認知行動療法自助本で「二の矢」をかわす
毎日なんだか気分がよくない、自尊心というか自己評価が低くてうまくいかない、コミュニケーションに困難をかかえてます、みたいなのは多くの人が困ってることなので、いろんな本がありますわよね。そういうなかでも私が読んで少しは役に立ったと思えるやつを紹介しておきます。
まずは、その手の本の元祖本家であるアルバート・エリス先生のやつ読むのがいいと思う。もうこの先生はえらくえらくて偉すぎて、世界で何十万人を救ったかわからんほどでしょうね。なんといっても、本人の語り口が楽しそうで、こんな楽しい人間になれるんだったらそら認知行動療法ぐらいやります、ってなもんです。
- アルバート・エリス『性格は変えられない、それでも人生は変えられる』
アルバート・エリス『現実は厳しい、でも幸せにはなれる』。
実はこの2冊は同じ本が原書で、タイトルだけ違うのか中身もすこしいじってるのかわかりませんが、まあエリス先生の本はなに読んでもまったく同じこと書いてるので、どれ読んでもいっしょです。
『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには』
この本はタイトルがいいですよね。お釈迦様のお説教に、次のような話(「二の矢」の比喩)があるらしいんですが、まあ我々はそういうことはどうしても学ばないとならんのですな。
「修行者たちよ」釈尊は、次のように弟子達に尋ねた。
「まだ私の教えを知らない者にも、心楽しい時もあれば、苦しい時もある。すでに私の教えを知っている弟子たちにも、心楽しい時もあれば、苦しい時もある。では、まだ私の教えを知らない者と弟子のあいだには、どのような違いがあるだろうか」。
弟子達は謙虚に言った。「分かりません。貴い人よ、どうか教えて下さい。私たちは貴方の教えを根本とし、貴方を眼目として生きているのですから」
釈尊は絶妙の譬えをもって答えた。
「不幸にして、矢に打たれた人があるとしよう。ここで、次にどうするのかに関して、二種に分かれるだろう。一人は、慌てふためき、第二の矢を受けてしまう人。もう一人は、矢に打たれても痛みに耐え動揺せず、第二の矢をかわすことのできる人である」。
仏は続ける。「仏の教えを知らない凡夫は、最初の人である。苦しさに嘆き悲しんで、混迷の心は深まるばかり。楽も、かえって迷いの心を増すばかりである。仏の教えを知る人は、第二の人である。苦しみを受けてもそれに耐え、苦しみに囚われることが無くなり、生死の束縛を脱する事ができる」
「このことが、仏教を知らない者と知る者との違いなのである」
エリス先生の本読むとどんなことがあってもみじめにならないということはないと思うのですが、まあその対処法の入口はわかるかもしれない。仏教やストア派のエピクテートスやマルクスアウレリウス勉強してもわかるかもしれません。とにかく自助本は、それ以上の御布施が必要ないところがいいですね2。
エリス先生は元祖でわるくないけどけっこうクセがあるので(私は好きですが)、日本で基本書みたいな扱いをされているのはバーンズ先生ですか。これはいかにもアメリカンでわかりやすく具体的で実践的な工夫がなされています。ちょっと長くてくどい感じはある。
- デビッド・バーンズ『フィーリングGoodハンドブック』
ついでに、非モテの人は次のも読んでみましょう。いわゆる「ナンパ本」の元祖でもあります。エリス先生もバーンズ先生も、若いときは非常に内向的でモテなくてかなりつらい時期を送ったらしいのですが、どちらも20代後半ぐらいのある時期にナンパ声かけ100本ノックみたいなのやってみて非モテから解放されて自信がついたみたいなんですよ。どっちにとってもとても大きい経験だったみたい。女性には迷惑でしょうけどねえ。
『孤独な人が認知行動療法で素敵なパートナーを見つける方法』
まあそううんじゃなくてもっと具体的で実践的な方がいい、という人々は次の2冊のどっちか。どちらもとにかくどうしようもないところから、「とりあえず毎日散歩しましょうか」みたいなところからはじまっていて、まあそういう簡単ですぐにできるところからはじめるというのはとてつもなく大事ですね。とにかく、なにする前にも自分をすこし楽にしてあげないとならない。
- ロバート・セイヤー『毎日を気分よく過ごすために』
メラニー・フェネル『自信をもてないあなたへ:自分でできる認知行動療法』
少し本格的に整理されてるのがいい、って人は次のがおすすめ。本の体裁とか堅そうに見えるけどそうでもないです。運動習慣とか先送り防止とか具体的でたいへんよい。本読むのが好きなわけではない、っていうひとはこれがいいと思う。というか、1冊ですませたいし、あんまり面倒なこと考えたり、それの哲学的な意味はどうなってるのだろうか、とか考えたくない人はとにかくこのクラーク先生の本で十分。
- ディヴィッド・クラーク『認知行動療法に基づいた気分改善ツールキット』
おまけとしてこれ。ADHDではないとしても、そういう軽薄・うっかり・あわてんぼ・先送り、忘れ物傾向ある人は、身におぼえのある症例がたくさんでてきて泣き笑いみたいになっておもしろいっしょ。
- サフレン『大人のADHDの認知行動療法』
まあ1990年前後に、メタ倫理学や功利主義の勉強してたころ、リチャードブラント先生とかR. M. ヘア先生とかが本当に道徳的に重要であるとカウントすべき人々の選好や欲求は、単なる欲求すべてではなく、最大限の論理と事実にさらして、いわば「コグニティブサイコセラピー」をおこなった上でそれでももちつづけるような選好・欲求だ、みたいな話をしているのを読んでいて、そのときは「認知療法ってなんじゃいな、なんだかあやしい」みたいに思っていたのですが、その後メタ倫理学とは別に、あるていど本気で勉強せねばならないいことになったわけですわ。学術的とはいえない勉強ですけどね。そんでもまあブラント先生たちが言いたかったことことはよくわかるようになったのです。
脚注:
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