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ジャズ入門(8) クールとウェストコースト

とにかくパーカー先生はすごくて、40年代後半はああいうのじゃないとプロのジャズじゃない、みたいな感じだったんだろうと思う。もちろんダンス用のバンドはあるものの、プロどうしはジャムセッションで腕を比べるのである。

こういうときに白人ミュージシャンがなにをしてたかというのはけっこうおもしろい話。やっぱりジャズってのは基本的に黒人音楽を根にしていて、白人とかぜんぜんだめだし。でも「好きだからやりたい!」ってやつらはいるわけだ。そこでどうしたか。

アルヘイグ先生みたいにパーカーやマイルスのとりまきになって顔に墨塗って南部を旅した人もいた。まあずいぶんいじめられたでしょうなあ。マイルス先生はビルエヴァンスでさえ白人だっていっていじめたんだから。パーカーとかもうなにしても不思議ではない。でもまあ好きなものはしょうがないよね。

白人の人々はああいう競争的なのがあんまり好きじゃない、っていうかやっぱり過度に競争的なのは黒人文化の一部であって、もっと全体としてアートしているのをやりたいと思ってた人々が、マイルスとか組んでクールジャズとか立ちあげたわけですな。かなりアレンジされていて全体としてアート。マリガンとかデイヴ・ブルーベックとか。同時期のアメリカ現代音楽(グローフェとかコープランドとかバーンスタインとか)みたいなのにも注意している感じ。

どうも親玉としてレニー・トリスターノ先生っていうのがいて、このひとおもしろいんだけど初心者には向かないのでその弟子のリーコニッツ先生。マイルスのBirth of Coolでも非常に重要な役割を果たしてます。まあ最高のジャズインプロバイザーの一人だわね。

スムース。

西海岸はニューヨーク中心とはまた違った文化があって、チェットベイカーとかアートペッパーとかイケメン白人ジャズミュージシャンという文化があった感じなんじゃないっすかね。ジェリーマリガンももともとは西の人。ここらへんの東と西の雰囲気の違いはわたしらにはわかりませんね。

アートペッパー先生とか、黒人ミュージシャン雇ってツアーしたたら、どうも自分がソロをしているときに後で黒人たちが自分のことをせせら笑うような素振りをしていて死にたくなった、みたいな自伝を残しております。

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まあ雰囲気なんかわかるよね。イジメ。ペッパー先生偉大なのに。でもやっぱり黒人的じゃないのです。

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ジャズ入門(7) クールジャズ

まあジャズ批評家っていうのはあんまり信用できなくて、よくないCDとかもよいっていってすすめたりするわけです。

ビバップの名盤と呼ばれてるパーカー&ガレスピーとかどうなんすかね。歴史的には意義があるんだけど、音楽的にどうなんかな。

私にはもうアルトとペットが早口で怒鳴り合ってるように聞えてそんな好きじゃない。まあとにかく競争してるんですわ。すごいスピードで。

で、まあこういうのしんどいし、音楽ってそんな大声でやるもんでもないだろう、みたいな人々が出てくるのは当然のことであります。

マイルスデイヴィス先生は1947年ぐらいからパーカーのバンドに2年ぐらいいて、前に紹介したダイアルレコードの名盤の隠れプロデューサーみたいな役目を果たしていた。同じ傾向のガレスピーとだとこういううるさい感じになるけど、パーカーとマイルスだと対象的でいい感じなんすよね。

パーカーがマイルスの音楽性を好きだったからバンドに入れてたのかどうかはわからない。っていうかパーカー先生は人格破綻者だったので自分が好きなこと吹いてればあとはどうでもよかったんちゃうかな。マイルス先生はいいとこのボンボンなので仕送りがあってアパート借りてたので、そこに転がりこんでいろいろパシリとして使うのに便利だからマイルス使ってたんだろう。まあとにかくおそらくパーカー先生は誰も自分と同じ人間だと思ってない。サイコパス。

マイルス先生はいろいろ気をつかったり音楽的な全体のことを考える人なので、アレンジ考えたり、(彼が無能だとみなしていた)ピアノのデューク・ジョーダンを首にしようとしたりしてた。

マイルス先生はそんなアドリブとかうまくない。ダイアル盤のテイクとか聞いても、どのテイクも同じような演奏していて、家でいろいろ考えてきてるのがわかる。パーカーは1回ごとにぜんぜん違ってたり。そういうでもコンプレックス感じさせられてつらい。そんな毎回違うことやらなきゃならんもんだろうか?

で、さすがにパーカー先生が金とか女とかいろいろ汚いのでいやんになって飛びだしたはいいものの、ああいう演奏はできない。んじゃどうするか、ってのがクールジャズ。ギルエヴァンスとかリーコニッツとかジェリーマリガンとかインテリ白人といっしょにインテリなことをする。基本的にマイルスはインテリが好きなんですわ。白人インテリを自分勝手に使うと自尊心が高まる。んで、「きっちりアレンジしてるよ」ってことになればアドリブそんな新しいことしなくていいし。

んで、テクニックとかスピードとかじゃなくてアレンジでせまる。無理して高い音とかピロピロとか出さなくても音楽はできるよ、ってな感じで、私はBirth of Cool好きですね。愛聴してます。

まあパーカーが死ぬまでまわりのミュージシャンはパーカーが怖くてしょうがなかった。もう同じステージに立ったら一発でやっつけられるのわかってんだもん。マイルスは違うスタイルだったからいっしょにやれた。パーカーが死んだ53年の次の年あたりからジャズが栄えるのは偶然ではなく、あれと同じことをしなくてもいいんだ、っていう呪縛が解けたってことだって思っていいと思う。

名盤。

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