ワーナーミュージック・ジャパン (2013-02-20)
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この前、ask.fmで録音エンジニアを気にすることがあるか、という質問をもらいましたが、たしかにポピュラー音楽では録音大事ですよね。エンジニアの名前を気にしてそれでCDを買う、みたいなことはしたことないですが、この曲は録音技術の勝利だな、みたいなときはあります。
ジャズとかだとルディー・ヴァン・ゲルダー先生とか超有名ですわね。なんというかこの先生が「ジャズ」の音を決めた気がする。
ピアノの内部のマイクつっこんでオンな感じでとってて力がある。この演奏自体はまあヨレたりしていてあれですが、この録音に助けられてるところもあると思う。
ビルエヴァンス以降はちょっと離れて録ったり、ECMみたいに会場の残響をすごく大事にしたりするのもありますが、やっぱりハードバップはオンでとりたい。
ロックだとやっぱりレッドツェッペリンですね。はじめてWhole Lotta Loveの冒頭を聞いたときは衝撃を受けた。
当時私は高1だったと思いますが、1980年ごろなのでどの楽器もきれいに整理された形でとられているのが普通だったので、この左から来る歪んだギターのスピーカーの紙が震えてる感じにしびれた。これもかなりアンプに近づいて録ってるんでしょうが、スピーカーのまわりの空気の感じもとれてて名録音だと思いますね。これじゃないとツェッペリンじゃない。もちろんボンゾのドラムの録りかたもすばらしい。私1枚目は録音悪くて聞きません。
80年代前半はなんかスネアドラムにゲートかなんかかませて「バシ」みたいな音がはやりましたね。今聞くと微妙なかっこよさ。
https://youtu.be/1hDbpF4Mvkw
Roxy MusicのAvalonも録音技術の勝利な気がします。デジタルリバーブかけまくりで空間が広い! ちょっとこのYoutube音源ではこれのよさが出てないので、CDで聞いてみてください。
録音っていうので思いうかぶのはこの4曲ぐらいかなあ。
録音、特にドラムの音は録音や処理のはやりすたりがあっておもしろいですよね。これ国内でも大学の先生が授業でいろいろ比較したりしてるんじゃないかと思うので、ブログでも書いてくんないかなあ。
あ、1曲大事なのがあった。
これね。カセットテレコでとったとか。歪みまくっているのが勢いあっていい。
前の記事、「ブレイキーのチュニジア、フレーズの流れは2-3なのにクラーベは3-2で打ってるんだよね。」っていう「はてブ」コメントもらってました。なるほど!まあ私はその程度のことがわからない程度の人間なのでそういうつもりで一つおねがいします。
んで「至上の愛」なんですけど、もう一回。
全体はAbのメジャーペンタトニック一発みたいですね。
もちろん4拍子でベースは「ラbーファシbッ」ってのくりかえしてます。4分音符と8分音符2個、と一応考えておく。
ピアノは16分音符で1拍目と2拍目の裏の裏に弾くのが基本。私の耳にはここでベースとピアノが16分音符1個分ずれてるように聞こえますね。ピアノはAbペンタから適当に4度で音拾ってる気がするけどわからん。
んで、問題のドラムがどうなっているかというとやっぱりわからんのですが、バスドラが1拍目と4拍目の裏と裏裏に入ってる。ハイハットが2拍4拍に入って、スネアとタムが1拍目の裏裏、2拍目の(裏)裏と3拍目の裏に入ってる気がします(2拍目の裏に入ることもある)。シンバルは16分音符でチキチキチキーチが基本かなあ。正直聞きとれない。
というわけで、自信ないけどこんな感じ。
んで、まあ何を発見したのかというと、これは実は昨日書いたクラーベなのですわ。バスドラとスネアのリムショットとタムタムで|タン・タン・ンタ|・タンタン・| っていうルンバクラーベができている。ルンバクラーベっていうのは昨日ビデオで見た3-2ソンクラーベと比べると3個目の音符が半拍うしろにずれてるやつ。ちょっと早くてしんどいけど「たんーたんーんた、たんたん、」って手拍子してみてもらうとわかるのではないかと思います。
ポイントは、昨日紹介したパーカーやブレイキーのラテン風リズムに比べて、エルヴィン先生のリズムは4拍子(またはハイハットの刻み)に対して倍の速さになってんですね。
