しかし誤解のないように書いておくと、私この科研費報告書自体は(そして牟田先生の論文も)高く評価しているわけです。この手のセックスにまつわるいろんな問題っていうのは実は国内ではちゃんと議論されてないので、いろんな立場の意見が検討されるべきで、そうした議論の基盤を提供してくれているのでたいへん価値がある。科研費もらってもらってたいへん助かります。ぜひもっと出してあげてほしい。
っていうか、私が思うに、いまジェンダー/セクシュアリティまわりの研究者が少なすぎるんすわ。みんな同じような話してるし。もっと科研でお金出したげてください。
あと前の記事に質問もらってるんですが、牟田先生たちのあの動画サイトはどうなんだ、っていう件なんですが、まああれに学術的価値はほとんどないですわね。でもなんでああなってしまったのかだいたい想像できたりして、ちょっとつらいところがあります。
想像では(勝手な想像ですよ!)、最初はジェンダー平等のための理論と運動の架け橋をつくりたい、とかかからはじまったと思うんです。んで、その手の運動している人だけじゃなくて、その手の学者研究者系統も、ITすごく苦手な人々多いんですよ。まあ牟田先生たち自身もそんな得意じゃないと思う。だから「ジェンダー平等を目指す研究者とその他みんなのための手引きを作ろう」みたいな発想は自然だったと思うんです。
でも実際にそうしたサイトを作ろうとすると、自分らではやはり知識も技術も足りないからできないわけですわ。だからプロに頼む。でもプロっていうのは技術は提供してくれるけど、知恵はあんまり貸してくれないんすよね。どういうサイトつくりたいか、どういうビデオ作りたいかっていうヴィジョンがはっきりしてないとどんなプロでも助けようがない。でも発注する側もよくわからないから、ああいう中途半端というかなんのためかわからんものができてしまう。システムを発注するっていうのはたいへんなことですよね。あちこちの団体で同じような問題が起こり続けていると思います。
まあ例のあの画像の世界ですね。
まあ場合によって責任者はごめんなさいしないとならんかもしれんのですが、彼女たちのあれがそういうものかどうかは私には判断ができません。
あと、今回気づいたんですが、SNSというかツイッターの特徴として、すごくリツイートとかされるネタがあるんですね。フェミニスト批判みたいなのはかなり好まれるネタで、500人とか1000人とかがリツイートしてしまう。これ炎上しているというか攻撃される側としては世界が襲ってくるように見えるはずで、ツイッタの特性を理解してないと認知歪んで世界について誤解しちゃいますわね。
牟田先生の論文のテーマの一つは「なぜ女は「叩か」れるのか」みたいなのだと思うんですけど、SNSとかで活動しても反応が思い通りにいかないと、本気で蹴られ殴られたりしていると思いこんでしまうかもしれない。実際にはそれって一部の人々のものであっても。
世間の人々をうまく説得するのが学者の仕事かっていうとよくわからないし、「隅々まで説得する」みたいなのもおそらく活動家の仕事ですらない。そんなことは誰にもできないわけだし。ネットと通じた言論活動とか啓蒙とか討論とか、そういうのについてはやはりいろいろ考えておかねばならないなとは思っています。SNSもブログも使いかたをまちがうと本気で健康を損ないます。とにかく健康に悪いことは避けたいものです。
- 牟田先生たちの科研費報告書を読もう(1)
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- 牟田先生たちの科研費報告書を読もう (7) おしまい
- 牟田先生たちの科研費報告書を読もう(8) 牟田論文誤読のおわび
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>でもプロっていうのは技術は提供してくれるけど、知恵はあんまり貸してくれないんすよね。
movie-tutorial.infoはWeb制作者みると技術すら提供していない詐欺サイト
これに百万円以上つかって研究業績にするから批判される。
>SNSとかの活動うまくいかないと本気で蹴られ殴られしてりうと思いこんでしまうかもしれない。
