(2000年代はじめに書いた文章)
パソコンとかいうものに関してよく耳にするのが、「私はまだ今もっているWINDOWSパソコンを使いこなせないからMacなんて・・・」「ワープロさえ使いこなせないのに、パソコンなんて」「私は今のソフトも使いこなせないから・・・」「今ある機能も使いこなせないのに」といった一言です。
長い間こういう言葉を聞いて、違和感を感じていたのですが、最近やっとその意味がわかるようになってきました。
まず、「パソコンを使いこなす」という発想を捨てましょう。わたしたちが「使いこなす」ことができるものなんて、世の中に存在していません。あなたは車を使いこなしていますか?あなたが運転する車は、時速200kmで走り、数トンのものをひっぱることができます。あなたの電子レンジや、あなたの掃除機だって、あなたが知らない機能をたくさん持っていることしょう。あなたは自分の体の機能を知りつくしていますか?あなたの体だって、実は使う気になれば100kgのものを持ちあげ、100mを15秒で走ることができるでしょう。
私は、いまだに電卓に必ずついているルートを使ったことがあありません。ヴィデオデッキはどうでしょう?MDカセットはどうでしょう?なたが持っているもののなかで、一番パソコンに近いと思われる携帯電話はどうでしょう。「使いこなしてない~」という人は少なくないかもしれませんが、それでなにか気になりますか?十分納得して使っているのではないですか?
上のような一般的な車や家電と、パソコンとの違いは、車や家電は使い道や目的がはっきりしているけど、パソコンはそうではないというところだと思います。その通り。パソコンはなんでもできるからなにができるかわからないのです。
そこで、発想を切りかえましょう。パソコンは、何もできないのです。いや、ほんとです。とりあえずパソコンは、適当にメールが出せて、適当に文章が書けて、適当に計算ができる(らしい)ものにすぎません。
それでよいではないですか。もしそれがあなたの役に立っているなら、あなたはパソコンを使いこなしているのです。その他の機能を使う必要はまったくありません。知らない機能を探したり、分厚いマニュアルを読んだりする必要はいっさいありません。
しかし、ここで大事なことがあります。もしあなたが「これじゃ使いにくい」「こういうことはできないかな」と思ったら、それは必ずできるということを忘れないでください。
あなたがなにかをしたくなったとき、あるいは、なにかをするのが面倒になったとき、必ず解決法があります。やりたいことがはっきりしているときだけ、ソフトウェアの「ヘルプ」を見たり、誰かに質問してみたり、マニュアルや週刊誌を読んでみるのもいいでしょう。
実は、これがコンピュータとかいう怪物を手なずける最善の道なのです。Larry Wallというコンピュータの世界的達人は、達人へになるためには、「不精」が最も重要だと言っています。同じことを何回も繰りかえすのがイヤだから、面倒な手順を踏むのがいやだから、人はだんだん上達するのです。コンピュータが嫌いな人が知識が豊富なことが多いのは、そういう理由によるのです。
もちろん、学問や知識、技術一般についても同じようなことが言えるかもしれません。「なんで~~なんだ?」「どないなっとんねん」「もっとうまくできないか」という疑問から、学問も技術も進歩してきました。その際、「まず全体をよく知ってから」という方法は取る必要はないのですね。もっとも、学問などに関しては全体を知ることは非常に重要ですが、あなたはコンピュータの学問をするわけじゃないでしょう?だいたい、日常使うレベルで全体を知ろうとするのはばかげています。あなたのコンピュータは、たまたまそこにあるにすぎません。
そこで、江口からの提案です。全部知ろうとするのはやめましょう。コンピュータに不満を持ちましょう。なぜ使いにくいのか考えてみましょう。なにができれば素敵なのか想像してみましょう。たいていの人は、あなたと同じ不満と希望をもっています。そして、多くの人の努力によって、いろんなことができるようになっているのです。コンピュータはそれだけではダメな召使いなのです。なぜあなたが苦しまねばならないか。それはあなたがダメだからではなく、コンピュータがダメだからです。使いこなしたり、必要はありません。
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