ドラムは1小節のなかに3-2ルンバクラーベが入ってて、ハイハットが2拍4拍刻んでるので4拍子な感じもする。ベースも強力だし。シンバルが細かく刻んでるのですごい忙しいけど、ベースが安定しているのでゆったりした感じもする。よくわかんないけどベースとドラムの2拍目の裏が微妙にずれたりずれなかったりしているのもわからん感じです。ベースの2拍目の裏の音は3連になってるのかな?まあこれがポリリズムってやつなんですなあ。微妙にスイングした4拍子とクラーベと16分刻みが共存している。すごい。まあラテン音楽の影響受けたものはだいたいこういうふうになってるのかもしれないですが。
http://www.drummagazine.com/lessons/post/4-cool-grooves-from-4-hot-rhythm-sections/
上のページも参考にしてください。
こういうふうに採譜してます。解説の部分を訳しておきましょうか。
「至上の愛」はサックス奏者ジョン・コルトレーンが同名のアルバムに収録した歴史の転換点となる曲だぜ。ここでドラマーのエルヴィン・ジョーンは、ベーシストのジミー・ッギャリソンとすげーアイディア交換をしてんだぜ。最初の4小節(0:53から)でメインテーマが提示されてんだけど、そこじゃあんまり飾りはつけれれてない。でも、5小節目になるとエルヴィンはシンコペーション加えてブチ熱狂的になっていくぜ! ギャリソンがそのシグナルを7小節目で受けとめて、ベースラインを複雑にしてるのを見てみろよ!これがノンバーバルコミュニケーションてやつだ!あいつらはリダーにしたがってプレイしてるんだ!
このエルヴィンジョーンズ先生がちが開発した「ゆったりしているようで忙しい、忙しいようでゆったりしている」ポリリズムはもう60年代後半の音楽を決定してる気がします。
それはたとえばこういう曲にも反映されている。(The DoorsのThe End)
まあこれはクラーベは感じないですが、シンバルとかにエルヴィン先生の影響感じますね。エイトビートと16分や2拍3連や3連とかが混在されるリズムの上での一発ドローン、とかまあロックとしては非常に独特の美しい音楽なってる。9分目ぐらいからの暴れるところかっこいいですね。まあドアーズは基本的にはコルトレーンアあたりのジャズ好きな連中が集まってロックやってるバンドなんすよね。(あれ、これファXクファXク言ってるバージョンだ。下品いかんですね。)
Break on throughとかはハードボサノバですわね。
まあそういうわけでポリリズムは偉い、ということで。
ちなみにパフュームのはポリリズムじゃなくてスリップビートですからね。……いや、4拍子と3拍子がいっしょに鳴ってるからこれもポリリズムか。失礼しまいた。
まあジャズという音楽様式の特徴の一つはドラムにありますわね。
今日はエルヴィン・ジョーンズ先生の復習。
まあはじめてこの「至上の愛」聞いたときはやっぱりぶっとびました。
テナーサックス、ピアノ、ベース、ドラムの4人しかいないのになんか猛烈に複雑な音がするです。特にドラムはなにやってるかわかりませんね。普通人間は手足あわせて4本しかないので、一度に出せる音は4つしかないわけですが猛烈に複雑。7本ぐらいある感じがしますね。
このエルヴィンジョーンズ先生の60年代中盤の音楽ってのはほんとうに世界を変えたんじゃないですかね。
まあこの曲についていろいろ調べてみたんです。まあアフリカな感じがするわけですが、これがどっから来てどんなことをしているのか探求したい。これは実は初めて聞いた中3か高1のころからの課題であったわけです。
まあジャズと(アフリカじゃなくて)ラテン(キューバ)音楽の関係ってのは本当に深くて、パーカーの時代以前からありますわね。
1940年代後半から50年代にかけてはアメリカとあそこらへんは密な関係だったんですな。
ラテンのリズムというと特にアートブレイキーが有名かなあ。50年代のも有名だけど、わかりやすい60年代はじめの方を。
こういうキューバ音楽のリズムは、基本的にクラーヴェっていう拍子のとりかたにもとづいてるんですね。2-3と3-2がある。説明しにくいのでビデオで。
キューバ音楽では、この2-3や3-2のリズムを感じながら全体の音楽が進むわけです。
このクラーヴェの感覚ってのはラテンのキモらしく、クラブにサルサ踊りに行ったりするとイケメンキューバ人が女の子にサルサの踊り方教えてるわけですが、その時も「ワンツースリー」じゃなくて、こういう感じで「・ウノ、ドス・ウノ・ドス・トレス」ってカウントしててかっこいいです。
もっとハデなの。かっこいい。拍がどうなってるのか数えてみてくだいさい。
あれ、サルサの話になってきてしまった。続きはまた。
