aiko先生の「カブトムシ」は女子的にエッチな曲かもしれない

https://youtu.be/WMPO5qgm39E

https://youtu.be/9m7gCFarbqs

aiko先生の「初恋」は歌詞の解釈について考えるようになったきっかけの曲で、まあこの先生おもしろいですね。最近「カブトムシ」についても考えるきっかけがあって、これまたなかなかすごい曲だな、みたいな。

いつものこのリストをちらっと見たり。http://yonosuke.net/eguchi/archives/7465

ジャンルは典型的J-POP、楽器編成はふつうのバンド構成ですね。冒頭のピアノと、薄いシンセストリングがまあ典型的ポップスですか。ドラムの音いいっすね。

テンポは75BPMぐらいのバラード。リズム・パターンはごくふうつのエイトビート、ドラムはちょっとだけハネてる気がする。メロディーラインはふつうの譜割なんだけど、バックがシンコペしてるところが多いのがちょっと特徴。

シンガーは発表時20代なかば〜後半ぐらい?ライフスタイルはティーシャツ・ジーパンな感じ、想定リスナーはごくふつうの女子だと思う。そんなオシャレでもなく、都会派でもなく、イケイケやヤンキーでもなく。ファンの男子もなんかそういう感じなんちゃうかな。

  1. 語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等: まあシンガーそのまんま、20代女子。
  2. 語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等:「あなた」に向かってる。

これくらいおさえたところで、いきましょう。

悩んでる体が熱くて 指先は凍える程冷たい
“どうしたはやく言ってしまえ” そう言われてもあたしは弱い

これ、私いきなりおかしいと思うんですわ。聞いてるひとはあんまりいきなりなんで、「はてなー」ってなるはず。なにで悩んでるのかわからない。

この「カブトムシ」は4枚目のシングルらしいですね。「初恋」が7枚目で2001年、カブトムシはそれより前の1999年ですか。

この2枚共通して「悩んでる体が熱くて」とか「悩んでるあたしはだらしない」とか「悩んでる自分」はaiko先生のキーワードなんですね。これリスナーをひきつけるなにかだとおもう。この曲では「体が熱い」っていってるけど、「初恋」でも「小さなあたしの体は熱くなる」っていうフレーズがあって、この2曲、かなり密接な関係あるように思いますね。ていうか同じ事件なり体験なりを歌ってるのかもしれない。(制作・発表順番はおそらく逆)

「初恋」の場合はまだつきあってない男子を見つめて悩んでる。「カブトムシ」の場合はどうなのだろうか。

「「どうしたはやく言ってしまえ」 そう言われてもあたしは弱い」っていうのが誰から言われてるかわからんですね。「初恋」の流れだと、「相手に告白してしまえ」と友達から言われてるぐらいか、もうすこし読んで「自分の頭のなかの声がそう言っている」ぐらいなんかね。でもそうすると次とつながりにくい。一番すなおな読みは「あなた」からそう言われてる、なんだけどそれもよくわからないですね。このAメロには謎があるわけです。

あなたが死んでしまって あたしもどんどん年老いて
想像つかないくらいよ そう 今が何よりも大切で

いきなり相手殺すんですかね。わからんですね。「今が何よりも大切」っていうのは、まに「NIPPON」で書いたように、林檎先生なんかもそういう一瞬で完全燃焼!他のことは考えません!みたいなのがあって私好きなんですが、aiko先生の場合は「今がだいじ」といいつついつも時間的な長さ、時の流れを考えてるようなところがあって、林檎先生とはわりと対照的であるように思います。

スピード落としたメリーゴーランド 白馬のたてがみが揺れる

これもなぜメリーゴーランドなのか、なぜスピードを落とすのか、白馬ってなんでありたてがみがなんであるのかよくわからんですね。このかなり謎が多い曲だと思う。しかしこの部分は楽曲として非常に印象的なところです。Gm7-C7とかになって転調してんですかね。

白馬のたてがみがゆーれるーのあとに、サビに入る前に、非常に印象的な2拍の間があるんですね。この2拍はそれまでのふつうの4拍子のリズムには異常な部分で、つまりタメてるわけです 1)「エイリアンズ」でも最後の方に似たタメがあって、あそこで何かが起こってることは指摘しました。 。これがものすごく効いてると思います。この曲が成功したのはまさにこの2拍にあると思う。スピード落して、ためて、ためて、どばーっていく感じ。

サビ

少し背の高いあなたの耳に寄せたおでこ
甘い匂いに誘われたあたしはかぶとむし

初恋と同じようにこのサビもどんどん上に高揚していく感じです。この女子は匂いフェチっていうか、相手の匂いが好きなのね。なんか耳の後ろあたりから匂うあれがものすごく好きなんですな。この女子の匂いのなにかは生物学的な背景ありそうとかって話は、進化生物学・心理学の定番ネタっすね。

んで問題のカブトムシです。カブトムシっていうとあのオスの角とかあるあの種を連想するんだけど、この曲でもそうなんかなあ。とりあえずメスカブトムシだろうから角ないですね。あと、音楽やってると、「ビートルズ」はもとはbeetleだけどあれは日本のカブトムシではなくコガネムシやカナブンみたいなのもbeetleなのだ、って必ず一回は話してるんじゃないかと思うんですが、どうですかね。

まあこれの上のメスみたいなやつってことでいいや。さて、ここで一番の問題なんですけど、「私はカブトムシ(メス)である」というときに、その体勢はどうなっているのか、ですわ。

このメスカブトムシは相手の耳の後ろのにおでこくっつけたりして匂いかいだりしているのですが、それって「背の高い」(とりあえず)男子にならできるだろうか?しかしそれなら背伸びしている感じになり、上のカブトムシらしい、腕をひろげて抱きついてるポーズにはらないのではないだろうか。

わかってきましたか。「ああ、私はメスカブトムシでございます」と思うとき、それは直立しているわけではないのです。むしろ体の軸は水平方向にある。背伸びして耳の後ろにおでこをあててるわけではないのです。

さらにですね、カブトムシは匂いにひきよせられてなにをするのでしょうか。そう、匂いをかぐだけではなくて樹液かなんかをペロペロとあれするのですね。驚きましたか。匂いにひきよせられるだけでなく、そういうあれの上で「あたしはカブトムシである」と言ってるのだと思います。

流れ星流れる 苦し うれし 胸の痛み
生涯忘れることはないでしょう
生涯忘れることはないでしょう

ビタースイートな感じ。「生涯〜」くりかえしてるのがしつこいですね。

間奏はやっぱり歪んだギターがキュー。

鼻先をくすぐる春 リンと立つのは空の青い夏
袖を風が過ぎる秋中 そう 気が付けば真横を通る冬

ここはすばらしくいいですね。Roxy MusicにTo Turn You Onって曲があって、Spring, Summer, Winter through Fall、みたいな歌詞があるんですが、こういう春夏秋冬通しておつきあいします、みたいなのはうったえかけるところがある。

なんかwikipedia情報によれば、aiko先生はカブトムシが冬のものだと思ってたらしくて(冬に時々でてくる冬眠中のコガネムシとかのこと考えてたんちゃうかって思うんだけど)、春夏秋ときて冬が今なんですかね。けっこう長いことつきあってきたって話じゃないのかなあ。1年ぐらいいろいろあったあげくにやっと今そうなってる、っていう話かもしれないけど。

上の部分、主語はそれぞれ春、空の青い夏、秋中、冬なんですかね。どれも微妙に空気や風と関係していて、「あなたの匂い」が本当の主語のような気がしますね。匂いフェチです。さすが昆虫。

強い悲しいこと全部 心に残ってしまうとしたら
それもあなたと過ごしたしるし そう 幸せに思えるだろう

ここはまあいいです。作詞的にはつなぎにすぎないと思う。肝心なのはやはり、さっきのメリーゴーランウンドと対応する次です。

息を止めて見つめる先には長いまつげが揺れてる

なぜ息を止めているのだろう。そして睫毛がゆれるのがはっきり見えるほど近い。そしてあの2拍のタメ。ここやっぱりいいと思う。

少し癖のあるあなたの声 耳を傾け
深い安らぎ酔いしれるあたしはかぶとむし

もうなんかおわってます。

琥珀の弓張月 息切れすら覚える鼓動
生涯忘れることはないでしょう
生涯忘れることはないでしょう

弓張り月は、ふつうは半月です。琥珀色(透明な赤茶)になるのは地平線に近くないとならないから夜中ですね 2)この月がどういう形のときにどこにあるのか、っていうのはけっこう重要ですわ。。そして「息切れすら覚える鼓動」はなぜそんなハアハア言っているのか。

