ミスチルはすごく気になるアーティストなんすよね。いろいろ思うところがある。今ごろなんかのきっかけで「口がすべって」という曲を聞いてすごい歌詞にびっくりしたのでぼやいた記録。
口がすべって君を怒らせた
いかんですね。「すべった」ってことは、前々から思ってたことを言いましたね。フロイディアンスリップとかそういうやつ。でもしょうがないですね。とりあえずあやまりましょう。
でも間違ってないから謝りたくなかった
言っちゃったわけですな。「いやまちがった」とかは言いたんないんなら「言いすぎた、ごめん」ぐらい言いましょう。本当のこと言えばいいってもんでもないと思うです。
「でも」が高いところから入ってくるのがメロディー的に天才を感じます。コード進行とかもいろいろ凝ってるのね。
わかってる それが悪いとこ
反省して直すようにしてください。
それが僕の悪いとこ
まあとりあえずあやまったらどうですか。
「悪いとこ」だと言いつつ、そこがよいところでもある、むしろ魅力だ、おれは正直なやつだ、節を曲げない男だと思ってますね。それはそれでいいでしょう。わたしもそういうのはわかります。
この「悪いとこ」は、カギかっこに入った「悪いとこ」であり、「一般には悪いと言われているけれども俺は悪いと思ってないよ」ってやつですね。2回くりかえしてるのが印象的。
「ゆずれぬものが僕にもある」だなんて
これはよいです。やっぱり大事なことは大事っすからね。上で口に出しちゃったことは譲れないことなんすね。しょうがないっすね。
だれも奪いに来ないのに鍵かけて守ってる
これもしょうがないです。人間ってそういうもんです。大事なもんすからね。「奪う」とか「鍵」とかそういう強い言葉がミスチル先生の歌詞の特徴ですね。
わかってる 本当は弱いことを
うんうん。この「わかってる」の抑揚がいいっすよね。いかにもイラついている感じが出てる。子供が「わかってる」とかって言ってる感じそのまんまでうまい。さっきの「悪いとこ」もそうだけど、ミスチルの歌詞は自己言及が多いので、「自分をよく見つめている」「深い」とか言われるわけですわね。
それを認められないことも
うんうん……うん? もしかして「自分が弱いとは認めないよ!」って言ってる?
思い通りに動かない君という物体を
でました「物体」。びっくりしました。まあこれは本気ではなく、あるときは自分は相手を「物体」とか「操作の対象」、オブジェクトとして見てる、ってことですわね。物体思い通りに動きませんね。自分のbodyでさえうまく動かない。
なだめすかして 甘い言葉かけて 持ち上げていく
まあヨイショしているわけですな。これもまあ時には必要なんでしょうね。
「わかっていても、自分が弱いことは認められない、そして今も君という抵抗する物体を努力して動かしている」っていうのはもう相手に対するディスや挑発に近いですね。「彼女」「あいつ」について歌ってるならこれでもいいんですが、「君」ですからねえ。
もう一人の僕がその姿を見て嘆いているよ
そんでもここまではまあよかったんですわ。まあ女子をよいしょするのはなさけない、という考え方もあるだろう……
育んできたのは「優しさ」だけじゃないから。。。
ここだ。「優しさ」だけじゃないのならなんだろう?「育む」も「二人(?)の関係で育んだ」なのか「自分が育んだ」なのかわからない。とにかく、「育んだ」のが1人か2人か社会か知らんけど、おそらく「育んだ」のは「愛」といっしょに「憎しみ」や「嫌悪」だ。つまり「君をよいしょしている自分が情けないよ、なんで君みたいな物体をよいしょしなきゃならんのだ。下に落して踏ん付けて叩き壊したいものだ」
「優しさ」とカギかっこがついているも意味深だわね。さっきの「悪いとこ」はカッコにいれずにこの優しさはカッコに入れる。少なくともふつうの意味の「優しさ」ではない。さっきと同じ考え方でいけば、「ふつう一般に優しさと言われているもの」ぐらい。「俺はおまえとの関係のなかで、人々が優しさと呼ぶところのものを発揮してきたが、他にも隠しもっているぞ」。私ははっきり脅されているのを感じます。