ここ2、3週間ぐらいチック・コリア先生をよく聞いています。この人最近はなんか過小評価されてる気がしますね。宗教がらみであれだからっすかね。
チックコリア先生は最初に買ったCD 5枚のなかの一人で私は非常に好きだし思いいれもあるです。
はじめて聞いたのはライブアンダーザスカイかなんかのFMライブだったんじゃないかな。ゲイリー・バートン先生とのデュオ。こう涼しくて金属的な感じが素敵でした。ジャズっていうのはこういう抽象的なものだっていう印象があります。まあバルトークとかの音がするんよね。
アルバム買ったのはThree Quartetからだったかな。これは本当によく聞いた。すばらしい名盤っすよね。マイケル・ブレッカー(ts)、エディー・ゴメス(b)、スティーブ・ガッド(dr)っていう編成。まあこれが「ジャズ」本流かっていうとあんまり本流じゃなくて白人の抽象的ジャズなわけですが、当時はジャズってのはこういうもんだと思った。ガッドのドラムとかジャズかどうか、とか問題になったらしいですね。ジャケットもよくてね。
こう、すごく構成されてる曲でねえ。フォービートじゃない独特のノリがすばらしい。
Now He Sings, Now He Sobsも高校生のときに買ったんちゃうかな。Matrixとかジャズの歴史的にすごい曲なんですが、この曲がどうすごいのかっていうのはもちろん当時はわからない。実はこれはブルースなのだ、とか言われたってわからんですよね。
わかりにくいけど、いちおう12小節のブルース形式なんよね。これが12小節がひとかたまりになってできている、っていうのを聞けるかどうかが分かれ目というか。ドラムのロイ・ヘインズ先生がキレキレですごい。
Return to Foeverのころのは大学に入ってジャズ喫茶でバイトしはじめてから聞いたんですが、そのころフュージョンというのは悪しき音楽だってことになっててあれだった。しかし新鮮だったっしょーな。カモメのやつと羽毛のやつの2枚はぜひもっておくべきですね。名演ぞろい。でも有名なのばっかりだから貼らなくてもいいだろう。
実は1曲紹介したいのがあって、ボブ・バーグとやってるTime WarpというアルバムのWishって曲。これはバーグ先生の音楽人生で最高の演奏なんじゃないかなあ。すばらしい。
これはいいですよ。
マイルスバンドで名前を上げたハービー・ハンコック先生は本当に偉大。前にHead Hunterのchameleon を貼ったと思いますが、60年代にもマイルスバンド以外にもいろいろ活動している。
この人はピアニストなのにピアノトリオとか好きじゃないみたいで珍しいタイプっすね。トリオの作品は2、3枚しかないんじゃないかしら。自分で弾きまくるよりも、全体のサウンドを気にするタイプ。そこらへんがマイルスに気に入られたんだと思うです。
自分でやったのだとやはりSpeak Like a Childってアルバムがすばらしい。ちょっと変わった編成のバンドの分厚くて柔らかいサウンドが素敵。
んでまあここらへんまで来るともうジャズのフリーインプロビゼーションとかと変わらんところにあるわけですなあ。
セシルテイラー先生とかまあもう完全に1950年代の現代音楽の音だし。
テイラー先生が50年代おわりぐらいにこういうの演奏してたら、デイブ・ブルーベック先生がやってきて、「ああ、君の演奏コンセプトはこういうことだろう〜」みたいに言ってきて、それがずばりだったのでテイラー先生が驚いた、とかって話があります。何をしゃべったかってことまではわかんないんですが、まあブーレーズやらシュトックハウゼンやらクセナキスやら、誰それの現代音楽のコンセプトをあれしてるんだろう、みたいな感じだったんじゃないですかね。
キースジャレット先生とかのフリーの独自魅力がある。
あとチックコリア先生なんかもフリーにやってたりもする。
まあ60〜70年代のジャズの一つの音ですわね。
Nefertitiあたりの音は本当に美しいんだけど、どうも売れなかったらしいです。なんか高級すぎて頭いい人たちのための音楽になっちゃってるんですよね。現代音楽みたいになっちゃってる。やっぱりジャズとかってのはポピュラー音楽だから楽しくて踊れないと。あとウェインショーター先生が強力すぎて、ショーター五重奏団みたいになっちゃってるし、そこらへんもおもしろくなかったかもしれない。
マイルス先生は市場調査ちゃんとしているのでそういうのの対策に出るわけですわ。んで、もうパクりまくる。っていうかマイルスはずっとパクってるわけですけどね。そういうのはピカソとかストラヴィンスキーとかバルトークとかと同じ。偉大な芸術家は模倣し、天才は盗むのです。
