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ジャズ入門(33): インタープレイって何やってんの?(2)

ソリストとバックの間でなにをやってるのか、っていうのはおもしろくて私も勉強したいのですが、ソリストどうしでもいろいろやってるわけです。一番有名なのはこれですね。開始時間指定してますが、最初から聞いてください。

3:00のあたりでリーモーガンがパッパッパラーってやって終ってゴルソン先生がそのフレーズをなぞってソロを開始する。この「モーニン」て曲はテーマも黒人っぽいコールアンドレスポンスなわけですが、アドリブでもコールアンドレスポンスしているわけです。

この演奏のこのつなぎ方はお手本としてものすごく有名ですね。アメリカあたりでは、90年代からジャズは(それまでの吹奏楽/ブラスバンドに換わって?)高校〜カレッジレベルでの教育の現場に使われるようになったみたいで、そのレベルの教則本がたくさんあるのですが、この事例はソロの受け渡しの例で必ず使われますね。

指導しているところの動画とかも見た記憶があるんですが、それでも(違う曲だと思うけど)「君、前のソロの人の最後をなぞってからはじめてごらん」「君もバトンを渡すつもりでコーラスの最初の1、2小節吹いていいよ」みたいにやってました。

ベルリナー先生があげてる例をあと2個ぐらい紹介すると。

マイルスのMy Old Flame

これはちょっとわかりにくいんですが、マイルスの1:25のあたりのラリラーラリラーってフレーズを、ロリンズが最初の方でラリラーラリラー、って使ってるわけです。このラリラーラリラーはこのまんまマイルスのソロで何回もつかわれてるわけじゃないけど、(このころ(1951)のマイルス調子悪かったこともあってアイディアでないのか)「ラリラーラリ」ぐらいは何回もやってますよね。ソロ全体がこのラリラーでできてる、といえないことももない。まあロリンズはいちおうその場のリーダーを立ててるのだと思います。

これは泣く子もだまる名演。2:40ぐらいでブラウン先生「ラーソレレー」てやってロリンズにバトンを渡してます。「お題はラーソレレーッっすか……意外だったんでちょっと考えますわ、えーと」。

 

3:00のあたりでマイルスが「おらーコルトレーン行け!パパララパパっ!」、レッドガーランドがすかさず「そうです親分の言うこときけ!ガンガンっ!」、でもコルトレンは「パボー」。「いや、私親分の言うことそんな聞きませんよ!いったん落として、自分の調子でやらせてもらいます」

ジャズ入門(31): インタープレイって何やってんの?(1)

この「ジャズ入門」シリーズ読みなおしてみて、けっこうおもしろいので継続してみたい。あれ以上はネタ本がないと書けないわけですが、ポール・ベルリナー先生のThinking in Jazz: The Infinite Art of Improvisationっていう本がものすごくすばらしいので、それを紹介していけばいいのかな、みたいなことを考えています。これはすごい。英語読めるひとはそっち読みなさい。

最初はいわゆる「インタープレイ」について解説したいような気がする。なんかジャズ批評とかで「ジャズはインタープレイだ」とか「ビルエヴァンスとスコットラファロのインタープレイが」とかって決まり文句があるじゃないですか。もちろんみんなわかってはいるんだと思うけど、それが具体的になんであるのか、っていうのを詳細に解説してるのはあんまり見たことなくて、ただの印象批評みたいになっちゃってると思うし。そうじゃない。それはちゃんと分析すれば解説できるのだ。ベルリナー先生はそれをやってくれているわけです。

まあそうしたレベルの話っていうのはけっこうむずかしくて、ミュージシャン本人たちはもちろんわかってるけど文章書くより音楽する方が大事だし、文章書くのが得意な人は楽器弾けなかったりするしね。私も楽器は弾けないのですが、聞くのは好きなのでがんばってみます。

さて、「インタープレイ」というのはなんでしょうか。演奏者どうしがなんか交流することです。でも具体的にはなにをしているのだろう?

答:いろいろやってます。

わあ、怒らないでください。そりゃいろいろありますね。こういうのではこたえになない。具体的にはなにをしているのですか、例をあげてください。

はい。いろいろやってます、典型の一つは「まねる」です。誰かが演奏中になんかしたら、それをまねて「私はあなたのことを聞いてますよ、ボス」とか恭順をしめしたり、「それいいっすね」とよいしょしたりしているのです。

課題曲はマイルスデイヴィス先生のBlues by Five、名盤Cookin’に入ってるふつうのブルースですね。テナーはコルトレーン、ピアノはレッドガーランド、ベースはポールチェンバース、ドラムは「フィリー」ジョー・ジョーンズ先生です。

ブルースなので、1コーラスは12小節。こういうのはこのブログ読んでる人はわかりますね。最初の2コーラスはガーランド先生によるテーマの提示。マイルス先生がはいってくるところを「1コーラス目」と呼ぶことにします。

下は、ベルリナー先生が採譜したマイルスのソロの3コーラス目(上のyoutube動画だと1:05から)の2小節目からです。

マイルスがどでぃでぃどどどどどーどどどでぃどどーでぃ!ってやるとすかさずピアノがガン!ってやって、そのすぐあとにドラムがドン!ってやってる。

 

これは1:54のあたりからのコーラスの頭です。マイルスがパッパパ!ってやるとすぐにドラムが「タタ」ってやり、「ッテーテテ」とやるのに対してドラムは同じくタタってやり、ピアノもガっ!てやり同じようにさらにピアノ・ドラムが2回間の手を入れている。

こんな感じで、ソロとってる人に対して間の手を入れる、っていうのがまあインタープレイの一番基本なわけです。

これね、まあ聞いてればふつうにそういのやってるね、ってのでおわるんですが、聞いてるとゆっくりに感じるかもしれないけど、だいたい176BPMとかわれわれが現在聞くポップ音楽としてはかなり速いわけです。1分間に180拍ぐらい、1秒に3拍。上の方の例はマイルスが「ぱ!」ってやっったのに次の拍で反応しているので、1/3秒で反応しているわけです。その1/3秒、実際にはそこでマイルスがいったんそこで息継ぎするって確認してからなので1/10秒ぐらいで反応しているわけです。下の例も、同じ、これは8部♪2個のあとにすぐに2個打ってて、さらに難しい。

この速さで反応できる人はそんないません。私にはできない。ほんの1/10秒のうちに、次に自分がなにを弾くべきかを判断しているわけです。これは難しすぎるので、おそらくしばしばマイルスがパッパパってこのを吹いたらドラムもタタってやる、というのはすでに何十回もやってるんですわね。ジャズのアドリブは即興ですとは言うものの、ぜんぶその場で作ってるわけではなく、むしろ大まかなラインはいつもいっしょ、とかそういうふうになってるはずです。マイルスは特にそういうタイプちゃうかな。

しかしまあビバップからハードバップに至るジャズは非常に競争的であり、自分たちの知的・肉体的な優秀さをディスプレイしているわけですわ。そしてこのほんのわずかな瞬間のなかで自分がやることを決めている、っていうのが、他の譜面があったりするポップ音楽とジャズを決定的に分けているものなのです。(そういうのはフリースタイルラップバトルや、ダンスバトルとかにもつながる非常に男っぽい側面なのですがそれについては私はあんまり解説できない)