マイルスと同じように、うまく吹けないけど一発当てたい男がいました。あんまり頭もよくないし教養もない。音楽理論とかちゃんと理解できない。そもそもチューニングもできない。さてどうするか。
答:あまり考えずに自由にやる。ただし白人インテリのバッアップを受ける。
これはかっこいい、というかもうすばらしい音楽になっております。なんというかほかのジャズには感じない抽象的な「美」を感じる。これは爆弾だ!
まあ実はやってることは「フリー」でもなんでもなくて、マイルスがKind of Blueとかそれ以降でやろうとしたこととそれほど違っているわけではない。ある持続的なバックの上で、あるスケールにそって適当に吹く。実はぜんぜんフリーじゃないんだけど、本人は「フリーだ、なにも約束事はない」みたいに言い張った。
まあ実際にはベースが音楽的な基盤を提供しちゃうので、その上でなにかしようとするとあるスケールを想定することになる。ピアノがいないからまあ西洋音楽の伝統の「コード進行」ってのからは解放されてる。その意味でフリーなんだけどね。マイルスの「モード」とかってのもやっぱりハーモニー(とそれに対応するスケール)からは解放されなかったんだけど、ピアノを抜いて同じようなことをすることで自由になった。マイルスは曲の構造みたいなもの(AABA形式)は放棄しなかったけど、オーネットはそれも放棄して頭とお尻のテーマだけにした。まあそういうのがオーネットのフリージャズ。
でもこの曲なんかは独特の味の印象的なメロディーでただものではないのが一発でわかりますよね。天性のメロディーメーカーなのよ。
まあ実はオーネット先生は完全になんでもありじゃなくて、ある一定したリズムやベースのパターンの上である規則にしたがって自由に吹きたいと思ってるひとで、彼以降の本気でめちゃくちゃするフリージャズの人々(ファラオ・サンダースやアルバート・アイラー)とは根本的に違う。これは80年代から90年代に至るまで変わらない。
このアルバムの他の曲もそれぞれ奇妙な味があって、ぜひ購入をおすすめするですね。天才。
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