隠れシティポップ:古家杏子「晴海埠頭」

私が考えるシティポップ、もう1曲だけ挙げておきたいですね。

これはかっこいい。特に私がコメントするべきことはないです。

ていうか、あるんですが、よく聞いておいてください。ヒント:録音。

でもまあ歌詞書いとくか。なんか経歴その他よくわからない人で、歌詞もネットにはないですね。

ためいきを乗せたバスが走る
あたしだけ他に誰もいない
なぜだか街が揺れてる
たぶん冬の蜃気楼

終点のここでバスを降りる
からっぽの箱のままで戻る
いつもの場所で眺める
今日の海は泣いてる

晴海埠頭に立てば私に近い海
北へ向かう翼白い線を描く
ふりかえれば波風
さよならだけ沈む

桟橋を人の影が降りる
古ぼけた長い板が軋む
真冬の空は砂色
コートの襟を合わせた

晴海埠頭に立てば私に近い海
見知らぬ国の船
青いあかり灯す
ふりかえれば面影
呼びとめれば消えた

晴海埠頭に立てば私に近い海
鉛色の雲がやがて雨に変わる
ふりかえれば面影
呼びとめれば消えた

この先生は「東京」っていう曲も書いてるようで、「シティ」ねらってますよね。晴海埠頭がどこにあるかしらなかったけど、東京都中央区ですか。ドライブに適当なところだったんすかね。

まあ彼氏に振られて、いつも二人で車で来てたところにしょぼいバスで来てるわけですね。そして空は暗くて寒い。めちゃクール。っていうかコールド。凍えてしまいそうです。クリスマス前に振られたのかなあ。悪い男ですね。

言うまでもないけど「街が揺れてる」のは直下型地震が来て地盤が緩い埠頭が揺れているのではなく、涙で目がうるんでるんだと思います。海が泣いてるんじゃなくて自分が泣いてるんだけど、こういう歌詞のつくりかたはいいっすね。学生様はそういうの味わえるようになってほしい。「ふりかえる」は「真夜中のドア」でも出てきましたが、こういう過去追憶はシティポップの常套手段ですね。海に入水自殺するつもりはない。メランコリーっていうのとはやっぱりちょっとちがう、センチな感じになって、また次の男子を探すんですかね。だって、わざわざ晴海埠頭までコート来てバスで行きました、とかなんかこれも演技的よね。「わたしは泣いています、ベッドの上で」が普通なわけで。外に出られるんだったらまずまず回復してます。

まあでも、ハルワニ先生にいわせれば、こういう愛する人を失なったときの痛み苦しみは恋愛の特徴です。っていうかこれがないと恋愛じゃないので、恋愛ソングには当然この手の歌は増える。っていうか、「プラスティックラブ」も「真夜中のドア」もそうですよね。シティポップというよりはポップソングの典型の一つではあります。

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