争い続けてる血が流れてる
民族をめぐる紛争を新聞は報じている
いやですね。戦争反対。ピース。
ここも衝撃的で、最初に聞いたときにびっくりしたのはむしろここだったかもしれない。だって、いままで口喧嘩の話してたんですよ。その上で、「お前との関係では優しさ以外のものもあるぞ(ずっと腹もたってるぞ)」って宣言した上で、「血が流れる」だもんね。いちおう新聞にのってる国家間・民族間の話だってことにしてるけど、聞いてるときはそうはなないよ。こういうのがうまい。この人とケンカすると殺されるかもしれない、って連想しちゃう。
分かってる「難しいですね」で
片づくほど簡単じゃないことも
けっきょくは力で解決しなきゃならないこともあるよ、ってことですね。これも脅している。私は本当にこわいですよ。
誰もがみんな大事なものを抱きしめてる
うん。
人それぞれの価値観 幸せ 生き方がある
うん。大事なことですね。
「他人の気持になって考えろ」とは言われてはきたけれど
大事なことですよね。努力はしたいです。
想像を超えて 心は理解しがたいもの
え、つまりあなたには他人の気持ちはけっきょくわからなかった、ということですな。あるていどしょうがないし、他人の気持ちがわかりにくいっていうのはやっぱり我々が常に感じているところです。でももしかしたら、「他人の気持を考えろ」って子供のころから言われてきたけど、けっきょくわからん、と開きなおってるわけですか。
流れ星が消える 瞬く間に消える
人生は短いですなあ。このフレーズはすごくよくて、「願い事」の対象である流れ星さけでなく、戦争で消えていく人々の生命を連想させる。しかしここも衝撃を受けたところで、上からの流れだったら紛争とかで生命が失なわれることを連想させられた上で、「人の気持考えろと言われてもおまえのことは理解できない」って訴えた上で、「おう、流れ星が流れてるねえ。人の命ははかないものだねえ」って言ってんのよ? すごい脅しだ。ヤクザではないか。
今度同じチャンスがきたら
え、次の話になるの?
自分以外の誰かのために
この「自分以外」「誰か」も効いていて天才的だ。ふつうだったら「君」のために、「苦しんでる人」のために「失なわれた命のために」「大事な人のために」って具体的になるっしょ。この方の場合は「自分以外」というくくり。こんなくくりかたする人はじめて見た。「おれたち」ならわかるのに、このひとは「おれ」と「おれ以外ぜんぶ」なんよね。ある種の哲学者ですなあ。
願い事をしよう
いままでは自分のことだけだったんですね。そして今回もやっぱり自分のことだけ考えることにしたんですね。「まあ次のチャンス、次の人生があれば考えることにしよう」ってことですね。せめて、「もっといい人間になれるように」とか「もっと素直になれるように」祈ってくださいよ。流れ星が流れる前に祈ってください。なぜ次を待つ必要があるんですか。
口がすべって君を怒らせた
ここで最初にもどってくるのは作詞的に正しい。でもあやまったんですか?
でもいつのまにやら また笑って暮らしてる
とくに謝ることもなく笑ってるんですね。主語がないのが気になる。相手はほんとうに笑っているんだろうか。その笑顔は本心からのものだろうか。あんな脅しかたされて本当に笑えるんだろうか。DVじゃないんですか。
分かったろう
これひどい。相手は分かってない可能があるんじゃないですか。「お前いまわらってるだろう、んじゃ俺たちの関係はなんとかなってるんだ」
僕らは許し合う力も持って生まれているよ
相手の人ほんとうに許してるんですか、っていうかあなた自分はぜんぜん悪くなかったんしょ。なんで許してもらう必要があるの? あなたは許してんの?「君は許す力をもって生まれてる」んじゃないの?
