『恋愛制度、束縛の2500年史』で恋愛の歴史を学ぼう (2) プラトン『饗宴』まわり

全体的にゆっくり考えたいところはいくつかあるんだけど、しばらく目についたとこだけ順にコメントしていきます。

  • 最初、古代ギリシアからはじまっているのはよいと思うんだけど、その前に国内標準的なジェンダー論・クィア論のお説教ついているのがなんだかイヤん。鈴木先生がこの本でやりたいことの一つは、「我々が標準的な恋愛のあるべき姿と思っているのは、単なる歴史的に構築されたものであって、なにもその根拠はない」みたいな形の主張なんじゃないかと思う。ただし、鈴木先生は直接にはこういう表現はしてない。まあいろいろ言いたいことはあるけど飛ばす。
  • 古代ギリシアの恋愛観として大々的に紹介されるのがプラトン先生なんだけど、これ大丈夫なんかと思います。そりゃ我々にとってプラトン先生はとても大事な先生なんだけど、当時の人々にとってのプラトン先生っていうのはやっぱりかなり特殊な人で、彼が言ってることをみんなまにうけたわけではないと思う。プラトン先生の恋愛論を古代ギリシアの恋愛論、みたいに書かれるとリンダ困ってしまう。
  • でもとりあえずアリストファネス先生の人間球体論は基本。こういうの載ってるやつで学生様が読みやすいやつが欲しかったのでとてもえらい。しかし、その前にやっぱり『饗宴』がどういう枠組みの話か、っていう話はいちおうしてほしいものだと思います。アリストファネス先生の話はおもしろいし、『饗宴』といえばこの話、ってくらい重要なわけだけど、いちおう『饗宴』は6人だか7人だかの話が対話を含めて有機的に発展していくところがおもしろいわけだし。まあそこまで求めるのは求めすぎか。
  • 「古代ギリシアでは一時期、もっとも価値があり「正常」であったのは男性同士の愛でした」(p.45)とかそういうのはおそらく書きすぎだと思う。ドーヴァー先生あたりもそういうことは言ってないと思う。単にアテネを中心とした古代ギリシア社会では、一時期そういう慣行があった、ぐらいじゃないんかね。まあプラトン先生なんかはガチで同性愛好きだったと思うけど。
  • プラトンと同時期の快楽主義者アリスティッポス先生なんかは女性っていうか美人ヘタイラの方が好きだったみたいな感じだし。一般に同性愛の方が偉いとかそっちの方が楽しいとかっていうのは、やっぱり一部の人々の話ちゃうかな。ドーヴァー先生もう一回読んでみないとならんですね。でもとにかく、男同士の愛の方が正常で高級だ、っていうのはプラトン先生のまわりではそうだったかもしれないけど、一般にそうだったろうとはそんな簡単には言えないと思う。
  • むしろ指摘しておくべきなのは、当時の(男女の)結婚というのはふつうは親が経済的・政治的な配慮の上でとりきめるものであって、当人たちの恋愛感情なんてのはあんまり重視されていなかった、ってことだろうと思う。ふつうの家の女性に惚れても、それと結婚できるとは限らない、というかまあだいたい男性は、嫁入り前の中上流階級の女性とは会うことができなかったから我々が考える恋愛とかはできなかった、ということだと思う。ヘタイラ(高級娼婦)のお姉さんたちとの恋愛というのはあったかもしれないけど、まあヘタイラさんはいろいろあれで、そうした恋愛が私たちの思う恋愛(どんな?)とはちょっとちがったものであったかもしれない。奴隷もってる男性市民は女性家内奴隷とかともセックスしてたかもしれません(っていうかしてたと思う)が、それもなんか恋愛っていうのとはちょっとちがうかもしれませんね。
  • まあこういうのは専門家にまかせないとならんですが、なんにしても当時の男性にとっては(今考えるような意味で)「女性を口説く」ということはあんまりなかったわけです。「女性を口説く」ということの前提には「女性に決定権がある」ということが必要で、そうでなければお金で買ってきたり、戦争で捕まえてきてしまえばよいわけです。つまり、恋愛というのは苦労せずセックスできるのならさほど問題にならない、のかもしれない。
  • 一方、プラトン『饗宴』などで問題になっている「パイデラステア」(この語は出してほしかった)での男性カップルは、お金で買ってきたり戦争でつかまえてきたりする関係ではない。おつきあいするにはイケメンの方がいいだろうし、頭もいい方がいいだろうから、特定の若者はおじさんからモテるし、若者の方もなるべく自分の成長と出世の役に立つおじさんとつきあいたいだろう。その関係は支配従属関係ではなく、お互いの自発的な好意にもとづいたものである必要があるので、互いにいろいろ誘惑したり口説いたりする余地があるわけです。
  • 長くなったので途中で切ります。
  • 私が書いたプラトン先生まわりのは下。

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