とかって考えると、まあこれってそれの歌ですわ。それもかなり直接な。カブトムシみたいになって大木みたいなのにしがみついている感じ。そうなると、「悩む」っていうのも告白を悩んでいるんではなく、もっと身体的ななにかを指しているのではないかとか、一番最初の「言ってしまえ」もなんかちがう表記をするのが正しいのではないかとか、そういうの考えちゃいますね。速度をゆるめたメリーゴーランドとかもまあなんかの暗喩だ。まあかなり肉感的で露骨な歌で、主人公女子がかなり強いなにかを経験した、とそういう歌ですね。

まあ男子が視覚的にあれするのに、女子は匂いとかそういうのであれする、みたいな感じもあれであれですね。

ちょっと下品な解釈だったけど、aiko先生はそういうのをああいうかたちにする先生だと思う。もちろんこうしか聴けないわけではないけど、わかるひとにはわかると思う。

さっきのRoxy Music。関係ないけど名盤だわー。

References[ + ]

1. 「エイリアンズ」でも最後の方に似たタメがあって、あそこで何かが起こってることは指摘しました。
2. この月がどういう形のときにどこにあるのか、っていうのはけっこう重要ですわ。

『トゥーランドット』のラストはあれで正しいか?

プッチーニの『トゥーランドット』っていう作曲者本人によっては未完の名作(半名作)オペラがあるんですが、あれって見るたびになんか変な気分になるんですわ。あらすじはwikipediaで十分ですよね。こんなかんじ

第二幕まではいいんです。第三幕で召使のリューちゃんが秘密を守るために自殺しちゃって、そのあとカラフ王子がそれをなにも気にせず、トーランドット姫ちゃんにチューするとなんか姫ちゃんのスイッチがオンになって「その名前は「愛」です!」なんてことになってご結婚、「皇帝ばんざーい」ハッピーエンド。

馬鹿ではないか。リューちゃんなんで死ななきゃならんのですか。姫もチューされたぐらいでなにのぼせあがってるんですか。カラフ、お前も献身的なリューちゃんのことなにも考えてないなゴラ。なんでわがままな姫のために人ばんばん殺されにゃならんのだ。おまえらぜんぶ死ね死ね。

ってやっぱりふつうの観客なら思うと思うんですよ。この筋はどう考えてもおかしい。

これ以前に京都コンサートホールで半上演スタイル(劇はステージの半分だけで、オケもステージに載るコンパクトな形)で見る機会があって、そのとき、私やっと理解したんです。これは本当の筋ではないな、と。

私が思うに、最後は本当はこうなるのです。

リューが自殺→ カラフ後悔する → カラフ死ぬつもりで自分の名前を白状する → でもなんかそれ見た姫が興味をもって近づいてきて、チューしてみろって言う。→ チューすると姫はなぜか夢中になる → 姫は皇帝にカラフの名ではなく「愛です!」っていう → ウォーってもりあがる→ 皇帝「でも名前は知られたんじゃろ? 約束は守れや!」 → カラフの首が飛ぶ → 皇帝「姫、お前も謎々を解かれたら結婚するっていってたのに結婚しなかったから死刑」→ 姫の首飛ぶ → 民衆大喜び、皇帝の誠実の徳を称える → 皇帝も自分の馬鹿さを自覚して死ぬ → 馬鹿の帝国崩壊。

『サロメ』の最後みたいに、皇帝に「あの馬鹿どもを殺せ!」って命令してもらっていきなり終ってもよい。

これなら勧善懲悪で気持ちいいし、むくわれぬ愛、人間のおろかさ、約束の大事さなどを訴えて、まあ悲劇てかドラマらしい。

まあこれかこれに準ずる形だとすっきりするのですが、まあイタリア人としてこうなるのが当然だとわかっていてもいやなので、形だけわーわーハッピーエンドってことにして、「でもあれ死刑だよね」ってあとで言いあって満足する、ぐらい。とにかく全部死刑に決まってるではないですか。

でもピンポンパンだけはまじめだから許す。田舎帰ってゆっくり文人生活楽しんでください……いやだめだな。悪事に加担したからやっぱり死刑。

ぜんぶ死刑にしてもらうにはこの紫禁城のやつの首切り役人が好きなんだけど(下の動画だと10:00 過ぎに登場)、youtubeに日本語字幕のもあるのも探してみてください。よい時代になりました。

Spotify楽しいですね

2、3ヶ月前から音楽配信サービスをAppleからSpotifyに乗りかえたんですが、Spotify楽しいですね。いまごろって話になっちゃいますが。すばらしい精度で知らない曲を紹介してくれる。Spotifyの公式のも、知らない他人のプレイリストもおもしろい。

自分でも作ってみたりして。

↑を読むために、参照されてる曲のプレイリスト作ってみました。

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↑で冨田ラボ先生が100曲紹介してたからそれも作ってみてる(まだ途中)

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私のオールタイムベストみたいなのは↓

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昔書いたブログはyoutube音源使ってるけど、かなり消えちゃってわけわかんからSpotifyに入れ替えたいな。

こういうプレイリスト作ったり、つまらないブログ書いたりするのは、なんかボトルにお手紙つめて海に流す、みたいな感じがあって好きですね。おそらく誰の目にも留まらないけどひょっとしたら誰かが拾って読むかもしれない。Spotifyやネットの海に溶けこんでいく感じがある。ボイジャー号にレコード積んで宇宙に流したりするのもそういうロマンよね。あ、パイオニア号につんだ金属板が先だよね。

椎名林檎先生の「NIPPON」は軍国歌か

なんか若いバンドが軍国歌を作ったとかで話題になってて、聞いてはみたものの別に思うところもなく。ひねってくれないとおもしろくないですよね。事情は知らなかったんだけど、「あれ、これサッカーのワールドカップ用かな?」とか気づいて(実はそれのB面らしい 1)「B面などない」とか言わないでください。年寄りにはやさしくしよう。 )、前にも林檎先生がそういうの作って話題になってたのを思いだして聞きなおしてみました。CDはもってたけどちゃんと聞いてなかった。これは名曲ですね。林檎先生らしくひねりまくり。

万歳(Hurray)!万歳(Hurray)!日本晴れ 列島草いきれ 天晴
乾杯(Cheers)!乾杯(Cheers)!いざ出陣 我ら 時代の風雲児

PVでは最初に昔のNHK風の青空を背景にしたはためく日本国旗が出てきて、まあ誰でもナショナリズム・国粋主義とか連想するんだと思うけど、ほんとにそんな歌だろうか。なんでわざわざ時報鳴らすんですかね。国旗なんてNHKのピッピッピッポーンだ。ポポポポーン!