ひとまずそういうことにしておこう
なんでそんなこと言われなきゃならないんですか
それが人間の良いとこ
あなたの悪いところ、自分はいつも正しいと思える短所であり長所であるところを他の人間はもってないんですよね。相手は許す力をもってるんでしょうが、あなたはもってるんでしょうか。
そもそもあなた相手にいやな思いをさせても、自分がいやな気分にまったくなってないですよね。
自分が悪いとも思ってなくて、そのままほうっておけば関係が改善すると思ってますよね。むしろ、自分を不快にした他人は叩きつぶしたいっていうのはそのまんまですわね。他人のことを考えるのは次に流れ星に出会ったときでしかなくて、今はそんなこと考えるつもりはない。
コード進行とかネットにあったやつで確認してみましたが、これは天才の作品ですね。歌詞と曲が有機的に結びついていてすばらしい。いつも音楽的天才だと思います。
私が興味があるのは、先生の歌を「深い」とかいってる人々がなにを考えてこの曲を聞いているかなのです。心清い人々が多いみたいだから、この曲が平和的なことを歌っていると解釈されているようですが、すくなくともぜんぜん違う解釈を許すようなのは私にははっきりしていると思う。「俺は自分のことしか考えねーぜ」「なんで君はいつも頭痛いっていってやらせてくれないんだ」 [1]The Time, “Jerk Off”。 「ぐだぐだいってねーでぶっとばそうぜ」 [2]たとえばRCサクセション「雨あがりの夜空に」。これは別エントリ書きました。 っていう歌だったらもちろん全然問題がない、というかむしろロックはそう歌ってほしい。でもこの歌詞はそういうものでもない。あんまり歌詞について考えない人々をだますような形になっているんちゃうんかな。こと考える気はないわけですわね。私は本当に怖いです。
追記。このエントリの次に同じようにサイコパシーを感じるキリンジのエイリアンズを解釈してみたんですが、キリンジの世界の異常さ暗さ凶悪さに比べるとミスチルの世界は日常的で、そこらへんによくいる程度のナルシストですわね。そういうふうに見てみると、魅力もわかってきた気もします。日常的にイライラしたりケンカしたりしながら自分のダメなとことかも見つめつつ他の人と関係し、上を目指してく、っていうのは、キリンジの世界よりずっとわかりやすく共感できるっていう人々がいても当然ね。むしろ、我が強すぎるし教養もあんまりないけど、いつも自分を見つめ上めざしてがんばってる奴、っていう世界像が魅力なんね。ふつうの男性の自分の言葉になりうる。やっとわかってきた気がする。
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References
↑1 | The Time, “Jerk Off”。 |
---|---|
↑2 | たとえばRCサクセション「雨あがりの夜空に」。これは別エントリ書きました。 |
コメント
しね
とても共感しました
え、ちょっと解釈がすごすぎて、そんな脅しとかないでしょ。めっちゃ素敵な歌やん。何をおもってんねん。
この詩の世界観が好きでよく聞いていますが
なんか、フレーズを切って直感的に感じていませんか?
もっとアートで捉えたら
ミスチルの楽曲は芸術の域です
本曲は日常の些細な事、世界で起きている重大なことも
僕らは許し合う力も持って生まれているよ
が救いのキーワードなのでは
このblogを書いた人の心の狭さがよくわかります
なだめすかして甘い言葉かけて、そんな表面上の優しさだけじゃなくて、ちゃんと長い時間かけて向き合って、信頼関係築いてきたはずじゃないか。って解釈してました。
いらんこと言って怒らせて、面倒だなって思ってヨイショして、そんな自分がちょっと情けなくて。ちゃんと謝れなかったけど、また笑って暮らしてて。どこにでもある、普通の家族の歌を、こんなに素敵に歌うミスチル最高!って思ってた、、、
薄っぺらい解釈やのー。
くそすぎてワロタ
「想像を超えて心は理解しがたいもの」
だからこそ、話をして、言葉にして、伝え合わなきゃって、ことだと私は解釈しています。
だから、私はこの歌が好きです。
お前はこの曲の解釈を大間違いしたな笑
一生その解釈のまま死んでいくのかぁ可哀想に
捻くれ者はひねくれ物で墓に入るのよ
こんな破茶滅茶で薄っぺらい解釈してしまう人が大学のオフィスを持っているということが信じ難い
↑憐れだな、客観を装って主観全開で覡を飛ばすのは。
ただ、そもそも歌詞━━あるいは、詩━━に物語性を求めるのも違う気がする。
みんな評論家きどるのやめようね
チンカス野郎
俺はね、奥さんとの痴話喧嘩がすごく当てはまるよ。
自分の考えるその怒らせてしまった相手によって、この歌の歌詞の捉え方は変わってくると思いますよ。
詞ってそうゆうものでしょう。
あなたは誰に対にて口がすべって怒らせたと想像しましたか?
