https://yonosuke.net/eguchi/archives/15132 の続きです。
そのあともちょっと細かく見る機会があったのですが、いろいろあるなかで印象的なのを二つ。
第1章の冒頭で、福山雅治さんの「家族になろうよ」の歌詞がひかれて、その歌詞では「男性は強く、女性は控え目で男性を頼る存在として描かれています」って言われてて、まあそうかなと思ってたんです。
でも、省略されたところを含めて、歌詞は実はこうなんですね。 https://www.uta-net.com/song/112355/ おそらく語り手は女性で、結婚式とかに親と新しい配偶者に対する思いを語っている、という感じですか。主人公はちょっと泣き虫で甘えていたみたいだけど、与えられる側から与える側になりたい、とそういう歌で、特に控え目かどうかはわからんし、男に頼りたい人かどうかもわからんと思う。ずいぶん違う印象を与えられます。あんまりよくない。ていうか、なんでそういう印象操作するんですか。私は本田先生がまったく信じられません。最初っからこういう調子だとわかってれば、対策もありました。ちなみに本田先生の「家族」の定義みたいなのについてもちょっと文句があるのですが、またいずれ。
今日ちょっとショックだったのは第4章で、例のOECDのPISA調査では、日本の学校でのイジメは、世界的に見ればおだやかな方のようです。
われわれの還暦近い世代にとっては、学校というのはイジメのスクツ、日本はイジメ大国!許せん!という感じなんですが、最近は改善されているようでよかったよかった、現場の人々の努力を称賛したいです。
しかしこれ、ちょっと気になる点があって、本田先生は「他の生徒にたたかれたり、突かれたりした」って一貫して表現しているんですが、質問紙やPISA2015の結果報告書「生徒のwell-being」では「たかかれたり、 押されたり した」なんですよね。なんで「 突かれた 」にしてるんだろう?
正直、私は生徒の9%弱が月に数回「たたかれたり、押されたり」しているっていうのはけっこう深刻だと思うんですが(国際比較でも上位)、本田先生はあんまり注目してくれない。
一方で、本田先生は、
この調査では、他国には見られない日本の特徴として、科学的リテラシー(科学のテスト成績)が高い生徒ほど、「他の生徒にからかわれた」比率が明らかに上昇していることが指摘されています。(図表は省略。注58の文献を参照)。他国では、テストの成績がよいほど、いじめ被害経験は減少しているのとは逆の傾向が、日本では見いだされるのです。
っていうんですわ。これ、私かなり混乱しました。
さきにあげた結果報告書 https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2015_20170419_report.pdf では、 日本では学力といじめのあいだにはあんまりはっきりした関係はない 、ってはっきり述べられてたからです。
しかしそれは私のちょっとした誤読で、「からかわれる」といういじめの一形態だけは、科学リテラシーと関係があるんですね。
つまり、「理系オタク」みたいな子供がからかわれやすい。「恐竜博士!」とか呼ばれたりかなあ。まあちょっといわゆるASD傾向ある人は理系のものが好きだけど、対人関係が苦手でからかわれやすい、みたいなのはあるかもしれない。まあこれは日本の特徴っていえば特徴なのかもしれませんが、私がいじめの形態の深刻さとすると、調査になっている項目からすれば、
- 身体的な危害を加えられる(なぐられるなど)
- 仲間はずれにされる
- ものを取られる
- おどされる
- 悪い噂をされる
- からかわれる
だろうと思うので、そんなに「これが日本の特徴だ!」として問題視するべきものかどうかはわかりません。それより「たかかれたり」をもっと減らしてあげてほしいし、とりあえずイジメ対策は国際的に見ればそれなりにおこなわれているのは認めてあげてほしいと思います。
ともかく、「科学リテラシーが高いとからかわれる」はありそうな話ですが、全体としてみれば、「科学リテラシーが高いといじめられる」というのではない。でも本田先生は、いかにも「まじめで勉強が好きな子がいじめられるのだ」っていう方向の印象を与えようとしている。それはまちがいです。また、 まじめな子がいじめられる 、みたいな調査項目はPISAでは一切ないようです。それでいいですか?
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