第9章 「ケアの倫理、ニーズ、法」
なんかまとまりが悪いと思う。
第10章。「ケア対正義論争」
- ここは大事な章なんだろう。
- 第1節。「メタ倫理」やっぱりわけらんな。
ケアの倫理は、状況の個別性を顧慮しないかぎり適切な行為は確定できないという個別主義をメタ倫理学上の立場とする。この立場を先鋭化した例がノディングスである。一方、正義の倫理は、公平に適用される原則を重んじる普遍主義をメタ倫理学上の立場とする。(p.215)
- これはバベックっていう人の解釈らしいんだけど、このひとまともなメタ倫理学者なのかな。Diemut Elisabet Bubeckさんか。知らんな。品川先生はこのひとをずいぶん援用して高く買ってるみたいだけど、なんかへんだと思うんだけど。
- そもそも「ケア対正義論争」って呼べるようなものが(米国で)あったのかな。ここらへんの歴史的情報も欲しいところ。なんか正統派(必ずしも正義派ではない)がケア派を殴ってるだけ、あるいは「仲間に入れよ」ってオルグしているだけのように見えるのだが。政治哲学とか一番マッチョなとこだからなあ。フェミニズム内部でずいぶん議論があったのは知ってるけど、それは「ケア対正義」ってんじゃなくて、「ケアは女性の価値か」とかそういう感じだったような。
- どうも品川先生と問題意識が共有できないっていうか呼吸が合わなくて苦しい。
- ケア対正義論争ってのはなんだろう?「ケアと正義とどっちが大事ですか」とかっていう問いはなんかよくわからん。答は「どっちも大事」以外に考えらんないから。そういう問いじゃないんだろう。品川先生の「基礎づけ」の意味をちゃんと理解してないからだ。あんまり具体的な事例が出てこないから考えにくいのかな。私はとにかく具体的じゃないとわからんのだよな。
以上、ケアを正義に統合するオーキンの議論と、統合に反対し両者の編み合わを説くヘルドの議論をみてきた。はたして、正義によるケアの統合は成り立つのか。それとも、ケアは正義とは独立の意義をもっていて、ヘルドの言うように編み合わせられるべきものなのか。(p.231)
- これがこの章の品川先生の問題意識だよな。確認確認。
- えーと、「統合」と「編み合わせ」の違いは。具体的には?
- 第3節の家族の話で具体的な違いがわかる、はず。
- うーむ、たとえばキムリッカとか「正義の倫理の擁護者」なのかな。まあ本道政治哲学者だとは思うけど。
- 私、なんか根本的に誤解しているかもしれんな。困った。
- そもそもp.234のキムリッカの見解の紹介は、キムリッカに不公平であるように見えるな。(キムリッカ『現代政治理論』の邦訳だとp. 441、英語第2版だとp.419)
- 私はキムリッカの見方はかなり説得力がある鋭い分析だと思うんだけどな。必ずしも「正義の倫理」の擁護者ではないように思うし。
- 品川先生はキムリッカあたりの議論をもう少し深刻に受けとめるべきに思えるな。っていうか、ケアの倫理じゃない人びとの反論をもう少し書いてくれてもよいように思う。
- p.235「以上から、正義の倫理とケアの倫理は異質であって、一方から他方を導出できないことが確認された。統合よりも編み合わせのほうが両者の関係を的確に捕えていると結論できよう。」うーん、導出関係かどうかが問題だったのかな。統合ってのは「導出」とかそういうのを指すのだろうか。
- 第4節。品川先生を二層式功利主義者に折伏したくなってきた。ケアの倫理と功利主義の親近性についてはキムリッカも指摘してる。邦訳p.437。でもまあ功利主義はぼんやりしすぎてていやなのかな。二槽式功利主義とかどうかな。洗うのと脱水は別で。
- うーん、でもどうもキムリッカのケア倫理の分析をつきつけて、品川先生がそれぞれどう考えてるのかお聞きするのがよさそうだな。んで、次にGoodinあたりの功利主義を紹介して改宗をせまるか。
第11章
あとで読む。
第12章
- 私には「ケアの倫理とかは徳の倫理の一部だ」っていうレイチェルズの解釈の方が魅力的なんだけどなあ。んで、徳の倫理は近代的な倫理学理論と対立しているのは認める。かつ、徳の倫理が魅力的なのも認める。
- まあ「正義の倫理」が対等な立場とか理性的な存在とかを仮定しているのは、近代的な倫理なるものがとにかくギリギリ最低限の倫理をなんとかして基礎づけようとしてきたからだわな。まあそういうギリギリ最低限の倫理とかってのはあまりにも貧しいと感じる人もいるだろう。ケアとか愛とか共感とか弱者への思いやりとかってのを前提に入れられるなら、もっと豊かな「倫理」を構築できるのはその通り。でもその場合規範的な力をその分失なってしまいそうな気がする。近代的なやつは「てめーみたいな利己的な奴だって、これくらいは認められるだろうよっ!」ってやろうとしているわけで、「あなたはもっと共感的/良心的なひとですから、ほんとはもっとアレなんですよね」とかってのはなんか違う。でもまあいいや。
- 人間は傷つきやすく、生はうつろいやすいものだ。その通り。みんな幸せになれればいいねえ。功利主義がいいと思う。
- われわれが新生児とか「乳飲み子」とか子どもとかそういうのに対してケアするのは、
そりゃやっぱりそういう人たちが弱いからだ。功利主義者もそういうひとにこそ気をつかうべきだって言いそう。われわれがそう感じる進化的な裏付けもありそう。 - 「対等な関係にもとづく正義の倫理からは、次世代を産み、育てるべしという当為を導出することはできない」p.268。そんなことはないだろう。あ、ここでも「導出」を使ってるな。やっぱりこれは品川先生のキーワードみたいだ。品川先生は倫理学理論になにを求めているんだろう。自分の直観を正当化すること?