「フレーフレー日本」なのかと思うとそうではなく実は日本晴れを応援している。「フレーフレー、ニッポン、ガンバレ」が「日本(がん)ばれ」になってるわけよね。いきなり腰を砕いてるというか。脱構築だ。デコンストラクションというのはこういうふうにするものですか。

そして天晴。「あっぱれ」は漢字で書けばこうなり、「あっぱれ」なのは日本とかっていう最近しょぼそうな国家ではなくその上に広がる空。澄みわたる青空。あの空の青さがこの曲を通じてイメージされている。私青空本当に好きなんよねえ。

「列島草いきれ」も問題で、まあサッカー場の芝生の匂いを連想させるのがふつうだけど、「草いきれ」は音程・譜割の関係で「臭い切れ」にしか聞こえないんよね。「列島(は)臭い(布)切れ」なのかもしれない。もしかしたら国旗ディスってる?やばい。んじゃ「列島」も「劣等」なんかいな。「劣等、臭い、(関係を)切れ」かもねえ。ここ思いついて曲ができた感じなんじゃないかな。

「出陣」とかも平和主義・左寄りの人はまあいやな感じなんだろうけど、まあスポーツと戦の関係は世界中普遍的に意識されてるでしょうな。

さいはて目指して持ってきたものは唯(たった)一つ
この地球上で いちばん
混じり気の無い気高い青
何よりも熱く静かな炎さ

いかにも疾走系。「この地球上で」がものすごく印象的で、一番最初でNHK画面見せられて「列島」ってでてくるから、頭のなかはいきなり天気図的な俯瞰、「日本列島晴天です、お日様マーク!」になってるじゃないですか。「地球上」って言われるからさらに視点が上にあがってあの青い地球が見えてしまう。

あの日本代表のユニフォームは「サムライブルー」とか呼ばれて、まあそれを指してるんだけど、実はあの青は、青は青でも紺に近い青よね。群青か。最初に空の青を見てるから、それと比べると私には「混じり気のない青」にも「気高い青」にも思えない。地球の海の青さは私は肉眼では見てないけど、衛星写真で見るあの青もすばらしいわねえ。あれは気高いといってもいいかもしれない。

鬨(とき)の声が聴こえている
気忙(きぜわ)しく祝福している
今日までのハレとケの往来に
蓄えた財産をさあ使うとき

ここのところのメロディーのシェイプ(形)は自然ですが、注目してほしいところですね。上って下ってくる、をくりかえしてる。

これ歌詞カードでは「今日までのハレとケの往来に」になってるけど、「祝福してる今日まで」で切れて「ハレ〜」に聞こえる。こういう歌詞カードと聞いたのが食い違うのは林檎先生多かった気がする。私は聞いた方を優先しますね。

ここはよくわからんけど、この「ハレとケの往来」がなんとも双極性障害、いわゆる躁うつ病を感じさせますね。わりと毎日ウツに苦しんでる人がぱーっと活動的になることがあって、これは、アリストテレスとかガレノスとか、そういう古代ギリシア・ローマの昔から観察されてました。黒胆汁という体液が多い人はそういうずーっと苦しんでいていきなりパーッとでかいことをすることがあるらしい。

「ハレとケの往来のあいだに蓄えてきた」のか「ハレとケの往来のときに(財産を)使う」のかはちょっとあいまいだけど、私は後者をとりたい。(ちょっと苦しいけど)「ウツなケの生活送ってきて、せっかくハレの日が来たんだからパーッとお金使っちゃいましょう、ほかにもはちゃめちゃしちゃいましょう」な感じではないんかね。躁転したから金や資源使いまくります。

私が林檎先生を再評価したのは「長くて短い祭」を紅白で見てからなんですが、あの歌もそうした人生の祭礼的時期・季節を歌ってますね。林檎先生は黒胆汁質の人なのだと思う。

ちなみに、アリストテレス先生なんかに言わすと黒胆汁は天才の印、というか哲学、詩作、芸術、政治を極めた人はみんな黒胆汁質だったとか(『問題集』第30巻)。まあニルヴァーナのカートコベイン先生はたくさん躁鬱の曲作ってるし(たとえばこれ)、ジミヘンもManic Depression(躁うつ病)って曲つくったりしてるし、シューマンもそうだし、特に音楽家とは切っても切れない傾向・病気ですな。

このタイプの人は、いつもはうじうじしてるのに時々暴れたりカジュアルセックスした散財したり、他の人には迷惑なのです。おとなしくしてろ。

爽快な気分誰も奪えないよ
広大な宇宙繋がって行くんだ
勝敗は多分そこで待っている
そう 生命(いのち)が裸になる場所で

前のブロックが上がって下ってを繰りかえしてて、ついにもっと大きな上昇してる感じ。ここのところで譜割がかわって、聴覚上はテンポが半分になるように聞こえると思う。よくある手法だけど(たとえば相対性理論の「気になるあの子」)非常に効果的ですね。まあドラマーその他疾走ばっかりしてらんないし、聞いてる方も飽きちゃうのでこういうふうに作るものです。

この曲の場合、Aメロが疾走系でわーっとやってきてここで離陸して飛行機やグライダーに乗ってる感じになる。ジブリ的でもあるかもしれない。「特攻隊の歌」とか言われるのはこの浮遊感、飛行機に乗ってる感じもあるんだと思います。

歌詞としてはここで「宇宙」が出てきて、青空と列島を上から見てるところから、目線がさらに高いところに行ってますね。

とにかく多幸感がすごい。Aメロから「祝福」だの「蓄え」「財産」とかなんかもう軽躁状態っすよね。話に聞くところでは双極性障害の人が躁転したときというのはものすごく爽快らしいです。私も経験したい。

「いのちが裸になる」も印象的なフレーズで、なんか地球をバックにした裸の母子、みたいなの連想しますね。そういうのよくあるじゃないっすか。なんか生殖とか繁殖とか、そういう連想もはたらく。まあエッチなことを歌ってるのかもしれんし。ってなると「勝敗」はダーウィンとかそういうやつなんかなあ。まあセックスして繁殖したやつが勝ち、みたいなのかなあ。私はエッチなのと生殖みたいなのが直結するっていうのがなんか女性的な発想の印象があります。

ほんのつい先(さっき)考えて居たことがもう古くて
少しも抑えて居らんないの
身体(からだ)任せ 時を追い越せ
何よりも速く確かな今を蹴って

ここが最高ですね。私最初聞いたときシビれました。軽躁状態だともう思考がどんどん進んじゃって、たしかにさっき考えたことがもう古い!みたいな感じになるかもしれんですね。衝動的な行動はいかんですが、しかしいつも沈思黙考して苦渋の決断ばっかりもしてらんないし、決断の瞬間とかってのはもうそういう「重さ」から解放されてなければならん。「時を追い越せ」はまあそれほど斬新ではないかもしれない表現ですが、「なによりも速く確かな今を蹴れ!」みたいなのは最高。見る前に跳べ!実存主義だ。キェルケゴール先生も「瞬間は時と永遠の出会う場所だ!」みたいなことを言うんですが、実存主義者はそういうの好きなんですわ。全体に躁鬱病的。でもそういう一瞬の充実感を求めて新幹線で人殺したりしてはいかんです。

噫(ああ)また不意に接近している淡い死の匂いで
この瞬間がなお一層 鮮明に映えている
刻み込んでいる あの世へ持っていくさ
至上の人生 至上の絶景

「淡い死の匂い」はサッカー的には相手陣を攻めてるところでボール奪われてディフェンダーの裏を狙われて得点されてしまう、みたいなイメージではないかという意味のことをネットで教えてもらって、「なるほど」みたいな感じ。やはりサッカーファンは言うことがちがいますね。(→参考

まあ全体には死を意識すると生の価値がわかるよ、っていう実存主義のポジティブな方。さっき地球とか生殖とかものすごくポジティブに軽躁状態で、その裏側には死があるっていう。死を意識するときに生の価値と意味がわかる、みたいな。いやはや。くりかえしますがやらかしたり人殺したりしても生は本当の意味では充実しないし自分でも馬鹿らしいしなにより迷惑なのでやめてください。

まあこういうのが戦争とか連想させるのももっともなことですわね。実際、実存っぽい哲学者は戦争や争いが好きなんですわ。ヘーゲルもキェルケゴールもナポレオン大好きだし。ヘーゲル先生もどうも戦争は民族を活発にするとかっていう理由で好きだったみたいだし。

間奏のところはギターで音階弾いてるだけで、まあ破壊的な感じですわね。これもなんか戦争を連想させるんだろうと思う。私だったらここで「君が代」に似せたメロディーにしてみたい気がするんだけど、実際最初はそういうアイディアだったんちゃうやろか。

まあ「破壊と再生」みたいなイメージですかねえ。とにかく暴れて生命を充実させろ!椎名林檎=シヴァ神のイメージ。破壊と豊穣。ロックはこうじゃないと。

追い風が吹いている もっと煽って唯(たった)今は
この地球上で いちばん
混じり気のない我らの炎
何よりもただ青く燃え盛るのさ

「追い風」がやっぱりグライダーや飛行機とかを連想させますね(実際には追い風とかあるとやばいいのかもしれないけど)。「煽ってたった今は」のこの曲一瞬だけのコーラスもものすごく効いてる。「たった今」もこの一瞬を燃えつきましょう、な感じでほんとうにすばらしい。

(万歳!万歳!我らが祖国に風が吹いている)
Hurray! Hurray! The wind is up and blowing free on our native home.
(乾杯!乾杯!我らが祖国に日が射している)
Cheers! Cheers! The sun is up and shining bright on our native home.

