (2) 仮にリストを作ってみた

昨日の記事につづいて、んじゃ楽曲をよく聞くってどういうことだろうか、って考えて、とりあえずチェックしてみる項目を列挙してみました。もっとあると思うけど、とりあえず思いつくものだけ。★つけたのは比較的高級な内容で、知識が必要になるので、学生様には説明が必要な場合があるだろう。

基本情報

  1. アーティスト名
  2. 曲名
  3. 楽器編成
  4. ジャンル
  5. リズム・パターン
  6. テンポ

アーティスト情報

  1. シンガー・バンドの年代性別
  2. シンガー・バンドの印象、服装、ライフスタイル
  3. 想定されている楽曲リスナー、購買層、そのライフスタイル

歌詞

  1. 語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等
  2. 語り手とは別に主人公がいる場合はそのアイデンティティ
  3. 語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等
  4. 歌っている場面はいつ
  5. どこで語られているか
  6. いつのことについて語られているか
  7. 語り手と聞き手はどういう関係?
  8. 語り手はどんな状況
  9. 聞き手はどんな状況?
  10. 1コーラス目と2個ラース目の関係はどうか?時間は経過しているか?語りの内容や語り手の態度に変化があるか?間奏のあとは前と同じか、それともなにか違っているか?
  11. どんなストーリーか
  12. 語り手から聞き手へのメッセージは?
  13. ★他のアーティストの作品で似ている内容を歌っているものはないか?同じ態度の楽曲はないか?歌詞の引用はないか?
  14. ★「修辞技法」をチェックせよ。
  15. ★比喩はどうつかわれているか、擬音は使われているか?
  16. ★対句、縁語、かけことば、枕詞、句切れ、本歌取り、引歌、倒置、体言止め、見立て、擬人法、命令、呼びかけ、折り句、もののな、押韻、反復など、和歌や俳句で使われる技法は使われてないか?
  17.  ★母音、子音の使い方に特徴はないか?
  18.  ★内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?

メロディー、音楽、サウンド

  1. ★形式(AABB、AABBCCなど)
  2. ★コードやその進行は単純か複雑か
  3.  ボーカルの声質と唱法はホット?ウォーム?クール?
  4. 歌詞のないボーカル、掛け声等使ってるか
  5. コーラスの使用、性別等
  6. コールアンドレスポンスの使用
  7. ★「フック」、特徴的な音楽的工夫
  8. 前奏・イントロ
  9. ★オブリガート、フィルイン等
  10. 間奏
  11. エンディング
  12. ギター
  13. ドラム
  14. ★ベースライン
  15. ★その他アレンジの特徴
  16. メロディーの形。メロディーラインは上向き?下向き?
  17. メロディーラインの最高音はどこにある?それは歌詞とどうむすびついている?
  18. 全体のサウンドで感じられるエネルギーの頂点は?逆にエネルギーが弱いところは?それは歌詞と同関係がある?
  19. ★他の楽曲の引用はないか?影響を感じるアーティストや楽曲はないか?
  20. ★同じジャンルの10年前、20年前の楽曲との違いはなにか?
  21. ★録音サウンドに特徴はないか?
  22. カバーの場合、原曲とどうちがうか?変更にはどんな効果があるか?なぜその曲をカバーしたか。リスペクトかパロディーか。時代的背景・音楽的背景の違い。

効果、メッセージ

  1. 語り手が感じていると思われる感情
  2.  ボーカルスタイル、サウンドと歌詞はマッチしているか?
  3. 歌詞の語りの聞き手に引き起こされると期待されている感情
  4. 楽曲のリスナーに引き起こされると期待されている感情
  5. 性的な含み
  6. ★ダブルミーニング
  7.  ★政治的・宗教的メッセージはあるか?
  8. 言葉遊び
  9.  皮肉、からかい、ユーモアは含まれるか?
  10.  調子は高い?低い?
  11.  シンガーと語り手の価値観を推測できるか?
  12.  語り手はなにを求めているか?
  13.  語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?
  14. 解決されない謎、邪推等
  15. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの直接のメッセージ
  16. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの間接的なメッセージ

 


実はこれはビートルズの初期曲を聞きながら、私はなにを聞いているかを考え見たんですわ。表にするとしたPDFのようになる。これ、私自信も確認しておどろいたんですが、Love me do → Please Please me → She loves you → I want to hold your handっていう最初期の4局はそれ自体が一連の流れの上にあるんですね。そう指摘されれば当然だと思うと思うんですが、でも私自身がそれはぼんやりとしか理解してなかった。表の威力はすごいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと面倒で音楽特有のおもしろさは、作詞・作曲・シンガーと語り手とその語り手の相手とリスナー、といろんな立場から楽曲をみないとならんところですね。特に(a)語られてるひとと(b)歌を聞いてるひとの区別はどういう表現使えばいいのかもうちょっと考えたい。

