学生様から質問されて教員がちょっと困ってしまうものに「課題は木曜日までに提出とありましたが、23時59分まですか」というタイプのものがあります。
「木曜日までに提出してください」とおねがいしたら木曜日まで提出したらいいわけで、23時59分までなのかを確認してなにがしたいのかわからないわけです。
教員には締め切りに厳しいひともいれば少し甘めな人間もいるわけですが、「木曜日まで」って指定だったら木曜日まで出せばいいのであって23時59分59秒99までなのかどうかは確認する必要がありません。
もし教員が、時刻を指定せずに「木曜日」って締め切りを指定しているのに、あとになって「お前は木曜日19時までに出さなかなかったから単位出さない、これで卒業できなくて就職もパーなだ、はははざまあみろ!」みたいなことを言ったたら不正・不正義なので学校に訴えてクビにしてもらったらよろしい。それはちゃんと指定していない教員が悪いですからね。
だから「木曜日23時59分までですか?」って聞いてくる学生様は、「締め切りが23時59分59秒99なのかどうかということとは別のことを考えているのだと思うのです。「今週は事情で提出が遅れそうだから金曜日まで待ってもらえないかな」とか。それだったら最初から「金曜まで待ってもらえないですか」とか、すでに締め切りが過ぎてたら「締め切り過ぎちゃってたけどとにかく提出するねっ!テヘっ!」とかやればいいのです。
教員の側としては面倒な理由がもうひとつあります。「23時59分59秒99までですか?」って聞かれて、「イエス」って答えたら、次の日になって0時0分3秒23ぐらいに提出された人は「締め切りを過ぎてる!許せん!単位なしだ!これで卒業はなくなったな!」ってやらなくちゃならないでしょ?そんなことやってたら単位落さなければならない受講生が続発して、あの大学に入ると卒業できない、とかそういうことになっちゃうじゃないですか。成績評価の公平性とか公正さっていうのは教員にはすごく大事なんすよ。だからあんまり厳密なことは聞かないでほしい。聞かれてしまえば厳密になります。
まあ実際、そういうことをくりかえして無用に厳密になってる先生も見たことあるでしょ?「時間内に提出できなかったら減点だ!システム不調?そんなの事前に出しとけば問題なかったはずだから自己責任だ!」みたいなことを言う先生を見たことがあります。
人間というのはそれぞれ体調だのパソコンの不調だの不慮の事態だのいろんなことがあって、思うようにいかないものです。そういうのをいちいち咎めることはできない。だからあえて厳密にせずに融通が効かせられるようにしておいた方がいいこともあるのです。
そしてそもそも、私たち大学教員にとって、大学教育というのは、 学生様を採点するためにあるのではありません 。学生様にはちゃんと学習して知識やスキルを積み上げてほしいのですが、それは型にはまった規則通りに動くロボットをつくりだすことではない。内容が大事なのです。
もちろん、上の「時間内に出せなかった学生は」のようなルールに厳しい先生もいらっしゃって、それはそれで社会やビジネスのルールにしたがうこと、役所やビジネスとのかかりで、不要な不利益を受けない用心みたいなのを教えたいと思っておられるのだと思うのですが(これはわかります)、いろんな事情からそうは考えないしそういうことはできない教員もいるのです。だからもし指定がなければ「23時59分なの?」みたいな質問ひかえてもらえると助かるのです。(もし教員が厳密なタイプであると思うならそういうこと聞いてもいいかもしれない。少し観察しましょう)
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木曜日に提出することはokなのか聞きたかったのではないだろうか。この点が明らかでないと、学生は念のため「木曜日になったら期限切れ」という解釈を取らざるを得なくなる。「Xまで」のXが瞬間か瞬間に近い期間をあらわしているならば問題は生じないが、Xがあるていどの長さをもった期間であるときはその期間のなかで終わらせてもよいのかが確定できない。「~まで」というのは結構あいまいな表現で、たとえば「明日までに終わらしておいてね」と言われたら、明日の「朝」になった時点ですでに終わっていることが期待されているように感じる。インターネット上にこんな質問もある (https://oshiete.goo.ne.jp/qa/4177787.html)。たしか契約書でも「X日からY日までに云々」という文言でY日にも法的な効力があることをはっきりさせる言い回しがあった気がする。昨今では学生のほうもビジネスライクなふるまいを規範化していて、教師と交渉してお目こぼしをもらうという発想がそもそもないのではないか。あるいはそういった交渉になれていないので、やりたくてもできない。前者の規範が後者の困難を正当化する循環構造の存在がうかがわれる。疑問点を確認することさえせず、また「課題は木曜日までに提出とありましたが、23時59分まですか」という聞き方も、質問の意図をつたえて分かってもらおうというよりは、yes/noが確認できればそれでよいといった一方的な姿勢 (甘えではなく) に由来しているように感じる。目的合理性の観点からみればとぎすまされたワーディングでさえある。「~まで」というような日常的語彙の意味について議論するのは時間がかかるし、教師相手にするのはおそらく多くの学生にとってハードルが高いだろう。
以上、コミュニケーション論あるいは世代論の観点から興味深い点があったので投稿させていただきました。純粋に知的な興味による投稿で、批判の意図はありません。
「までに」が曖昧なのではないかという指摘はほかでももらって「なるほどたしかに曖昧だ」とは思ったのですが、その場合は「水曜23時59分まで出すのか木曜23時59分までか」って質問になるだろうから、上で話題にしたよくある質問とはちょっとちがうのではないかとおもいます。コミュニケーションというものはむずかしいですね。
私は「〆切は木曜日ってことは、金曜日に私がレポート提出の有無を確認するってことです。その確認前に出せていれば、別に金曜日提出だって構いませんよ。でも金曜日のいつの時点で確認するかは、当日になってみないと分かりません。8時かもしれないし10時かもしれないし、あるいは20時かもしれない。ひょっとしたら金曜日の0時01分かもしれませんし、その場合、0時02分に提出したレポートは遅延提出ということになりますが、それに文句をつけることは認めません。まあどの場合であれ、木曜日に出していれば、間違いなく間に合います。〆切は木曜日、というのはそういう意味です。」って説明してます。