森田成也先生のセックスワーク論批判 (3)

自発性の問題つづき

まあ自発性とか同意の問題は難しいですね。

あんまり難しすぎるから、いろんなことがらについて、とりあえず成人(あるいは18才以上)、正常な判断力をもっていて、ある程度の情報をもっているひとが選択したのであればそれは尊重しましょう、ぐらいになってるんだと思います。セックスワークとかAV出演とかセックスまわりは、セックスという人間の生活でも特別に重視される面にかかわるし、また若い女性がワーカーとして好まれる傾向がありますが、若い人は年配の人より判断力が若干劣るかもしれないので、セックスワークまわりはもっと厳しい自発性の基準で考えるべきだ、みたいな考えかたはあるだろうと思います。

ただ、森田先生は業者(「ピンプ」やスカウトマン)が狙うのはいろんな事情で「自己決定権を行使できない立場にいるか行使する能力に乏しい女性である」と言うんですが、これはうなづける点はあるにしてもちょっと極端な見方でもあると思います。ツイッターとか見ていると風俗嬢の人々がけっこういて、そういう人々がいろんなことを書いていて、いろんな考え方や感覚があるなと思わされますね。かなり搾取されている人もいるだろうと思うけど、全部がそうだとか大半がそうだとかっていうのは言いすぎだろうという印象もあります。

もちろんまともな選択をするにはやっぱり情報が必要で、そういうのでは最近はブログやSNSとかで風俗嬢の人々が大量に発信していて、だいたいどういう場所かっていうのはこれから働く人々にもあるていどわかりやすくなってるんじゃないだろうか。

ところで、森田先生とかおそらく仲間の中里見先生とかは、買春のターゲットになる女性はとにかく若くて、無力なので、困っていて、知的障害をもっていたり性被害で自暴自棄とかになってるひとだ、みたいな事を言うんですが(p.156)、これってどれくらい本当なのかなあ。私の感覚だと、身体的にも精神的にも不健康な人っていうのは、一般には、健康な人に比べるとあんまり性的魅力がないと思うんですよね。つまりあんまり売れないんじゃないかと思う。松沢呉一先生の本とか読むと、いろいろ気をつかわないと風俗嬢は売れないみたいですが、やっぱりそうした気遣いみたいな能力は必要とされる業界だろうと思います。ただセックスさせてればお金もらえる、みたいにはなってないと思う。これは私の想像。

まあ一部にはサディスティックな人や特殊な趣味の人もいるだろうからなんともいえないのですが、ほんとうに世の買春男性というのはそんなにひどい人々なのだろうか、とか思います。ツイッタとか見てるとたしかにやばい人はいるようだけど、ほんとにそんなにたくさんいるんだろうか。

とか考えちゃいますね。まあこういうのはやはり事実の話であって、森田先生の本はそうした事実の話にはほとんどまともな根拠をつけてくれないのでよくわからない。

貧困

売春を禁止するとワーカーが路頭に迷う、とかっていう議論を森田先生は反駁していますが、そもそもそんな主張している人がいるんかな。先生は「セックスワーク派は自発的だって話と貧困で路頭に迷うって話を同時にしていて矛盾している!」っていうんですが、その二つを同時に主張している人がどれだけいるかよくわからない。そもそも「路頭に迷う」とかってなんか大袈裟すぎるんじゃないのかな。

まあスカウトマンやホストとかがいろいろ売上からピンハネするのでワーカーはたいへん、、みたいな話はそういうのもあるかと思うし、風俗業にはわりにあわないところがあるだろうっていうのもわかるんですけどねえ。引用されるのがアメリカとかの話で、アメリカのストリートでドラッグやりながら売春している人々と、日本の(ふつうの?)風俗産業とかどれくらい比較できるものかと思います。

まだ続く。

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