売買春の実態調査は難しい (4) ワイツァー先生たち

売買春の実態調査は難しい (3) の続き)
んで、他の国はどうなってますか、ってわけで、これはネットみてもノイズが多くてしょうがないので、まともな情報を探して本を見るのがいいですね。Ronald Weitzer (ed.) (2000) Sex for Sale、ってのをぱらぱらめくってみると。

Waltzer先生自身の”Why we need more research on sex work”って論文では、

  • 1991年、アメリカ男性の11%がストリップクラブを訪問、0.5%がテレフォンセックス業者に電話。ギャラップ調査。
  • Time誌の1986年の調査では31%がトップレスナイトクラブ経験あり、11%が過去1年間に訪問。
  • 1994,18%が生涯においてセックスにお金を払ったことがある。Davis and Smith, General Social Survey
  • 16%が生涯においてセックスにお金を払ったという調査もあり。Laumann et al., The Social Organization of Sexuality.
  • 1998、英国、ITV poll、19-59才の1/10の男性が売春婦にサービスを受けた。
  • 1994、カナダでは7%が同様。(ギャラップ)

次はMartin A. Monto先生の “Why Men Seek Out Prostitutes”って論文。これはMichealらのSex in Americaに大きく依存してる。(これは翻訳がある。)

  • 1948年のキンゼイの調査では、アメリカ白人の69%の男性が生涯に一度は買春の経験あり。ただしサンプルに問題あり。
  • 1964、Harold Benjaminらは80%と推定。調査の質には問題があるが、売買春反対派・許容派の両方に使われる。
  • 1992 National Health and Social Life Survey (NHSLS)、16%の男性が買春経験あり、0.6%が毎年。初体験を売春婦とすませる男性が1950年代の7%から1990年代の1.5%に減少。

とか「古いなー」って思いながら見てたら、実はこの本、2009年に新板が出てました。ぎゃー。そもそも古いのも翻訳あるんだった

んでそれのWeitzer先生の”Sex WorK; Paradigms and Policies”っていうイントロダクション相当のところを見ると、

  • 2000年代後半、アメリカには3500軒ぐらいのストリップクラブがあります。
  • 1991年-2006年の8回のGeneral Social Surveyによれば、15−18%のアメリカ男性が売春婦にお金を払ってセックスしてます。
  • オーストラリア16%、ヨーロッパ15%、イギリス11%と、だいたい似たような数字が並びます。もちろん売買春にはスティグマついてるので、実際の数はもっと多いかもしれません。
  • スペインは39%、タイでは独身の43%、既婚男性の50%が生涯1回はお金はらってます、
  • 「十分なお金もらえたらセックスしますか」という質問をイギリス人にすると、18%の女性と36%の男性がイエスと答えます。

みたいなのが増えてる。なんか、We need more researchって言っててた割にはそんなに精度が上がってるようにも思えない。セックス調査はむずかしいんですね。
まあワイツァー先生が指摘している、「似たような数字」っていうが私が考えてることで、坂爪先生が挙げていた1割強の男性、っていう数は、だいたい先進国なら似たようなもんちゃうかなって感じはする。いや、15%と39%じゃずいぶんちがうか。でもまあとにかく、日本がぶっちぎりで買春天国ってのはあまり信じられないです。

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