この最後のところ、our native homeって歌ってるようには聞こえないんですけどね。なんて言ってるんだろう?「ニッポン」と聞こえるようにしてるんだと思うけど、まあ「祖国」じゃないわね。

全体には軽躁な多幸感に満ちてて、戦争イメージというよりは、サッカーと、グローバルな地球みたいなイメージと、そこで繁茂しようとしている人間のセックス生殖生命、みたいなのイメージが重ねあわされてて名曲です。非常に広大でありかつ瞬間に燃えるイメージがって、伝統とか国家っていうのはこの曲ではほとんど価値がない感じになってて、あんまりナショナリズムとか国家主義とか感じられなくて、なんかすごいです。最初っから腰くだいてるし、PVも最初以外はほとんど国旗とか出てこないし、出てきても白黒で断片的。日の丸のイメージの赤さえも2回のロゴしかないんで、なんか国粋主義的ではなく、もっとグローバルな個人主義、個人的な(躁病的)生の賛歌みたいなのを感じます。

あと冒頭のドラムのリズムは337拍子のようでそうではなく、実はモールス符号かなんかに対応しているかもしれないとか、もうちょっといろいろ考えてみたかったけど、なんかワールドカップ見るので忙しくてやめ。みんな楽しみましょう。ワールドカップ興味ないひとも晴の日は外に出ておだやかな軽躁が襲ってくるのを待ちましょう。でも危険や迷惑は避けてね。


『ニコマコス倫理学』みたいに有名じゃないけどアリストテレス先生には『問題集』っていう本がある。これおもしろいよ。

躁うつ病の人本人の分析がおもしろい。

黒胆汁とかそういうのついてはこれが読みやすくておもしろい。

(黒胆汁の言及は上巻の方ね。)

References[ + ]

1. 「B面などない」とか言わないでください。年寄りにはやさしくしよう。

欅坂の『真っ白なものは汚したくなる』収録曲にコメント

欅坂のアルバム『真っ白なものは汚したくなる』は秋元節というか中二病全開で訴えかけるところがありますねえ。楽曲のクォリティものすごく高くて、いろいろ語りたくなるので、前に言及した「スカートを切られた」「高く跳べ!」以外の気になる曲に簡単にコメント。

サイレントマジョリティー。

これは売れたみたいだけど、私あんまりぴんとこないです。Aメロの3-3-2のリズムが、現代ラテン(スペイン系)音楽の影響受けてる感じで印象的ですね。でもサビが結局4つだし。でもそこでも手拍子がラテンを主張している。アメリカではすでにラテン系がマジョリティーだ、みたいな含みはさすがにないと思う。でもLatin Hitsとか聞いてるとこういう感じの音良く使ってます。打ち込みスネアがダッダッダッダダダダダダダデレレレレレとかなるやつとか。大森靖子先生のカバーがもうドブ川アイドルでいいですね。これは男子じゃなくて女子をドブ川に引きずり込んでエサにする本物のサイレーン 1)もっとも、女子の方ももとの語りの中二病少年よりちょっと上で、すでに性的に目覚めている感じになってしまう。女子はそうなってしまうのよねえ。

「世界には愛しかない」

このアルバム、この澄んだピアノの音が印象的で、まあ汚れなき中2男子。ははは。オナニーとかしません! こういうの聞くと、校内暴力みたいなのが選択肢に入ってないってのがあれよねえ。

「二人セゾン」

これはよくできてますね。前に「二人セゾンの詩学」って評論読んで歌詞その他ちょっと見てみました。音楽的にはいわゆるSus4コードがとても効果的に使われていていわゆる「浮遊感」がある。そういうのついてはもう少し語りたいことがあるけど、もっと音楽に詳しい人がいると思う。ニコ生で配信したときにいろいろ語ったんだけど、最後の方ギターが裏でギュンギュンいってるのとかもいいですね。すごく作り込まれてる。

「不協和音」

これは政治がらみでいろいろ話題になった曲なんかな。こういうシンセ鳴りまくりの4つ打ちユーロみたいなのはあんまり好きじゃないのでパス。それより、同じ作りの次の曲がいい。

「エクセントリック」

これは「高く跳べ!」に続く大名曲です。この曲、語り手は実は女子かもしれないっすよね。いちおう「ぼく」なんだけど、そんな少年をみんなで噂するなんてないじゃないですか。むしろ女子の「僕っ子」の方がイメージとしてはあってる気がする。この曲でも澄んだピアノが大暴れでいいです。

しかしこうして並べてみると、この中二病ぼっち反抗ポップ、っていうのは実はこれまで存在してなかったジャンルかもしれないっていう気がしてきました。反抗するんだって、なんか『ホットロード』『爆音列島』的な暴走族的なのしかなかったじゃないですか。そういう世界っていうのは、反抗しながらなんか仲間や絆みたいなのがあるんだけど、秋元先生の歌の主人公はなにも持ってない。そういう年頃の少年が主人公/語り手の歌っていうのは、そもそも存在しなかったんですわ。(女子ならいろいろありそう)

アニメやマンガならエヴァンゲリオンとかそういう代表作があるけど、音楽ではそういうのあんまり聞いたことない。それは男子向けにも女子向けにも、音楽にはならんのです。声変わり前の男子が歌ったら、黒猫のタンゴとか、ウィーン少年合唱団的な僕は清く正しくて満足してます、神様ありがとうございます、になるし、声変わり後とかだとセックスセックスー、になちゃう。男子はそれを歌うことができないのです。

もうすこし年齢があがって、女子にどうやって一発やらせてもらうかとか、ガラス割って歩いたりするのはあっても、こうやって鬱屈しているだけで自分の清さを守ろう、っていうのはめったに聞かない。っていうか思いつかない。

語りや叫びは全部内向して、誰にも届かない。多くの曲で少年は「君」って呼びかけてるけど、それは実際の君には届いてない。ぜんぶ内心の声。

これほど弱い存在が語り手のアルバムっていうのは他におもいつかない。こういう曲を実際に男性ボーカルが歌うのは無理で、若い女子に歌ってもらうしかない。(あるいは矢野あっこちゃんに)。

こういう世界に住み、世間にそまらず自分の清さを維持しようとする人々を、我々は童貞様と呼んで守るべきではないか。男性学とかやってる先生たちは、この新しい世界をじっくり見つめる必要があるかもしれない。

まあこのアルバムは残りの曲もそれぞれものすごくクォリティ高くて、日本のポップ史上に輝く名盤ですね。作曲や編曲・演奏の先生たちもすごいし、秋元先生の作詞アーティストとしても頂点を極めた1枚だと思う。2010年台のポップ音楽はものすごく高い水準に達した。「真っ白なものは汚したくなる」は語り手ではなく、作家の先生たちの意見なんすかね。欅坂メンバーの語りだってことになればもっとおもしろいですね。

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References[ + ]

1. もっとも、女子の方ももとの語りの中二病少年よりちょっと上で、すでに性的に目覚めている感じになってしまう。女子はそうなってしまうのよねえ。

「Yes-No」のあとは必ず「いくつもの星の下で」を

オフコースの「Yes-No」は超名曲で、歌詞や理念が嫌いなのに一回聞いてしまうと2回も3回もリピートしてしまうのですが、そのあとで必ず同じアルバム(We Are)に入ってる「いつくもの星の下で」を聞くようにしています。

オフコースといえば小田和正先生ですが、中心人物はもうひとり鈴木康博先生がいるわけです。オフコースは最初はフォークデュオだったのがメンバー増やしてバンドになった。その鈴木先生が書いて歌ってる曲。

実はこの曲知らなくて、10年以上前に、京都の小さなライブハウスで聞いたんですわ。鈴木先生のギター一本で。ギター一本には思えないすばらしい腕でしたね。「ほんとはバンドで来たいんですけどね、お金なくてね」みたいなこと言ってた。つらい。

んでぜひ聞いてくださいよ。これほんとに歌詞が素晴らしい曲なのよ。そして「Yes-No」と理念の違いをあじわってください。

今夜はありがとう

イエス・ノーでも「今日はありがとう」っていってましたね。あれがどのタイミングかはむずかしいけど、まあ一番ゲスな解釈ではホテルでさっさとことをすませて、もうさっさと別れようとしているときですね。でも鈴木先生はちがうよ。

ここまでついてきてくれて

いつものように人物や状況を考えましょう。鈴木先生は1948年うまれだけど、2月なので小田先生と同学年ね。だから1980年ごろはやっぱり32、3才。「ここ」がどこかわからんけど、なんかお店のなかじゃない気がする。タイトルも「星の下」だし、星空が見えるんす。外ですね。どっかの路上でしょう。

どれくらいの時間帯かが問題ですねえ。まあ今夜はありがとう、だから飯食って酒のんで、10時は軽くすぎてますね。わざわざありがとうってくらいだから11時か12時ぐらいまで?相手の女性は何歳ぐらいでしょうか。

話したいことがあるから

え、まだあるんすか。いままで延々なにしゃべってたんすか。

もう少しいてよ

どこ行くんすか。いま道端だとすると、道端にいるって意味じゃなくてどっか「静かな」とこに行こうとかそういうことっすか。そっちの方になんかネオンが光ってるからそこに行こうってわけですね。ほんとにお話するんですか?