ポップ音楽でリテラシー (1) 本を読んで

学生様と話をしていて、好きな音楽の話なんかを聞きたいわけですが、うまく説明できる人はそれほど多くないですね。「よい」「好きです」ぐらいで、なにがどうよいのか、どこがどう好きかを説明できる人はあんまりいない。というか、歌詞や曲をよく聞いてないというわけでもないと思うんですが、分析的に聞いたり説明したりすることはなかなか難しいものです。

とかって考えて、そういうので卒論を書きたいという学生様もいたりするので(うちはそういう学部)、ポップ音楽の鑑賞法とか分析法についての本を探しているのですが、日本語ではなかなかないもんですね。英語ならあるかなってんで探しているうちに、Practical Media Literacyって本をKindleでめくってみる機会がありました。

 

 

これは中学や高校ぐらいのクラスルームで、各種のメディアをクリティカルに見る方法を考えながら教えようっていうクリシンの本ですわ。Musicの項目を見てみると、下のような感じ。ちょっといろいろおもしろいと思いました。

まずポップ音楽ってのが特定のリスナーをターゲットにした産業のプロダクションである、って説明するんね。たしかに楽曲の作成からマーケティングまで考え抜かれている業界ではある。単に楽曲だけじゃなくPVや売り方まで含めた商品なのだ。

んで次にジャンルの説明をする。ジャンルっていうのは特定のターゲット層に向けて、その期待にそうようにわけられてるんですよ、と。たとえばハードなギターロックだったら学校に退屈しているミドルクラスのティーネイジャーとか、ボーカルも典型的には白人男性である、と。ヒップホップだったら社会に困難な若者で典型的には黒人巨体ラッパーとDJとか、まあそういうことね。うんうん。ジャンルっていうのは、その顧客であるリスナーが「こういう音だよな、こういう感じを与えてくれるだろう」ってんで手にとるように、その期待に会うようにできてる。

あとちょっとだけサウンドについて触れて、とりあえず実践しましょう、ってな方向にすすむ。んでクラスルームでやるのは、1曲好きなヒット曲を聞いて、練習問題を考えましょう、みたいなの。

  1. ジャンル(カテゴリー)を考える。
    どの要素によってそのジャンルに分類したか。楽器、ボイスの感じ、曲の長さ、テンポ。人種、年齢、性が違うと別のジャンルになるか?選んだ曲の何が自分にアピールしたか。

  2. 歌詞を考える
    曲を聞き歌詞を読んでどういう感情になるか。ハッピーか、悲しいか、怒りか。歌詞とシンガーの歌い方はマッチしているか。音楽は歌詞や歌い方とフィットしているか(悲しい歌詞なのにアップテンポということもあることを指摘)。メッセージを聞いてどういう感じになるか。歌詞によって語られているストーリーに共感するか。リスナーにアピールするためにどう書かれているか。反対の意味になる歌詞を自分で書いてみよう。

  3. 楽器法や曲の構成を考える
    使われている楽器、全体の感じ。曲の構造をメモする。印象に残る「フック」があるか。繰り返しのセクションがどういう感じをもたらすか。頭にこびりつく感じがあるか。ダンスしたくなるか眠りたくなるか。ハッピーにするか悲しくするか。同じジャンルの20〜30年前の曲と比べるとどうか。プロダクションのスタイル、楽器用法、アレンジは変わっているか。なぜ、どのように変わっているか。

  4. ターゲットのリスナーを考える
    誰がターゲットか。アーティストのルックス、ファッション、態度は歌の感じに影響を与えているか。年齢、人種、性が違っていると違う感じになるだろうか。別の人はその曲を違ったふうに解釈するだろうか。メッセージはポジティブなものかネガティブなものか。

  5. マーケティングを考える
    架空のアルバムのカバーを考えてみる。ジャンルやターゲットリスナーのライフスタイルを考える。

とかそういう感じ。なるほど、おもしろいですね。われわれポップ音楽好きはこういうのは言われなくてもいろいろ考えるわけですが、中高生、あるいは学部生ぐらいだと、こうやって明示的に質問された方がわかりやすいし、意識的に聞くってことに自覚的になるでしょうね。リストや表の形にしておくんですね。いろんなのが作れそうだ。

んで、いろいろ考えたこととか発表したりディスカッションしたりするんでしょうね。これは中高向けかもしれないけど、いずれ私の1〜2回生ゼミの学生様にもやってみてもらおうかという気がします。もうちょっと突っ込んだ問いを設定したいけど、最初はうえみたいな感じかなあ。

上の本全体は、インターネット(Web/SNS)、テレビ、映画、ストリーミング、音楽、ニュースメディア、ヴィデオゲーム、ラジオとオーディオ関連、写真と主要メディアについての簡単な説明と練習問題があって、最後は広告なのね。なるほど、そいうことか、これぞクリシンだ!みたいな。

ちょっとおもしろい鉱脈がここらへんにありそうな気がしています。