高橋幸先生の「近代社会における恋愛の社会的機能」(3)

昔あつめた文献をひっくりかえすことになったのは、こっから先の先生の議論に違和感があったからです。

テノフは、このようなリメレンスはロマンチックな情熱であって性的情熱からは区別できるものとしている。「リメレンスの相手 (limerence object)を望ましい性的パートナーとしても想定している」点で、リメレンスは「性的な側面」を持たないわけではないが、リメレンスの最終的な目的として求められているのは、「身体的一体化(union)」というよりも「互恵的な感情的コミットメントである」という点で、「リメレンスは必ずしも性的な情熱に還元できるものではない」(Tennov 1999:x)というのがテノフの議論であり、これは納得できる定義だと思われる。(高橋:11)

これ言いたいことはわかるし同意してもいいんですが、テノフ先生の直接の主張じゃないんですよ。Tennov 1999:xは1999年版の序文で、該当すると思われる個所はここです。

And limerence is sexual because the limerent object is always desired as a sex partner; despite this, the limerent wish to obtain emotional commitment is greater than that of physical union.

「性的な情熱に還元できるものではない」が見つからない。まあそういうふうに呼んでもいいんですが、私の読みでは、性的な要素を 抜くこともできない と思うんですわ。テノフ先生が言いたいのは、性的な要素もあるしそれは重要だけど、でもセックスするってよりは相手のコミットメントが欲しい、つまり、一発セックスして合体すりゃ満足するようなものではなく、相手から「ずっと一緒にいたいね」とか「もう君のことは離さないよ」とか「結婚しようか」とか言ってほしい、そういうのがリメレンスだ、ってことですよね。高橋先生は読み込みすぎだと思うのです。でもここも受けいれることにします。

高橋さんは、「スタンバーグはこのようなリメレンス研究に言及しつつも1、自身は「情熱」をロマンティックな情熱と性的な情熱の混在したものとして議論を進めている」とする。これはOKです。

多くの場合、心拍数の上昇や血中のテストステロン値の上昇、性器的興奮などの身体的変化を伴っており、本人にとってもその身体的興奮のいくつかは感じ取りやすいため、情熱は意識されやすい (sternberg 1986:124)。

ここはごく細かいことですが、一目惚れとかしたときにテストステロン出るのかなあ。原文は

[Infatuations] tend to be characterized by a high degree of psychophysiological arousal, manifested in somatic symptoms such as increased heartbeat or even palpitations of the heart, increased hormonal secretions, erection of genitals (penis or clitoris), and so on.

「情熱」じゃなくて「のぼせ恋愛」ね。それにテストステロンじゃなくてなんかのホルモンね。アイドルを見初めて筋肉ムキムキ、行動もアグレッシブになる男女、とかおかしい。ははは。そうだったらいいねえ……

まだ続きます……

脚注:

1

江口注: 正確にはこの1999年の序文はスタンバーグは読んでないわけですが

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