バス先生の本での女性のレイプ対策でもう一つ印象的なのが、被害を受けたあとの話ですね。
被害を受けた女性たちがPTSDなどでひどく苦しむという話はかなり一般的になってると思います。興味深いのは、被害を受けた女性は被害を受けたことが隠す傾向があるようで、この背景にも進化的な裏付けがあるのではないか、というバス先生の推測です。
性犯罪は非常に暗数が多い犯罪だと言われていて、まあこれは洋の東西を問わない。しかしなぜ暗数が多いのか?つまり、なぜ女性は被害を通報しないのか?それはまあ通報してもあんまり被害者の得にならないからです、というか、むしろさらに損害を拡大してしまう可能性がある。
- まわりからの被害者非難と自己非難
- 被害者がウソをついているのではないかと疑われる可能性、信じてもらえない可能性
- 司法制度のもとでひどい扱いを受ける可能性(トラウマを再体験しなければならない可能性、きびしい詮索や反対尋問を受ける可能性)
- 加害者が有罪になる可能性は低く、有罪になってもすぐに刑務所から出てきてしまう可能性が高い
まあそうした理由で、被害者が通報しないのもやむをえないところがあり、だからこそ被害者に対する制度的な援助や社会的な意識の改革が必要なわけですが、バス先生なんかはこの背景にある心理にはさらに奥が深いところがあるかもしれないと考えてるみたい。性的な被害を受けた女性は念入りにシャワーをあびたり体をごしごし洗ったり、暴行によって生じた痣を隠したりして、当局が捜査をする上で必要な証拠資料とかを抹消してしまう傾向があるらしい。
こういうのはもちろん責められないわけだけど、暗数減らしたりするのもかなり難しいところがあるのだなと考えさせられます。被害女性の通報がないために、加害者・犯罪者が野放しになってしまう傾向もあるわけで1、こういうのも社会としては心理学的な知見とかとりいれながら対策しないとならんようです。まあバス先生は、現状で各国がいろいろ対策すすめている方向性自体は進歩だろうと考えていて、さらにいろいろ効果的にしたい、って考えてるようです。
シリーズ
脚注:
性犯罪はどうも一部の加害者が(記録されていない)大量に被害者を生んでいるらしいということが別の章で論じられています。
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