その相手との関係が薄っぺらいものなら、この歌詞は自分勝手でひどい歌詞でしょう。
共感します。ミスチルは父が好きで、頭がそこそこよくて、「自己啓発本めいた」哲学書が好きな人でした。
そんな解釈しか出来ひんくせにこんなゴミみたいな解釈して後悔してんじゃねーよ。てめぇみてえなカスが桜井さん語ってんじゃねえよ死んでくれ
怒ってる相手に対して、話をそらして誤魔化そうとしてる歌だと思っていました。「彩り」の歌詞とか見ても、民族をめぐる紛争とか、桜井さんそんなに興味ないと思うんですよね。社会情勢の話を持ち出したり、流れ星指差したりして相手の機嫌を取ろうとしている。日常をスケッチしているような歌で、あんまり深い意味のある歌だとは思わないです。
いちいちの歌詞へのツッコミも必要ないしこれ自体いりません
これも「人それぞれの価値観」ですね。
よくこんな解釈を出そうと思えましたね
というか、一曲の中でずっと同じテーマで続いていると思っていることに驚きです
読んだ時間もったいないなかった
時間返せ
どんなつまらん人生送ったらこんなくだらん解釈できるの…
こんなアルバムの曲を聞いてる時点で、あなたも本当は・・・
許し合う力をもって生まれたんだと思わされます。ありがとう
わかる…笑
ここまで厳しく解釈はしてないけど、
「口がすべって相手を怒らせたならちゃんと謝ろうよ…」「人間は赦しあう力を持ってる、そこがいいとこ~、って片付けられたら相手可哀想でしょ…」って思っちゃう。なぁなぁにして誤魔化すことが優しさとは思わないし、なし崩しを前提にされると信頼関係があやふやになると思うな。
きっとこの「君」はパートナーだろうから常にこのやりとりなのでしょう。いい加減喧嘩するのも疲れるし、もう許したフリして笑うしかない、諦めの境地にいるだけでは?と思います。
反面教師ではないですが、何か悪いことしたなと思ったらなるべく相手にすぐ謝るようにしてます。。
なんで謝らない前提なのか分からない。
ぶつかるのは辛いことだけど意地張って、お互い謝ってまた笑って過ごしてるんじゃないの
それが人間のいいとこだって
世界もみんなそうあれたらいいのにって
もっとポジティブに皆解釈しようよ
屈指のとてもいい曲だよ
桜井さんの歌詞大好き人間ですが、概ね同意見です笑
でもこのダメ男っぷりを露悪的に表現してるとこが好きなんですね
ひとつだけ私の解釈と違うところは、「優しさ」だけじゃない、の部分です
鍵カッコでくくってるのはいわゆる「優しさ」、うわべだけの「優しさ」じゃなくて、本当の優しさも育んできたじゃないか、と言っているのではないかと
なだめすかしたり、もちあげたりする表面的な「優しさ」ではなくて、例えば時に厳しいことを指摘したり、良い関係になれるように距離を取ったり、長期的に愛し合える本当の優しさも育んできたろう、というように解釈しています
といってもこれも男の言い訳のひとつで、結局最後まで謝れずに誤魔化して、ダメ男だなぁ(可愛い!!)って思ってます笑