- 「・・・人間の尊重すべき側面を尊重するにはまるごとの人間が守られなくてはならない。・・・責任原理とケアの倫理がこの共通の態度を示すの・・・一切を支える基盤として生そのものをそれ自身として尊重しているからである。」(p.268)
- これか!ここが品川先生が功利主義者になれない理由の一部を示しているのかもしれん。功利主義者は「生そのものをそれ自身として尊重」しないかもしれない。少なくともただの生物学的な生にはあんまり気をつかわない。(おそらく大腸菌の生にはそれほど気をつかわないだろう。)私も少なくとも大腸菌個体にはまったく気をつかわないし、さらに、人間以外にも守られなきゃならない個体はいるような気がする。もっとはっきり言えば、私だったらやっぱりさまざまな価値は誰かの感覚に由来すると言いたい。でもここを品川先生や同じように考えている人びとに納得してもらうのは難しいだろうってこともわかる。(実践的にはほとんど違いはないはずなんだけど)
- 「ケアの倫理はケアする相手のニーズをくみとるために推論能力よりも感受性を重視する。」p.268。そう、感受性はほんとうに重要だ。でも推論の能力、とくに整合性の重視は非常に重要に思える。そうでなければただの直観主義。あるいは、ベンサムが揶揄した「共感と反感の原理」でしかない。品川先生が「正義の倫理」とかってのに噛み付きたいのは、どうも「対等な関係」とかが気になるからのようだ。まあ実際「対等な関係」なんてのは現実世界での人間の相互関係では存在せんからね。
- しかしやっぱりそれって最低限誰でも認められる倫理とかそういうのをなんとかして基礎づけたい(あ、「基礎づけ」つかっちゃった)から、とにかく思考上の仮定にしてんだよな。
- そもそも品川先生は自他の非対称性とかどう考えてんのかな。私と他人は(私にとっては)ぜんぜん違うように感じられるんで、私が他人のこと(それもあんまり私に関係ない他人)のことを配慮する理由を探すのはなかなかむずかしいはずだ。私は私の幸福のことだけ考えて生きていきたい。でも、とりあえず私と他人たちがいくつかの意味で平等だとすると(これがホッブズの置いた仮定)、能力も欲求も希望もだいたい同じようなもんだから、とりあえずお互いにヤバくならないように契約結ぶだろうから、 これが法や道徳を守る基礎になるかもしれんなあ*1、ぐらいが基本だわねえ。ロールズもヘアもそういうことやってるわけでなあ。
- とにかく品川先生が、シンガーががんばった動物の解放や第三世界への援助の義務についてどう考えているのか知りたいな。品川流の解釈をしたヨナスやノディングスから、実践的には何が出てくるのか。品川先生のタイプの直観を重視する人にはそういう問いの方が効果的かもしれない。
- 聴衆や読者が好意的ならあんまり問題はない。問題は、敵対的な人びとをどう説得するかだ、倫理学ってのはそういう方法を考える学問だ、って思ってるみたい。少なくとも私は。品川先生はどうだろう。これは他の偉いひとにも聞いてみたいな。もちろん、なんでわれわれはこんなに道徳的なのかとか、道徳感情っていってもいろいろあるね、とかもっと微妙な問題もあるんだけど、それは二次的な感じがする(ほんとはこっちの方がおもしろい)。なんか私は態度が敵対的すぎんだな。
- あれ、すぐ上のは倫理学じゃなくて哲学一般がそうなんだな。倫理学はもっとゆったりしていていいのかも。哲学者ってのはソクラテスみたいな人で、(後期)プラトンみたいな人じゃない(いや、どっちも知らんけど)。相手の前提から出発して相手が望まない結論にもってって屈服させる人だ。当然死刑。
*1:実際にはホッブズの理論はもっと複雑。
- 品川哲彦先生のもゆっくり読もう(1)
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- 品川先生:時間ぎれ
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