あなたの前だけは僕は素直でいたい

32才の男が「あなた」と呼んでるので、まあ20代後半かなあ。でも鈴木先生まじめだから20代なかばぐらいもあるか。大の男が女子の前で素直になれるってんだから、まああるていどのもののわかった年代の女性ですわね。Yes-Noの語り手カズマサオダ(仮名)が相手にしていたより上の年代だと思う。

信じてほしいからせつない思いうちあける

いきなり重いです。重いです先生。それはちょっとどうですか。

いつもひとりくやし涙
ながしてきた男のことを
あなたに聞かせたい
ぼくのすべて教えたい

ぎゃー。

そばにいてーー

ちょっと明日朝から用事あるし、猫のエサやらなきゃならなし、そういえばガスの元栓も気になるから帰ります。残りの歌詞も急いでるからちょっと聞けないんですけどー、みんなに聞いてもらってくださーい

松本零士先生の『男おいどん』。

オフコース解散間際のスタジオ風景ビデオとか見たことあるんですが、小田先生が仲間と「野球すっぞー」とか遊んでるときに鈴木先生は「おれはいい」とかってんでギターの練習してたりするんですよね。シングルだしてもいつも小田先生がA面で鈴木先生はB面。顔もやっぱりまあ小田先生と比べるとちょっとあれだし、くやしいくやしい。

真面目で真剣であることを示すために、自分のすべてを打ち明けたい。自分が毎日悔し涙に濡れていることを!しかしそんなん女子には通じないのです。あまりにも残酷。鈴木先生が話しかけている相手が、カズマサオダ(仮名)が「Yes-No」で相手にしていた人と同じ相手だと楽しいですね。

いやほんとに、これもまたリアルな男ゴコロを歌った一つの名曲なんすよ。でもわっかるかなー、わっかんねーだろうなー。

We are(紙ジャケット仕様)

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オフコース
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サルトル先生は気づかないふりをする系女子を自己欺瞞っていって非難してます

あんまり自己欺瞞しない目覚めた女性ボーヴォワール先生と。もう手を握ったりする関係ではなかたったのかどうか。

サルトル先生はしばらく名前あんまり聞かなくなって、ちょっと前に復活の兆しがあり、でもやっぱりポシャっちゃった感じがあってなんか微妙なんですが、SMセックス哲学や「自己欺瞞」の議論はとてもおもしろいので、研究者の先生たちにはがんばってほしいところです。応援してます。がんばれー。

んで前のエントリーのオフコースの「Yes-No」の「好きな人はいるの?答えたくないなら聞こえないふりをすればいい」なんですが、これおそらく元ネタはサルトル先生なんですわ。『存在と無』から引用。ページとかはあとでつけますね。

たとえば、ここにはじめてのデートにやってきた女がいるとしよう。彼女は、自分に話しかけているこの男が自分に関してどんな意図をいだいているかを十分に知っている。彼女はまた、早晩、決断しなければならないときが来ることも知っている。けれども彼女は、それをさし迫ったことだとは感じたくない。彼女はただ相手の態度が示す丁寧で慎しみぶかい点だけに執着する。

デートするときってのは、女子は男子の下心っていうか性欲、セックスしたい欲はもちろんわかってるし、そのうち迫られちゃうのもわかってるけど、もう少し先延ばしして色目つかったり口説かれたりイチャイチャしたりそういうのを楽しみたい、というわけです。そこで「まあこのひとはジェントルマンだから、っていうかこのひとこそオネットム」ってやるわけね。

……彼女は、彼が話しかけることばのなかに、その表面的な意味以上のものを読みとろうとしない。「僕はあなたをこんなにも賛美しています」と言われた場合、彼女はこのことばからその性的な下心を取り去る。。・・・彼女は自分が相手に催させる欲情に対してきわめて敏感である。しかし露骨で赤裸々な欲情は、彼女を辱め、彼女に嫌悪をいだかせるであろう。

たとえばカズマサ・オダ(仮名)っていう日系フランス人が、「おう、あなたはすてきでーす、でもオカのコトカンガエえてましたー、シルブプレ?」とかやっても、「このカズマサオダは私の話を聞かずにおっぱいのことを考えてたのだな」とは思わないわけです。そういうこと考えると折角のキブンがわるくなるから。

……いまここで、相手の男が彼女の手を握ったとしよう。相手のこの行為は、即座の決断をうながすことによって、状況を一変させるかもしれない。この手を握られたままにしておくと、自分から浮気に同意することになるし、抜きさしならぬはめになる。さりとて、手を引っこめることは、このひとときの魅惑をなしているこのおぼろげで不安定な調和を破ることである。娘は手をそのままにしておく。けれども、彼女は自分が手をそのままにしていることには気づかない。

カズマサオダから、手を握られて「おう、マドモアゼール、あたなカレシいるのですかーシルブプレ」って聞かれても、答えるとどっちにしても面倒なので、気づかないふりをするわけです。肩をだかれても気づかないし、なんかとにかくなにされても気づかないわけですね。「キミをダいていいですかシルブプレ」とか言われてもなにも聞かないしなにも見ないし、面倒だから心がどこにあるのかも考えないようにする。「ココロドコニアリマスカー」これがサルトルの自己欺瞞すわ。

オフコースの先生たちが大学生活を送っていた70年から数年ってのはサルトル流行ってたので、まあ誰でもこういう議論はしっていたわけです。それがあれに反映されてたんちゃうかと思います。

サルトルの議論がミソジニーっぽいとかってのはそうだろうし、そもそもそれってどうなのってのはあると思いますね。でもまあ今回はその議論はパス。

オフコースのYes-No はワンチャンの歌

オフコースの「Yes-No」は超有名な泣く子もだまる超名曲なので、解釈も安定していて私がなにか書く必要はないとおもっていたのですが、そうでもないかもしれないと思ってメモ書きだけ残しておきます。満足いくほど検索してませんが、ネットにかぎっても同じことを書いている人は多数いるはずの標準的な解釈だと思う。音楽的には今回音拾ってみていろいろ発見があって語りたいことが多いんだけど、最小限にしたい。

といいつつ、まずイントロ。このイントロは秀逸ですねえ。シンセサイザーでラーミーレーラーソーミレミーってやる。ただし実はキー(調性)はBというあんまりに使わないキー。それがAメロになるところでいきなり半音上がってC(ハ長調)になる。これ何回聞いてもびっくりします。歌いにくいし。

今なんていったの?