百歩譲って批判者の量を誤解してしまうのはSNSの特性だとしても、質や因果の混同は関係ないのでは。活動の成果が上がらないことや批判されることをどう処理するかはそれ以前の問題のような気がします
コメントでの要望に応えて論評して頂き、ありがとうございます。しかし、学術的意義が皆無の動画発信ナビ( http://movie-tutorial.info )を2016年度実績報告書で「研究成果」と記した牟田教授に対して、以下のように評価を保留している点には疑問を感じます。
“まあ場合によって責任者はごめんなさいしないとならんかもしれんのですが、彼女たちのあれがそういうものかどうかは私には判断ができません。”
加えて、ブログ冒頭で記されているように、全体としては科研費報告書自体は評価されているのも疑問です。
なぜ牟田教授を断罪しないのでしょうか。「2016年度実績報告書を訂正し、研究が失敗した旨を記述すべきだ」、「このサイト構築費195万円を返還すべきだ」となぜ仰らないのでしょうか。学術的意義が存在しない「研究成果」を出した以上、当然の報いと思われるのですが。
動画発信ナビは、決して重要度の低いもの(余技)ではありません。3つのサブテーマの内の1つを構成する、研究の柱とされています。実際、2014年度実績報告書では「III. ジェンダー研究を真のジェンダー平等実現へとつなげていく実践知の確立(実践活動)」に対応するものが、動画発信ナビとされています。
それにも関わらず、動画発信ナビには学術的意義が全くありません。そして、この学術的意義の不存在に対して、以下の理由により、評価を保留することもできないと思います。
第一にこの件は「当初の期待に応える研究成果が不幸にも得られなかった」というケースではありません。例えば、自然科学で「xx仮説を証明するために実験を積み重ねたが、証明に失敗した」という架空の研究成果を考えてみれば明らかです。この研究成果には学術的意義自体は存在します(その意義は低いでしょうが)。なぜなら、その実験は、その研究者の専攻分野と一定の関係性が当然あるからです。しかし、動画発信ナビのコンテンツは、専攻分野(ジェンダー研究等)と何の関係もありません(2016年度実績報告書の提出時点のサイトにおいて)。
江口先生は、システム開発にありがちな失敗が生じた可能性をブログで指摘されていますが、仮にその指摘が正しかったとしても、それによって動画発信ナビの学術的意義の不存在が免責されるとは思えません。不幸にも開発に失敗していたとしても、専攻分野と何の関係も無いサイトが出来上がるのは異常なことです。
第二に、動画発信ナビは、遠い将来において学術的意義が見出される可能性もありません。例えば数学の分野であれば、現時点では全く意義が見出せない論文でも「ガロアのように将来的には意義を見出すことができるかもしれない」として判断を保留することも許されるでしょう。しかし、ガロアの論文は発表当時でも、少なくとも数学と関係があるものだとは認識されたでしょう。専攻分野との関係性さえ見出せない「研究成果」は、そのような可能性にも閉ざされているのです。
以上より、牟田教授への評価は断罪以外にあり得ないように私は考えます。
実はTwitter 上の学者クラスターを眺めていて、強い不満を感じていました。この問題を最初に指摘したCatNewsAgency氏の無茶苦茶な科研費批判に対して先生方は激しく反発するのに、牟田教授の無茶苦茶な研究成果(動画発信ナビ)にはほとんど反応しませんでした。何故あのサイトを厳しく批判しないのか、CatNewsAgency氏が学問を冒涜するように牟田教授も動画発信ナビを「研究成果」として位置付けることで同じように冒涜しているではないか。このような憤りを感じたのです。
繰り返しになりますが、動画発信ナビは専攻分野と無関係な「研究成果」である点が異常です。それは、あんこが入っていないアンパンと同じくらいナンセンスなものであり、学問に対する冒涜だと思います。
なぜ動画発信ナビに関して牟田教授を断罪されないのか、また研究の3つの柱の1つを構成するのが動画発信ナビであるのに科研費報告書自体は高く評価されるのは何故か、ブログで解説して頂けるとと幸いです。