まず目をつけたのは、昔子分だったキャノンボールアダレーがヒットさせたマーシー・マーシー・マシーのエレキピアノ。ジョーザヴィヌル先生が弾いてるんですが、この音がとてもいいので使おう、と。
あとなんといってもリズムですわね。モードぽいのやってるときにはもうベースが4拍ずんずんやるのは捨てて自由にロンカーターにやってもらってたわけですが、4ビートはもうだめだ、これからはロックの8分音符のフィーリングだぜ、みたいな。ドラムのトニーウィリアムスもビートルズとか好きだったみたいなのでここらへんはうまくいきます。ベースもロンカーターからデイブホラントにとっかえて、ピアノもハービーハンコックが遅刻魔だからクビにしてチックコリアを雇う。チック先生はスタンゲッツとかとすばらしい演奏してたんですね。
んでこんな音楽をやる。「キリマンジャロの娘」のころのセッション。実際には「ウォーターベイビー」ってあとで発売されたアルバムに入ってるけどかっこいい。マイルス先生が完全に全体をコノトロールしてる。なんかここらへんから「Directions in music by Miles Davis」ってアルバムに入れはじめたらしいんですが、それはその前までディレクターはショーターだったってことでもあるかもしれんです。
マイルスは一生を通じてファンキーなフィーリングはほとんど出さないんですが、この曲は全体としてファンキーになってますよね。ショーターはファンキーにやってる。んでチックコリアのエレピがキレまくってる。チックのはただの黒人ファンキーじゃなくてなんか人工的なファンキーさなんすね。デイブホラント先生も、アコースティックベースでこういう強力なノリを出せるのはこの人しかいなかったんじゃないですかね。イギリス白人なのに。すばらしすぎる。なんでこの曲1967年のタイミングでリリースしなかったんでしょうね(Splashって曲もこの曲とほぼ同じ曲)。10年ぐらい前に出た「コンプリート・イン・サイレントウェイ・セッションズ」ってのはマイルスのここらへんの過渡期をばっちり収録してるのでおすすめですわ。
んで、この60年代なかばにマイルス先生は何をしていたのかというと、実はたいしたことはしていないわけです。62〜64年ごろはコルトレーン先生が爆発的な仕事をしているのにたいしたことをしてない。ギルエヴァンスとレコード作ったりしてるけどなんか迷ってる。ライブでは昔の曲をテンポ速くしていろいろ実験しているけど、これが「マイルスの音楽だ」みたいなのが出せない。
んでどうしたかというと、面倒だから腕ききの若手雇ってしまうわけです。トニーウィリアムスっていう天才ドラマーを雇い、モードでみんなベース困ってるときに弾き方を発明したロンカーターを雇い、ファンキーでもビルエヴァンスみたいなのでもなんでも弾けるハービーハンコックを雇う。これにジョージ・コールマンというメロディアスなテナーを呼んで終り。これのライブは前に聞いたと思いますが、すばらしいものです。私コールマン先生好きなんですけどね。なんかジャズファンの間では評価低いみたいね。
どうもこのコールマン先生はトニーウィリアムス先生とかから嫌われたらしくて(なんでかわからん)、どうしようかなってときに目をつけたのが前のエントリのウェインショーター先生。この人はすでにアートブレイキーのところのバンドの音楽監督を3、4年やってて来日なんかもして大人気なのにそれを引き抜くっていうのは、巨人や阪神が他球団からエースや四番を引き抜いてるようなもんですよね。ひどい。ブレイキー怒り狂ったでしょうなあ。でもショーター先生はマイルスバンドがやっぱり音楽的には一番おもしろいメンツだってことで引きぬかれる。
んで第二次黄金クインテット名盤3枚組 Sorcerer、Miles Smiles、Nefertitiができるわけです。もうマイルスは曲とか自分で書いてない。主にショーターやハンコックが書いたもの。
まあコルトレーン先生ががんばって「モードジャズ」みたいな一発は発展した、というかこう細かいコードをあんまり考えずにブリブリ吹きまくるみたいなスタイルが定着したりしました。
コルトレーンの「至上の愛」っていう名盤。もう力入りまくっててすごい。一応コード進行あるんだけど、II-Vしてない。私にはマイナーキーのV7がずっと続いているように聞こえる。ピアノがレファラドみたいな3度重ねじゃなくて、レソドみたいな4度重ねになってうので50年代のジャズみたいなはっきりした調性感が出ない。クラシックだとドビュッシーやバルトークがいろいろやってた音なんですわ。あとピアノのマッコイタイナーがペンタトニックスケール(ドレミソラとかレミファラシの並び)を使えばコードと関係なく何を弾いてもいい、ってことを発見したりしたみたい。
