社会学とかの文献を見ていると、「関係性」とか「親密性」っていう言葉をよく見かけるわけですが、これは曖昧な言葉なので注意しましょう。
日本語で「〜性」という語尾の言葉を見ると、「具体性」(具体的であること、具体的であるという性質)とか「可能性」(可能である性質)とかっていうごく抽象的な 性質 を指す言葉として使われているわけです。そのつもりで「関係性」とか「親密性」とかを見ると、「関係があるという性質」「親密であるという性質」を指していると勘違いしやすいのですが、社会学とかの文脈で使われる「関係性」や「親密性」は性質では なく 、具体的な 関係そのもの 、親密な関係 ≒ 内緒話をしたりセックスするような関係を指すことも多いようです。そういう場合は「関係性」「親密性」ではなく、「関係」「親密関係」のように表現した方がずっとわかりやすいはずです。
私見によれば、これそもそももともとは 誤訳に近い と思うんですわ。社会学まわりの有名文献の翻訳が、こういう「関係性」や「親密性」の用法の祖先なんじゃないですかね。relationshipやintimacyを訳しそこねてるんじゃないか。(とくに偉い社会学者のギデンズ先生の『親密性の変容』の影響はでかいと見てる。)
Weblioで研究社の『新英和中辞典』をひくとこう。
Oxford Lerner’s Dictionaryだとこう。
relationshipという言葉は可算名詞で、「(人間)関係」そのものを指します。特に親族関係とか恋愛関係を指すこともあります。
intimacyは(ふつうは)不加算名詞1。
OLDの定義ではa close personal relationshipをもっている「状態」ですが、まあ例文を見ればやっぱり親密な関係であって、その関係の性質ではありません。
こういうの、「なんかぼんやりしてるなー」と思ったら、 辞書をひくだけ だと思うんですよ。それで言葉がはっきりするし、頭のなかもはっきりする。「人間関係」や「親密な関係」を「関係性」やら「親密性」やらと訳しても得をすることはなにひとつないので、この二つの言葉は撲滅追放しましょう。っていうか、そういう言葉使ってる人がなにを考えてるのか私にはわかりません。ぼーっとしてくる。ぼーっとしてきませんか?
ギデンズ先生の本は「親密性の変容」じゃなくて、「親密な関係(恋愛やセックス関係)のありかたが変化してます」って話です。
別に社会学の専門用語ってほど専門用語じゃないっしょ? 「二人の関係」を「二人の関係性」って書くと、そして「二人は性的なおつきあいはじめました」を「二人は親密性をもつようになった」って書くとなんか 読みにくくて難しくなってかっこいいから 使ってるだけでしょ?そして、もし単なる「人間関係」や「親密関係」とは 別の意味で 使いたいのなら、それも 専門用語 として使いたいなら、それはそれとはっきり 宣言してその意味もはっきりさせるべきだ 。
脚注:
加算名詞になると内密な関係のなかでやるあれやこれや、内緒話とかそういうのになりますね。
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