Cambridge University Press
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いちおう最初の論文 “utilitarianism as a public philosophy”だけチェック。
気合いが入ってるなー。アジ文のようだ。天下国家を論じる人々はちがうね。http://philrsss.anu.edu.au/people-defaults/goodinb/index.php3
か。重要な人だな。
グッディンは児玉聡先生の博論でも1章使って扱われてるんだよね。博論見せてもらった時点でチェックするべきだよな。モグリ教員はいかん。まあ私はおそらく功利主義者ではないので、それほどあれか。いやいや。
まあこういうのを読むと、児玉先生や安藤先生なんかの国内の若手急進的功利主義者たちが「おまえらのふにゃふにゃした道徳的直観なんかどうでもよろしい」とか言いたくなるのもわかるような(そうは言ってないと思うけど)。
この本は翻訳あってもよさそうだけど、10年も経ってしまえばもう古いか。哲学関係はどの分野もそうなんだけど、功利主義は特に英米でやってることと国内で紹介されていることの時間的距離がありすぎるよね。一部の翻訳パワーというか翻訳エネルギーを功利主義にまわしてほしいな。でも翻訳は自分でやるにはトラブルばっかりで労多くして益少なしな感じがあれだ。
序文冒頭の文章がよい。
This book constitutes my response to a challenge, laid by Peter Singer in the friendliest possible way over drinks one day in 1988, for me to write up my (by implication, eccentric) version of utilitarianism someday.
酒飲んでシンガーにからんで怒られたんだな。超訳すると、
この本はピーター・シンガーと酒飲んだときに、「書けるもんなら、そのうちてめえのヘンチクリンな功利主義の本書いてみたらどうだ」って煽られたのに対する返答である。
みたいな感じか。
最近、英米の思想史が気になるんだよな。19世紀以前のじゃなくて、1950~70年代の。なんで功利主義がちゃんと扱われなくなったのか。一方で共産主義みたいなのが左派の典型としてあり(その一部は全体主義的)、一方に自然権理論とかに依拠した右派みたいなんがいて、功利主義は福祉リベラルの理論的根拠の一番の候補だったはずなんだよな。右からも左からも攻撃されて居場所がなくなったってことなんだろうか。60年代の公民権運動とか新左翼運動とかなんか関係あるはずんなんだよあ。倫理学とかしか勉強してないとそこらへんが見えなくなってしまう。なんにもないところに1971年にいきなりロールズとノージックとドゥオーキンが出現したように紹介されることも少なくないもんなあ。でも1971年にはPhilosophy & Public Affairsの発刊という重大事件もあったのだ。
国内で功利主義批判が左寄りの人から行なわれることが多いのも気になるんだよな。ウィリアムズとかはっきり右より保守ですってば。その意味で、やっぱりこの本は翻訳されるべきなのかもなあ。まあ右とか左とかどうでもいいし、そういう分類はまちがった印象を与えるからつつしもう。
左翼っていうのは。シンガーなんかは「弱い人々の苦しみに共感し世界をベターな方向に変えようとするのがレフトだ」とか書いてたような気がする。本みつからん。
現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)
- 作者: ピーター・シンガー,竹内久美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/02/24
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でも私には天下国家のことはやっぱりよくわからん。関心が薄いんだよな。自分の生存と幸福には興味あるんだけどね。だから倫理学者はだめなのだとかってことはないので注意。ちゃんとした人はたくさんいます。
Goodinの本、いちおう”Government house utilitarianism”も目を通す。特に文句ないです。
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