イントロからAメロへのいきなりの転調は、この語り手の本人もびっくりしているわけです。
「え、なんて?」

他のこと考えて君のこと ぼんやり見てた

それまで全然別の、イントロのシンセサイザーの「ラーミーレーラーソーミレミー」で表されるようなことを考えていたわけです。語り手は、まあ、歌ってる人と同じくらいの男性、って想定しますかね。小田先生は1947年生まれで、このYes-Noは1980年なので、33才ぐらいの男性ということで。これくらいの年齢のミュージシャンは27才ぐらいの次の人生最大の音楽的ピークになることが多いようにおもいます。

「ラーミーレーミー」がなにを意味しているかっていうのは解釈が必要。なにかに対応しているかもしれないし、対応していないかもしれない。

「ぼんやり見てた」のあとの「あーっあーっあー」っていうコーラスがものすごくいいですね。

ポップ音楽でのコーラスはいくつか種類があるのですが、こういうタイプの歌詞がなく、歌詞のあいまにはさまれるやつは、私は言葉にできない、あるいは言葉にしたくないタイプの思いを伝達している、って解釈するのが好きです。「話はきいてませんでしたごめんなさい、他のことをかんがえていて君をぼんやり見ていたのです」っていう表の言表の裏がある。

好きな人はいるの? こたえたくないなら
きこえないふりをすればいい

場面を考えましょう。二人で話をしています。まだ時間帯や場所はわかりませんが、二人で話せるようなところ。君で呼ばれている人は、おそらく女性でいいでしょう。もちろん男性でもいいのですが。「君」よばわりなので、年下、まだちょっと幼いですかねえ。私の想像では20代前半の女子ぐらいかと思いますが、好きに想定してください。

それにしても、話きいてなかったのにいきなり「好きな人はいるんですか/彼氏いるんですか」って聞いてるわけです。とりあえず、そのまえになんの話をしていたのかもっと聞いたらどうですか。あなたミスチル櫻井先生と同じですね。

んで女子が、彼氏がいるかどうか答えたくない、ってのはどういう状況なのかを考えるべきですね。(1)彼氏/好きな人はいるけど答えたくない、(2)彼氏/好きなひとはいないので答えたくない、のどちらでしょうか。っていうか、これ、どちらにしても、彼氏や好きな人がいようがいまいが*いない*ということにしたい、ってことですよね。

「彼氏がいる」っていうことにすれば、目の前にいるなにか変なおじさんは「んじゃやめとこかな」みたいになるし、「いない」って答えればつまらない女だとか面倒な女だということになるかもしれず、まあ答えない方がよい場合というのはあるのかもしれません。これはよくわからん。サルトルの「自己欺瞞mauvaise foi」の議論が参考になるのですが、あとまわしにします

そんで、いきなり「ソラドレミソッ」って突然もりあがる。「ソラドレミソッ」ってやられたら「ラーラララ」にならざるをえない。それが音楽というものです。まあ「ソラドレミソ」してしまったのだからしょうがない。

君を抱いていいの 好きになってもいいの
君を抱いていいの 心は今 何処にあるの

セックスセックスぅ。(1) セックスしたら君をすきになるかもしれませんがとりあえずセックスしていいですか? (2) とりあえず好きになってしまえばセックスしてもいいですか、セックスさせてくれますか?、どっちかわかりませんが、まあこういう人には区別ないのでそれでかまいません。

「心はいまどこにあるの」はまあ「いまなにを考えてますか」「さっき渡しが質問した「好きな人はいるの」という問いに対して、誰のことを考えますか」、下手すると「けっこう飲んでるようですがまだ意識ありますか、判断力は正常ですか」いろいろ考えられますが、これもこういうひとには区別ないのでかまいません。

言葉がもどかしくて うまくいえないけれど
君のことばかり気になる

言葉より別のことで表現した方が早いと主張しています。
「君のことが気になる」は「好き」かどうかわからないけどなんらかの意味で興味関心をもっているということです。さっきの「らーみーれーらーそーみれみー」です。
つまり、「君にいますごく関心を抱いているけど、それは言葉で説明するのではなく、もっと直接的な接触によって表現した方が早いと思うのだが、君はいかがであろうか」「ぼくはとってもラーミーレーミである」と言っています。

ほらまた笑うんだね ふざけているみたいに

この人は女子を笑わせるのが非常に上手なのでクスクスさせます。「ふざけているみたいに」は語り手男子と聞き手女子のどっちがふざけているのかわからないですが、まあどっちもふざけているみたいだけど本気だ、ということです。このふざけているは英語とかだとフラートflirtにあたる言葉ですよね。どっち付かずの色目使い、みたいに訳されるけど、まあ恋愛におけるかけひきのやりとりですわ。

今 君の匂いがしてる

これは非常に肉感的なところで、女子リスナーはここでやられるとおもいますね。
フラート(色目、媚態)ってのはある程度距離があって可能なわけですが、ここでは生化学的に、嗅覚に感知されるほど近づいているか、あるいは近づいていなければそれほど強くなにか生化学物質を発散するほど体温が高くなっている。

君を抱いていいの 好きになってもいいの
君を抱いていいの 夏が通り過ぎてゆく

さっきは「こころはいまどこにありますか」だったけど、今度は「夏がとおりすぎてゆく」。夏のおわりぐらいなんすかね。場所はいまだに不明なのですが、昼に夏の終わりを感じることは少ないので夜ですね。おそらくリゾートとかではなく、時代的に都会のカフェバーみたいなところだと思うんですがどうでしょうか。

ああ 時は音をたてずに ふたりつつんで流れてゆく
ああ そうだね すこし寒いね 今日はありがとう 明日会えるね

ここが一番解釈面倒なんすよね。音楽的に別の場面に物理的に移動しているのは明白。「つつんでゆく」からなんか包まれてる感じがする。毛布やタオルケットですか。「そうだねすこし寒いね」は「寒いですね」って言われたから「ちょっと寒いですなあ」って答えてる。夏の終わりだから普通にしていれば寒いほどではないので、まあ服脱いだりしてますか。そういうシーンですな。

そしてすぎ次に伸びるギターで、これはこのブログで何回も指摘しているように、ロックでのギターのチョーキングは特別な意味があるのです。きゅいーん!

何もきかないで 何も なにも見ないで
君を哀しませるもの 何も なにも見ないで

ここも解釈がむずかしいのですが、まあ「あんまり詳しく私の心理について聞かないでください、これ以降も同じことを数年つづけるのかどうかとか聞くと、答えは実は今のところはノーなのであなたが悲しむことにあるから聞かない方がいいんじゃないっすかね、でも先のことはわかりません」ぐらいですか。

あるいは、「好きな人=彼氏」がいるとすると、ここでこの人に抱かれたり「好き」になられたりすると、その好きな人や彼氏がまあ悲しむことになったり場合によっては怒り狂ったり、まああんまり都合がよくないことが怒って女子自身も悲しいおもいをすることもあるかもしれないわけですが、とりあえずいまはそういう先行きを見ないことにしましょう、とかそういう意味かもしれませんね。ほかにも解釈ありえると思います。いろいろ考えてください。

君を抱いていいの 心は今 何処にあるの
君を抱いていいの 好きになってもいいの

キュイーン。


コーラスの意味についてですが、ワーワー系のコーラスで好きなのはこれ。10ccのI’ not in love、1975年。

君の写真を部屋に貼ったりしているけどそれは壁の穴を隠すためだ。夜に電話するからっていって君がすきなわけじゃないよワーワー。ワーワーは言わないことを言ってます。


きゅいーんはなんでもいいんだけど、まあいつものツェッペリンで。お前を離せないぜべいべ。

まあこれは男性的すぎるか。女性的なギターチョーキングもあるな。まあとにかく、初心者リスナーはギターをキューンってやってたらあれだとおもっていいです。

けやき坂46の「誰よりも高く跳べ!」は放送禁止にしてはどうか

欅坂の「誰よりも高く跳べ!」はまさに大名曲なのですが、それゆえにまったく恐ろしい曲です。

前に書いた聴取ポイントリストとともに聞きましょう。私、30回ぐらい聞きましたが恐ろしい名曲ですね。

アーティスト名、曲名、ジャンルはいいですね。ジャンルはJ-Pop、アイドル音楽。でもこの分類でいいのかどうか。
リズムパターンは基本は4つ打ちダンス。
楽器編成は非常に分厚くて豪華です。打ち込みドラム、シンセベース、左右2本(ガットとエレキ)、キーボード、ホーンセクション系、ストリングセクション系、それから最初からぴょーんってやってるシンセと、うしろの方で出てくるもっとエッジの効いたエレピ、コーラス(欅坂と男声と女声)
テンポは130BPMぐらい、ダンスとしてはちょっと速い、いかにも高揚している感じ、踊ってると頬が紅潮しますね。