実際には1960年代はファンキージャズの全盛期で、ミュージシャンが「モード」をやるのは、コルトレーンとか最先端の人を除いて、まあライブで2、3曲、みたいな感じだったんだと思うです。
まあシェーンベルクがいろいろやってるときに有力だったのはドビュッシーのライン、ラヴェルやストラヴィンスキーのライン(ドビュッシーとラヴェルはぜんぜん違う派閥なのではないかと思います)、そしてバルトークのラインですか。
バルトークは好きなんすよね。なんていうか、ちょっとインテリのふりしたかったらiPodにバルトークの弦楽四重奏入れておいて通勤に聞くといい、みたいなそういうウケ。まあそういうかっこつけはおいといてもよい曲をたくさん書いてます。
今「中国の不思議な役人」とかいくつかの演奏バージョンで聞いてるけど、かっこいい。
まあこういうのはパソコンのスピーカーじゃうまくなならないので図書館とかでCD借りてみてください。金管楽器がブウブウ言うし弦楽器も暴れまわるし。
おそらくYoutubeにはバレエの動画もあると思う。
バルトークがなんぼ偉かったか、というのは、これ書いているときのお手本の一つにしている小倉朗先生の名著『現代音楽を語る』を読むとわかります。この本はすばらしい一冊なのでぜひ入手してください。1970年の本で、日本の作曲家たちがどういうふうに無調音楽とかを理解していたのかもわかる。
マイルス先生がKind of Blueでやったこと、特にSo Whatでやったことってのはやっぱり衝撃的だったみたいですね。1960年〜61年ぐらいは腕に自信のあるミュージシャンは同じような曲をやってみたりしてる。Dm7がずっとつづいて一部だけEbm7になってDm7にもどる、みたいな曲。でもまああんまりよい演奏はない。
たとえばこんなん。……と思ってJimmy Smith先生のSugar Hillっていうひどい演奏を見せようと思ったけど日本では聞けないらしい。→Spotifyにある。
かっこ悪いどうもみんな最初はなにやっていいのかわかんなかったみたいね。特にベースの人がなに弾いていいのかわかんなかったみたいで苦労したらしいです。
もちろんコルトレーン先生はマイルスのレコーディングにも参加していたのでよくわかっています。
So what やImpressionというタイプの曲は、一つのコードの上で一つのスケールでアドリブするのだ、とかって説明されたりしますが、この時期(1961)のコルトレーン先生はもうそういうふうには考えてないですね。
半音階使ったり、半音上や半音下に勝手に行ってみたり、勝手にII-Vを想定してそれをさらに分割したり。「一つのスケールで吹く」というよりは、いかにしてそっから脱出するか、どうやってスケールから「アウト」してかつかっこよくするか、ってのをみんな実験するわけです。
アルトのエリックドルフィー先生なんかなにやってるのかもうわからんです。こういうのがちゃんと筋道たてて考え方が分析されるのは70年ぐらいになってからちゃうかな。まあとにかくなんでもありになってしまった。もちろん、エリートミュージシャンの間ではいろいろ情報交換されてたんでしょうけどね。そういう情報にありつけるのはほんの一握りで、たいていのミュージシャンは旧来のバップのやりかたを続けたり、ファンキージャズしてたりしてた。
So whatやImpressionsみたいなそれ用の曲を作るんじゃなく、既成の簡単な構造の曲を一発にしてしまう、みたいなのも試みられた。コルトレーンの当り曲 My Favorite Things。もと曲が単純なのでこういうのがやりやすかったんでしょうな。一部進行しているけど、同じコードの上で長ーいソロをとる。
これもドルフィー先生の方が新鮮ですよね。きっとツアーとかで
「エリック、今日もすばらしかったよ。」
「ありがとう、ジョン。こんあすばらしいバンドで演奏できて僕もうれしいよ」
「あれどうやっての? マイフェイバリットのソロ」
「いや、好きなようにやってるだけだよジョン」
「いや、どういうふうに考えて吹いてんのか知りたいんだけど」
「いやほんとに何も考えてないよ。手癖手癖。」
「隠さなくてもいいじゃん。そろそろ教えろよー」
「いやー、僕もわかんないんだよ」
みたいな会話があったはず。
前のエントリの続き。
