高橋幸先生の「近代社会における恋愛の社会的機能」(8)

なんか疲れたのでもう終らないとなりませんが、前2エントリーのジンメルの参照で気になったのは、「パーソナル/インパーソナルな側面」みたいなのがジンメルさん本人の用語・発想じゃなさそうなところですね。『社会学』の原書を検索してみたけどimpersonalみたいな語は一回しか使われてないっぽい。おそらくパーソナル/インパーソナルはおそらくそのあとで引用されているルーマンの『情熱としての愛』での基本概念じゃないかと思うんですが、今度はルーマンの本への参照はページついてないのでどこにあるのかわからない。

ジンメル〜ルーマンを使って高橋先生が言いたいのは、19世紀以降人間のパーソナルな個性みたいなのが重視されるようになって、恋愛っていうもののと、「内面的な個性をもったかけがえのない相手」「恋愛はパーソナルなコミュニケーションであり自己と相手の承認」みたいなのが結びつくようになりました、みたいな話だと思うんです。これはよく話題になる話なのであんまり問題がないのですが、これを実際に論証しようとするとけっこうな分量が必要になる歴史的な話なので、典拠となる文献を支持しないとこの概説的論文で展開するのはむずかしかったんじゃないかと思います。ジンメルもってこられると混乱するし、ルーマンもけっこうむずかしいので、もうすこし基本的で信頼できる日本語で読める書籍を参照してもらった方が、想定読者の学生様たちにはよかったんじゃないでしょうか。そういう本はけっこうあると思う。

スタンバーグに言及したパートも前に指摘したように問題がある。というので、まあ学生様(3〜4回生)が読むにはかなり難儀するんじゃないかと思います。そういうわけで、私は学生様に「読め」とは言いにくい。学部生向けのものは、出典や推奨文献とかまで、学生の便宜も考えないとならないからたいへんなんですよね。

でもちゃんと「恋愛社会学しよう!」あるいは「社会学のなかにちゃんと恋愛を位置づけよう!」っていう気合は感じられるので、今後もがんばってほしいです。

あと高橋先生のコラム「ロマンティックラブ・イデオロギーという和製英語」はあれこれ文献めくっていてえらいと思います。ごくろうさまでした。これで他の人はこの語についての調査はしなくていいと思う。えらい!ただし井上俊先生の「恋愛結婚の誕生」は言及してほしかったかな。あと Hendric & Hendric 1992は翻訳があります。ヘンドリック/ヘンドリック『「恋愛学」講義』。

井上先生の論文はこれ → https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshioroji/12/4/12_77/_article/-char/ja/

ヘンドリックのはこれ。

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