アーティスト情報は自明だから今回はいいでしょう。

歌詞まず基本だけおさえます。語り手の性別は不明だけど基本は少年、中学2年生〜高校2年ぐらい。主人公は語り手本人、語りかけられているのはよくわからないけどおそらく同世代の他人、あるいは自分自身。

これだけおさえて歌詞と音楽いっしょに行きましょう。

イントロ。ガガって感じでガットギターからはじまってるのかっこいいですね。先走ってかきむしってます。すぐにシンセがぴょーってやってすぐにうようよ、さらにドラムとホーンが入る。ベースも下の方でうようよ。この高揚感はただごとではない。

コード進行は | C | B7 | Em | G |で、キーは基本的にはEmというマイナーキー。これはB7が一応軽く決定しています。でもGってメジャーだって聞く方法もある。まあEmなのかGなのか、ていう曖昧さがある。しかしものすごい肯定的な感じですね。

| C | B7 | 誰よりも高く跳べ!
| Em | G | 助走をつけて大地を蹴れ!
| C | B7 | Em | G | すべてを 断ち切り あの柵を越えろ!
| C | B7 | Em | A | 自由の翼を すぐに手に入れるんだ
|C | 気持ちからTake off
| Am | One Two ThreeでTake off
| Em |ここじゃない ここじゃない
| Em | G | Em | ここじゃない どこかへ…

いきなりサビ。このサビすばらしい。「すべ」「てを」「たち」「きり」って感じが、はあはあ息が切れてる感じ。あの柵をなんとしてもこえるのだ。でも柵ってなんだろう。

「自由の翼をすぐに手に入れるんだ」の最後のところのAのコードがものすごく強くて利いていて、何回きいてもぐっときます。ここじゃないからテイクオフするんです。最後はGかEmかと争って、結局Emでおわって、音楽的に全体がEmであることが確定する。でもあんな派手なのにこのサビの終わりへんだよね。誰だって違和感があるはず。落ち着きが悪い。

Em | Am | B7 | Em / C B7 | 自分で勝手に 限界を決めていたよ
Em | Am | B7 | Em / C B7 | 世界とは 常識の内側にあるって…
Em | Am | B7 | Em / C B7 | 無理してみても 何もいいことない
Em | Am | B7 | Em / C B7 | 大人たちに 教えられてきたのは妥協さ

メロディーラインは普通、歌詞内容もふつうの欅系。1小節に1コード、4小節目だけC / B7 が入って強く推進する。なにもいいことがないようです。

Am / D | Bm / Em | Am / D | Bm / Em | 空の涯に向かい 風は吹き続ける
Am / D | Bm / Em / C#dim | Am B7 |見上げてるだけでいいのかい?もったいない

ここいいですよね。1小節に2コードはいって忙しい。高揚が激しい。歌詞として注目するべきは、風が空に向かって吹いていることです。

クエスチョン:あなたは風が空に向かって吹いていると感じたことがありますか?それはどこですか?

丘の上とかビルの上とかですか。そういう高い場所はたしかに風が上に向かって吹いている感じがする。そういうところで空に飛べる風が吹いているのを見送るのはもったない。

さあ前に遠く跳べ!
力の限り脚を上げろ!
追いつけないくらい 大きなジャンプで!
希望の翼は 太陽が照らしてる
信じろよYou can do!
行けるはずYou can do!
もう少し…

サビすばらしい。丘の上か、ビルの上で、自分に「さあ前に遠く跳べ!」って歌ってます。見る前に跳べ!ジャーンプ。ジャイアントステップ!誰かが追っかけてくるかもしれないけど、大きく跳べ!

君の/僕の 翼を太陽が照らすだろうってのはいいですね。あれ、でもそうすると、なんか翼をつけてる蝋が溶けちゃうかも、って話を聞いたことないですか?私の記憶だとずいぶんむかしにそうやって空を飛んだひとがいてイカロスとかそういう名前だったか……できる、行ける、もう少しいけばいける……

短い間奏がはいって、ドラムがドタドタやってなんかリプレイな感じ。失敗してやりなおしてる感じ。もう一度だ。

立ちはだかる 困難や障害は
これからもきっと 避けることは出来ない
背を向けるより 正面突破しよう!
どんな夢も予想つかない
明日にあるんだ

なにやったって辛いことは避けられません。正面突破だ。でもどっちに?あ、目の前の金網を飛び越えることで正面突破するんすね。

錆びたルールなんか 重い鎖だろう
飼い慣らされてて いいのかい? 頷くな!

ここのところの息の切れてるもいい。錆びたルールってなんだろう?絶対破ってはいけないルールよね。

さあ前に遠く跳べ!
力の限り脚を上げろ!
追いつけないくらい 大きなジャンプで!
希望の翼は 太陽が照らしてる
信じろよYou can do!
行けるはずYou can do!
もう少し…

このコーラス、うっすら男声も入ってて分厚くていいんですよね。それにシンセとかびょろびょろいっててすごい。「僕/君はできる、できるはずだ」しかしもう1回リプレイ。もう少しなのだ。

| Am | D | G | G |金網の外 眺めてるだけじゃ
| C#dim | C | 何にも変わらない
| Am / Bm | Eb / B7 |どこ向いても立ち入り禁止だらけさ

ここいったん落ち着いてる。よく考えるのだ。コード進行はおもしろくて、調性がわかならくなる。ぐだぐだ考えてる感じね。特にC#dimとか。Ebで混乱は最高だけど、最後はB7(ドミナント)でやっぱりEmへ向かうことに決めた。B7はEmへ解決/5度落ちる強い力をもっているのです。調性というのは重力である。コードも分厚くて魅惑的。

そこには金網がある。丘の牧場だろうか?丘の上の牧場の牛が自由をもとめて金網を飛び越えるのだろうか?ちがう。ではもう一つの候補ですね。どっちみち世界は金網があるんだから、どの金網を越えても同じさ、ってことか。でも「その」金網を飛んで跳んで大丈夫ですか。

そしてついに、

レジスターンス!

わあ。やめろー。

守られた未来なんて 生きられない

レジスタンス=生きられない。生きなれないのがレジスタンスなの?そして効果音入って飛んでる!なんに対するレジスタンスなの?親?学校?世界全部?それってレジスタンスなの?

この「れじすたーんす!」のあとのエレピがすばらしい。天国的。ヒイズミマサユ機先生とかも弾きそうなフレーズですが、私が知る限りはウェザーリポートのジョー・ザヴィヌル先生が開発したタイプのフレーズですね。天国へ飛んでる感じがする。

そのあとのコーラスは、もう自分なのか天使たちなのかわからんです。天使っぽい。

誰よりも高く跳べ!
助走をつけて大地を蹴れ!
すべてを断ち切り あの柵を超えろ!
自由の翼をすぐに手に入れるんだ
気持ちからTake off!
One Two ThreeでTake off!
ここじゃない ここじゃない
ここじゃない どこかへ…

「誰よりも高く跳べ!」これはすばらしい。そう、我々は高く跳びたい。そのためには「助走をつけて大地を蹴れ!」そうだ。「すべてを断ち切り あの柵を超えろ」でもこれはやばい。いろんなしがらみたいへんだけど、なにも断ち切る必要ないじゃん。「自由の翼をすぐに手に入れるんだ」この「すぐに」がキモだ。自由とかそんな大事なものが、そんなすぐに手に入れられるはずがないではないか。なに言ってるんだお前は。

「気持ちからTake off!」これは解釈難しいけど、「つらい気持ちから」なのか、もっとひどい「こわい気持ちからテイクオフ」か。「One Two ThreeでTake off!」「1,2,3で跳ぶ?」やめろ。「ここじゃない ここじゃない ここじゃない どこかへ…」そう、ここじゃないところへ行くってのはロックの基本だけど、そういう形で金網を超えるのはいかんよ。

ラストまで聞いてください。ここまで読めば、最後がフェードアウトしないで、タリララタリララというストリングスと下降形で最後ドシンと終わってる理由も明白だろうと思う。邪悪。