どうも50年代は黒人ジャズより白人ジャズの方がウケてたみたいなんすわ。いまになるとよくわかんないんですけどね。ジャズミュージシャンがTime誌で表紙になったのはブルーベックがはじめてちゃうかな(1954)、と思ったけど1947年にルイ・アームストロングがなってました。2番目みたい。でもまあジャズが大衆音楽じゃなくて、コンサートホールにの椅子に座って静かに聞いて終ったらちゃんと拍手するものにしたのはブルーベックあたりからなんじゃないですかね。詳しくは知らんです。
今聞くとよい演奏もたくさん残ってるんですが、まあでもやっぱりジャズは黒人のものの方がホンモノって感じはしますねえ。
んでマイルスですが、マイルス先生は誰が人気あるかとか気にする人なんでずいぶん気にしてたんじゃないっすかね。40年代末にクールジャズはじめたけどすぐにぽしゃって、それをパクった白人が大ウケしている、と。自分自身はヘロインなかんかのドラッグでヘロヘロ。いったん田舎のパパもとに帰ったりしているわけです。
マイルス先生はどうもブルーベック先生の音楽も好きだったみたいで、有名な1956年のWorkin’っていうレコードで1発目でブルーベックのIn your sweet wayって曲やったりしている。昔もう1曲The Dukeって曲もやってるみたいですね。ジャズミュージシャンが他のジャズミュージシャンの曲をやるっていうのは、ある程度のリスペクトを含んでるんですわ。もちろんレコードにしたら印税が作曲したミュージシャンに入るし、ただ演奏するだけでも「ブルーベック本人はああやったけどおれはこうする」みたいなのを考えざるをえない。
同じような曲でも誰のを選ぶか、ってのでそのミュージシャンが誰をリスペクトしているかわかるんですよね。マイルスのSo Whatって今日とコルトレーンのImpressionって曲はまったく同じコード進行なんですが、どっち選ぶかっていうのでまあ自分の方向性を示す、みたいなところもある。
あとディズニーは1957年ぐらいにディズニーの曲をジャズにして一般ウケするわけです。
3拍子ジャズね。これをあとでマイルスが真似たりするわけです。それはもう聞きましたね。まあ3拍子でジャズしようとかってのがマイルスの気にいったんでしょう。
あとブルーベック先生はピアノのハーモニーの作り方(ヴォイシング)でも多くの人に影響を与えたんですが、これは面倒すぎるのでやめましょう。でもブルーベックのヴォイシングを発展させたのがビルエヴァンスという関係なんで、ブルーベックのかわりに雇ったんだろう、とか。マイルス先生本気でブルーベック好きだったんじゃないですかね。
50年代白人ジャズマンで一番成功したのはデイブブルーベック先生じゃないっすかね。
まあTake Fiveとか有名。でもこの曲はつまらん。メロディー(もちろん5拍子も)はとても印象的だけど、基本的にドラムのジョーモレロ先生がソロするための曲なんでね。
お前は変拍子ジャズっていいたいだけなんちゃうか、と。でもこっちのライブ映像はおもしろいっすね。
通はブルーロンド聞く。トルコ風ブルーロンド。
この曲も変拍子だけど、5/4拍子とかたるいんじゃなくて7/8とかだし、4拍子になったりする構成もあって、いかにもcomposeされてます、って感じですわね。
これらの曲が入ってるTime Outは1959年の作品。マイルスがKind of Blue作った年ね。まあ行きづまったジャズをこれからどうするかみんな考えた年なわけです。
ブルーベックたちがアイディアとってきたのは、おそらく指揮者で有名なバーンスタイン作曲の大ヒット作ウェストサイド物語のこの曲だと思う。12/8拍子(3+3+3+2+2+2)/8拍子みたいな。1957年。
バーンスタインがアイディアとってきたのはバルトークのここらへん。クラシック苦手な人も最後まで聞くとかっこいいよ。
まあブルーベック先生はクラシックにも詳しいし、他にもいろいろ重要な仕事をしている偉大な人ではあります。しかしどうなんすかね。変拍子やる前にもアメリカではすごい人気で、黒人ミュージシャンたちが狭いクラブとかで演奏しているときに大きなホールで仕事したりして、経済的にもだんちがいだったんじゃないですかね。そこらへんがなんというか黒人ミュージシャンのカンにさわったんではないか。
多くの黒人ミュージシャンたちは、白人はおれたちから音楽を盗んで金もうけをしてる、みたいに怒ってました。
ジャズっぽい響きというのはなんなのかといえば、それはけっきょく5度進行の響き、II-V(ツーファイブ)あのだ、ということになります。
