ポップ音楽の何を聞く (1) 音の層(レイヤー)を意識してみよう

新時代令和ってことなので、新シリーズもはじめたい。令和といえばやはり音楽っすね。歌詞については前から継続しているシリーズがあるから、歌詞以外のポイントをいろいろいじってみたい。

種本は前のエントリで紹介したムア先生のSong Means。あれやこれや参考にしながら、録音芸術としてのポップ音楽を楽しむ方法を考えたいです。もう趣味は音楽鑑賞しかないから、わたしと気のあう人々音楽をもっと楽しめるようになるヒントみたいなの書けたらいいんじゃないかと思います。

この本の最初の章は「方法論」でまあ面倒な話しているから飛ばして、本論最初の第2章は「Shape」。この本の用語は訳しにくいんだけど、とりあえず「形」ってことだけど、まあポップ音楽がどんな形のものかってことだと思う。

ムア先生は「ポップ音楽は4つの層(レイヤー)があって、それ注意するのが第一歩だ」というようなことを言ってるような言ってないような1)この先生、ちょっと気取ってるところがあって読みにくいんですわ

四つの層というのは

  1. ビート explicit beat layer
  2. ベース functional bass layer
  3. メロディー melodic layer
  4. ハーモニー harmonic filler layer

なんだけど、この「explicit」「functional」「filler」とかいやらしいっしょ。なんでそういう語つかうかというのはそれなりに理由があるんですが、まあ私なりに説明します。

ポップ音楽はだいたい (1) 打楽器つまりドラム類、(2)ベース、(3) ボーカルやその他の単音管楽器、ソロギター、(4)音楽的空間を埋めるキーボードやギターのコード楽器、の音によって構成されてるってことですわ。まあ当然といえば当然。

音楽をぼーっと聞いてると、(1) ドラムや(2)ベースや(4)コード楽器がなにをしてるのか意識してないことがあるんで、そういうのよく聞いてみよう、ってことなんだと思う。その方がたのしい。

実際、不慣れな学生様と音楽について話をしても、ボーカルのメロディーと歌詞以外のことはあんまり話になならなかったり、バックでどういう音がなってるのが分析できないような感じありますよね。楽器の名前を知らないとかもあるかもしれないけど。

一曲聞いてみましょう。八神純子先生の「みずいろの雨」。この演奏はすごいっすよ。

この曲の(1) explicit beat layerとしてのせわしないドラムと(2) explicit bass layerとしてのベースを味わってみてください。ドラムは林立夫先生、ベースは後藤次利先生じゃないかと思うんだけどブラジルのサンバに由来するリズムでものすごいテクニック。

ドラムは16thフィールでチキチキやって、ときどきタムタムを叩くパターン。難しい。っていうか私楽譜にはできない。他の打楽器入ってるかと思ったらたいして入ってなくて、一人でこのサンバ〜フュージョンのノリをつくりだしてますね。すごい。

サンバの感じをドラムセットで表現するのはたいへんなんすよ。1970年代後半、下のスティーブガッド先生に刺激されていろんなドラマーがチャレンジして、国内ドラマーがやっとそれができるようになった時代じゃないですかね。まあここまでテクニカルじゃないけど、ノリをだすだけでたいへん。

これは、サンバのバッテリと呼ばれる打楽器隊のを表現しようとしているわけです。

ベースは頭のサビの|デーデーデ|デーデーデ|っていう比較的ゆっくりしてると聞こえるパターンと、Aメロの|デーンデデデ|っていうせわしないサンバのパターンの二つを使いわけてます。このドラムとベースのユニットでこの曲の3/4ぐらいができてる印象ですね。この演奏できるミュージシャンは、当時このコンビ以外にはほとんどいなかったんちゃうかな。

ちなみに、上のスティーブガッド先生がこういうリズムを一般的にしたのはこのトラック。すごい。

これが1978年で、これ聞いて世界中のドラマーがみんな練習したわけっすわ。これ、サックス、ピアノ、ベース、ドラムしかいないんすよ。わかりますか。

References[ + ]

1. この先生、ちょっと気取ってるところがあって読みにくいんですわ

ポップ音楽でリテラシー (7) 人々をカテゴリ分けさせたい

前のエントリの見本は、去年作った仮の聴取リストをそのまんま使ってしまったんですが、学生様に去年今年と2回やってもらって気づいたことがひとつ。

私が読んだメディアリテラシーの教科書みたいなのでは、アーティストとターゲットのリスナーのアイデンティティみたいなのを推定させるのが最初の作業なんですが、1〜2回生ぐらいだとこれがうまくいかないんですね。

だいたいいつもみんな「10代〜20代の男女」ぐらいになってしまう。こういう答になってしまうのはもちろん私の説明不足なんだけど、学生様たちのあるもの見方や慣れてしまった表現方法なんかについてあることを示している。

つまり、学生様たちはまだ人々のアイデンティティというか、逆に人々の「違い」みたいなのをまだあんまり意識してないかもしれないのね。

欅坂を聞くひととExile聞く人はちがう人々だと思うんですが、それが「10〜20代男女」っていうひとくくりになってしまうわけです。音楽ジャンルは性別、学歴とかにうっすらではあっても対応しているわけですが人々をこまかくタイプ分けするっていうのがまだできてない。人々を勝手にカテゴリ分けするのはよくないことですっていうふうに教育されているのも影響しているかもしれないし、あるいはカテゴリ分けして見てるけどそれを表明することは避けてるのかもしれない。でも2回生ぐらいになれば、聞く音楽からどういう人かっていうのはわかりますわよね。

まあこういうのはおもしろいなと思う。

(おそらくこのエントリはちょっと問題があるんだけど、まあおいおい書き直すです)

ポップ音楽でリテラシー (6) 最初の一歩は見本を示す

下は、あんまり説明してない時点で、1回目の分析(もどき)をやってもらうための課題のためのテンプレというか見本。まあ見本みせないと学生様はなにをやればいいのかわからんし。


アーティスト名: 欅坂46
曲名: エキセントリック
YoutubeのURL: https://youtu.be/65v7JSBpQ4U
作詞: 秋元康
作曲: ナスカ
編曲:?
歌詞: http://j-lyric.net/artist/a05b333/l03efac.html

楽器編成: 打ち込みリズムセクション、ピアノが印象的。
ジャンル: アイドルソング
リズム・パターン: 4つ打ち
テンポ:130BPM ( http://tunalab.web.fc2.com/txt_lib/get_bpm.htm で計測できる)
形式★: あとで


シンガー・バンドの年代性別服装等:女子高生

シンガー・バンドの印象、ライフスタイル: 鬱な女子高生

想定されている楽曲リスナー、購買層: (1) 鬱屈しているオタク男子、中学生〜オヤジオタまで (2) アイドル好き中高生女子、鬱屈?

語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等: 中学生〜高校低学年男子?女子もあり。

語り手とは別に主人公がいる場合はそのアイデンティティ: 語り手が主人公

語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等: 自分自身に語りかけている。もうなにもかにもいや。


歌っている場面はいつ:教室で鬱屈している現在

どこで語られているか: 教室か自分の部屋か。教室の方がドラマチックでよい。

いつのことについて語られているか: 今現在。

語り手と聞き手はどういう関係?: 本人。誰にも関係がない少年少女。

語り手はどんな状況: はみだしている、はぐれている、ぼっち、嫌われてる、敬遠されてる、噂されている

聞き手はどんな状況?: 同上

語り手がかんじていると思われる感情: 絶望、孤独、憎しみ、嫌悪。

歌詞の語りの聞き手が感じていると思われる感情: 同上。

楽曲のリスナーに引き起こされると思われる感情: 同上。

直接のメッセージ: なにもかにもいやです。

間接的なメッセージ:
「なにもかにもいや」っていうのではわれわれは連帯できる。社会やクラスにいるくだらない偽物、インチキな奴らとつきあわず、まともな人間である我々だけで好きなように生きていこう。

その他:

直接には「水清ければ魚棲まず」 http://kotowaza-allguide.com/mi/mizukiyokerebauo.html だが、さらには屈原の楚辞「漁父の辞」にも暗に言及している。


**** 歌詞とその1行1行について気づいたこと★ ****

(次回やる)


こっから中級

性的な含み:
ダブルミーニング:
言葉遊び:
解決されない謎:
歌詞のないボーカル、掛け声等使ってるか:
「フック」、特徴的な音楽的工夫、音楽的におもしろいところ:
コーラスの使用、性別等コーラスの使用、性別等★:
コールアンドレスポンスの使用★:
前奏・イントロの特徴★:
オブリガート、フィルイン等の特徴★:
間奏の特徴★:
エンディングの特徴★:
ギター★:
ドラム★:
ベースライン★:
その他アレンジの特徴★:


これの自慢というか工夫は、「水清ければ魚棲まず」のような引用を発見させようとしているところで、学生様の一人は宇多田ヒカルの”Traveling”から平家物語を発見してくれました


ポップ音楽でリテラシー (5) なんでトライしてみているか

ポップ音楽使ったメディアリテラシーみたいなのに興味があるのはいくつか理由がある。

まず「リテラシー」として、ふつうに目の前にありよく見聞きしているものが、学生様が思っているより内容豊富であるってことを理解してほしいっていうのがある。ビートルズとかからポップ音楽鑑賞をはじめた世代としては、ある程度は歌詞やそのメッセージに注意して聞いてほしいと思っているのだが、J-POP以降の多くのリスナーはそうではないように思える。

ふつうはそうしたリテラシーは古典文学作品を利用して教えるものだと思うけど、昨今はそういうのなかなか難しいし、長い文章や難しい文章だと学生様がついてこれなかったり、私の気力が続かなかったりする。そもそも学生様がそうしたマテリアルに興味をもてるかどうかもよくわからない。小説とかの文学作品なら可能かもしれないけど、私あんまり詳しくないし。ラノベとかにもよいものはあるんだろうけど、よく知らんし。ポップ音楽なら3分だし楽しいし、私もそこそこ知識がある(少なくとも文学よりは)。

ポップ音楽なら歌詞テキストの分析以外にもいろいろやることがある。各種の音楽的な背景や仕掛けや工夫、ビジュアル表現、ライフスタイル、政治的主張、ポップ産業のありかた、広告と、現代のマスメディアとそこで生きる我々の生活を考えるには題材だと思う。

ってなわけで2回生の前期ゼミ半期1回分ぐらいやってみるのはいいんちゃうかと思ってるわけです。1回生後期でもいいかもなあ。

ポップ音楽でリテラシー (4) 音楽分析マストハブ

今年も2回生ゼミ(前期)ではメディアリテラシーみたいなのやっていて、やっぱりポップ音楽からやろうかとしてます。まあそういう題材でゼミするっていうが私に許されるかどうかわからないんだけど、基本的にこの時期は好きなものについて調査したりプレゼンで熱く語ったりできるようになってもらうのが目的なので、題材はなんでもいいといえばなんでもいいというのもあり。私の担当の「倫理学」とかの授業をやっとやってる時期なので、私の専門に近い面倒な話はやりづらいというのもある。

連休つかって、書籍ながめたり、日本の論文いくつかあたってみたり。でもなかなか文献情報が見つからないのでよね。卒論はJ-POP論で書きたい、みたいな学生様たちは全国でかなり大量にいるんじゃないかと思うんですが、手引きがないのはこまりますね。

私が見たものからいくつか紹介しておこうかしら。

おそらく概説でいちばん定評あるのはシュクラー先生のこれだと思う。これは版を重ねていて、楽曲だけでなく、ポップ音楽の歴史やそれをとりまく産業や聴衆とかの話までカバーしたもの。

楽曲に特化して分析の手法を示しているのは下のがいまのところ(私が見たなかでは)最強な感じ。

録音芸術としてのポップ音楽を楽音レベルで分析する手法を提示していて、楽曲の構造やらレイヤーやら歌詞におけるペルソナ(語り手や聞き手やパフォーマー)の問題やら、楽曲を一番大きな単位として考えるときにはとても優れてる。

同じようなのをもう一冊おさえておくとすれば下の。

こっちはもっと大きく楽曲を売ったり享受したりするところまで分析しようってものだけど、歌詞の分析に一章使ってる。ここまでの3冊もって目を通しておけば、まあそれなりにしったかぶりとかできそうな気がしてるんだけど、どうだろう。

下のは、実際に1人1曲を担当して細かく分析してみせてくれているもの。

他にも、私が目を通してみたのはここらからいくつか拾えると思う。
https://booklog.jp/users/yonosuke1965?keyword=popular&display=front

下の『ユリイカ』特集目を通してみたんですが、文献情報もそれなりにあって勉強になりました。15年ぐらい前の「J-POP」の歌詞にまわつわる問題意識がわかる。

それに収録されている増田聡先生や北田暁大先生の論文を観ると、ポップ音楽研究で国内でわりと有名なのが下のものらしいけど、私は未読。入手がむずかしそうでまだ見てないです。

よっぱらいセックス問題いったんまとめ

一覧。

よっぱらってセックスするのが好きな人々がいるようですが、危険なのでやめましょう。

「性暴力の原因は性欲ではなく支配欲」は単純すぎてよくない考え方です

一部のフェミニスト学者先生たちが主張する「性暴力の原因は性欲ではなく支配欲」は単純すぎてあまりよくない考え方です。過去記事から一部だけ抜きだしました。

セックスの哲学

牟田先生たちの科研費報告書を読もう(8) 牟田論文誤読のおわび

去年の今ごろ牟田科研費についてシリーズ書いてしまって、なぜか最近になってはてなブログなどで有名な法華狼先生からお叱りを受けているのですが、実際わたし牟田先生の論文をまったく誤読してました。ほんとにお恥かしいのでどう誤読してたのか書いて反省します。

牟田先生の論文の第3節「性暴力として買春をとらえる」の部分で台湾台北の元公娼館の文萌楼の話が出てきて、そこでなくなった元公娼の白蘭さんの話があって、もとのエントリーでそこの部分を読んだときに気分悪くなってしまっておかしなことを書いてしまった。そもそも私この部分読みまちがえてました。

法華狼先生がこのブログを紹介してくれました。 → xiaoTANYAのブログ「文萌樓 かつて公娼のいた場所」
中国語で読めませんが、オンライン新聞記事もある → 自由時報「公娼白蘭頭七追思會 恐是文萌樓最後一場活動」

牟田先生が慰安婦とか公娼とかの話をしているので、わたしてっきり白蘭さん(「バイラン」だと思う)が働いていたのは、台湾が帝国下の植民地であった戦中か戦後はやい時期だと勝手に思いこんでいたのですが、白蘭さんは亡くなった2017年にまだ55才だということなので、1962年ぐらいのうまれで、公娼館にいたのは22才だか23才ぐらいかららしいので1984〜5年ぐらいからの話です1)13才で売られて商売をはじめさせられたのは1975年ぐらいから。そこから10年。これはつらい。。そこから90年代後半ぐらいまで働いていたというわけですね。私とほぼ同世代の人の話なのか!

ていうか、そもそも「白蘭さんの通夜」っていう表現のを見てるはずなのに白蘭さんに直接話聞けなかったのかな、とかへんなこと考えてるし。まだ生きていたと思ってるわけよね。瀕死で帰ってきた、とかって表現印象に残ってるのに。ものすごく混乱してました。

おそらくその私の混乱と馬鹿な誤読の遠い原因として、牟田先生が白蘭さんについても、現在元公娼館を事務所として使っていたCOSWASについてもほとんど情報をくれないので誤解していたと思うのですが、COSWASは売春の非処罰化や合法化を主張している団体2)日本のセックスワーカー支援団体SWASHとかと連係して運動しているようですね。、白蘭さんもまたワーカーの立場から、90年代の台北の廃娼・浄化政策に対して強く反対し非難していた人だったわけですね。

先の『自由時報』の中国語記事をGoogle翻訳(中→英がいいです)とかにかけてみると、1997年に33才だった白蘭さんが浄化政策に激怒した、のような文面があるようです。「うちの店はみんな親切だ、わたしたちは悪い人間じゃない」とか「廃娼政策は人を殺す」みたいな意味の文章も見えるような気がするので、中国語できる人が訳してくれたらうれしい。

白蘭さんはその界隈では有名人だった形跡があって、この本に収録されているChen Mei-hua先生の論文 “Sex and Work in Sex Work: Negotiating Sex and Work among Taiwanese Sex Workers“に、41才のころのインタビューの一部が掲載されています。Google Booksでも中身が読める。

Chen先生の論文は実はacademia.eduからダウンロードできます。

この論文はおもしろくて、売春やセックスワークの問題は、売春はセックスかワーク(レイバー)か、という二分法で考えられるけど、インタビューにもとづいて、実際のワーカーの視点からするとそういう二分法にはなってない、労働でもあるしセックスでもある、客と恋人の間の境界もぼやけている、というような議論をしています。まあそうだろうなと思う 3)インタビューされているワーカーには10代も多くてちょっと気になりますが。

そのなかで白蘭さんが紹介されていますが、彼女はかなりさばけた感じの話をしていますね。他のワーカーも男性の欲望とかをコントロールするためにいろいろしていて、言うなりになったり組みしかれたりしているわけではない。

白蘭さんはたしかに13才のときに売られて十代を非合法の売春施設で働かされて悲惨といってよいと思います。でも公娼(ライセンスもちセックスワーカー)としては、自分がどんなサービスを提供するかコントロールすることができた、ということのようです。お客とのセックスとボーイフレンドのセックスにもたいしたかわりはないし、愛してるからといってセックスしなければならないわけでもない、という形で、Chen先生の解釈では、セックスと恋愛とを切りわけてる感じ。

白蘭にとって、セックスは、「チープな獣」〔男〕がみなもっている自然的な衝動であり、愛の表現などといったものではない。こう考えることで、白蘭はセックスの呪縛から逃れており、恋人の性的活動を監視する手間をかける必要もない。一方、相互の尊敬とケアは、愛として、あるいは親密さの土台として理解されている。それゆえ愛は脱セックス化されているのだ。

のような形ですね。

こういうの、私は説得力があるなあ、と思って読むわけです。日本でもこうしたインタビューや手記その他は、書籍でもオンラインでも大量に読むことができると思います。ネットでは風俗嬢の人とか大量にいますが、そうした人々もふつうに彼氏その他の親密な人間関係もってるし、仕事がセックス関係だという以外にそれ以外の人々と違いはないように見える。

でも牟田先生は、台北の旧公娼館を調査に行ったのに、白蘭さんがどういう人であったかを教えてくれず、またその元公娼館を運営していて、白蘭さんについての情報をくれたCOSWASという組織がどういう主義主張でどういう運動をしているか教えてくれないまま、そしてそのさまざま主張を黙殺したまま、その部屋が狭いことをもってしてそんなところで短時間でやるのはセックスではなく性暴力である、セックスワーカーの同意は心からの同意ではなく擬制である、という話をしているわけで、ここでやっと私が一年前に感じた違和感がなんであったのかがはっきりわかったわけです。そういう情報がはっきり述べられていないために、私混乱していました。違和感にとどめて、ちゃんと質問したり調査したり考えたりしなかった自分がはずかしい。それに情報を教えてくれた法華狼先生に感謝します。

References[ + ]

1. 13才で売られて商売をはじめさせられたのは1975年ぐらいから。そこから10年。これはつらい。
2. 日本のセックスワーカー支援団体SWASHとかと連係して運動しているようですね。
3. インタビューされているワーカーには10代も多くてちょっと気になりますが。

名曲「人生は夢だらけ」にコメント

気づいたことを簡単にコメント。

大人になってまで胸を焦がして
時めいたり傷付いたり慌ててばっかり

ここ、ジャズの曲でいう「バース」(verse)になってて、うしろの歌詞の流れとは一応独立で、それ以降の歌の内容を前置き・要約しているんですね。ふつうはうしろの歌本体の「リフレイン」あるいは「コーラス」と呼ばれる部分とは別のメロディー・コード進行使うんだけど、この曲ではそれではくどいのでおなじものを使ってるんだと思う。

バースがいいのは、これが一番有名かな。楽器だけでやるときもバースのメロディーを前奏っぽくやるのがふつう。

この世にあって欲しい物を作るよ
小さくて慎ましくて無くなる瞬間

こっから本論。この主人公は無くなる瞬間を作るお仕事です。もちろん音楽。ドルフィー先生のこの一言が有名ですね。

“When you hear music, after it’s overit’s gone in the air. You can never capture it again.” 「音楽は終ったら宙に消えてなくなってしまう。二度ととりもどせない」ものすごく有名。ちなみに、このYou don’t know what love isは聞いておきなさい。

こんな時代じゃあ手間暇掛けようが
掛けなかろうが終いには一緒くた
きっと違いの分かる人は居ます
そう信じて丁寧に拵えて居ましょう

音楽とか簡単につくれる時代になって、上質なものも粗悪なものも流通していて、聞く方も大量に聞いてるもんだから違いがわからなくなってるけど、音楽好きはいるからがんばりましょう。どっかの映画監督みたいなのはだめですよ、と。

あの人に愛して貰えない今日を
正面切って進もうにも難しいがしかし

さっきは説明しませんでしたが、ここのキーはEbメジャー(変ホ長調)、ふつうにI-IV-II-Vl-Iという進行なんですが、ちょっとだけ工夫されていて、IIのところが部分的にIIm7-5っていうマイナーキー(変ホ単調)の進行が入ってるんですね。モーダルインターチェンジって技。まあふつうだけど、IIm7-5-Vと聞くとマイナーコードに決着するのな、って予想されるけどEbメジャーに落ちつくところがちょっとした工夫。あとまあ最初のところとかピアノいろいろやっててコピーしようと思うと面倒ですね。たとえばふつうはEbで4小節同じように鳴らすだけでOKのところを、Eb△7 → Eb+5 (aug) → Eb6 → Eb7 → Abって細かく装飾してます。こういう細かい工夫があちこちにあってなんかコテコテ。

実感したいです
喉元過ぎればほら酸いも甘いもどっちもおいしいと
これが人生 私の人生 鱈腹味わいたい
誰かを愛したい 私の自由
この人生は夢だらけ

このサビのところは前でちょっと予告されていた単調Ebマイナーに部分的に転調しているというか、実はこの部分はジャズでよくやられる「枯葉」(枯葉よ〜枯葉よ〜)の前半部と同じ進行なんですよね。

まあジャズミュージシャンが好きなスムーズな進行で、キーがEbmなら(フラット多すぎ!)

Abm7 – Db7 – Gb – Cb – Fm7-5 – B7(b9) – Ebm (- Eb7) みたいな進行。女芸人の人生歌うのにサビが「枯葉」っていうのはなんか諧謔も入ってるんですかね。

ベースとかもジャズらしくウォーキングしていてかっこいい。そして「人生は夢だらけ!」で一発爆発!ゴージャズなモダンジャズビッグバンドサウンド。これかっこよくて、はじめて聞いたときシビれました。編曲は村田陽一先生。ベイシーというよりはサド・メルとかその後継以降のモダンなサウンドよねえ。後半でキーがEbマイナーからAbマイナー(というかG#マイナー)に転調してます。なんでこんな複雑なキーつかうんだ!ヘタクソには弾けないではないか!(おそらくわざとやってる)

この世にあって欲しい物があるよ
大きくて勇ましくて動かない永遠
こんな時代じゃあそりゃあ新しかろう
良かろうだろうが古い物は尊い
ずっと自然に年を取りたいです
そう貴方のように居たいです富士山

歌詞は「大きい」「勇ましい」「古いのが尊い」とかでなんか伝統主義者か右翼みたいなの連想して、最後の「富士山」でずっこけるのがいいですよね。私何回聞いてもずっこけます。そう、政治がどうのこうのなんてこまかいこと考えないで、富士山みたいにゆったりしたいですわ。

3拍子ではあるけどそれと2拍子が複合されてる「ジャズワルツ」っていうリズムに変更されている。このテンポのやつ、紹介するべき適当なのがすぐにはおもいうかばないけど、とりあえずコルトレーンとかがやったやつですね。(あんまりよい例じゃないのであとでいれかえます。)

これ、マーヴィンゲイ先生のWhat’s goin’ onを3拍子にしてるんだけど、この3拍子と2拍子が複合した感じがジャズでかっこいい。

二度と会えない人の幸せなんて
遠くから願おうにも洒落臭いがしかし
痛感したいです
近寄れば悲しく離れれば楽しく見えてくるでしょう
それは人生 私の人生 誰の物でもない
奪われるものか 私は自由
この人生は夢だらけ

最後のところはE△7 on Bb→Ebm7 on Bb → F/Eb とかかっこいいモダンな響き。

他にも歌唱法、アクセントのつけかた、吐息の入れ方とか、スキャット、伴奏に音えらびや対旋律まで、細部まで工夫された名曲です。ものすごく手間暇かけられたものは何回聞いても新鮮な驚きがある。みんなも気にいった曲は何回も聞いてください。