これは天使たちじゃなくて、悪鬼とその手下の美しく邪悪なセイレーンたちの歌です。芸術的には最高だけど、道徳的には非常によくない。

私も最初はこの曲、「そうだよな、おれたち足を高くあげて、歩幅を大きく取って生きてかなきゃならない、そう生きるのだ」って聞いたんですよ。最初っから最後まで感動させられる。特にサビの「*き*ぼうの翼」のあたりの感じってもう最高じゃないですか。でも全体はそういう歌詞じゃないんすわ。もちろん、もっと穏健に解釈することもできるけど、実はそうじゃない読みを可能にした作りになっている。

穏健な読みをすれば、そう、我々は時々ジャンプすればいいのです。ちょっと意識して歩幅を大きくして歩いてみたり(我々のジャイアントステップだ!)恥ずかしいから誰も見てないことを確認してから、公園とかで「ジャーンプ!」ってやってみればいい。そういうちょっとした活動から、人生は耐えられるものになたり、あるいはすごく豊かなものになる。部屋でジャンプもしましょう。ちょっと跳んで見るだけで全然ちがう。朝に1回思いっきりジャンプしてみれば、その日1日けっこう機嫌よく暮らせるかもしれない。

だからそう読んでそういう曲だと楽しみましょう。ファンはみんなおそらくそう聞いてると思う。

でも全体はそうではない。そして作詞作曲編曲の先生たちは、そういうしかけを十分意図してこういう名曲名トラックを作っている。私は許せないですね。

DailyMotionにライブ映像があるんですが、これとかもうほんとにギリシア神話のサイレーン、美貌と歌で男性を呼びよせて食い殺す妖怪を連想しますね。君ら、やめろ、ころされるぞ!

最後の個人ダンスもすばらしい。美人ぞろいだけどいつもは腕をだらんと下げてダウンな演出を強制されている欅女子が、笑顔で実は身体能力がものすごく高いことをみせつけながら、「その金網を跳べ、123で跳べ」って呼びかけてる。おそろしくてしょうがないです。ていうか、ライブでサイリウム振ってるファンの皆様は殺されそうなのがわかってるんでしょうか。わかってるんでしょうね。でもサイレンの歌と同じように、もう抵抗できない。放送禁止にしたらどうだろうか。そう、ゲージュツってのはこういうものなのです。19世紀的な「理念と形式の一致」という理想。あらゆる意味ですばらしい。すばらしすぎます。だからこそいろいろ考えるところがありますね。

ウォーターハスウスの有名作「オデュッセウスとセイレーンたち」。セイレーンは半分魚のやつと半分鳥のやつの2種類想像されてるんですが、今回は鳥のやつのほうが適切ですね。

ミスチルのYouthful Daysについて考えてください

一つ前のエントリで書いたミスチルのYouthful Daysの件、私聞いたことは歌詞意識したことがなかったんですが、なんかすごい違和感あったんです。

にわか雨が通り過ぎてった午後に
水溜まりは空を映し出している
二つの車輪で 僕らそれに飛び込んだ
羽のように広がって 水しぶきがあがって
君は笑う 悪戯に ニヤニヤと
僕も笑う 声を上げ ゲラゲラと

まあこれはいいですよね。いかにも青春。ただし水しぶきは他人様にかけてはいけませんよ。
youthful days、若い日々ってんだから高校生ぐらいすか。男子高校生と女子高校生のころの思い出を、おとなになってから歌っている、ってことでいいですか。シンガーは俺様。かなりトンガってます。

歪んだ景色に取り囲まれても
君を抱いたら 不安は姿を消すんだ

まあこれもいいです。「抱いたら」っていうのは女子はハグの意味にとるみたいですね。それでいいでしょうか。とにかく難しい高校生の時期にセックスしてました、ぐらいの意味ですかね。

※胸の鐘の音を鳴らしてよ
壊れるほどの抱擁とキスで
あらわに心をさらしてよ
ずっと二人でいられたらいい

んー、まあ「あらわに心をさらす」ってのがどういうことなのか。でもまあセクロスセクロス。これがそういう歌だってことぐらいはファンの間でもコンセンサスありそうですね。

「サボテンが赤い花を付けたよ」と言って
「急いでおいで」って僕に催促をする

キーワードのサボテン。もちろんあのトゲトゲついたサボテンでしょうけど、どういう形のサボテンを想像しますか?サボテンの花というのはあれは鮮やかで美しいものなのでいいですね。

何回も繰り返し 僕ら乾杯をしたんだ

「乾杯する」まあふつうはビールとかシャンパンとかそういうのだろうけど、文字通りにとっていいのかどうか。

だけど朝になって 花はしおれてしまって
君の指 花びらを撫でてたろう
僕は思う その仕草 セクシーだと

サボテンの花をなでたりするかなあ。

表通りには花もないくせに
トゲが多いから 油断していると刺さるや

ここ謎ですよね。どう解釈するでしょうか。

胸の鐘の音を鳴らしてよ
切ないほどの抱擁とキスで
乾いた心を濡らしてよ
ただ二人でいられたらいい

ここはあんまり問題ない。

生臭くて柔らかい温もりを抱きしめる時 (I got back youthful days)
くすぐったい様な乱暴に君の本能が応じてる時 (I got back youthful days)
苦しさにも似た感情に もう名前なんてなくていいんだよ (I got back youthful days)
日常が押し殺してきた 剥き出しの自分を感じる

これ異常ですよね。サボテンが生臭いとは思えないし、柔らかくもない。んじゃ生臭いのは抱きしめている相手(?)だ。生臭い女子高生とかいやですね。しかし生臭いのは女子高生なのか、あるいはその一部なのか……「サボテンに花が咲いた」っていうのは比喩だとしたらいったいなんなのか。チクチクするけど花びらついてて暖かくて生臭くて、ときどき赤い。

あとこの曲、時間の感覚がちょっと微妙で、高校生の頃を懐かしんでいるようでもあり、でも生臭いのを抱きしめているのは今のようでもあり、なんかわかりにくい。これも技法なのかしら。

繋いだ手を放さないでよ
腐敗のムードを かわして明日を奪うんだ

なにかが腐っている?え、これなんの歌なの?さっきのチクチクのトゲもほんとにサボテンのトゲなの?

(※繰り返し)
いつも二人でいられたらいい

わけわからんですね。私にはもうあるイメージがあるのいですが、これは相当ひどい歌だと思います。メッシーというかなんというか。まあ書くと怒られそうだし、各自解釈してみてください。

まあミスチル先生の歌詞はわざとわかりにくくしてるんですわ。でも手がかりは残していて、ニルヴァーナほどわけわからんようにはしてない。それがファンの人々が「深い!」とかっていう理由ですが、その内容が深いかどうか。音楽だけでかく歌詞表現もこったものなのもわかるのですが、私はわざとらしくてあんまり好きではないのです。そしてなにより、その歌詞が表現している理念、思想みたいなのが好きではないのです。ごめんねファンの皆様。

ちなみに、歌詞っていうのは、もっと適当というか、アーティストの霊感や直感で書いているはずだっていう意見はあると思うけど、そういうのにしてもなんらかの知的な作業は行われているのがふつうだと思います。ミスチルはそういうのが特にはっきりしている方で、昔いかにも知的な操作で作られた歌詞を分析してみたことがあるんだけど、あれなんていう曲だったか思い出せない。2ちゃんねるに書いたんだけど。

なぜそうなるかというと、適当につくった歌詞、なんの脈絡もない歌詞っていうのは歌う人間が覚えられないんですわ。あるストーリ、あるいは連想、そういうものがあってやっと歌詞をおぼえられる。たんなるゴロだけではおぼえられない。

それにもっと大事なこととして、作詞する場合、なにも背景の連想やアイディアがなければ言葉の選択肢が多すぎて(無限にあるわけだ)、構成できないんですわ。なぜそこにその言葉がはまるのかっていう少なくとも内的な整合性は必要なんよね。まあおうおうにして作家のその内的な整合性ってのが他人に理解できない形になってしまうけど、本人のなかではあるイメージみたいなのがあるはず。ニルヴァーナのSmells like teen spiritもそういうふうにしてできてるんだモスキート。おそらくカートコベイン先生のなかでは、あそこで歌われている個人的な体験とそこに蚊がいたことがみっちりつながってるのだろうと思う。ミスチル先生がこの曲を歌うときも、そのたびに、赤いサボテンの花びらをいじってる指が思い浮かんでるはずです。