性的モノ化とセクシー化 (7) セクシー化問題の成立史

「セクシー化」sexualizationっていう問題がどういうふうに形成されたのか、ってのは次のものが勉強になります。ほんのちょっとだけ紹介。

まずこのsexualization言葉は、複数の歴史的な意味がある。「セクシー化」ではない意味もあります1

  • 1970年代には、個人が男性・女性としてそれぞれ性的に分化して成熟していく過程を指す言葉として使われた。
  • また、精神医学ではフロイトのsexualizierenの意味で、リビドーが特定のエロチックな対象に固定する過程を指すのにも使われる。特にアメリカの精神分析業界では、治療者に対る「転移」を指すのに使われた。
  • 上のふたつの混用みたいな形で、子どもが大人に対する不適切な性欲をもつ社会化の過程を指したりもした。(へえ)
  • 児童虐待の問題意識が高まると、インセスト(近親姦)的な子どもに対するやばい関心を指すようになる。この用法は現代まで使われている。
  • 1980年代になると、子ども、特に女子のsexualizationが問題になる。これは子ども、特に女児が、十分成熟するまえに性的活動に参加しはじめることを指してました
  • 1990年代には、フェミニズムの影響を受けてジェンダー問題が「社会問題」として前面化する。特に女性と子供の性的被害がクローズアップされる。sexualizationは本来大人の社会から性的に隔離されているべき子供を性的活動にひきこむこと
  • 1995年にGarbarinoの Rasing Children in a Socially Toxic Environment という本がベストセラーになる。この本では子供のセクシャリゼーションによる搾取が問題とされる。「子供にセクシーな服を着せることは、もう制限なしだというメッセージを伝えることになる」2
  • 2000年代前半にsexualization 、このシリーズで述べてる意味での「セクシー化」がフェミニスト的問題になりはじめる。少女が積極的にセクシーな服を着て、男子の目をひきつけようとする傾向。フェミニスト的には、商業的・性差別的社会では、もは女子はまともな選択ができなくなっているという意識の高まり
  • 「以前は女性は自分たちをックスオブジェクトとして見るなと抗議していたのに、現代ではその娘たちは自分からセックスオブジェクトになろうとしている」 という危機意識。また女児の性的搾取のリスクの増加の懸念
  • セクシー化への懸念はAPAの報告書に結実、保守派の賛同も集める

まあこんなふうにして、2000年代このかた、若い女性を性的なものとして扱うことに加え、女子や若い女性が自分から性的なものとして自分をディスプレイして、また積極的に性的な活動をおこなう、っていう現象が、フェミニストにも、保守派にも懸念される現象になっているわけです。そして、1980年代に批判されたフェミニストと保守派の結託みたいな現象が2010年以降また起きている、って感じです。

脚注:

1

ちょっと英語の問題があって、sexualizeみたいな他動詞に-ationの語尾をつけて作った語は、その過程を指すこともあれば、その結果を指すこともあるんですよね。「子どもをセクシュアライズする」というのは、まあ「大人が子どもを性欲の対象としたり、性的な活動をする存在として見る」みたいな意味なわけですが、その名詞形のセクシュアライゼイションは、そうやって子どもを性欲の対象とするようになっていくという過程を指す場合と、子どもが性的な対象とされるようになったという結果を指す場合がある。accuse 訴えるという言葉の名詞形のaccuzationに、(1) 告発すること、という過程の意味と、(2) 告発そのもの、告発の内容、と二つの意味ができてしまうのと同じということらしいです。これ、よく考えないと翻訳もまちがってしまいますので注意しないとならんですね。

2

この本は重要なようで、いま話題になってる「有毒な男らしさ」っていうやつもこのラインの話なんですね。ケミカル有害物質の汚染と、性的な汚染がメタファーでつながれていて、それがいまでは「男らしさ」にも使われているんですな。

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