5度進行というのはコードがD→Gのようにピアノの鍵盤4つ分(これが5度)動く進行。II-VってのはDm7 – G7 のようにマイナー7thとドミナント7thが5度進行でつながってる進行です。II-Vは5度進行の一種。
まあとにかくあるキー(調性)のII度とV度、キーがC(ハ長調)ならDm7とG7のつながりがジャズなのです。
All the things you areという曲があるんですが、コード進行はジャズメンがやるときはこんな感じ。(EbとかCとか書いてあるのはたいていメジャー7th。EbM7とかCM7。)
| Fm7 | Bbm7 | Eb7 | Ab | Db | G7 | C | C |
| Cm7 | Fm7 | Bb7 | Eb | Ab | D7 | G |
| Am7 | D7 | G | G | F#m7 | B7 | E | C7 |
| Fm7 | Bbm7 | Eb7 | Ab | Db | Dbm7 | Cm7 | Bdim7 |
| Bbm7 | Eb7 | Ab | Ab | (G7 / C7) |
Bbm7-Eb7とか、Fm7-Eb7とか、Am7-D7とか、F#m7-B7とかがII-V。それ以外にも5度進行の部分はEb7-Ab、Ab-Db、G7-C、Cm7-Fm7、Eb-Ab、D7-G、B7-E、C7-Fm7、Fm7-Bbm7とか山盛り。この曲はII-Vを含めた5度進行ばっかりでできてるような曲なんですね。
そしてビバップやハードバップという様式は、このII-Vをどう弾くかということだけを考えていた音楽といってもよいくらいのものです。
音楽というのはどんな猛烈な音でも延々同じことをやっていると飽きてしまう。必ず緊張と弛緩、があるんですね。II-Vとか5度進行というのはその緊張による運動そのものなんすわ。
このAll the things you areという曲を聞くと、そういう緊張と弛緩のくりかえしがわかるはず。基本的にG7とかD7とかEb7とか7thコードと呼ばれるところで緊張して、その次で解放される感じです。
また、II-Vってのはその運動によって調性(ハ長調とかト長調とか)をきっちりキメる働きがあるのです。この曲はキーがどんどん変わる曲で、最初はEb、次はC、次はEb、そしてG、E、もとにもどってEbとぐるぐるまわってそれがまた魅力です。ふつうに聞きながしていると「いい曲だなあ」ぐらですが、集中して聞いてると、あっちっちつれてかれて目がまわる感じですね。ここらへんがビバップの人々に好まれて、今だにジャズをやるとこの曲でアドリブとれればまあ初級脱出ぐらいのはずです。
(これ書いてからジャズブルースを先に書いた方がよかったことに気づきましたが、まあ次に)
では鑑賞です。まずはシナトラ先生で曲をおぼえましょう。
ジャズメンがやるとこんな感じ。リーコニッツ先生。ピアノいないけどハーモニーが聞こえてくる感じっしょ(実はうしろでうっすら吹いてるけど)。もうリーコニッツ先生の切れ味は猛烈なものがあるです。一瞬を生きてる、っていう感じ。
最高はやっぱりパーカー先生になります。メロディー1回も吹いてないけど、なんかメロディー吹くと作曲のジェロームカーンとかにお金払わなならないから頭のメロディー抜きにしたとか。イントロが有名で、このイントロはみんなやります。
まああとはいろいろ探してみてください。渡辺貞夫先生のがよかった。
All the things you areはメジャー(長調)の曲だけど、マイナーの曲だとどうなるのかというと、マイナーの曲はあんまりII-Vがはっきりしないのです。でもV-Imという緊張と弛緩ははっきりしている。っていうかむしろマイナーの方がはっきりわかるかもしれません。
一曲聞いてみましょう。クレオパトラの夢っていうやつで、2小節ごとに緊張–弛緩、緊張–弛緩ってのがくりかえされているのがわかるはずです。
まあジャズをマイルスデイヴィス先生とかコルトレーン先生とかを中心に考えちゃうとなんかシリアスな音楽であるって感じになっちゃうわけですが、やっぱり大衆娯楽なわけでね。
マイルスのSo What以降、ジャズはモードジャズになった、みたいなのは何重にも間違ってます。
第一に、それ以前のやりかたが廃れたわけじゃない。ハードバップや、ハードバップの一種としてのファンキーはずっと続いてた。っていうか、あるミュージシャンが自分のスタイルを変更することって滅多にないんよね。たしかにマイルスやコルトレーンみたいな人はカメレオンのようにスタイルを変えていったけど、そういうのはほんの一握りで、たいていのミュージシャンは同じことをやっている。複数のスタイルを使いわける人びともいるし、一つのスタイルを続ける人も多い。だから60年代にもスイングやってる人も中間派やってる人もバップやってる人もフリーやってる人もいたわけで。
