『猿の惑星』についての私の感想もやっぱり最高じゃないだろう (5)

https://yonosuke.net/eguchi/archives/17357 からの続き。

あとノヴァの描写も気になるんですよね。この人だけ話をしないし、やたら薄着じゃないですか。しかも妙にテイラーに気に入られているし、一緒にいようとしているんですよね。プロット上、薄着の女性がくっついている必然性はないと思います。

まあこのノヴァ(ターザンの「ジェーン」役)はたしかに気になりますね。「この人 だけ 話をしない」(強調は某)は微妙で、そもそも原住民ヒューマンは言葉を話さない(話す能力がない)ことになってるようです。 性差別だというなら、むしろ、 言葉を話せない原住民男性ヒューマンたちがなんの価値もないものとして描かれている ことを性差別だと認めてもいいくらいなのではないか、という気もします1。原住民をロビンソン漂流記のフライデーにするぐらいの演出があってもよかったのではないか(だめですね)。ノヴァはナイスバディだから価値があるけど、男子はなんの価値もない。同じヒューマンなのに!

ノヴァはテイラーに気に入られてるし(セクシーなジェーンだし)、テイラーを気にいってるように見える。前エントリのあとに「俺たちの間にloveはあるだろうか」とかたずねられてわかってるのかわかってないのか……(この問いの意味もむずかしくて解釈が必要だけど今回はパス)

ノヴァが極端な薄着なのはまあ観客サービスですか。必然性がないと映画では女性は肌を晒しちゃいけないっていう考え方はあるかもしれないけど、他のヒューマンもほぼ布切れ一枚2、テイラー船長もほぼ全裸、場合によってはフルチンだし、女性も薄着でいいんじゃないでしょうか。だめですか。むしろ、 この世界のヒューマンが布らしいものを身につけてる方がおかしくて 、どう見ても布を生産できる文明程度にはない。エイプたちから盗んできたのかもしれないけど、そんな困難なことを組織的にできる理性をもっているのか…… プロットの穴 っていうのはそういうところじゃないでしょうか。この場合は、映画としてはヒューマンの全裸は困ります(私はかまいませんが)、ぐらいの理由からこの穴が生じているわけですね。

現地人にも嬉しいとか嫌だといった簡単な感情機能はあるように見えるので、乱暴な言い方になりますが、原始的な人間がそばに頭がよくて強そうな男性がいることに喜んでいるって描写なんだと思うんですよね。でも、まるでつがいの片方みたいに女の人をもってこられたら怒りませんか!?私だったら怒ると思うんですけど。

ここもまともな感想、というかつっこみだと思いますね(ただし、ヒューマンがもってるのがそれほど「単純」な感情に限られているのかは謎)。実際ジェーン(じゃなくてノヴァ)は、エイプたちからテイラーに対する明示的な(はっきり言葉で述べられる)「プレゼント」としてあてがわれるわけで、それが人間の尊厳やそういうものを踏みにじってる、っていう表現になってます3。だからテイラーは怒ってもいいわけだけど4、ハードボイルドだから自分の感情は最後の最後まで明らかにしないのですよ。そしてじっと脱走と反撃のチャンスを待つのです。それが1960年代ハードボイルド白人男性ってものなのです。当時はみんなそれを求めていたんでしょ。そういうのはもちろん批評や批判の対象になる。でも その魅力 もわかってあげるよう努力するべきだとも思うのです。

続き→ https://yonosuke.net/eguchi/archives/17372

脚注:

1

これは実は女性乗務員をさっと殺していることにも関係があって、男性殺して女性を残しておくと、当時の価値観では「貴重な貨物」である女性を守るために他の男性がいろいろ無理せねばならず、ぜんぜん違う話になってしまう。

2

布じゃなくて毛皮?でもあの状態でどうやって毛皮を加工できるのか……私には毛皮にできる獣を確保するのも、その皮革を加工するのも無理です。

3

なんでこんなほぼ自明なことを書かなきゃならないかわからない。

4

でもノヴァがすごくいいからあてがわれても怒らなくていいかな、むしろラッキー、ぐらいに思ってる可能性も大きい。白人男性はスケベでいやですね。あと、ノヴァがテイラーに好感をもっている理由の一つは輸血に使われたから、という理由も説明されています。

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