ここしばらく昔の音源聞いてみて、適当なことを書いたりしているのですが、一つは、シリーズ最初のスージー鈴木先生の本に感心したことがあるのですが、もう一つ、1980〜90年代のプリンス様のレコーディングエンジニアをしてたスーザン・ロジャース先生の本『あなたがあの曲を好きなわけ』を読んだことがあるのです[1]翻訳の出版をquerieで教えてもらった。。
こんな感じ。
私の人生における至福のひとときは、「レコード・プル」をしているときだ。これは友人や同僚と集まってお互いに音楽を聴かせあうというもので、ルールがふたつある。ひとつは本人にとって個人的な意味合いを持つレコードを選ぶこと。〝意味合いを持つ〟の定義としては、素晴らしい演奏でも、目を見開かされるような歌詞でも、人生の重要な時期と結びついているレコードでも、さらには結婚式で流したい曲でもなんでもいい。もうひとつのルールに関してはやや指針めくが、なじみが薄いとか無名のレコードであるのが理想だ。仲間たちがよく知らないようなものである。ただ、人気のある曲の新しい聴き方を教えたいような場合には、このルールは適用されなくても問題ない。
このレコード・プルにおける嬉しい産物のひとつに、仲間たちの考え方や意識に関する新たな一面を知る機会が得られる点が挙げられる。友人の音楽の好みについて深く知ることは、世の中に対するその人自身の見方、人生における美的経験のとらえ方、大人になったらなりたい(もしくはなりたかった)人物像などが明らかになる、実に深い体験になりうるのだ。レコード・プルによって明らかになるのはその人の選曲にとどまらず、そのレコードが当人にとって大きな意味を持つ理由なのである。レコード・プルがうまく進むと、音楽と同じくらい興味深い話が聞けるのだ。
レコード・プルは、自分自身の新たな一面を知ることができる、またとない機会でもある。自分の奥底にあるアイデンティティーを表すレコードを選び出し、音楽にまつわる自らの私的な愛情を他人に明かす危険を冒し、そもそもそのレコードに心を奪われた理由を説明することにより、音楽好きな自身の一面の細部を知ることができるのだ。
まあ私の音楽昔話にたいした意味があるわけじゃないんですが、最近そういうレコードプルする友人や同僚とかいなくなってるからねえ。
中学生から若いうちは、お互いの家を行き来してそこにあるレコードを聞いたり、カセットテープを交換したり、ジャズ喫茶でバイト同士で好きなレコードかけあったりしてたもんですよね。このブログにも「ゼミでプレイリスト作って交換しよう」みたいなシリーズがありますが、あれはこういう「レコードプル」を実現しようとしていたわけですよね。
こういうの読むと、モンテーニュの『エセー』の冒頭が思い出されますね。
読者よ、これは正直一途の書物である。……私はこれを、身内や友人たちだけの便宜のために書いたのだ。つまり彼らが私と死別した後に(それはすぐにも彼らに起こることだ)、この書物の中に私の生き方や気質の特徴をいくらかでも見いだせるように、また、そうやって、彼らが私についてもっていた知識をより完全に、より生き生きと見いだせるように……書いたのだ。……私は単純な、自然な、平常の、気取りや技巧のない自分を見てもらいたい。というのは、私が描く対象は私自身だからだ。ここには、世間に対する尊敬にさしさわりがない限り、私の欠点や生まれながらの姿がありのままに描かれてあるはずだ。……読者よ、このように私自身が私の書物の主題なのだ。あなたが、こんなにつまらぬ、むなしい主題のためにあなたの時間を費すのは道理に合わぬことだ。ではご機嫌よう。(モンテーニュ『エセー』冒頭の「読者に」)
まあよい時代になって、音源は配信でいくらでも聴けるから、みんな好き勝手に好きな曲紹介して一言感想や思い出話でも書いてみたらどうでしょうか。私はそういうの読みたいですね。音楽はあなたの人生だ。あなたが音楽について書いたことは、あなたがいなくなったあと、あなたの生き方や気質の特徴をいくらか知る助けになるでしょう。自分自身について書くのは難しいことですが、音楽についてなら書けるでしょう。
まあ最近、少年のころに耳にしていた音楽を探しているのは、自分の思い出話を書くきっかけを探したんですわ。まあ人をつかまえて「俺の好きな曲を聴けー」とかやったら迷惑だろうけど、ブログなら別に迷惑かけるわけじゃない。それにしても、いやー、音楽って、ほんとうに、いいですね。(あ、病気が再発して遠からずなむなむしてしまう、とかそういうのではないです。)
- 1975年の邦楽ヒット曲 (「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」はやばい)
- 1976年の邦楽ヒット曲 (だんだん記憶しているものが増えてくる)
- 1977年の邦楽ヒット曲 (少年は深夜ラジオを聞くようになる)
- キャンディーズにコメント
- ピンクレディーにコメント
- 1978年の邦楽ヒット曲 (深夜ラジオ全盛期)
- 1979年の邦楽ヒット曲 (なぜか印象が薄い)
- 1980年の邦楽ヒッツ(オフコースは偉大だが、もんたも偉大だ)
- 1981年の邦楽ヒット曲 (「春先小紅」はYMOファミリーの最高傑作)
- 1982年の邦楽ヒッツ(よい曲はあるが印象が薄い)
- 1983年の邦楽ヒッツ(特に思い出がない……なぜだ)
- 最近私はなにをしているのか、あるいは、「みんなレコードプルしようぜ」
Views: 22
References
↑1 | 翻訳の出版をquerieで教えてもらった。 |
---|
コメント