島岡まな先生の例の記事についてまじめに考えたい学部生向けの注意書き (2)

続きです。 https://president.jp/articles/-/97138

(1ページ目)なぜ異例の逆転無罪になったのか

2022年の事件についての大津地裁〜大阪高裁の判決ですが、こうしたニュース記事等で裁判について読む場合には、できるかぎり判決文を入手するようにしてください。ネットに転がっています(ここらへんから入手できるはず → https://posfie.com/@amigurum_note/p/B73HMbq)。私が日本のフェミニストに疑いをもつようになった一番大きな出来事は、いわゆる京教大事件についてフェミニストの先生たちの話を聞いたあとに、判決文を入手して読んだという経験でした[1]また、角田由紀子先生の『性差別と暴力』を読んだあとに判決文入手した経験も大きかったです。

(2ページ目)所一彦の『注釈刑法(4)』

これは古い本で、いまとなっては評判も悪いもので私としては文句ありませんが、こうした「要約」や引用が正しくおこなわれているかどうか図書館で確認してみてください。私が利用している図書館にはありませんでした。

(3ページ目)「裁判官の性別によって判決は変わる」「裁判官の構成によっても結果は変わると思っています」

日本の裁判は「自由心証主義」と呼ばれる立場をとっていて、証拠を検討するときに裁判官の自由な判断にゆだねられているので、裁判官が変われば判決が変わることはあります。しかしもちろん、論理と経験則にもとづいた合理的な判断でなければなりません。果たして裁判官の構成(ここでは男女比ていどのもの?)によって判断が変わって当然だ(裁判官の男女構成によって罪の有無や刑の重さが変わる)ということになると、いったい裁判の公正さとはどのようなものか、という疑問が湧いてくることになります。また、さまざまな自分のバイアスを検討しそれに抵抗して公正な判決を下そうとしているであろう裁判官の人々にとって、こうした書き方はどうなのか、検討してみてください。

(3ページ目)「超男性優位社会」

どういう面でそうなのか、実際にそうなのか、どうしてそうなっているのか、批判的にディスカッションしてみてください。

(3ページ目)「1970年代に認定された性犯罪の判例を紹介します。男性と車でデートに行った女性が後部座席に移った際、運転席から男性も移ってきて性行為をした事案があり、暴力を受けた痕跡がなくても「こんなの女性が嫌がっているに決まっている」と認定され、暴行・脅迫の有無にかかわらず最高裁で強姦罪が成立したのです。」

これだけだとなかなかすさまじい判決です。素直に読むと、自動車の後部座席でセックスしたら強姦です、ということだと思うんですが、それはあまりにもひどすぎる。フランスでもさすがにそんなでたらめな判決はないでしょう。いったい(セックスした以外に)何が起きたのか、いったい(「きまってる」などという思い込みらしきもの以外に)なにを証拠・根拠にしたのかわかりにくいですね。どういう事件の判決か調べてみてください(私はやりません)。また、オンラインニュース記事とはいえ、こうした不用意な表現をすることがどういう意味があるか考えてみてください。すでに読んでる人は、おかしいと思いませんでしたか?それならもうすこし慎重に文章を読む訓練をした方がよいかと思います。こういう不用意な記述(発言)は、正直なところ法学者としてどうなのかと思います

(4ページ目)「わたしはコーヒーや紅茶を出されて「あなたはどっちがいい?」と聞かれても選べなかったんです。当時の日本の教育は「どちらでも結構です」と返すのが礼儀作法だということになっていました。」

先生と私はそんなに年齢は離れていないと思いますが、そういう礼儀作法があるとは知りませんでした。本当にそうだったのか調べてみてください。また、私は「どっちがいいですか」とたずねたら「コーヒー」なり「お茶」なりはっきり答えてください。ただし、ほんとにどうでもいい、お前なんかどうでもいいのだ、そもそもお茶もコーヒーもいらない、お前なんかにコーヒーいれられたくないというのであれば「どうでもいい」でもやむをえませんが、それなら「いりません」「もう帰ります」にしてください。

(4ページ目)「筆記試験では男子学生よりよっぽど優秀な女子学生が、モジモジして表に出て行かずハッキリものを言わない。「えっ、この人頭いいのに、バカなふりが身についてしまっている?」」

モジモジしている人はバカだということだと思います。「ふりが身についている」という表現がいいですね。あるいはバカはモジモジするものだということでしょうか。よくわかりませんが、意見ははっきり言いましょう。それに男性を「立てる」必要などありません。これは同意します。

(5ページ目)「唖然とした政治家のヤバい一言」

これはたいへん話題になった話です。島岡先生と本多平直代議士との間にかわされた話のようです。どういう話だったのか、ぜひ当時の記録と、それについての論評を探してみてください。

「権力勾配」と(性的な)同意

これについてはいろいろ面倒な議論が必要なので、いずれ書きます。権力差(各種の力や発言力の差)がある場合に性的な同意は不可能なのかとか、どういう場合にそういう関係でも性的関係は許されるのか、といった問題はたいへん魅力的なものなので、例を考えながらディスカッションしてみてください。

(6ページ目)息子さんの話

有名人のご子息はたいへんですね。ご当人は別に言いたいことあるかもしれず、ないもしれず、まあコメントできません。一つ注意しておきたいことは、こうした個人的な経験やアネクドートは、その人にはそう見えている、ということにすぎないということです。だからといって価値がないというわけではありません。別の視点からは別様に見えているかもしれない、ということです。先の政治家先生の発言についても同様ですし、コーヒーと紅茶の件の教授についても同様です。記憶とその解釈はなかなかむずかしいところがあるんですよね。

(7ページ目)「お金取ってサインや握手するって、要は売春につながる考え方」

「つながる考え方」というのは、お金と対象に身体的な接触をする、という点で売春と変わらないということですね。この考え方は説得的かディスカッションしてみてください。(1) 他の身体的な接触がある商売、(2) 身体的接触はないけど性的な(あるいは他の)魅力を売り物にする商売、などと比較してみてください。また当然、なぜ売春(あるいはセックスワーク)は悪いものであると前提されているのかも考えてください。

(8ページ目)「世界の認識は違います。性犯罪は性欲によって起きているわけではない、支配欲によるものだという認識がスタンダードです」

一部のフェミニストの先生たちのあいだで人気のある解釈ですが、「スタンダード」ではありません。詳しくはここらへんから読んでください。 → 「性暴力の原因は性欲ではなく支配欲」は単純すぎてよくない考え方です

(8ページ目)「NHKのアンケート調査で、男性は「2人でお酒を飲んだら性的同意がある」とか、「相手の家に行ったら性的同意がある」と思っている人の割合がかなり多いと報じられていました。男性は「2人でお酒を飲んだら性的同意がある」とか、「相手の家に行ったら性的同意がある」と思っている人の割合がかなり多いと報じられていました。女性の回答は反対で、考え方に大きな違いがあったのです。」

これはありそうな結果ですが、私はすぐには見つけられませんでした。見つけてください。
→ これではないかとのことです。 https://www.nhk.or.jp/minplus/0006/topic010.html
!!なんかおかしい……!!てかおかしすぎる! なにがおかしいかわかりますか?表をよく見てください。

つかれたのでおしまい(てか最後の表の情報によって殺されました)。あとは先生たちの本をよく読んでみましょう。では、またどこかで生きて会えることがあれば、ディスカッションしましょう。

Views: 749

References

References
1 また、角田由紀子先生の『性差別と暴力』を読んだあとに判決文入手した経験も大きかったです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました