いいですか、社長や関係者が本を出している会社の場合、
最終面接までにその本を読んでおくのは必須です。
しかし、「本を出しているからちゃんとした社長さん」と
思ってはいけません。特にベンチャー企業の場合。
大学の授業でも何度も注意しているように*1、
「出版されているから」「ネットで有名_らしい_から」というのは
ぜんぜん信用の基準になりません。
「しっかりした出版社から出ているから」「しっかりした企業の社長さんだから」ならOK。
しっかりしていないところはしっかりしていない出版社から
しっかりしてない本を出して、その本で騙すのね。
出版社というのは売れるものを作るメーカーなわけで、逆に言えば
売れるものならなんでも出す出版社があります。
著者が金を出すところも多い。そういうところから出ている出版物は
それだけではなにも信頼する理由がないわけ。私のようにだめな
教員でさえ、本気で「本を出したい」と言えば出してくれそうな出版社はいくらでもある
はず。「本を出す」こと自体はなにも信頼を増やさないの。そのうち句集でも出すかね。
もちろん、しっかりした会社の社長さんが、人生をふりかえり
あんまりしっかりしていない会社からよい本を出すこともあります。 松下幸之助先生ぐらい成功した人のものならなんでも読んでみる価値がある*2。
へんな学者の書いたものよりずっと価値があるだろう。
でもその本を読む価値があると思ってよいのは、その人がしっかりした人だろう
と思えるからなのね。そういうのは「しょーがねーなー」と言いつつ
読んだりつっこんだり、感心してみたりすればよい。
また、あまり名の知られていない出版社がよい本を出していることもすごく
よくある。そういうのはいずれ(少なくとも本の)名前が知れるようになる。
そういう本を見つけたら、「あ、俺はこの本のよさがわかるぞ」と自慢に思っ
てよい。ちゃんとした人がおすすめしている本も、とりあえず信用してよい。
問題なのは、出版社の信用度もわからず、著者の信用度もわからないのに、
「本を出しているから信用できる」と思いこむことなのね。それはカルト宗教や催眠商法や健康詐欺師の手口。
ベンチャー企業の場合(そしてたいした業績を残していない場合)、
まだその会社や社長の信用度はまったくのゼロ。
もちろん、このブログを載せている「はてな」ぐらい成功していれば
ある程度は信用してもよいけど、まだどうなることかわからんのだから いちおう眉にツバつけつつ読まなきゃならん。「はてな」の関係者の梅田望夫先生*3の本は
「ちくま新書」から出ていて、この会社はそこそこ信用がおけることになっているから
(新書はちょっとあれなんだけど)、まあそれなりに信用してよい。
これはけっきょく「はてな」の成功と、「ちくま」の(いちおうの)信用と があいまっているわけね*4。多くの人が
論評していて、それも梅田さんを評価するのに役に立つ。でも
大学でもネットでもどこでも話題にならない本なんてのは信用するに値しない。
一応私はそういうへんな本に騙されないような教育をするのが大学教員の一番の仕事だと
思っているので、
就職活動のときもへんな広報に騙されるのは我慢なりません。いまあるあなたの手のなかの
本の出版社をちゃんとちぇっくしてみること。その出版社は
他にどんな本を出しているかネットで検索してみるとよい。
*1:前にも書いた。https://yonosuke.net/~eguchi/memo/authors.html
*2:ちなみにPHPはかなりしっかりした出版社だ。
*3:ぜんぜん誤解していた。「はてな」の創業者は近藤さん。
*4:正直わたしはちくま新書はよい本もたくさんあるけど、とんでもゴミもいくつかあると思っている。典型は上の注に書いた岩槻。
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