っていうかマイルス自身すぐに前のスタイルにもどってるわけだし。3拍子ジャズ。名演。マイルスのソロのあとのハンク・モブレー好きですね。で、いったん終りそうなあとでこコルトレーンがこんな曲で暴れてるのおかしい。
第二に、So Whatみたいな「一発(あるいは二発)」って曲はかなり特殊。たしかにコルトレーンのImpressionsとか他にもいくか似たような曲はけっこう作られたけど、まあ特殊な曲だっていうのはみんな理解してたはず。
第三に、よく言われる「モード奏法」とかってのがあるわけではない。So Whatって曲は、一番もとのかたちではコード2個(Dm7とEbm7)の上でDドリアンとEbドリアンの2個でアドリブ取りましょう、っていうコンセプトの曲だったけど、そんなコンセプトが守られていたのはほんの一瞬。というか、あのマイルスの演奏でも杓子定規にそれやってたのはマイルス本人だけで、コルトレーンやキャノンボールは半音階使ったりいろいろやってる。
まあモーダルな曲、つまりなるべくコードの数を減らした曲の上でどうやってアドリブをとるかっていうのにはミュージシャンたちはかなり苦労したみたい。だってDm7の上でDドリアン(レミファソオラシドレ)の7つの音しか使っちゃいけません、なんていわれたらすぐにアイディアが尽きて、プレイヤーもリスナーも飽きちゃう。どうやって飽きさせないようにおもしろいアドリブをとるか、ってのを皆いろいろ試行錯誤したよね。詳しい話はまたするけど、まあマイルス本人も1964年ごろにはこういう演奏をしているわけだ。みんなもうDドリアンとか意識してない。
このころのマイルス先生はすごいっす。なんかいきなり楽器うまくなって高速高音でパラパラやってる。新しいドラマーのトニー・ウィリアムズ先生(当時18才ぐらい)に「練習しろ!」って怒られたんだとか。おかしい。あとこのジョージ・コールマンというテナーの人は私好きなんですけどね。マイルスは気にいってたけど、バックのハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズの3人になんかいじめられて追い出されたんだそうだ。
前のエントリでドルフィーの名前出しちゃったので1、2曲紹介。
もう好きすぎます。アルトを吹くとパーカーを抽象的にしたような感じ。音楽的には4度とか6度、9度と音程の幅が広い動きをするのでなんやらわからん。バスクラってジャズでは珍しいも吹いて、それだとなんか粘っこい感じ。フルートを吹くとこんな感じの爽やかというかリリカルというかんともいえん。
バックのジャキ・バイヤードのピアノもいいんですよね。
前に紹介したブッカーリトルとやってる LIke Someone in Loveもいいの。
こういう彼のフルート演奏の裏にあるのは、クラシック作曲家のドビュッシーのシリンクスとか、ヴァレーズの密度21.4って曲なんちゃうかな。
パユのこの演奏いいね。
この時期の黒人ジャズミュージシャンはほんとにインテリで、けっこう現代音楽とか聞いてんのよね。そのうちセシル・テイラーとかも紹介したい。
あとドルフィーのフルートの最高はLast Dateってのに入ってる You don’t know what love isってやつです。youtubeにある動画は途中で切れてるのしかなかった気がするので、CD買ってください。すごいよ。
まあ大学院以降飲むとなると一人のことが多いわけですが、そういうときはやっぱり音楽とか欲しいもので、飲む場所はなんかそういう音楽かかってるところとかが多い。
そういう場所でちょっと軽く音楽の話とかできるとうれしいもんですよね。音楽好きは音楽の話をしたいもんです。身の上話とかしんどいからしたくないし。お天気の話してもしょうがないし。
音楽なんか家で聞いてても同じだろう、という話もあるわけですが、まあ自分の知らないよい音楽を知るのは人生最大のよろこびの一つだし。
ジャズはそういう店がけっこうあるのでまあ楽しい。R&Bのところはなんか音楽について話したりする感じじゃないですよね。あったら行くんだけどな。ファンクに詳しいマスターがいるような。(あ、祇園の某店は知ってる。)
クラシック飲み屋とかもどうっすかね。1曲長いから帰りにくかったり深刻だったりしてあれか。